「んで、どうするよ。とりあえずロケット打ち上げまでひたすらパトロールするか?」
「もうすでに工作されてる可能性もある、整備担当の責任者と一度話をしたい」
俺は巨大なロケットを見上げながら、シドと打ち合わせをする。
これから工作される可能性もあるが、すでに工作済みの可能性もある。
ひとまずロケット打ち上げのことを考えれば、一度整備師の意見を聞きたい。
「一応名目上の責任者はそこのふとっちょがそうだが役に立たないぜ。なんせ人員削減で名義上の名前貸しだから、普段はロケットを弄ってねぇ」
「うひょひょ、スタッフかき集めるのも一苦労だったからね」
「そ、そんな雑にやってこられたのですか……」
「うん、君はスカーレット君の所で機械いじりしてたからわからないかもしれないけど、兵器開発部門みたいに技術者を管理したりきちんと囲い込む予算がないからねぇ」
「ま、ロケット開発なんて金食い虫だからな。再利用も出来ねぇもんばかりでほとんどが使い捨て。エコだのなんだの掲げてる魔晄炉は違うかもしれねぇが、ロケットなんてのは宇宙にゴミを増やすだけってな」
たしかに神羅が魔晄炉建設に力を入れた結果、宇宙開発部門の予算は年々減らされた。
決算書で数字としては確認していたが、こうして現場の話を聞くと何とも言えないな。
「だったら、一番この神羅26号に詳しい技術者の人はどなたですか?」
「おう! それならシエラの奴だな動きはトロくさいが、整備の腕は中々のもんだ」
シドが声を上げると、近くに居たスタッフに声をかけ、シエラという技術者の場所を聞く。
「シエラさんなら酸素ボンベの整備に行かれたんじゃないですかね?」
「あいつ一人か? ってことはまだそこにいそうだな」
腕はいいが仕事が遅くて仕方がないとシドが愚痴るが、つづくスタッフの答えに俺とシドは嫌な予感がした。
「でもさ臨時の手伝いって奴らが何人かそっちに応援に行きましたよ……」
「それはいつで、何人いやがった!」
シドがスタッフに大慌てで詰め寄り確認する。
「つ、ついさっきのことで二人の男でしたよ」
「付いてこいクラウド!」
すぐさま駆け出すシドを追いかけて俺も走り出す。
「臨時の手伝いなんているのか?」
「いや、今の時期はほとんど魔晄炉建設に人を取られちまってロケットに関わる奴らなんかいねぇ」
「シエラって人の特徴は?」
「眼鏡に白衣のドンくせぇ女だ! 整備の時も整備服じゃなくて白衣だから見たらすぐにわかる。それにあいつは仕事をコツコツ一人でするのが好きだから、他の奴は基本手伝いなんてしねぇ」
ロケット内部を駆け上がり、シドの後をぴったりと付く。
追い越すことも出来るが、俺は内部の構造がわからないため、すぐに行動に移せるように背中のバスターソードに手を掛ける。
「おい、内部でそんなもん振り回すなよ。酸素ボンベを壊したら中で誘爆するぞ! マテリアも武器も使わないで拳で制圧するしかねぇ」
「ちっ、万が一武装してた時はどうする?」
「多分目に見えてわかるような武器は持ってねぇよ、さっきの話だと臨時スタッフの振りして潜り込んでんだろ。せいぜいマテリアか小型の武器を隠し持ってるくらいだ」
「わかった、シドは何も気づいてない振りをして奴らの気を引いてくれ。その間に俺は……」
「だから、困ります! ここの酸素ボンベはロケットの発射に使う燃料を燃やすための重要な物なんです、もし万が一のことがあれば……」
「はいはい、わかりましたよ。でも俺らも急ぎなんですよ」
「おい、シエラはいるか?」
俺は出来る限り普段と同じような声掛けのつもりで、ドアを開けシエラを呼びつける。
シエラのそばには若い男が二人、服装こそ他の奴らと同じだが、ここでは見たことない顔だな。
「あっ、艇長」
あぶねぇテロリストが近くに居るってのに、顔見知りを見つけて安心したみてぇな顔しやがって。
おめぇが万が一人質に取られたり、殺されたら夢見がわりぃだろうが!
