【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

19 / 40
宝条博士

 時間が過ぎるのは早いもんだ、いつの間にかクラウドも19歳。

 もうすぐお酒を飲み始めてもおかしくない歳だね、と悠長に言っている場合じゃない。

 

 すでに原作開始二年前なのである。

 

 ロケット打ち上げが成功してから、起こるはずであったコレル魔晄炉の爆破も起きぬまま建設は進み、今はまだ試運転している段階だが爆破事故の影も形もない。

 そもそもセフィロスが乱心してないし、そのせいなのかアバランチの活動も消極的になり、神羅へのテロ活動も鳴りを潜めている。

 

「平和なのは良いことだけれど、なんていうか不安ね」

 

 クラウドとヴィンセントは仲間にしたし、その二人のレベルアップも順調だ。

 本当はシドも候補だったんだけど、宇宙開発部門がロケット打ち上げ成功させちゃってるし、今は宇宙なんだよね。

 

 セフィロスとジェノバを相手取るなら三人パーティと同じく頭数を揃えたい所なんだけど、誰も候補がいないんだよね。

 バレットは魔晄炉計画が順調だから神羅との関係は悪くないけど、俺個人のために動いてくれる感じじゃないし、リーブもそっち関係で忙しすぎて無理。

 ユフィもまだこの頃は14歳だし、ウータイの戦士として訓練してるはずだから、絶対神羅所属の俺と相性悪いって。

 エアリスの所在も把握してるけど、ちょっと変に手を出すのも怖いし、レッドXIIIが科学部門に捕まったって話は聞かない。

 残すはティファだけど、いくらクラウドの幼馴染とはいえ、田舎からわざわざスカウトして神羅に呼ぶってのも無理あるよな。

 

 一応俺になる前にスカーレット肝いりで進められた、専用兵器プロジェクトも継続しているがそっちも難航中。

 見た目魔道アーマーでFF好きにはたまらないデザインなんだけど、ちょっと機動性に難ありなんだよね。

 クリムゾン・メアってイケてる名前で、クラウド相手に試運転してみたんだけど、まだまだ改良の余地ありだわ。

 

 今はディープグラウンドをなるべく穏便に始末する方法をルーファウスと考え中。

 あれも厄ネタすぎて、怖いのよ。

 

 とりあえず目下の要注意対象は宝条とジェノバだな。

 セフィロスはルーファウスが上手い事手綱を握ってくれてるし、ザックスも存命のおかげか非常に安定してる。

 一応科学開発部門と兵器開発部門で技術交流はあるけど、宝条と会議以外で会って話すこともないし全然何してるかわからんのよな。

 そりゃ、会議に議題として挙がってくる報告なんかはわかるが、裏で何してるかわかったもんじゃない。

 

「ヴィンセントがルクレツィアを発見してくれたら、セフィロスを完全にこっちサイドに巻き込めるんだけどね」

 

 あれこれ仕事を回しながらルクレツィア捜索を頼んでいるが、どういうわけか一向に見つからない。

 微妙にゲームで覚えてる地形とこの世界の地形が違うのか、それとも別の理由があるのか。

 どちらにせよ広い世界をヴィンセント一人に探させているので思うような結果が出てこない。

 

「となると、後はもうクラウドにそれとなく任せるしかないのかしら」

 

 科学開発部の実験に付き合わされるのはソルジャーや一般兵としてもまっぴらごめん事案なのだが、どうもクラウドは宝条に目を付けられてるらしい。

 時たま協力要請があるから、それを利用して向こうに顔出して貰うか。

 

「とりあえずクラウドの安全第一で、宝条のことを探ってもらいましょうか。あんまり期待できないけど」

 

 いくらクラウドがザックス譲りのコミュ力強者になったとはいえ、期待しすぎるのも酷だろう。

 この時はそう考えていたが、俺はクラウドという主人公に備わったある種のカリスマを舐めていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クックック、あれだけの実験体を相手にこれほどの成績を残せるとは、中々に興味深いサンプルだ」

 

 実験体相手に立ち回る優秀なサンプル、確かクラウドとか言ったか、彼は中々に興味深いサンプルだ。

 元々はソルジャー適性がなく、治安維持部門に入るところを兵器開発部門に異動しただけの男だったらしいが、そこでソルジャー顔負けの能力を開花した。

 はっきり言ってソルジャーにも質の問題があり、いくらジェノバ細胞で与えられた力があれど、元々のスペックがなければ大した兵士にはなれん。

 

 ソルジャーというだけで停滞してる者など、しょせん大した価値はないのだ。

 魔晄適性はなくとも上位のタークスであれば、並みのソルジャーでは歯が立たないことはわかっている。

 しかし、それもタークスに限った話だ。

 私の処置もなしにこれだけの実験結果を出す一般兵は前例がなさ過ぎる、いくら装備を兵器開発部門で特別に作った物を使用してるとはいえ、中々に興味深い。

 

