「一気に色んな所を見て回ったから疲れてない?」
「ううん、全然へっちゃら。それに普段ザックスが働いてる場所を見られて楽しいよ」
私はザックスと一緒に神羅ビルの中を一通り歩き回ってる。
本当はお父さんやお母さんのことを調べるために、私が当時住んでた部屋とか昔の資料なんかを探す予定だったんだけど、せっかくだから二人で色んなところを見て回りたかった。
色んな物が置いてある展示室や、昼間なのに満天の星を見られるプラネタリウム。
普段ザックスたちが食事をしてるところでお昼を食べて、すっかり観光を楽しんでしまった。
たまにはこんなデートも良いよね。
「あっ、いけねぇ、もうこんな時間だ。セフィロスを待たせちまう!」
「せっかく時間作ってもらってるのに待たせちゃ悪いね、急ごう」
私のお父さんが昔働いていた科学開発部門。
そこに入るのには色んな許可が必要みたいで、実は少しだけ入るのが怖い。
小さい頃お母さんがずっと通い詰めていた場所。
そんな私のことを気遣ってザックスがずっと一緒に居てくれるし、今日のためにセフィロスさんもお休みを取って一緒に見て回ってくれるらしい。
セフィロスさんの空いてる時間に約束をして、待ち合わせ場所で合流するはずが、時計を見るのをすっかり忘れちゃった。
だって、エントランスから見える夜景があまりにも綺麗で、つい見とれちゃったんだもん。
ザックスと私は慌ててエレベーターで目的の階まで上がると、そこにはもうセフィロスさんが待っていた。
「悪いセフィロス、待たせちゃったか?」
「これが訓練の日ならスクワット100回と言ってやりたいが、彼女をエスコートしてるなら特例で許してやる」
この人がセフィロスさん。
ザックスから話には聞いていたけど、こうやって会うのは初めて。
でもなんだか不思議な感じ、初対面のはずなのに、どこかで会ったことがあるような。
ザックスが私とセフィロスさんの間に入ると、私たちを科学部門へと案内してくれた。
すれ違う研究員の人たちも笑顔で挨拶してくれて、私が想像していたよりずっと優しい雰囲気の場所だった。
「どうしたエアリス?」
「ううん、なんか思ってたのとイメージが違う感じで」
私はザックスにそう伝えると、彼はニカッと笑い。
そして私の頭を撫でながらこう言ってくれた。
「大丈夫だって、俺が傍にいるから何かあっても平気平気、おまけにセフィロスまで一緒なんだから」
「おいおい、俺はオマケか」
ザックスの軽口に、セフィロスさんも笑ってる。
「私も全然大丈夫! あれ、見て見て、あそこにクラウドがいるよ!」
「よぉ、クラウド!」
「ザックス!」
科学開発部門にチャドリーを送ろうとしたら珍しい先客がいた。
「あれれ、ザックス先輩のお隣は噂の彼女さんですか?」
「そっか、イリーナには紹介したことなかったな」
「初めまして、私エアリスって言います」
歳も近い女の子同士、話も合いそうだし俺やザックスがあれこれ紹介しなくても仲良くなれそうだ。
どうも年頃の女の子というのはよくわからないが、すでに握手を交わし、なんだか盛り上がっている。
「久しぶりだなクラウド」
「セフィロス!? 珍しいなこんなところで会うなんて」
ロケット村で一緒になって以来だ。
俺は割と色んな部門に足を運ぶが、ソルジャー部門だけはあまり用事がなく、こうして会うのも久しぶりな気がする。
「今日は彼女の護衛任務だ」
顔をエアリスの方に向けそう答える。
「科学開発部門を女性一人で歩かせるわけにもいかないからな、それにここの統括がエアリスを見つけて何をするかわからん」
「エアリスを?」
「実は私のお母さん、古代種って呼ばれてる種族で……」
エアリスの話を聞くと、どうやら母親が古代種でその子供であるエアリスは古代種の血を引く唯一の生き残りらしい。
スカーレット様の下で星命学も一通り学んだが、星を開拓した種族で、神羅が魔晄を発見するずっと前からライフストリームを認知し、そこから知識・技術を得て繁栄していた種族のようだ。
隕石の衝突と共にその数を減らし絶滅したとされていたが、最近コスモキャニオンから発表された新説では、その後違う種族との生存競争に負けて絶滅したと言われている。
「行きついた者全ての人間が安らげたり至上の幸福が眠るとされる約束の地、神羅もそこを探すことが一つの目標になっている。エアリスは星の声というのを聴けるらしくてな、万が一宝条に捕まればどんな目に合うかわからん」
「星の声が聞こえるっていったいどんな感じなんですか?」
イリーナがエアリスに尋ねる。
「なんていうのかな……そのまんま星の声が聴こえるというか。普通の人には聴こえない声が聴こえるというか」
「今の学説では魔晄、つまりライフストリームに還ったこの星の人々の記憶が聞こえるとされるのが一般的な解釈ですね」
今まで話に参加していなかったチャドリーがそう答える。
「あまり見ない顔だが君は?」
セフィロスが質問するが、エアリスを庇うように前に立つその姿は明らかにチャドリーを警戒している。
科学開発部門にいい顔をしないのは知っていたが、まさか所属してるチャドリー相手にここまで警戒するとは。
いや、もしかすると宝条博士が作ったサイボーグであることを看破しているのだろうか?
