【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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名も無き治安維持部門社員

 俺が治安維持部門に配属されてそこそこの年数が経つ。

 これと言って才能があるわけでもなく、先の戦争でも目立った活躍はしなかった。

 そんな俺がハイデッカー統括のそばで勤務出来ているのは、ひとえに地雷回避能力が高かったからだろう。

 怒られたらそれがどんなことであろうともすぐに謝る、絶対に口答えや言い訳はしない。

 意外にこれが出来ない奴がいて、少しでも反抗的な奴は覚えが悪いのだ。

 

 今では統括と他の社員との調整役になることも多く、ハイデッカー統括も部下に対する重要度の低い指示なんか俺に任せてくれる。

 一つ統括と上手く付き合うコツなのだが、それは機嫌のいい時に話しかけて、機嫌の悪い時は話しかけないことだ。

 それでも報告しなきゃいけない時に機嫌が悪いと、理不尽に怒鳴られるのでどうしようもないのだが……。

 

「ガハハ! みたかソルジャー共」

 

 ありがたいことにここ最近機嫌のいい日が続く。

 理由は各部門で行われるようになった模擬戦の結果だ。

 戦争が終わり、明確な敵がいなくなったわけだが、それでも日々の訓練は行われる。

 そこにソルジャー部門統括のルーファウス副社長が、他部門との交流会の一環として模擬戦をしないかと提案されたそうだ。

 

 ソルジャー部門と治安維持部門からは兵、科学部門からは生物兵器、兵器開発部門からは機械兵器。

 各部門が意地をかけて競うわけなのだが、どうせソルジャー部門に敵うわけがないと始まる前からみんなの士気は駄々下がりだった。

 

 英雄セフィロスに負けたのなら仕方がないと言えるのかもしれないが、新しく1stに昇格したザックスというソルジャー率いる部隊の噂は俺たちの耳にも届いている。

 なんでもソルジャー部門でも特に優秀な奴らが集まった部隊で、その強さはセフィロスお墨付きだとか。

 ただでさえソルジャーになれるような奴ら相手に、うちら治安維持部門の人間が直接戦闘で勝てるはずないのに、さらに上澄みのエリートと来たもんだ。

 

 模擬戦のたびに敗退し、ハイデッカー統括の癇癪に苛まれる日々が続くのかと治安維持部門では戦々恐々としていたが、救いの神が思わぬところから現れた。

 

「よくやったぞクラウド! 貴様の活躍は実に見事だったぞ!」

「ありがとうございます」

 

 ハイデッカー統括がクラウド君の背中をバンバンと叩く。

 

 クラウド・ストライフ、兵器開発部門実験部隊隊長。

 兵器開発部門スカーレット統括の懐刀として、異例の出世をした若き部隊長。

 最初こそ兵器のテスターとしての入社だったはずが、その才能で今では部隊の隊長を務める神羅の若きエース。

 ハイデッカー統括が気に入っている珍しい社員で、ソルジャー部門との模擬戦の立役者となった。

 

 どうも、兵器開発部門と治安維持部門で合同部隊を作ってソルジャー部門に挑戦しないかと統括自ら声を掛けたらしく、向こうから出向してきたのがクラウド君だった。

 

「無人兵器ばかりの実験部隊に、我が治安維持部門の優秀な兵たちを組み込んだらまさかここまでの成果を上げるとは!」

 

 無人兵器の運用だけでなく、それらと人間がどうすれば効率的に連携出来るのかを考えるのが部隊長としてのクラウド君が悩む課題だったらしく、治安維持部門との共闘はまさにそれを実践するいい機会だったとか。

 たしかに治安維持部門で無人兵器の運用なんかはするけど、肩を並べて戦ったりすることは今までなかったからな。

 

 ミッドガル第七歩兵連隊は比較的歳の若い人員で構成されており、クラウド君の歳を配慮してのことだろう。

 指揮官の子と会うこともあるのだが、女性なのに若くして部隊の指揮を任されただけあって優秀な子だった。

 

「ハイデッカー統括に推薦して頂いたミッドガル第七歩兵連隊の皆さんには感謝しています」

「ガハハ! そう謙遜するな。俺様の選んだ部隊が優秀な働きをしたのは事実だが、貴様の働きあってこそだ!」

 

 気分のいい時のハイデッカー統括は気前もいい。

 ミッドガル第七歩兵連隊には特別ボーナスが支給されるらしいし、恐らくこの後俺や他の側近たちも飲みに誘われる。

 高い酒や飯をタダで飲み食い出来るのは、統括と親しい者の数少ない特権だ。

 

「これが今回の模擬戦を自分なりに解析したレポートになります」

「おっと、相変わらず仕事が早いな。こちらからも参加者全員のレポートの提出を確認したら、兵器開発部門に届けさせよう」

「お願いします。やはり実際に戦った人たちからの意見も欲しいので……」

 