 私とはベクトルがいささか違うが、あの女も倫理観などという非常識な基準を設けてはいまい。

 もしかするとマテリア技術で人体を強化する研究を始めたのか、それとも人体を機械化したのか、いずれにせよ解剖することが可能なら何かしらの刺激になると考え、私にしては珍しくサンプルの名称を覚えていた。

 

 驚くことに装備こそ高性能で採算性など度外視で作られていたが、サンプル本人に特殊なことをした形跡は見受けられなかった。

 さすがに解剖することは出来なかったが、ソルジャーや一般兵などにも行っている検査を私自ら行った結果がこれだ。

 

 いずれにせよ貴重なサンプルには違うまい。

 魔晄適性も改めて調べ直してみたところ、なんと非常に高い判定でジェノバ細胞との親和性が認められた。

 

「宝条博士、実験体H0512の活動停止を確認。サンプルの実戦データ収集プログラムを終了します」

「いや、少し待ちたまえ。このままデータ収集は継続、実験体H0512の回収を終えたら次は別の実験体を試そう」

 

 最近ではウータイとの戦争も終わり、テロリスト相手の戦闘実験をする機会も減ったからな。

 社員を使ったテストも、ソルジャー部門は副社長が煩くて敵わん。

 昔はセフィロスの管理権限も私の方が強かったのだが、副社長のお気に入りになってからは中々面倒になってしまった。

 

「し、しかし、これ以上の連戦を続けてクラウド君に何かあれば」

 

 たかが社員で私の部下の癖に見当違いの発言をする奴だ。

 大方、サンプルに何かあれば責任問題に発展すると思ってるのだろう。

 センスのない奴め、科学的探究心よりも立身出世を優先するような俗物は要らんな。

 

「マイクを繋げろ、クラウド君聞こえるかね?」

『はい、問題なく聞こえます。ご要望通り、前半はマテリアを積極的に活用し、後半は物理主体の戦闘を心がけましたが良いデータは採れましたか?』

 

 無能な奴と違って彼は非常に協力的で助かる。

 データのために意図をくみ取って器用に戦い方を変える柔軟性。

 これはソルジャーやかつてのセフィロスにもなかったことだ。

 

「君が優秀なおかげでスムーズに実験が進んでいてね、提案なのだが追加で戦闘実験を行いたいと考えている、どうかね?」

『こちらは問題ありませんよ、もう一度実験体を相手にしますか? それともシミュレーションで?』

「実験体を相手にしてもらおうか。準備に少し時間がかかるから休憩に入ってもらっても構わんよ」

 

 無駄なやり取りをしないというのは実に心地よい。

 サンプルに知能など普段は求めてないが、協力的というのは非常にありがたいことだ。

 そうであればこちらも多少の融通を利かせてもいいと思えてしまう。

 

「そうだ、次の実験の用意が終わるまでセフィロスの当時の戦闘データをまとめた物を用意したが確認するかね?」

『ぜひお願いします!』

 

 セフィロスを強く意識してるのは戦士として当然だが、どうも対セフィロスを想定した訓練をしているらしい。

 本人もセフィロスを超えることを目標としていると公言しているが、これは良い起爆剤になるかもしれん。

 

 私のセフィロスは完璧な結果を出し続けてしまった。

 一人では日々の訓練や、実験での立ち回りに限界がある。

 ホランダーの失敗作共も、セフィロスの調整という意味では多少の存在意義があったものを……。

 

 すぐに劣化するような質の低い物しか作れない父親を持つと子供も苦労するということか。

 

 どうも良質なテスターに恵まれていないようだ、ならば私の方で用意してもいいだろう。

 

 今度行われる部門ごとの交流戦とやらにもセフィロスは出ないようだ。

 無論、レベルが低すぎるゆえだろうが、このサンプルがそれなりに結果を残せば奴も気に入るはず。

 私にしては珍しく、兵器開発部の女に塩を送ることになっているが、セフィロスの評価は変わらん。

 最終的には何の問題もない。

 

「他に必要なものがあればいいたまえ、可能な限り用意しよう」

『ありがとうございます、宝条博士』

「クックック、礼など不要だよ」

 

 こちらとしてもセフィロスの踏み台として立ち上がってくれるのは好都合だ。

 テスターとして雇われたという話だが、私のセフィロスのテスターにも相応しいだろう。

 

 マイクを切り、採取したデータに目を通すといらぬ声に邪魔される。

 この男、まだここにいたのかね?

