何度目かもわからない重役会議。
ここ最近は順調に進む魔晄炉の運用状況をリーブが説明する時間と化している。
「以上のことから、コレル魔晄炉は順調に稼働しておりまして、魔晄のくみ上げにも今まで以上に無駄なく効率的にエネルギー生成するシステムが出来ています。また、コレル魔晄炉で得たノウハウはゴンガガ魔晄炉改修に反映していて……」
「うむ、今までの方式よりも少ない魔晄コストでこれだけのエネルギー変換を可能にしたのだ。我が社としても利益率が上がるのは良いことだ」
プレジデントが資料を読みながら満足げに頷く。
続いてハイデッカーが気分よく自分の手柄を報告する。
「ガハハ、これらの実績をよりクリーンになった神羅の魔晄産業として、大々的に宣伝してます。いままでアバランチの連中が主張していた星の命を吸い上げるでしたかな? それに対しても神羅は技術面から解決を図ってるとアピールし、一般市民のアバランチ合流に間接的妨害をしております。それらの裏付けは若の方から……」
「現在アバランチに潜入しているタークスの情報では、度重なる作戦の失敗で組織は疲弊し、神羅の情報操作で彼らの主張に懐疑的な団員が増えてきたようだ。星のためと協力する組織は減る傾向にあり、スポンサー離れも進み、今彼らを支援しているのは純粋な反神羅を掲げる組織や、降伏したウータイの兵士たちが主になっている」
まさかウェポン対策として進めたより効率的な魔晄炉計画がこんな風になるなんて思いもしなかった。
でもルーファウスはこの辺りも織り込み済みだったみたいだし、それと関係なくリーブも尽力した結果なんだよな。
リーブもかなり仕事がしやすくなっただろう、うちからも相当資材とか技術を提供してるし。
「うひょひょひょ、宇宙開発部門からは神羅26号よりパイロットが帰還、手に入れたデータや隕石は現在科学部門で解析中、ロケットのデータは兵器開発部門で有効活用してもらってるよ」
「補足しますと、ロケット打ち上げ成功でわが社のイメージアップや軍事力を他国に見せつけられた影響は大きいようです。先ほど話に出たウータイも表立って反抗する組織の縮小傾向が見られます」
国単位で見ればロケットの打ち上げって軍事ミサイルを想像できるよね。
もしあれが自分の国に打ち込まれたとしたら……。
そう言ったもしもをタークスたちが上手い事他国の奴らの不安感を煽り、神羅に表立って反抗しないように誘導してるらしい。
いや、本当にルーファウス仕事出来すぎるわ。
クラウドはもちろん切り札として手元に置いてるけど、ルーファウス一人でかなり解決しちゃってる。
「ふむ、魔晄炉も順調、そして反神羅組織も縮小している。あとは約束の地を残すのみだ……宝条博士、プロジェクトはどうなっている?」
今まで気分良く報告を聞いていたプレジデントの声が固くなった。
神羅の業績は順調なのだが、プレジデントが求める約束の地に関しては一向に前に進んでいない。
並みの人間なら、この声色で名指しされたら恐怖を覚えるものだが、あいにくと科学開発部門統括は並みの人間ではない。
「そのことですが。約束の地に関するプロジェクトはいったん休止した方がいいかと存じます」
「……どういうことか説明してもらおうか」
ドスの利いた声でプレジデントが宝条を睨みつけた、その眼力にパルマーなど怯みっぱなしだが、宝条は平然とした態度で続ける。
「どうもこうもガスト博士の仮説がそもそも間違っていたのです、ジェノバに約束の地を探す能力はありません。なのでジェノバに求めることは約束の地ではなく、強い戦士を生み出すこと、現にソルジャー計画は神羅の戦力を飛躍的に上昇させ、会社に多大な貢献をしています。ねぇ、副社長?」
宝条が話を向けると、ルーファウスが頷きながら答える。
「そうだな、現在の神羅が得ている利益は各部門がそれぞれ努力してきた結果だが、特にソルジャーに関しては科学開発部門の功績は大きい。ソルジャーがいたからこそ我々はウータイとの戦争に勝利し、プロパガンダも成功させた」
