【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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治安維持部門オフィス

 ひとまずスカーレットとして職場復帰したが、幸い誰にもばれている様子はない。

 どうやら、マテリア生成の実験中に魔晄が漏れ出し、その魔晄に当てられて意識を失い倒れたことになっていた。

 魔晄とは星の命、もしかすると、その時に俺の精神がスカーレットの体の中に流れ込んだのかもしれない。

 詳しく調べる気もないし、そんなことが仮説として出てしまえば宝条のサンプル一直線だ。

 

 それにその理屈で言えばソルジャーになるものはみんな魔晄を浴びてるし、毎年出てくる作業員の魔晄中毒者も別の世界からの転生者で溢れてしまう。

 まぁ、こうなった原因なんて確かめようがないし、今はそれよりも自分の未来のために出来ることを確認しなければ。

 

 兵器開発部門としての仕事はもちろん兵器を作ること。

 神羅のブランド力で大量に集めた兵力、そしてその中でもとびぬけた戦果をたたき出すエリート部隊ソルジャー。

 この二つは無論神羅の強みなのだが、彼らが使う銃や装備品、そして人に頼らない無人兵器などが兵器開発部門の作り出す神羅の兵力だ。

 育成に時間がかかるソルジャーよりも、金と材料さえあれば大量に生み出すことが出来、人間と違い時に空を飛び、時に大火力で戦場を赤く染める。

 

 早い話いかに効率よく人を殺せるか、そして人間では出来ない仕事を肩代わりさせるか。

 それが兵器に求められることなのだ。

 

 資料を読み込むと、すでにゲームで出てきた雑魚キャラにボスキャラが勢ぞろい。

 開発中で俺が知ってる姿と少し違うのもいるし、全然知らないようなメカもある。

 

「うん、中々悪くないな、とりあえず兵器に関しては特に問題ないか」

 

 今はウータイとの戦争も大詰めで、あらかた新兵器の実験や、既存兵器の有用性も示せている。

 戦争があれば科学は発展するというが、兵器開発何てまさにそれ。

 しばらくは仕事にも困らないし、会社に提出する成果にも困らない。

 

 あぁ、こんな成績を残し続けることが出来る仕事なんていつぶりだろう。

 おまけに、仕事を押し付ける上司はいないし、サボる部下もいない。

 環境だけ見れば、ホワイトとは言えないが、スカーレットの立場までくれば社会人として大成功を収めたといっていいんだろう。

 

 俺は一人治安維持部門統括、ハイデッカーのいるオフィスまでやって来た。

 社会人として組織で立ち回るには、根回しというのが重要だ。

 部下を好きに使える権力を持っているが、自分と同じ権限を持った人間が部門ごとにいるのだ。

 こうやって先に伺っておいて悪くない。

 

 統括用の個室の扉を開けると大柄で恰幅のいい体に軍服が似合う中年が座っていた。

 顔に一際目立つ大きな傷があり、立派な髭面と合わされば歴戦の戦士と見間違うような雰囲気を持つ男。

 この男こそ、神羅カンパニー治安維持部門統括、ハイデッカー。

 部下に厳しく、目的のために手段を選ばないと聞けば優秀そうだが。

 実態はパワハラで人望はまるでない、クラウドたちにいいようにされ、社長が変われば冷遇されるような男だ。

 

「スカーレットか、魔晄を浴びて倒れたと聞いていたがもう復帰したのか?」

「当たり前よ、ウータイとの戦争も終戦が近いし、私は次の仕事の準備で忙しいのよ」

「ガハハ! たしかに戦争が終わればしばらくは兵器の試運転先にも困るからな」

「それよりも、これが頼まれてたウータイ戦に導入する新兵器の目録よ、ご要望通りド派手な攻撃力でソルジャーなんて目じゃない戦果を上げられるわ」

 

 ソルジャーが生まれてから、その力を認められ治安維持部門とは別の部門として扱われるようになった。

 どちらも神羅の戦力なのだが、今まで神羅の戦力の大半を統括していたハイデッカーからすると、あまり面白くはない。

 ソルジャー部門統括のラザードが若くして成り上がり、今では神羅の広告として、治安維持部隊よりも一般市民からの支持を得ていることも理由なのだろう。

 

「この大事な戦争の重要な作戦をラザードが指揮するというのが気に食わん。確かにソルジャーの強さは認めてやらんこともないが、この戦争のさなか大量の離反者など出しおって、おかげで治安維持部隊にまで割を食った。この責任も取らぬまま、さらに手柄を立てるチャンスなど、プレジデントも甘すぎる!」

 

 少し興奮気味に机を叩くと、ハイデッカーの手のサイズに合う大き目のマグカップに入ったお茶を一気に飲み干す。

 俺はそれを横目で見ながら、資料をハイデッカーの前に置く。

 

