【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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ヴィンセント

 ツォンも合流したし、さっそく神羅屋敷に乗り込むことになった。

 もう少し早く来てくれてもよかったのに、おかげでクラウディアさん相手にかなり話し込んじゃったし、横にずっと立ってたクラウドがかなり辛そうだった。

 そりゃ母親と上司が自分のことを話してるのを、ずっと目の前で聞いてるのってある種の拷問だよね。

 

「まずは私が正面から神羅屋敷に入って現在屋敷の管理をしている科学部門の社員と管理人の気を引きますので、その間に内部に侵入してください」

「わかったわ、万が一実験体が出てくるようなことがあればクラウド、お願いね」

「スカーレット様には指一本触れさせません」

 

 ツォンが屋敷に入ってから数分後、俺の携帯に空メールが入る。

 この時代ってまだスマホじゃなくてガラケーなのよね。

 

 とにかく、合図も来たしいざクラウドと神羅屋敷潜入!

 

「目的の資料に関しては、ある程度目処が立っているのですか?」

「資料も欲しいんだけど、一番の本命は別にあるのよね。悪いけどクラウド、何も言わずについてきなさい。あと、棺桶から男が飛び出しても敵じゃないから迎撃しないように」

「棺桶?」

 

 そう言えばクラウドは疑問を浮かべながらも深く追及もせずに頷いてくれた。

 さすがクラウド、空気の読める男だぜ!

 

 実験場のエリアには監視カメラや危険な生物もいるのだろうが、一般の社員が出入りする場所にはそういったものは設置されていない。

 なるべく、宝条が管理してる危険なエリアには近づかないようにしなければならない。

 ロストナンバーなんかと戦いたくなんかないもんね、絶対に金庫は開けないように気を付けよう。

 

 少し奥に進むと部屋の真ん中に棺桶が鎮座する、不可解な部屋を見つける。

 これこれ、これを探してたのよ。

 

「棺桶……スカーレット様、これは一体?」

「これこそ、私の目的の男。起きなさいヴィンセント・ヴァレンタイン!」

 

 俺の声に反応せず、棺桶は動かぬまま。

 あれ、もしかして、いないとかある!?

 たしかに仲間にするには相当早すぎるけど、ここ以外に行くとことかないはずだよね。

 やばい、格好つけてフルネームで呼んだのに、いないとか恥ずかしいし、ここにヴィンセントがいないとなると、色々と予定がズレてしまう。

 

 一応中身だけ確認しておこうと、棺桶に蹴りを入れようとした瞬間。

 突然棺桶の蓋が宙に舞い、中から何かが飛び出してきた。

 

 俺はバランスを崩し尻もちを突きそうだった所をクラウドに助けられる。

 そのままクラウドは剣を構え、棺桶のそばに着地した男を警戒する。

 

「俺の名を知るとは、お前は一体何者だ?」

 

 長い黒髪、黒い服の上に独特の赤いマントを羽織り銃を構えるこの男こそ、かつて神羅カンパニーのタークスに在籍し、愛した女ルクレツィア・クレシェントのジェノバ・プロジェクト参加を止めることが出来なかった男。

 その後、宝条を責めるが逆に彼に人体実験を施され、愛した女の手によって一命を取り止め、己の体の変革を罰と受け止め、悪夢にうなされる日々を選んだ男。

 

「神羅カンパニー兵器開発部門統括、スカーレットよ。あなたに贖罪の機会を与えに来た女よ」

 

 なんか警戒してるっぽいけど、急に神羅の幹部が自分に会いに来たらそりゃそうなるわな。

 頼むよクラウド、俺けっこうビビってるから、何かあったら本当に頼むね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長い間悪夢を見続けた。

 探求心に恋焦がれる科学者たちを止めることが出来ず、その因果の罰を受け止め続けていた。

 この体は時間の流れが世界から切り取られたように、二十代の姿を保ち続けている。

 永遠という牢獄に囚われ続けることが、私に課せられた罪と罰なのだろうと思い受け入れ続けてきた。

 

「棺桶……スカーレット様、これは一体?」

「これこそ、私の目的の男。起きなさいヴィンセント・ヴァレンタイン!」

 

 俺の名を知る者も少なくなってきただろうに、何者かがこの屋敷に侵入してきた。

 足音から察するに男と女。

 

 男の方は女を護衛しながら移動しているようだが、それなりに腕が立つようだ。

 もしかすると自分と同じタークスのメンバーなのかもしれない。

 

 そして女の名前に聞き覚えがあった。

 かなり昔の記憶だが、確か兵器開発部門の統括に当時17歳の若い女が選ばれたと話だけ聞いていた。

 その頃の俺は科学部門にかかりっきりであったし、すぐに宝条に改造を施されたこともあり、面識はないがあれからかなりの年月が経っているはず。

 おそらくその時の少女が統括として成長してきたのだろう。

 

