「はぁ~まったくいやになっちゃうわ、何も相談なしにクラウドを使っちゃってさ。絶対クラウドが来ることも考えて予備戦力として当てにしてたわよ副社長」
「ガハハ、そう怒るなスカーレット。優秀な奴は上に使われて結果を出す。いくらセフィロスが強いといっても一人では人手が足りんだろう、クラウドも若の下でいい経験を積むだろうさ」
プレジデントとルーファウス、後ついでにパルマーがロケット発射場へ行き、リーブも魔晄炉建設のためにコレル村と本社を行ったり来たり。
本社に残ってる重役は俺とハイデッカーと宝条なのだが、何かあった時の社長の代わりを務めるなどまっぴらごめんだと宝条は代理を放棄。
残る俺とハイデッカーが何かあった時社員に指示を出すのだが、目下悩みの種だったアバランチはルーファウス率いるソルジャー部門がぼこぼこにしているし、暇なものだ。
なんでもアバランチにタークスのヴェルド主任の娘が所属していると掴んだルーファウスは、逆に彼女を抱え込みアバランチの情報を抜き取っているらしい。
ヴィンセントの時もそうだったが、最初からタークスであるという偽装工作をして、潜入任務としてアバランチに潜り込んでいたことにしてしまった。
こんなことが出来るのもタークスが社長直属で徹底した秘密主義だからこそ出来る技だ。
プレジデントもソルジャー部門を使いこなすルーファウスには期待をかけているみたいで、タークスの扱いも最近では一任しているらしい。
もっともヴェルド主任にも恩を売る形になったから、好感度高いんだろうな。
着々と自分が社長になった後の布石を打つルーファウスは本当に優秀である。
「今頃ロケットも空の向こう、神羅の評判も天まで登り、わしも情報統制に尽力した甲斐があったわ、ガハハ」
大口開けながら豪快に笑うハイデッカー。
なぜこいつと一緒にいるのかというと、暇だから自分の功績を自慢しに来やがったからである。
とっとと帰って仕事でもしてろと追い出してもいいのだが、お茶の時間にお茶菓子を持ってきたので追い出すのも忍びない。
「ほれ、ロケット発射場に来た奴らや、関わった社員に配った茶菓子だ。お湯はあるか?」
神羅26号と書かれた箱を開けると、ロケットの形の最中が二つ入っていた。
まさか、和菓子を持ってくるとは、道理でどでかい湯呑を持ってきたわけだ。
「これを配り神羅の株を上げたのもわしのアイデアだ、わしみたいな有能な人材を雇えてプレジデントも鼻高々だな」
自分の自慢をしなくちゃいけない病気なのかこいつは。
でもまぁ、こうやって記念のお菓子を配るってのも平和なうえ企業戦略としては良いことだろう。
可愛らしいロケットをあしらった最中の表面には神羅のマークが描かれている。
「お湯もあるしお茶もいくつかあるわよ、適当に選びなさい」
一応前世が日本人ってことでお茶好きなんだよね。
深夜まで働く神羅社員にはコーヒー党が多いんだけど、やっぱり飲みなれたのはお茶よお茶。
ただし、こっちの世界に日本茶なんてないから、比較的似た種類のウータイのお茶を用意している。
「ガハハ、さすがだな。だがなこれは普通の最中じゃないぞ、懐中汁粉と言ってな、昔の戦場でよく飲んだもんだ」
懐中汁粉?
あまり聞きなれない言葉だ、汁粉というからには甘いデザートを想像するが見たところ最中にしか見えない。
「これを湯呑にいれてお湯を注ぐ、後は適当にスプーンで潰したら……」
ハイデッカーの持ってきた大きな湯呑に懐中汁粉がすっぽり入り、中にお湯が注がれる。
コーヒーを混ぜる用の小さ目なスプーンをハイデッカーが持つとより小さく見える。
しかし、そのスプーンを最中の表面に差し込み、軽く混ぜただけで中から何かが出てきた。
これは……あんこ?