 離反したソルジャーたちはジェネシス・コピーとなり、神羅に牙をむいた。

 もちろんミッドガルで仕事をしている治安維持部門にも少なくない被害が出たし、ウータイとの戦争中に余計なことで損失が出たのだ、ハイデッカーでなくても愚痴の一つも出るであろう。

 

「でも、ソルジャーが減ったおかげで、ウータイ相手に治安維持部門も仕事増えたでしょ、私の可愛い兵器ちゃんもね、キャハハ!」

「まったくだ、そのうちラザードが泣きついて来た時には、ソルジャー共も治安維持部門に統合して、俺が軍隊仕込みで管理してやる」

 

 どのみちラザードは失脚するし、ハイデッカーの管理下に置かれるようになるんだろうが、まぁいいか。

 

「ウータイでのあんたの活躍なんてどうでもいいの、今日わざわざ私が来たのはあんたの所に行く人材が欲しいからよ」

 

 もう一枚の書類をデスクに置く、むしろこっちが本命なのだ。

 

「『兵器部門専属テスターの立ち上げ』なんだこれは、兵器のデータは戦場から余すことなく届けてるし、今までも戦闘員を貸してやったこともあったろう」

 

 ハイデッカーはなぜこのタイミングで専属のテスターが必要なのかと頭を捻る。

 そう、この男ゲームでは無能を絵にかいたような男に見える。

 実際、度重なるパワハラや、思いついたような無茶ぶりで部下を振り回したり、失敗は周囲のせいにする上司にしたくない人間ナンバーワンだ。

 しかし、世界一の大企業の幹部にもなるとただ無能なだけの男が、まして治安維持部門統括という地位にはたどり着けない。

 

 この男、数字を見ることは出来るのだ。

 人を人と思わないし、扱いも乱雑のくせに、利益や数値化された人員を見て配分するバランス感覚に優れている。

 おかげで、部下の信頼は皆無だが、膨大な人数を回すことに関してはプレジデントも信頼している。

 それが出来るから、無茶な作戦でいくら人材が減っても補充できるし、時たま、そのワンマンな作戦である程度の成果も出すから重宝されているのだろう。

 人材を育成し、大事にこき使うという概念が、ハイデッカーと宝条にはない。

 世界中から入社希望者が集まる神羅だから、何とかなっているが、おそらくルーファウスに冷遇されるのもこのあたりが原因の気がする。

 

 スカーレットも同じようなもんだけどね、人のこと人と思ってないみたいだし。

 一応急に態度を改めるのも変だから、キツイ性格のままやってるけど、無駄なすりつぶしはしないかな。

 あっ、無能とかスパイとか敵対者は全然人扱いしないよ。

 反神羅派ってどうしてもいるし、兵器開発部門のこと調べてたら、試作品を横流ししてるバカがいたから、お望み通り試作品のテスターとしてハチの巣にしてやった。

 

「ウータイとの戦争が終われば実戦データを取る機会も減るでしょ。その後はリーブの奴と魔晄炉の建設がメインになってくると思うけど、兵器の方も作り続けなきゃいけないのよ。正直毎回申請してソルジャーやら戦闘員やらを呼ぶのも面倒だし、データ収集先を小型化してうちの部門で全部賄いたいのよ」

 

 一応表向きの建前だっておかしなことじゃない。

 それに、今まで借りた戦闘員だってたまに殉職扱いで書類上消えてるし、貸した者が帰ってこないよりもいいと思うぞ。

 

「しかしな、いくらなんでもそっちの専属にすると、補充が面倒だし、俺の管轄外の戦闘員が増えるのも困る」

 

 ソルジャーが出るまではすべての兵をハイデッカーが管理していた。

 タークスだって社長直属とはいえ、表向きはハイデッカーの下に付いてる。

 今ソルジャー部門に割を食らってる状況では、すぐにはいとは言えないだろう。

 

「そこも大丈夫よ。あんたの所から引き抜くんじゃなくて、ソルジャー試験を落ちて、あんたの所でも数合わせにしかならないような新人を一人貰うだけだから」

「それなら特に問題ないが、一人でいいのか?」

 

 ハイデッカーの疑問も尤も、一人位でテスターとして十分なのかとか。

 今までのスカーレットの人材の使い捨て感覚からその数では足りないと考えているのだろう。

 

「実戦をさせるわけじゃないし、武器が使えたらそれでいいのよ。テスター用ってことで兵器開発フロアにバトルシミュレーターも設置予定よ」

「はは~ん、そちらが本命というわけか。確かにシミュレーターはソルジャーと戦闘員が使う分しかなかったからな、テスターの建前で兵器のデータ処理用に使いたいわけか」

 

 人物そのものに価値を見出さない奴は、目先のわかりやすい利益で納得してくれるから助かる。

 思えば前職でも、カタログスペックだけ見て判断する奴や、都合のいい数字だけで判断する奴が居たな。

 数字を見ることは確かに重要なことなのだが、それだけを判断基準にするのも危険だ、相手としてはやりやすいが。

 