 クラウド君は本当に仕事熱心だ。

 常に他の部門の部隊と交流を持ち、そこで得た情報を治安維持部門にフィードバックしてくれるのだから頭が上がらない。

 

「そうだ、この前渡した神羅学校の新しい教科書にはもう目を通したか?」

「はい、とてもわかりやすくまとめられていました」

「そうだろう、そうだろう。なにせあの教科書は俺様が直々に監修しているからな!」

 

 神羅は学校経営もしている。

 幼いころから神羅の優秀な社員を育成するためなのだが、優秀な成績を収めたものはタークスかソルジャー部門に行くのが最近のトレンドで、治安維持部門が第一志望というのは中々聞かない。

 それでも、そのどちらも門を潜れず、大半が治安維持部門に入ることになる。

 俺が卒業したときはまだソルジャー部門はなく、優秀な奴はタークスに所属するか他の部門の幹部生として入社してたな。

 ちなみにその頃から宇宙開発部門は傾きかけてて、一番倍率が低かった思い出がある。

 

 こうやって過去の学校生活を思い出すのも目の前のクラウド君の歳のせいだろう。

 たしか今年で19歳、学校に通っていてもおかしくない年齢だ。

 それがたたき上げでここまで結果を残し出世しているのだから、本当に大したものだ。

 

「実はな、神羅学校では授業の一環として神羅社員と交流させていてな、早い話が現場の経験を新人たちに叩き込んでるのだ。例年は治安維持部門から何人か送り込んで天狗の鼻を叩き折ってやるのだが、どうだ、今年はお前さんも参加してみないか?」

「じ、自分がですか? 失礼ですが私は学校生活の経験がありませんし、ハイデッカー統括のように誰かに物を教えられるほどの人間じゃ……」

「ガハハ、さすがに俺ほど完璧に出来ることを求めん。毎年いらぬエリート意識を持つ学生が多少いるからな、学校の成績が社会ではそのまま通用しないことを新兵になる前に教える必要があるのだ」

 

 たしかに伝統なんだよな、学校卒業OBによる特別訓練。

 当然だがいくら戦闘訓練の成績が良くても、実際に最前線で戦ってる戦士に勝てるわけもなく、現実を教え込まれるんだよな。

 俺の代の時もかなりきつく扱かれた思い出がある。

 

「どうしても優秀な成績の奴は幹部候補生として扱われるからな、それは良いのだが一般入社の社員とのいらぬ軋轢を生むバカもいる。そいつらに現実を教えてやるためにも、歳が近いお前なら効果抜群だろう。我ながらナイスアイデアだ、ガハハ!」

 

 神羅は実力を求められるとはいえ、学校から上がって来た奴らは一般入社の人材よりも優秀なことが多いし、事務職や研究職でも出世する傾向が強いのは学校上がりの連中だ。

 そうすると周りを見下して距離感を履き違えるアホが毎年出てきてしまうのだ。

 

 ちなみに大体勘違いしたままの奴はすぐに消える。

 治安維持部門なら左遷、科学部門と兵器開発部門なら実験台といった具合に。

 ちょっと出来る程度のエリート意識やプライドなど、癖の強い統括たちの前では吹けば飛ぶ程度、藁の家みたいなものだ。

 

「俺の方で予定は組んでやるから、教えてこい。それに今回の模擬戦でわかったと思うが、人を従えて指示を出すのも一筋縄ではいかない。ミッドガル第七歩兵連隊がきちんとお前の指示を厳守したのだって俺の後ろ盾があってこそだ。そのうち兵器開発部門で部下を持つこともあるだろうから、今のうちに下の人間を教育する経験もしておけ」

 

 豪快にクラウド君の肩を掴み、ハイデッカー統括は豪快に笑う。

 意外に考えて行動してるんだけど、態度と時折来る癇癪でイメージ悪いよなうちの統括。

 こんな見た目だけど書類仕事が一番出来るもんだから、戦争で補給を欠かしたことはほぼない。

 裏方としては文句なく優秀なんだけど、本人が権力好きで前に出てくるからうざがられるんだよな……。

 

「そんなわけだ、スカーレットにも話は通しとくから勉強がてら行ってこい!」

 

 そして人の話を聞かないで強引に進める癖もあるんだよな。

 文句の一つでも顔に出したら、ここから凄味のある声で威圧され、ねちねち言われるから治安維持部門の慣れた奴らは絶対に意見しない。

 

「ありがとうございます! ハイデッカー統括のご期待に添えるよう、しっかりと学んできます!」

 