一目見て正体に気が付いたスカーレット様はともかく、俺やイリーナではいまだにチャドリーが人間にしか見えない。
しかし、スカーレット様が兵器開発部門に出入りすることを認めているし、俺たちの訓練をシミュレーション周りでサポートしてくれてる。
スパイとして情報を宝条博士に流してる可能性はもちろんあるのだが、本人の自我は宝条博士が設定したと思えないくらい素直でいい子だ。
すっかり俺やイリーナとも馴染んでしまった。
「突然失礼しました、僕は科学開発部門研修生のチャドリーと申します。今はクラウドさんたち兵器開発部門のお手伝いをさせてもらってます」
「へぇ、私より小さいのに偉いんだね」
「わ、エアリスさん、突然頭を撫でないでください、恥ずかしいです!」
「ふふっ、ごめんね。頑張ってる人を見たらつい」
「そうですよ、チャドリー君すごく頑張り屋さんなんですよ、イリーナお姉ちゃんも撫でて上げる」
エアリスに頭を撫でられ照れているチャドリーをイリーナがさらに揶揄うように頭を撫でる。
少しセフィロスの態度が露骨すぎて、おかしな空気が流れたが、照れるチャドリーと二人のおかげで和やかな雰囲気になった。
(先輩、セフィロス、様子おかしい、どうしますか?)
俺にだけ見えるように背中に手を回し、サインでイリーナが俺に指示を仰ぐ。
イリーナの言うように、エアリスが古代種の末裔だからなのか、それともエアリス自身に何かあるのかはわからないが、やけに警戒しているように見える。
しかしここで俺が割って入ってもさらにおかしな空気になるし、今は様子を見るしかないだろう。
「そう言えば、科学開発部門に用があったんじゃないか?」
「おっ、そうだな。よかったらクラウドたちも一緒に付いてきてくれないか? 知り合いがいたほうがエアリスも安心出来るし、ほら、宝条博士って見学者に絶対優しくないだろ」
「あぁ、あまり部外者に親切にしてくれるタイプではないな。わかった俺たちも一緒に付いてくよ、同性のイリーナがいた方が安心出来るだろうし」
エアリスは宝条博士のことを知っているのか、少し怯えているようにも見える。
少なくとも俺たちがいれば宝条博士も無下にはしないだろうし、ここはザックスの提案に乗ったほうが良さそうだ。
「皆さん、私のためにありがとうございます」
エアリスが俺たちに向かって頭を下げる。
彼女がザックスの彼女なことは神羅内では有名な話だから、科学開発部門の人たちが多少倫理観のネジが緩いとはいえ手を出すとは思えないが、彼女が安心出来るならザックスには普段世話になってるし、エアリスの頼みは聞いてあげたい。
「それじゃあみんなで科学開発部門の見学にレッツゴー!」
「あまり大声出して仕事の邪魔はするなよ、ザックス」
ザックスとセフィロスが先頭になって俺たちは科学開発部門の中に入っていく。
エアリスの隣にはイリーナが付いていてくれる。
チャドリーと二人の後ろを歩き始めると、服の袖を掴まれこっそりと耳打ちされる。
(クラウドさん、もしよければ僕の方で宝条博士に内緒でエアリスさんの知りたいことを探すお手伝いをしてもいいですか?)
(いいのか?)