 しかし、科学部門とは別とはいえ、兵器開発部門も科学者の集団という意味では警戒を怠ってはならない。

 俺は棺桶の蓋を蹴り飛ばすと、その蓋の影に隠れながら姿を現し、二人の姿を確認する。

 

 ずいぶんとデザインが変わったが、タークスのスーツに似た物を着込んだこの女がスカーレットか。

 そしてその隣で彼女を守るようにこちらから目線を外さない男、これがもしかすると俺の後輩にあたるタークスかもしれない。

 一般兵と変わらぬ恰好をしているが、構えるソードは相当な重さだろうに重心にブレがない。

 何よりも護衛としての立ち振る舞いが洗練されている、もし俺がスカーレットの命を狙う暗殺者だとしても、この男を無視して暗殺を成功させることはできないだろう。

 この若さでここまで練り上げられた肉体と技術、タークスの中でも相当優秀な男だと思われる。

 

 万が一俺の体を解体する目的でこの女が来たのだとしても、この男は俺を捕まえるよりも、護衛対象を守ることを優先するに違いない。

 正面から戦えば面倒だが、もしもの時は逃げの一手に徹すれば無理に追うこともしないだろう。

 

 とりあえずは宝条の実験体と違って会話が成立するのはありがたいか。

 会話から情報を得て、事実を推測するのはタークスの基本だ。

 尤もここ数十年間、誰とも会話していない俺には少し荷が重いが出来ることはするべきだ。

 

「俺の名を知るとは、お前は一体何者だ?」

 

 ひとまず確認からだ。

 俺の名を知る女が何者なのか。

 

「神羅カンパニー兵器開発部門統括、スカーレットよ。あなたに贖罪の機会を与えに来た女よ」

 

 やはりあの頃噂になった女だったか。

 

「クラウド、警戒はしててもいいけど、いったん武器を降ろしなさい」

 

 横にいたタークスの名前はクラウドというのか。

 本人はしぶしぶといった感じに武器を降ろすが、こちらを警戒する手は緩めない。

 もし万が一にでも俺が銃口を向ければ、体を差し込んでもこの女を守るだろう。

 時は経てどもタークスの質というのは維持できてるみたいだな、あの頃の同僚は今も現場に出ているだろうか。

 もしも出世してるとすればヴェルドだろう、あの男の結果至上主義なら、この若い男が統括の護衛という任務に就いているのも納得出来る。

 

「さて、レディの話を聞くのに銃なんていらないわよね、元タークスさん」

「あぁ、一応はここの警備員だからな。上司には逆らわん、要件を聞こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よし、何とかヴィンセントとの接触に成功。

 敵対もせずに話を聞いてもらえるみたいだし、まずまずの好感触だろう。

 

 こちらはヴィンセントの内情をある程度知っていることを公開して、今の神羅の現状、そして俺が現体制を変えることを目的としてることは話した。

 驚いたのは、ヴィンセントが当時の俺のことを知っていたことだ。

 面識こそなかったらしいが、名前だけは知られていたらしい。

 当時まだ少女と呼べる歳からすげぇ才能あったんだなスカーレット。

 関りがなかったことは好都合、俺になる前のスカーレットのイメージを持たれてたら、俺のプランがきな臭く感じるし、説得するのも面倒だったかもしれない。

 

「ふむ、つまり魔晄を吸い続ける神羅のあり方を緩やかに改変し、この星を守るウェポンが人類に牙を剥かないようにしたいと」

「そのためにもジェノバってのが色々と危険なのよ。でもプレジデントはその存在を手放す気がないし、管理してるのは科学部門の宝条。どう、このまま引きこもって寝てるよりも私たちに協力した方がずっといいと思わない?」

 

 ヴィンセントの表情は読めないが、こちらを強く否定するわけでもない。

 ここで畳みかけてみるか。

 

「ねぇ、あなたはこのままでいいの?」

 

「今なら兵器開発部門であなたを囲い込めるし、副社長も協力者だから科学部門にあれこれされることもないわ。もしタークスに復帰したいならそっちの融通も利かせられるけど……」

「いや、もう俺はタークスを離れて長いし、ヴェルドが主任ならあまり酷いことにもなっていないだろう。それならある程度自由に動ける立場さえもらえたら兵器開発部門の所属でいい」

「決まりね、うちの預かりってことでねじ込むわ。宝条が色々言ってくると思うけどそっちは私たちが何とかするから安心なさい」

 

 よっしゃ!!!

 仲間にするの成功!

 

 スピンオフで主役を張るほどの男だし、クラウドと二枚看板になれば、これほど心強いことはない。

 ほら、クラウドも喜んで……ってあれ?