「いいだろう、これからも兵器開発部門には治安維持部門のために強力な兵器を開発し続けてもらわねばならんからな。入社試験を終えた奴らのデータがもう集まってるから好きな奴を選べ、だが一応俺にも確認させてくれ、優秀な奴を青田買いされたらたまらんからな。ガハハ!」

 

 そう言って手元のタブレットをこちらに渡す、中には最近行われた入社試験のデータがこれでもかと羅列されている。

 極秘情報なのだが、今の俺の立場なら何の問題もないだろう。

 

 花形部署のソルジャーの倍率が最も高いのだが、ここでは魔晄に耐えきれるかどうかが試験の要になる。

 適正があるものはソルジャーに、適正がない物は一分の望みをかけて戦闘員として治安維持部門に、才能があればそこからタークスに成り上がれるかもしれない。

 しかし、神羅カンパニーにはこの二大部門以外にも、俺が総括を務める兵器開発部門や、リーブが総括を務める都市開発部門もある。

 さすがに広告塔として利用してるソルジャー部門やそれに連なる治安維持部門には劣るが、それなりの数の入社を希望する人材がいる。

 なんといっても神羅カンパニーといえば世界一の大企業、そこに就職するだけで勝ち組なのだ。

 

 まぁ、下の役職にとってはブラックだし、課長クラスではミッドガルの上層ではなく、プレート下にある下層スラムに家を構えることも珍しくないんだけどね。

 

 赤いネイルが映える綺麗な指先でタブレットをタップし、滑らせるようにデータを読み込んでいく。

 まだゲーム開始の7年前ってところだから三十三歳なんだけど、ゲームのスタート時だと四十歳だからすっかり年増でおばさんになるよな。

 若い頃は美人だったろうに仕事ばかりだから恋人もいなく、後の女の子たちからおばさん呼ばわりされる。

 化粧も濃いのが似合うんだけど、それが若くないってのを物語ってるんだよね、ショック。

 

「そうねぇ、この子なんてどうかしら?」

 

 あらかじめ決めていたのだが、さもたまたま目についたように一人の男の情報をハイデッカーに見せる。

 

「クラウド・ストライフ……」

 

 ハイデッカーはごつごつとした指でタブレットを操作し、クラウドの試験データを確認する。

 

「魔晄適正なし、体力テストはこの歳にしてはかなり高水準だな。だが一般戦闘員が使う基本武装の銃の適正は可もなく不可もなく」

 

 故郷を飛び出して神羅に来たばかりなのだろう。

 過酷な自然環境であるニブルヘイムで育ったため身体能力が高いが、精神的に未熟でソルジャーの試験を突破することが出来なかった。

 精神こそ未熟なれど、非凡な才能を秘めているのだが、残念なことにソルジャー適正がない者はその時点で一般戦闘員向けのテストを受けさせられることになる。

 体力や思想テスト、そして実戦で使うことになる武器に関してだが、クラウドの得意武器のバスターソードではなく、普通の小火器に適性があるかどうかを見られる。

 一応扱いが出来るくらいであり、この段階ではクラウドの長所は歳の割に高い体力くらいしかない。

 数多くの入社希望者の中で誰の目にも留まらず、数合わせの入社としか見られないだろう。

 

「いいだろう、この程度の兵なら治安維持部門にいてもいなくても変わらん。体力はあるみたいだからせいぜいすぐに潰さんように使うんだな」

 

 デスクに置かれたペン立てから、高級そうな万年筆を手に取る。

 俺が持ってきた書類にサラサラとサインを書く。

 態度もデカいが書かれるサインもデカいな、いや、決して汚い字ではないから豪快と呼ぶべきか。

 

「これで融通してもらった新兵器の借りはチャラだな。ガハハ!」

 

 ハイデッカーの認識では、兵器開発部門が高性能なシミュレーターや新規予算をもぎ取るための取引として人事に少し口添えしたに過ぎない。

 本当は治安維持部門統括の権限で動かすことが出来る、クラウド本人が目的なのだと夢にも思わないだろう。

 

「せいぜいすぐに使い潰さんように注意しろよ、これ以上の人員補充はおいそれと出来ないからな」

 

 若い男をテスターとして苛め抜いてすぐに使い潰す未来が見えているのだろう。

 

 何はともあれクラウドゲット!

 まだセフィロス離反まで2年のリミットがあるし、この段階でクラウドを抱え込めたのは幸先がいい。

 さっそく、本人を呼びつけて個人面談と行きましょうか。

 俺の明るい未来のために頑張ってくれよクラウド。




都市開発部門のリーブのオフィスは同じ階で社員の顔が見渡せる場所にデスクがあるのですが、特別感が好きなハイデッカーとスカーレットのオフィスには自分専用の個室があるというオリ設定。

クラウドが神羅に来た時期は、ゲーム開始7年前の春にニブルヘイムを飛び出したのが公式設定でわかります。
なので同じ季節に入社した設定にしました。
春の新入社員ですね
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