「乾燥させたあんがお湯に溶けて即席の汁粉になるんだ、包んでる皮も具になる。元々はウータイ発祥の甘味らしいが、まだカップ麺や保存食の種類が少なかった昔は戦場では貴重な甘味だったもんだ」
懐かしいと言いながら目の前で豪快に湯呑を口に着ける髭面爺。
俺のコーヒーカップでは小さすぎるから、少し深めのスープ皿を取り出して懐中汁粉とやらを二つに折って入れる。
スプーンで軽く潰し、お湯を注ぐと甘い香りが漂い始めた。
「アバランチにはウータイの残党勢力も合流している、将来的にはウータイの市民層も取り込まねばならんからな、小さい手だが奴らの故郷の味や文化をきちんと神羅は評価してるとアピールしなければいかん」
普通のお汁粉と違い、最中が餅のように柔らかい。
ほんのりとした優しい甘さが口の中に広がり、これはコーヒーじゃなくてお茶だよね。
いちいち茶葉を使って急須で注ぐなんて面倒だから、ウータイから輸入してるティーバッグしか使わないけど。
何やら自慢話を継続してるハイデッカーの言葉を聞き流しながら、俺はティーカップにお気に入りの茶葉が入ったティーバッグを放り込み、お湯を注いだ。
コーヒーも悪くない、でも日本人的な感性がこの体に魂として引き継がれているのか、この香りがたまらなく好きなのだ。
尤もウータイの歴史的な飲み物でもあるせいで、神羅の中であまり根付いた食文化とは言えないのと、コーヒーや紅茶に慣れ親しんだ神羅社員にはウータイ茶があまり人気がないのが難点だ。
一応麦茶みたいなのもあるのだが、茶葉を焦がした独特の味があまり受け入れられてない。
この前パルマーにも飲ませてみたのだが。
「うえっ、コーヒーよりはましだけど全然甘くなくて美味しくないよこれ」
と言っていたので、試しに砂糖をドバドバ入れて再チャレンジさせた。
「うひょ! お砂糖入れたらグンと味が良くなったよ、焦げ臭い感じも気にならなくなったし、何より甘くておいしい!」
こうしてお茶仲間を増やすことに成功したのだ。
元々紅茶にラード入れるような奴だ、これが麦茶に砂糖という組み合わせが新たに飲食の選択肢に加わっても問題ないだろう。
健康診断だけはきちんと受けているらしいが、いつも担当医が困り果ててるのを知ってる、俺は何も悪くないぞ。
「……というわけで今回の情報規制もわしのおかげで万事うまく進んでる。兵の戦闘力では若のソルジャー部門に勝てはしないが、人員の数と細かな連携、そしてわしの指示があれば決して後れを取らんわ、ガハハ!!!」
あっ、まだ喋ってたのか。
一応適当に相槌をうっていたのだが、本人も特に気にしてる様子はない。
たぶん周りの部下たちも上手に聞き流すのが上手くなってってるんだろうな。
このおっさんいらねぇ武勇伝話すの好きだもん。
「おっと、本題を忘れるとこだった、実はな今度若の肝いりで各部門の模擬戦があるだろ」
「そういやそんなのあったわね、うちは実験部隊としてクラウドと無人兵器を出すけど」
ぶっちゃけウータイとの表立った戦争が終わり、神羅は武力を持て余してる状態なのである。
このままでは金食い虫になっては軍縮待ったなしなのだが、神羅って会社でもあるがすでに国みたいなもん。
今後敵対する輩が現れる可能性もあるし、アバランチのような反神羅組織もまだ活動している。
そこで宇宙開発部門と都市開発部門を除いた戦闘必須の部門たちでの模擬戦を副社長が提案したのだ。
一つ神羅の社内に向けたレクリエーションみたいなものだが、各部門の発表の場だったり、交流目的だったりと色々ある。
「そこでだ、うちの歩兵部隊の隊長にクラウドを組み込んでみないか?」
「はぁ?」
「早い話が治安維持部門と兵器開発部門の連合軍だ。元々無人兵器を率いて戦場に出ていたのは治安維持部門なのだから何もおかしなことはない」
たしかにいくら兵器や武器を俺たちが作ったところで、実際に運用するのは人だからな。
「おまえさんがクラウドを使って自分の部門に部隊を作ったのは理解してるが、兵器を取り仕切るだけで人を率いた経験はあるまい。所詮便利でも機械は機械だ、部隊長を名乗らせるなら人を使わせろ」
たしかにハイデッカーの言い分にしては一理ある。
個人の戦闘力という面で見たクラウドは確かに強い。
しかし数の力というのがどれだけ厄介なのかというのも理解できるし、無人兵器でその数を埋めようとしてきたが、もう少し使える人材が欲しいのも本音だ。
今何かあった時に俺の権限で動かせるのがクラウドとヴィンセントしかいないからな。
「つまり、今度のソルジャー部隊との模擬戦でうちのクラウドと無人兵器を借りたいってことね」
「違う、わしの所の精鋭部隊を優秀な部下に貸してやるという心遣いだ!」
「キャハハ、何取り繕ってんのよ、私のクラウドに部隊を率いさせてソルジャーを蹴散らしたいんでしょうが」
そういう意図がないわけではないと、不満そうだがおおむね図星らしい。
小さな手柄をコツコツ積み上げているが、どうしても対アバランチで大きな結果を出しているのはソルジャー部門。
その統括も社長の息子で次期社長の可能性が高いルーファウス。