(はい、クラウドさんたちがあまりにも早く僕の用意したシミュレーションをクリアするので、宝条博士にこっそり逆らってもバレないようになりましたし)
チャドリーは宝条博士が研究に必要な能力を極限まで高めた代わりに、自分に逆らえないようプログラムも施していたらしい。
万が一スカーレット様に解除されないように外部からのアクセスに対して強力なプロテクトのオマケ付きで。
しかし、チャドリー自身がプログラムを解除することはさすがに想定されてなかったらしく、俺たちと接触を続けるうちにかけられたプログラムを打ち消す仮説を思いついたチャドリーはそれを実行した。
俺とイリーナが戦い続けたシミュレーション、クリアするたびにチャドリー自身の機能を向上させるパッチを当て続け、先日プログラムを打ち破ったのだ。
命令にない行動は取れないようにされていたが、元々俺の強くなる可能性を独自に研究するように命を受けていたのでその制約の中で動いていたチャドリーの作戦勝ちなのだろう。
今も表向きは宝条博士に従ってる振りをして、情報を適度に流しているが、いつでも逃げ出すことも出来る。
それでも科学開発部門に所属してるのは、今の立場が楽で、俺たちに協力がしたいことと、生みの親である宝条博士をそこまで嫌ってないからだ。
意外にも宝条博士との関係も悪くないらしく、他のスタッフより重宝されてるようだ。
(その代わり、またイリーナさんと一緒に食べた食事のデータを分けてくださいね)
サイボーグで飲食は出来ないのだが、データを用意すれば仮想空間でその味を楽しめるらしい。
俺とイリーナが食事に行くたびに専用の機械でデータを集めている。
スカーレット様に事実を伝えたが万が一の時には兵器開発部門で匿う約束も取り付けて頂き、チャドリーはすっかり兵器開発部門に馴染んでいる。
今ではスカーレット様と二人で新兵器の開発や、新しいアイデアを出し合っている。
少し羨ましいが、スカーレット様の役に立っているし、俺も世話になってるからな。
(わかった、今度二人でデザートバイキングに行く予定だから、全種類のデータを取ってくるように頑張るよ)
(わぁ! 甘い物って良いですよね、皆さんが研究後に食べたがる理由を理解しましたよ)
チャドリーのためにも一緒にあちこち食べ歩きましょうとイリーナに誘われてるが、俺が支払いをしてるからな。
まぁ、イリーナも頑張ってるし、二人に対しての普段の礼や、上司として俺が財布を出すのも当然だろう。
「ねぇねぇ、二人で何のお話ししてたの?」
「クラウドさんとイリーナさんが今度デートで行くデザートバイキングの話を聞いてました」
「わぁ、二人は付き合ってるんだ! いいなぁ、私もザックスと行ってみたい、どこのお店か教えて!」
「了解! ザックス先輩に後日メールで送っときますね、全種類制覇してくる予定なので、おすすめ情報も追加で!」
「ありがとうイリーナ!」
ザックスにねだるエアリスと、会話を盛り上げるイリーナ。
どういうわけかセフィロスがチャドリーを警戒してるからな、後で俺かイリーナがエアリスにここに来た目的を聞けたらいいんだが。
それと会話を盛り上げてくれるのだが、流れで俺とイリーナが付き合ってることにエアリスの中でなってしまった。
誤解を解きたいとこだが、話の主導権を完全にエアリスが握ってしまい、イリーナに質問攻めをしてる。
「まったく、女の子ってどうしてこんなにも恋の話が好きなんだろうかね」
「それが女心というものらしい、俺も詳しくは知らないが、昔の友が良く俺に語っていた」
「セフィロスの友か……俺としてはその人のことも興味をそそるな」
「そうか、クラウドとは面識がなかったな。これも箝口令が敷かれているが別に話してもいいだろう、俺も親友の自慢をたまにはしたいしな」
そこでザックスからも聞いていた、ジェネシスとアンジールという二人の先輩ソルジャーの話を聞くことが出来た。
名前だけは宝条博士からも聞いていて、シミュレーションで戦ったことはあるが、やはり同僚だったセフィロスの話に出てきた方がずっと親近感が湧く。
「イリーナはいつからクラウドのこと意識したの?」
「もう、私のことばかり、ザックス先輩と出会った時のこととか、聞かせてくださいよ」
「あ〜もう! 二人ともその話はまた今度な! それよりも後輩にどんどん彼女が出来るのは英雄さんとしてはどう思いますか?」
ザックスが声をかけるが、セフィロスは何でもないように答える。
「微笑ましくていいことだ、ソルジャーに限らず戦闘員は危険と隣り合わせ、大事にするんだぞ」
「いや、俺としてはセフィロスに好きな人がいないとかの方に興味あるんだけど、好みのタイプとかないわけ?」
「そうだな……俺と互角に戦える人がいれば自然と興味も湧くかもな」
「それって訓練相手としてじゃん」
セフィロスの中でもイリーナと付き合ってることになってしまった。
あまり会うこともないし、もしかしてこれは誤解を解くタイミングを完全に逃したような気がする……。
お知らせ!
作中でエアリスとセフィロスの台詞では星の声を聴くになっていて、他の人の言葉では聞くになってるのは誤字ではありません、星の声を聴くことが出来る人はこの表現で、聞けない人は聞くの表現にしてます!
ネタバレっぽいですが、書いておかないとみんな修正したくなりますよね。
チャドリーもネタバレ気味ですが、必要な設定なのでここで開示。
是非皆さんリメイク版をお楽しみください、楽しいですよ!
ついに台詞付きで登場エアリス!
これにて一週間連続更新FF7祭りを終了とさせて頂きます。
おかげさまでたくさんの感想、評価やお気に入り登録、ありがたいことにランキングにも載せて頂きました。
すべて皆様のおかげです、大変だったけど連続更新やってよかったです。
次回更新日は通常なら7/10になるはずですが、今回一気に更新したのでもしかしたらお休み頂くかもしれません。
その場合7/17に再開したいのですが、予定は未定ということでどうかご理解ください。