 表情硬くない? 念願の一緒に戦える同僚だよ。

 

「だが、俺が急にここをいなくなればさすがに不自然すぎる、見たところここに来たのだって大方不法侵入なのだろう。カバーストーリーはどうするつもりだスカーレット統括」

「もちろんちゃんと考えてあるわ。それと、社内にいる時は統括呼びでお願いしたいけど、それ以外なら好きにしていいわよ、あなたの方が先輩で年上になるんだし、実質会社とは別に私個人の依頼で動いてもらうことも多いでしょうから」

 

 みんなから統括統括って呼ばれるのは気分がいいけど、ちょっと気持ちよすぎて調子に乗りそうで怖いんだよね。

 だから目上の人以外で、肩書に囚われないで声をかけてくれる人が欲しいけど、そんな奴どこにもいないのよ。

 クラウドにもフランクに話しかけて欲しい所だけど、明確に上司と部下の関係だし、歳の差もあるから。

 そこで ヴィンセントみたいな存在はある意味都合がいい。

 見た目二十代だが、俺よりも年上だし、会社への勤続年数から言っても先輩だ。

 クラウドと同じく会社にではなく、俺個人に協力してもらうって意味でもあまり会社に縛られなくてもいいというアピールだ。

 

「わかった、会社に籍は置くがひとまずは個人的な協力関係を結ばせてもらおう。しばらく世話になるぞスカーレット」

 

 さすがは元タークス。

 こっちの頼みたいことをちゃんと理解してくれてるし、気難しい上の人とのコミュニケーションも完璧だ。

 

 それにしても敬称も何もなしのスカーレット呼びって新鮮。

 しいて言えばハイデッカーだけど、やはりヴィンセントみたいなイケメンに呼ばれたら女の子ならキュンとしてしまうのだろう。

 俺もちょっと感動してる、まさか憧れのゲームキャラに呼び捨てにされるなんてゲーマーなら感激するよね。

 クラウドにも呼んで欲しいけど、関係性的に難しいし、わがままも言えないんだけどね。

 

 あぁ、もし俺がティファとかエアリスになってたら、クラウドにも呼び捨てにされて感動してたろうになぁ。

 なんで、こんな悪役のおばさんなんだろうか。

 今更こんなこと思ってもしょうがないのだが、気持ちを切り替えていこう。

 

「それじゃさっそく、二人にこの後必要な作戦を伝えるわね……って聞いてるクラウド?」

 

 なんかちょっと面白くなさそうな顔してるけど、もしかしてヴィンセント歓迎してない感じ?

 しまった!? ここに人探しに来てることをツォンにもバレたくなかったから、秘密にしてたの気にしてるのかも。

 もしくは、急に好待遇で兵器開発部門に謎の男が来るもんだから、自分の立場を脅かすライバルの出現だと捉えちゃったとか。

 違うのよ、出来たら仲良くして欲しいし、クラウドの負担を減らす意味も込めてのスカウトだから、全然ないがしろにするつもりはない。

 むしろこれからずっと俺のそばで護衛とか、大事な仕事を任せたいから、ここで変に拗ねられるのは困る。

 

 この年頃の部下なんてアルバイトでも持ったことなかったし、もしかしたらなんかミスったかも!

 でも俺が変にご機嫌伺いをするわけにもいかないし、せっかくいい関係を築けたのに、ここで台無しにするわけにもいかない。

 

 後でちゃんとフォローしなきゃいけない。

 

「とりあえず、この屋敷の地下にいる実験体が逃げ出したことにするわ。表向きはそれはヴィンセントが処理、そのまま居場所を失ったヴィンセントをタークスが発見して会社に連れ戻すってことにするわ」

「それならおあつらえ向きの奴がいる。宝条の実験の失敗作で地下に封じ込めたままのがな」

「システムの方は私に任せなさい、私の権限で上手い事ハッキングして細工してあげる」

 

 これでヴィンセントが表舞台に戻るのも、たまたま起こった事故の影響ということに出来る。

 時間もないし、端末に案内されて、ちょいと色々細工する。

 うわっ、宝条の奴勝手に防衛プログラム組みなおしてやがる。

 これじゃ神羅の社員も間違って入り込んだら死んじゃうよ。

 

「俺は機械に疎いが見事なもんだ、仮にも宝条が仕掛けた防衛プログラムなのだろう?」

「当たり前だ、スカーレット様は一流の技術者なんだぞ。特に機械分野に関しては宝条博士よりも精通している」

 

 クラウド君褒めてくれてありがとう、でもやっぱりちょっと喧嘩腰?




若い頃のスカーレットに関しては独自設定。
いくら探してもいつごろから神羅にいたかわからなかったんですよね。

なのでギリギリヴィンセントがいたころと在籍期間が被るようにしてみました。

次回更新は同じく一週間後の水曜日19時を予定しています。

次回は珍しくボス戦を挟みます。
私は最速でヴィンセントを仲間にしようと頑張った結果、ボロボロにされた思い出のボスです
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