ここらで治安維持部門でも戦えるということをアピールしたいのかもしれない。
俺にとってもクラウドが部隊の指揮を出来るようになったり、他所との交流を出来るようになるのはメリットがあるから、渡りに船だ。
「いいわよ、私のクラウドを貸してあげるわ! その代わり優秀な奴らを付けなさいよ」
「わかっとる、付けるなら歩兵部隊が適任だろう。ほれ、見繕ってきたから選べ」
手元の端末を操作すると、画面が切り替わり5つの部隊の司令官たちが映しだされる。
スライドすると経歴や戦績、率いる部下たちの情報も表示される。
「クラウドの件はしてやられたからな、あいつなら俺の下で副官にしてやるというのに」
「キャハハ、あんたじゃ無理よ、私じゃなきゃあそこまで鍛えあげられなかったわ」
「相変わらず自信家だな。まぁ俺と同じくらい部下を見る目があるだろうから、自分で選びたいだろう、好きなのを選べ」
湯呑の中のお汁粉を一気に流し込み、お茶も呷るように飲むもんだから、むせてしまい胸を叩く。
ハイデッカーがするとゴリラのドラミングみたいだと思いながら、手元の端末に目を向ける。
出来たらミッドガルに根ざした部隊がいいな。
これを機にパイプを作り、何かあればハイデッカーを通さなくても情報を流してもらえるようになればありがたい。
案外現場の情報伝達というのはバカに出来ないし、クラウドには俺とは別に上層部とは関係ない伝手を持っておいて欲しい。
「このミッドガル第七歩兵連隊ってのはどうかしら?」
「あぁ、ミッドガル周辺の任務がメインだから戦争で活躍こそしなかったが、連携も取れとるし、隊員も若い連中が多い」
「それならクラウドが率いる時に負担も少なそうね。いいわ、この部隊に決めた」
「まったく、若もセフィロスに熱心だし、お前はクラウドか。どうしてわしの所には優秀な奴がこんのだ、運が悪いことだけがわしの弱点だな」
まぁ、魔晄適性がある奴はみんなソルジャー部門に行っちゃうし、そうじゃない優秀な奴はタークスがスカウトしちゃうもんね。
俺だってある意味裏技みたいな方法でクラウドを引き抜いたわけだし。
ヴィンセントだってルーファウスの力添えで何とかしてもらっちゃったから、人材確保もコネと手回しが大事なのよ。
「あんたはもっと今いる部下をきちんと使いなさいよ、手柄奪うのは良いけどたまには還元しなさいよ」
「失礼な、優秀な奴は目をかけてやるし、臨時でいい思いくらいさせてやる。クラウドもわしの下にいればこんな年増じゃなく、若い娘の店に行かせてやるのに……」
「ハイデッカー、新兵器でエアバスターってのを開発しててね、完成したら治安維持部門にも回そうと思ってるんだけど、大型生物用のド派手な火力が売りでね、その身で味わってみる?」
「ガハハ! 俺も社長と若がいないと仕事が忙しくてな、悪いがここらで退散させてもらう」
思いっきり睨みつけて脅し文句を言ってみたが、ハイデッカーも慣れたものでそそくさと退散していった。
悪かったな年増女で!
こっちだって憑依転生するならイケメンのルーファウスとか、仮に女になるとしてもティファやユフィみたいな若い子が良かったよ!
一応外見だけでも若くなろうと金に物言わせてスキンケアとか定期的にエステに通ってる。
元のスカーレットみたいに要らないブランド物を買う趣味はないが、美容系の出費を抑えることはできない。
だってスカーレットってこの見た目が社会人としてのある意味武器だから、それを落とすわけにはいかないじゃん。
一応は神羅一のキャリアウーマンとしての面があるのだから、利用できるもんは利用しなくちゃいけないし、それで儲けられるならいいもんねだ。
ただ、どうしても元のセンスが体に残ってるのか、服装とか化粧とかきつめというか主張のはっきりしたものが好きで、どうしてもシンプルになりきれない。
どうせ俺は一生性格きつめの若作り年増女ですよ~だ!!!
「いけないいけない、バカの相手したらどれだけイライラするなんて時間の無駄よ」
それに比べたら本当にクラウドは素直ないい子だよな。
ストレス抱えっぱなしの職場でのオアシスだよ。
その後無事パルマーを乗せたクラウドが神羅に帰って来た。
パルマーもクラウドが気に入ったらしく、今度自分のおごりで蜜蜂の館へ行こうとクラウドに悪い遊びを覚えさせようとしたので、思い切りヒールで足を踏んづけてやった。
みんな大好きカップ麺は神羅で製造してる設定です。
でも他の国でも、そう言った食べ物はあるので、今回は懐中汁粉をウータイの食文化と設定してみました。
お住いの地区によってあまり馴染みがないかもしれませんが懐中汁粉で調べてみると、美味しそうな画像がたくさん見られます。
なんとなく日本文化とウータイってのが相性が良さそうなのでそんな感じにしてみました。
ヴェルド主任はガラケー版の登場キャラで、娘さんもアバランチにいます。
色々ネタはあるのですが、あんまり本編に深くかかわってこないフレーバー程度に軽くお考え下さい。
もしご興味あるからはネットでプレイ動画をググってみてね。
次回更新は6/19水曜日19時予定です