しかも、こいつらに重要な部分の整備を任せるのが不満で駄々こねてやがったな。
どんだけ俺や他の奴が、そんな部分はもういいって言っても、自分が納得しねぇと絶対にやめねぇ。
「珍しくパルマーの野郎が来て少し聞きたいことがあるそうだ、時間は取らせねぇから少し付き合ってくれ」
「パルマー統括ですか? 珍しいですね、それよりも聞いてください! お手伝いしてくれるのはありがたいんですが、ロケットの整備でここを弄るのはやはり慣れた技術者じゃないと……」
「わがまま言ってねぇでとりあえずこっちこい!」
「はい……」
しぶしぶかもしれねぇが、俺の方に近づいてくる。
「おめぇら見ねぇ顔だがどこからの応援だ?」
「はっ、自分たちは……」
よし、まだこっちが気づいてるってバレてねぇみたいだな。
シエラも俺の後ろに回せたし、これなら万が一こいつらが何かしても最悪俺が盾になれば済む話だ。
目の前のテロリスト共がペラペラと必死に覚えたであろう劇の設定を語ってるうちにあの兄ちゃんも配置に就いたみたいだな。
よし、それじゃあ俺も合図を待ちますかね……。
「ぐわぁ!」
「な、なんだ?」
テロリストの一人が背後から突然殴りつけられる。
俺相手にいらねぇことを喋るのに夢中になってたぼんくらが後ろを振り返った瞬間、思い切りそいつの股間を蹴り上げる。
男の急所に強烈な一撃を食らったそいつは、白目を剥いてその場に崩れ落ちる。
「けっ、俺様のロケットに細工しようなんざいい度胸だ」
「一応後でタークスに引き渡して尋問してもらう予定だから、それ以上殴るのはやめてくれよ」
よく俺がもう何発か殴ろうとしたことに気が付きやがったな。
兵器開発部門統括の護衛兼秘書も兼ねてるって聞いてたが、変なところまで気が回りやがる。
こりゃ出世のためにやってるって感じじゃねぇし、元々気遣いしいのお人好しってとこか?
「しょうがねぇな、手伝ってもらったんだ。いかついの一発入れて勘弁してやるよ」
「了解だ、騒ぎにしてセフィロス側のアバランチを刺激しても良くない。少しの間このロケット内部で拘束させてもらう」
「それじゃ、場所代としてそっちの男も一発殴らせろ」
「艇長命令じゃ仕方がない、好きにしてくれ」
なんだこの野郎、話が早いじゃねぇか。
とりあえず一発目の前のテロリストの顔面を殴り、シエラの方に向き直る。
するとさっきまでの不満そうな顔はどこへやら、今度は不安そうな顔して俺の顔を覗き込む。
「て、艇長!? これは一体……」
「こいつらは応援のスタッフの振りしたアバランチの連中だ、いくらロケット開発に打ち込んで世間に疎いっても名前くらい聞いたことあんだろ」
「反神羅を掲げるテロ組織です、今回の神羅26号打ち上げを狙い潜入したものと思います。シエラさん、彼らは何か不審な動きをしてませんでしたか?」
「はい、私の知らないところでそこの酸素ボンベを弄ろうとしてたので、私が話しかけたところなんです」
「なるほどな、こいつらがここ以外にも弄ってる可能性もある、こりゃぁ一から整備のやり直しだな」
「わかりました! たぶんこの人たちこの酸素ボンベを触りたがってたので、私はここから順番に見直していきます!」
うちの整備スタッフが全部弄ったならどこも問題ねぇと言えるんだが、こうしてアバランチの奴らが乗り込んでるんだ。
他も一度チェックしねぇと不味いな。
打ち上げ時間まで間に合うか少し怪しいな。
テレビ中継相手に予算寄越せって啖呵切っちまったからな、変なところでプレジデントに予算削減の口実を与えちまったか?