ルーファウスも宝条に乗っかり、科学開発部門の貢献を後押しした。
しかし、それだけでは長年の夢を諦め切れないのだろう。
プレジデントは第二の矢を放つ。
「わかった、ガスト博士が提唱した仮説では約束の地へたどり着けないことも、科学開発部門が我が社に貢献してる事実も認めよう。しかしジェノバではなく、本物の古代種を発見し、監視しているだろう。彼女を使えば約束の地へ辿りつくことは出来るのではないかね?」
そう、神羅の膝元にエアリスがいちゃうんだよな。
現在もタークスがそれとなく監視をしていて、その気になればすぐに捕まえることが出来る。
「そうですね、彼女が自主的に我々に協力してくれるなら、一通りの検査をすることも可能ですが……なんせ現在確認できる唯一の貴重なサンプルだ。あまり手荒な真似は出来ませんからねぇ」
「ソルジャー部門としても手荒な真似はさせません、現在古代種の生き残りにはうちのソルジャーを護衛として日常的に付けています。時間はかかりますがそのうち我が社に自分から貢献してくれるでしょう」
ザックスが恋人としてエアリスと付き合ってるって、実は有名な話なのよね。
ファンクラブの広報でも流れて来たし、会社の人間なら誰でも知ってるのだ。
スラムの花売りとエリートソルジャーの恋物語、もちろんこうやって噂を流してるのはタークスだ。
万が一エアリスを強引に捕まえようとするならば、ソルジャー部隊を率いる隊長のザックスが黙っていないし、恐らく部下たちが一斉に離反する可能性がある。
それに約束の地という夢物語よりも、現実の恋の方が人間は儚いものとして認識しやすい、社員たちも感情的にはザックスの方を応援したいだろう。
現実問題として、過去に起きたジェネシスやアンジールがソルジャーを引き連れて離反した影響は無視できない。
もし同じことが起これば、せっかく順調にいっている神羅の業績に多大な影響が出てしまう。
「ガハハ、これは若に一本取られましたなプレジデント。なに、焦ることはないすべて順調なのです、そちらの計画も長期的なものとして一度見直してはいかがでしょう?」
「キャハハ、ハイデッカーにしては良いこと言うじゃない。約束の地なんてものが無くても現状神羅は問題ありません、ここでいらぬリスクを取る必要もないですわ」
「うひょひょ、やっぱり若い人の恋路は邪魔しない方がいいよね。昔から人の恋路を邪魔する奴はチョコボに蹴られちゃうって言うし」
「魔晄炉の運用も順調ですし、これらのノウハウを生かせばプレジデントが構想していたネオミッドガルを現状のミッドガルを基盤に作ることも可能かと思われます」
「クックック、無論科学部門ではソルジャー計画からさらに会社への貢献を考えております、手始めにソルジャーをより低コストで量産……魔晄中毒者の治療法も研究中です」
すべての統括がプレジデントの意見に否定的な言葉を並べる。
全員の思想は違うのだが、この時ばかりは全員の意見がぴたりと一致する。
「それがお前の選んだ会社のビジョンか……ルーファウス」
「あぁ、神羅は約束の地などなくとも、世界に君臨できる。新しい時代のためにも今は足場を固める時だ、親父」
プレジデントには今回の根回しをしたのが誰かなんてお見通しだ。
まっすぐにルーファウスを見つめながら、プレジデントはゆっくりと頷いた。
「いいだろう、お前がどれだけ我が社に貢献したか、そしてどれだけの結果を出したかは資料を見ればわかる。せっかく息子が経営者として一皮向けたのだ、神羅の未来を思えばわしが折れるべきだな」
「今日は珍しく素直だな」
「馬鹿言え、目先の利益ではなく長期的な視点で判断しただけだ。それに約束の地も諦めん、古代種の女が協力的になれば細心の注意を払いながら探索は続けなさい」
「あぁ、俺も何度か会ったが、あの分なら神羅に対してもザックスを通じて協力してくれるだろう」
おぉ、出来ちゃった!
プレジデントの約束の地への執着をひとまず押さえちゃったよルーファウス!!!