 本来ならすぐにでも実験台にしてやりたいところなのだが、最近は会社が煩いからな。

 正直この男が反神羅と内通でもしていれば、会社も快く私に差し出してくれるというのに、ただ無能なだけの働き者というのは度し難い存在だ。

 

 そう言えば兵器開発部門も社員を実験台によく使っていたものだが、ある時から消しても問題ない奴らだけに焦点を合わせていたな。

 あまり研究以外に頭のリソースを削ぎたくないのだが、金を出す神羅には多少気を使うべきであろう。

 そう言った意味では、あの女は上手く会社に取り入っているのだろう。

 

「宝条博士にしては珍しくクラウド君を気にかけておられますね、今までのソルジャーを使った実験では資料を用意するなんてなかったのではないですか?」

「今までの知性の欠片もない連中よりも彼がマシというだけだ。聞き分けのいいサンプルだからな」

「確かにクラウド君話していても気持ちいいですよね、そして頭もいいからこっちもついつい話し込んじゃいますよ」

 

 そう言えば研究員たちもサンプルと会話する機会が多いようだな。

 たしかにきちんとした会話が成立するという面では、ただ腕っぷしが強いだけのソルジャーやタークスの野蛮な奴らよりも扱いやすいのだろう。

 

 こちらの研究内容があまり他部門へ流れるのは良くないのだが、大した内容をリークできるほどの奴はいないし特に問題もないだろう。

 いや、待てよ、そういった情報規制が出来ない奴らなら、実験台として処分しても会社に認められる可能性もあるな。

 

「クックック、確かに様々な利用価値がある優れたサンプルだな」

 

 いつだったか治安維持部門で彼を引き取りたいとハイデッカーが会議で話していたな。

 あんな単細胞な男の下に行ってもサンプルの良さを生かすことが出来ないだろうに。

 

「クラウド君が科学部門に来てくれたらいいんですけどね」

「無駄だよ、兵器開発部門の統括ががっつりガードを固めていてね。優秀なサンプルをよそに分けることなどしない」

 

 どうもセフィロスに執着しているようだから、戦闘データを用意したが、これがあればしばらくはこちらの実験にも付き合うのだろう。

 しかし、データにも限りがあるし、学習能力や意欲もあるようだから、用意した分などすぐに目を通してしまいそうだ。

 

 今度はセフィロスの戦闘データを再現させたシミュレーターを使わせてみるかな。

 無論シミュレーターごときがセフィロスを再現できる範囲には限界があるし、本物には及ばないのだがこちらでも有意義なデータは採れそうだ。

 ホランダーの失敗作共のデータも、破棄をプレジデントに依頼されたが私の手元に残してある。

 使えそうならそれらを提供してもよさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近宝条博士も変わったよな」

「そうそう、良質な実験データが手に入ってるし、実験自体も順調だから機嫌がいいんだよね」

 

 珍しく神羅の社内食堂でうどんを啜っていると、他の社員の会話を聞いてしまった。

 どうやら科学部門のスタッフらしく、嫌な名前を出すものだから、思わず耳が拾ってしまったようだ。

 

「クラウド君が来てくれてから助かるよ、おかげで嫌味を言われることも減ったし」

「なんか、宝条博士もお気に入りみたいだな。この前だって実験後に直接ヒアリングしてたし」

「あの人があんなことするなんて珍しいよな、昔セフィロスがいた時は最初のうちは自分で担当してたけど……」

「宝条博士お世辞にも人に好かれる性格してないもんな、セフィロスも全然協力的じゃなくてヒアリングにならなかったもん」

 

 あれはまだガスト博士が生きていて、宝条が一研究員だった時の話だ。

 何度か戦闘データを集めるためと戦闘をさせられたが、その時の責任者が宝条だった。

 昔からガスト博士と比べ、才能やセンスのない陰険な男で、当時から印象は悪く、俺が若かったこともあり反抗的な態度で接していた。

 すぐにヒアリングの担当者は別の人間に変わり、極力話さなくてもいいようになったはず。

 

「なんか宝条博士の接し方も、被験者に対する感じじゃないよな」

「そうだな、なんていうか不器用な父親みたいな感じ。実験にかこ付けて本人がしたい訓練を受けさせてあげてることもあるし、欲しがってる訓練データの閲覧とかも許可してるし」

「あの人が父親とか想像できないな」

 

 くだらない会話を聞いてるうちに、いつの間にか食べていたうどんはすべて胃の中に消えていた。

 俺は立ち上がり、食堂を後にする。

 

「どうも俺とは全然態度が違うようだな」

 

 なぜか口が動き、独り言をつぶやいてしまう。

 油断はできないが、クラウドが奴の危険な実験に利用される可能性が低いという話。

 円滑なコミュニケーションでクラウドが自分の身を守ってるだけという話。

 ただそれだけの話のはずなのに、なぜ俺はこんなにも……




カップうどんをそのまま出すわけにはいかないので、うどんを啜ってもらいました。

なんだかんだ宝条にとってセフィロスって特別なんだと思ってます
ファンクラブの会長とかしてるし、ゲームでも最後はなんだかんだ理由を付けて何かしたがってたし。

逆にセフィロスも親というものをどこか求めてるからこそ、ジェノバに執着してたんじゃないかなと。

宝条も利用価値があるサンプル相手なら、意外と称賛の言葉を欠かさないタイプです
(リバースでも自分の実験に自ら志願したローチェにはそんな態度です)

基本サンプルの名前など覚えませんが、長期的に実験に参加するクラウドの名前はさすがに覚えました。

次回投稿は6/26水曜日19時を予定しています。
もっと書き溜めしたいですが、中々進みません。
一話ごとの感想が凄く楽しくて、それを見ながら書いてるからですかね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。