「ふぃふぃ、ち、ちょっと二人とも急に走って……わし1人置いてっちゃうんだから……」
ドアが急に開いたから俺とクラウドは思わずそっちを警戒したが、そこにはぜぇぜぇ息を切らしたふとっちょが立ってるだけ。
なんだこいつ、付いてきやがったのか。
「よう、ふとっちょパルマー。よくここまで走ってこれたな」
「だ、だって社長と副社長は狙われてるし、ロケットの近くにもアバランチが潜入したんだろ、わしだって狙われちゃうかもなのに、シドちゃんもクラウド君も走って行っちゃうしさ。セフィロスもすぐにいなくなっちゃうし」
「ばか、誰もおめぇなんて狙わねぇよ。こっちでもう潜入してたやつらはとっ捕まえた!」
「うひょうひょ、さすがシドちゃん!」
まぁ、こんな奴でもそこらのひよっこよりは機械弄りが出来るんだし、普段は働かねぇんだからすこしくらい動かさせねぇとダメだな。
「よしパルマー! 今からロケットの点検整備全部やり直すぞ、おめぇも手伝え!」
「えぇ~わし今走ったばかりだから、仕事なんて無理よ~」
「うるせぇ! 打ち上げまで時間がねぇんだからこちとら仕事しねぇ総括の手も借りてぇんだ。おい、誰か菓子持ってねぇか?」
「あっ、さっきセレモニーで関係者に配った最中みたいのなら私持ってますけど……」
「よし、こいつが欲しかったらとにかく腕を動かせ!」
シエラが持ってた最中を俺が管理すると、パルマーはうじうじと泣き言を言いながらもシエラが持っていた工具に手を伸ばし、目に見える部分から検査を始める。
「クラウドおめぇさんも手伝え! 兵器開発部門にいたってことは機械の整備はお手の物だろ」
「乗り掛かった舟、いや、ロケットだ。最後まで手伝わせてもらう」
「そう来なくっちゃ、俺は他の奴らに指示してくる」
とりあえず出来ることから進めねぇとな。
まだセフィロスの方が終わってるかわからねぇから無線で伝えるわけにいかねぇし、他の場所の様子も確認しなきゃならねぇもんだから俺がひとっ走りしないとダメだ。
ロケット内部をひぃこら走り回り、目についた整備班の奴らに声を掛けてはすぐに違うところに走る。
体力に自信がある俺様でも、狭いロケットの中を行ったり来たり全力疾走してりゃさすがに息が切れてくる。
これをきっかけにタバコも少し控えるか?
「やっぱり、八番の酸素ボンベだけ何度チェックしても正しい数字が出ないわ」
「もしかするとそこが弄られた場所かもしれませんね、何か必要なものはありますか?」
シエラさんと一緒にアバランチが侵入したロケット内をくまなく整備し直す。
するとロケット発射時に使う酸素を供給するボンベに異常が見つかった。
「ちょっとライトで照らしててもらえますか。パルマー統括、そっちのラチェットお借りしてもいいですか?」
「うひょひょ、板ラチェットのほうね。はいどうぞ」
部品が詰まった狭い箇所に、シエラさんがラチェットを差し込みながら中を確認する。
「やっぱり、部品の一部が故意に外されてます。これじゃあ発射時の衝撃で故障しちゃいますよ」
どうやらアバランチは爆発物を仕掛けるなどではなく、整備不良でロケット発射を阻止しようと考えていたようだ。
大々的にアバランチの犯行だと世間にアピールするには、爆弾によるテロの方が世間には存在感をアピールできるはず。
「なぜアバランチは部品を外すだけに留めたのでしょうか? 爆破物を仕掛ける方が簡単ですし、整備不良での発射失敗なら世間へのアピールも……」
「うひょひょ~たぶん爆発物自体を持ち込むのが現実的じゃないって思ったんじゃな~い?」
額の汗を拭いながら、飴玉を包装紙から取り出すパルマー統括。
いや、一体どこに隠し持っていたのやら……。
「アバランチのテロの内訳って知ってる? ほとんどが強化された戦士による襲撃ばっかりで、爆発テロって少ないんだよね。特に重要施設に対しての爆弾の持ち込みってほとんど成功してないわけ」
「そうなんですか? 私全然テロの内訳とか知りませんでした」
「シエラちゃんも一応は社員なんだから少しは神羅のニュース見てよ……。それもこれも爆弾に使うユニットって大体どんなサイズでどんな仕組みかってわかってるから、検査の段階ですぐにわかっちゃうんだよね。金属探知機はもちろん、最近だと科学部門が作ったワンちゃんも匂いで爆発物を見分けるんだって」
「全然知りませんでした! たまに見かける軍用犬ってそんな役割もあったんですね」
既存のガードハウンドの嗅覚に着目し、爆発物を探知させる方法はウータイとの戦争後に科学部門が提唱したらしい。
なんでも対アバランチのテロへの対策として科学部門にルーファウス副社長が依頼したとのこと。
それは良いのだが……。
「うひょ、忘れてた! これそのうちタイミング見て公表するから黙ってろってハイデッカー君に言われてたんだった。二人とも今の内緒ね」
しぶしぶといった顔で俺にも飴玉を差し出すパルマー統括。
もしかして口止めのつもりなのだろうか?
次回投稿予定は5/12水曜日19時からの予定です。
すっかり週一投稿が定番になりました。
科学部門のガードハウンドはいわゆる麻薬犬みたいなイメージです
現実でも生き物の嗅覚を頼って麻薬や爆発物を検査する方法があるので、それっぽいことをしてます。
なお、宝条的にはつまらない要望にくだらない答えを出したと思ってそう。
一応副社長の命令なので取り組んだがいいが、結果に対して何の思い入れもやりがいも感じてません。
うん、マッドサイエンティストですね。