これで平和な世界への第一歩が踏み出せちゃった。
なんだろうこの気持ち、大きなプロジェクトをやり遂げた達成感というか。
甥っ子がすげぇ仕事を成功させた感じというか……。
いや、いくら俺が年増だからってルーファウスが甥っ子とかないわ。
なんか感動しすぎて変なこと考えてた。
「それで俺から提案したいのだが、地下にあるディープグラウンドの件について……」
「キャハハ、お疲れ様。貫禄が付いたんじゃない、次期社長さん」
「ガハハ、プレジデント相手に一歩も引かずに要求を飲ませるなんて、若の成長は留まるところを知りませんな」
重役会議が終わり、親父が先に部屋を出た後、残っていたキャハハとガハハのコンビが話しかけてきた。
「ふん、当然だ。これだけ根回しして業績も上げてるんだ、親父だって無下にはしない」
有能なのはわかるが、この笑い声はどうにかならんのか。
「うひょひょ、いや~険悪なムードにもならなくてよかったよかった、安心して紅茶を楽しめたよ」
「クックック……どちらにせよ、約束の地などというものに余計なリソースを割かずに研究が出来るなら、私としては会社に貢献しやすいですな」
どうしてうちの重役たちは癖が強いというか、喋ってて疲れるんだ。
一人一人相手ならまだいいが、全員いっぺんに話すと疲れてしまう。
「副社長のおかげでミッドガル編成の予算を十分に頂けましたし、既存の魔晄炉改修計画も順次進んでます」
まともなのはリーブだけか……いや、あの女も普段話す分には一番話が伝わりやすいのだが、どうも気が強くなるとあの口癖が出てくる。
「とりあえずディープグラウンドに関しては……」
「えぇ、当初の目的通りソルジャーの治療をするという目的で既存のサンプルは使い潰していいのですね?」
「かまわん、既存のソルジャーで戦力は十分だ。いらぬ厄ネタを内部に抱える必要はない。ソルジャーの安定化や魔晄中毒に対する治療のために役立てたほうがマシだ」
始末するというのもいらぬ反感を買いやすいからな。
ならば治療という目的で宝条博士に預けてしまうのが適任だろう。
その過程でどれほどの数が生き残れるかは知らんが、少なくても医療の礎とはなろう。
戦力としても今はソルジャー部門に治安維持部門、さらには兵器開発部門の兵器とそれを運用する実験部隊で十分なのだ。
神羅から離反者を出さないためには、少々内部をクリーンにする必要がある。
セフィロスやザックスもあまりこういった非道な行為を、会社が推進することに良い顔はしないだろう。
内部の人間が外に出ることの面倒さはジェネシスやアンジール、そして技術を流出させたホランダーの件からも明らかだ。
アバランチも反神羅を掲げた組織が合流して大きくなったが、そもそもの出発点は星の命を守る星命学という学問だ。
ある程度分かりやすく、民衆の理解も得やすいバックボーンへの対策としても、神羅がこれから民衆にアピールすべきはクリーンなイメージだろう。
魔晄炉はライフストリームと共存出来る、魔晄が引き起こす中毒症状も神羅が治療法を確立すればライフストリーム絡みの反神羅派の動きは鈍るだろう。
「宝条博士、安定したソルジャーの供給も目途はついてると報告を受けているが?」
「えぇ、本来持っている資質とは別に、心理的要素がジェノバ細胞に作用することが新たにわかりました。なのでソルジャー適性を測る前にある程度の訓練を候補生にして頂ければ安定したソルジャーの供給に繋がるでしょう」
「わかった、セフィロスと相談してそのあたりは一度こちらで調整し直そう」
「それとソルジャー部門からホランダーが作り出した失敗作のサンプルを相当数提供頂けましたからな、私の発見したS細胞と組み合わせて、これまでよりも質の低い劣化品でよければすぐにでも量産が可能です」
「ふむ、質の悪さとはどの程度かね?」
「せいぜい3rd程度、本人の資質があれば2ndまでといったところでしょうか」
ふむ、すでに個人としてはセフィロスやザックスで十分だし、部隊として運用することを考えると、ある程度使い物になるなら数を揃えたほうがいいか。
正直2ndクラスの実力があれば兵士としては十分すぎるくらいだ。
「そうだな、それでもかまわない。セフィロスほどの傑作が早々出てくるとは私も思っていない」
「クックック……そうでしょう、セフィロスを超えるソルジャーなど出てくるはずもないですからな。精々セフィロスの手を煩わせない程度の仕事ができるソルジャーを量産する方向にシフトしていきましょうか」
「あら、相変わらずセフィロスに自信満々ね」
スカーレットが宝条に突っかかる、このやり取りも慣れてしまったな。
「まぁ……私のソルジャー計画の最高傑作だからね。君の所のクラウド君もそれなりに認めてやってもいいが、セフィロスを超えるのは難しいだろう」
「ふふっ、私のクラウドがいかに優秀かよくお分かりのようで」
「当たり前だよ、サンプルの特性を見極める目は科学者として常に養われるべきだからね」
宝条がセフィロスを褒めれば、スカーレットがクラウドを褒める。
互いに一人の人間を強化するという点ではライバルなのだから、自分の成果を張り合うのは構わないが、付き合わされるこちらの身にもなって欲しいものだ。
ギリギリまで用事があり、後書きを書き込む時間がありませんでした
明日も更新予定!
いつも皆さん見てくれてありがとう!