 戦闘力もさるものながら、年上を喜ばせるの上手いよなクラウド君。

 よくハイデッカー統括相手にあんな元気よく気持ちいい返事が出来るもんだ。

 自分の意見を通したい時の提案の仕方も、このプランを試してみたいのでお力添えお願いしますとか、上を立てて自分の意見を通すのが本当に上手い。

 

 スカーレット統括に上手く取り入ったって話はよく聞くけど、あっちの統括もハイデッカー統括とは別の意味で性格きつそうだし、よくやってると思うよ。

 俺には無理だわ、ハイデッカー統括の相手だけでも胃が痛いんだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイデッカーから神羅学校の学生向けに訓練して来いって要請が出てるわよ」

「はい、実は先ほどハイデッカー統括に模擬戦のレポートをお届けしたときに……」

 

 うわっ、その話をクラウドにして、兵器開発部門のオフィスに帰ってくるまでの間に要件まとめてこっちに送ってるってことだよね。

 報連相が早すぎるわ、いや、あんな外見で意外に細かいんだよな。

 

「まぁいい機会だわ。コレル魔晄炉の件も派遣したスタッフの報告だと順調に進んでるらしいし、しばらくは視察に行く意味もないでしょう」

「学校なんて初めてなので緊張します」

「勉強に関しては私が直々に詰め込んでるから、そこらの学生なんかに学力でも負けはしないわよ」

 

 ミッドガルで神羅に就職しようと思ったら、若いうちから学校に入ってそのままエスカレーター式に入社するのが定石だ。

 いわゆるキャリア組と呼ばれるようになる。

 

 ただし神羅は実力主義の部分も強いし、各部門統括の癖が強いからそのまま安泰ってわけではないんだけど、比較的出世しやすいかな。

 実際に体を使って戦うソルジャーやタークス、治安維持部門に配属を希望する学生は厳しい訓練を受け、実技ごとに優秀な者にはエンブレムが与えられる。

 魔晄が体に馴染むかどうかの適性で選ばれるソルジャーと違い、タークスがスカウトする基準だとこのエンブレムをどれだけ取っているかというのも評価基準らしい。

 

「もしクラウドが入学したらその年のエンブレムは総なめね」

「学業はスカーレット様に、実技もザックスとヴィンセントに鍛えられましたからね」

 

 少しはにかみながら答えるクラウド。

 ヴィンセントが来た影響なのか、少し肩の力が抜けたというか、二人きりの時でもあんまり固くなりすぎなくなったかな。

 うん、他の人がいる時は問題だけど、個人的にはこのくらいの距離感の方がこっちも落ち着く。

 

 時折ヴィンセントが帰ってくると模擬戦もしまくってて、ついに銃弾をバスターソードで切れるようになってしまった。

 ガードするのはわかるけど、切るってなんだよ……。

 

 クラウドといえばバスターソードということで、色んな武器を試してく中でデザインはザックスの物と同じようにしたんだけど、よくもまぁ、あんなデカい武器で銃弾を切るなんて器用な真似が出来るよな。

 

「少し柔らかくなったかしら、それも後輩の影響?」

「ヴィンセントは後輩扱いでいいんですかね? 先輩のような気もするし不思議な感じです」

 

 とりあえず上手にやっていけてるみたいでいい感じ。

 

 でも訓練ばかりさせてくのもあれだし、模擬戦でザックス率いるソルジャー部隊相手に勝てたとはいえ人を使った部隊運用に課題も見えて来た。

 今回借りたミッドガル第七歩兵連隊とは、ハイデッカーの指示あれど、クラウドがその戦闘力とカリスマでまとめ上げれた部分が大きい。

 でも毎回部隊を借りるわけにもいかないし、無人兵器だけの部隊だと痒い所に手が届かないというかやっぱり人の手が必要だ。

 

 ヴィンセントはタークスまがいの個人仕事を頼んでるし、誰か他の人員をクラウドの部隊に入れたほうがいいのかも。

 そういった意味では今回の学校へ行くのもいい経験かもしれない。

 仮に良い人材がいたらスカウトしてもらってもいい。

 

「もし自分の部隊に欲しい人材がいたら私に言いなさい、クラウドの部隊にも人が必要でしょうし、人を育て上げるのも隊長の役目よ」

 

 さすがに大勢来られても困るけど、そろそろ実験部隊的にも副官とかクラウドをサポート出来る人材がいれば安心出来るんだよな。




おかげさまで当作品の合計文字数が10万文字を超えました。
一般的な文庫本に必要な文字数らしく、この文章を読んでくださる皆様は本を一冊読むくらいの文字を見て頂いてるわけです。

私の小説にお付き合いいただきありがとうございます。

次回ですが7/3水曜日19時を予定しております。
そろそろ新キャラ追加しますよ!
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