【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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クラウド・ストライフ

「本日付で兵器開発部門に配属となりましたクラウド・ストライフです!」

 

 俺のオフィスで研究員たちの前で元気よく挨拶をする少年はどこか緊張した面持ちだ。

 それもそのはず、治安維持部門であれば同世代がそれなりにいるはずだし、少し歳が上の先輩に囲まれながら、大人の上司に扱かれているはずなのだ。

 しかし、兵器開発部門は基本的に研究者がほとんど、若いスタッフでも最低で二十前半といったところか。

 その中に突然同期もなしに十四歳のまだ子供と呼べるクラウドが混じっているのだ、緊張して当然だ。

 

「今日からうちで開発する兵器のテスターとして所属することになったけど、一人しかいないから直属の上司は私になるわ。研究施設に研究員じゃないのがうろちょろするけど、治安維持部門やソルジャー部門の部外者じゃないから、一応顔と名前だけ各自覚えておくように」

 

 俺がオフィスに並んでる部下たちにクラウドを紹介すると、全員が一斉に返事を返す。

 突然の新しい役職に、見慣れぬ新入社員。

 戸惑いもあるのだろうが俺の一声で全員が疑問を飲み込んだようだ。

 

 あぁ、しっかりした権力って気持ちいいな。

 前の係長クラスでは、部下なんて名ばかりだったし、俺のこと何てなんとも思ってないでやんの。

 それに引き換え今の俺は会社の重要部門の統括スカーレット。

 誰もが俺の話にしっかりと耳を傾けるし、時に恐れる。

 権力は人を腐らせるなんて話もよく耳にするが、支配する欲というのがこんなにも気持ちいいなら人は腐敗していくのも当然なのかもしれない。

 

「顔見せ終了、クラウドは私の後を付いてきなさい」

「はい!」

 

 元気のいい返事と共に俺の後を金魚の糞のようにしっかりと付いてくる。

 個室の扉の前で俺が止まると、一緒にピタリと動きを止める。

 

「私の代わりにドアを開けなさい、私直属の部下になったんだから、この会社で一番に優先すべきは私よ。まずはそれを頭に叩き込みなさい」

「わ、わかりました!」

 

 こうすることの意味はいくつかある。

 まずは、しっかりと上下関係を叩き込むこともそうだし、この会社で他の総括や社長よりも俺を優先して動いてもらわねば困る。

 そして一人の新入社員を俺の直属にしたのだって、後ろ盾をはっきりとさせ他の奴らからのちょっかいを出させないことにも繋がるだろう。

 ゆくゆくは俺の懐刀として俺の将来を守ってもらうためには、今のうちから戦闘以外のことも教え込んだ方がいい。

 

 クラウドが開いた扉を潜り、オフィスにある一般社員が使う安価な椅子とは比べ物にならない高級感あふれる椅子に座る。

 

「さて、人事からどんな説明を受けて来たかしら」

「はっ! 自分は兵器開発部門で作られる新兵器のテストをするためにここに配属されました!」

 

 目の前ではきはきと答えるクラウドも見てると何とも言えない幸福感に包まれる。

 もちろん、大好きなゲームの主人公が目の前にいるという高揚感。

 歳は若いが、イケメンでそりゃ主人公になるような容姿だろうと納得である。

 それでいて、やる気がある新社会人というのがういういしい。

 自分にもこんな時代があったと思い出すし、今までの俺の部下にはいなかった。

 

「楽になさい、そんないちいち返事にやる気を籠められちゃ、こっちまで疲れるわ」

「し、失礼しました」

 

 さっそく本題に入ろう。

 

「クラウド、あなたセフィロスみたいな英雄になりたくてここに来たんじゃない? でもソルジャーの適正試験を落ちて、それでも夢諦めきれず治安維持部門で一般兵になろうとした。正直に答えなさい」

「そ、その通りです。セフィロスのようなソルジャーになるために神羅に入りました」

「私の下でその夢叶えてみない? 故郷に錦を飾って帰れるくらい特別な存在に」

「えっ?」

 

 突然の申し入れに、思わず素の返事を返されてしまう。

 

「私はあなたの素質を見込んでるのよ、きっとゆくゆくはセフィロスを超えるくらいの男になれるわ。そのために私直属の特別な部下にしたんですもの」

 

 まずはその弱い心を補強していかねばならない。

 そのためには実績と、それを認めてくれる他人が手っ取り早い。

 

「テスターっていうのはあくまで表向き、まずはその立場でソルジャーが受ける戦闘シミュレーションを受けまくって結果を出してもらうわ。そして他の部門の人間にもその価値を示してもらう。喜びなさい、誰も見抜けなかったあなたの才能を私が最大限に引き出してあげる。これはね未来への投資なの、私に受けた恩を倍にして返しなさい。返事は?」

「光栄です、スカーレット統括」

「統括は他にもいるし、長ったらしいわね。様付けでいいわ。どうする、私の下でもう一度夢を叶えてみる気概はある?」

「よろしくお願いします、スカーレット様!」

 

 頭を下げながらフルフルと震えている。

 突然配属された先のトップにこんなこと言われたら、十四歳の少年などどうしていいかわからず、必死に力いっぱい頭を下げるしかできないだろう。

 

 初対面の印象はこれで悪くないはず。

 事前に人格を知ってるおかげで、上手いこと心の隙間に潜り込めた。

 早い段階でクラウド魔改造計画を始めよう、もちろん俺への忠誠心も植え付けながら。

 万が一にもゲームみたいに敵対されたら確実に死ねるからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セフィロスみたいな英雄になる。

 そう思って幼馴染のティファと村の給水塔で約束し、故郷のニブルヘイムを飛び出して神羅の扉を叩いた。

 しかし、現実は残酷で俺にはソルジャーになるためのそもそもの素質がないらしい。

 努力ではどうしようもない素質というものが欠けていた、そう、俺は特別な存在なんかじゃなかったのだ。

 

 今更故郷に帰ること何て出来ないし、藁にもすがる思いで一般兵の試験を受けなんとか合格した。

 特別な存在にはなれなかったけど、大企業に就職することは出来たし、故郷に残した母さんに仕送りだってできる。

 そう思い自分を慰めていると、勤務初日に配属先が変更されたことを人事部で告げられた。

 

 そこで俺一人だけが兵器開発部門に配属することが俺の知らぬ間に決まっていた。

 同期に入社した奴らとは別に、俺一人だけが渡された社員証で45階のオフィスへと不安を抱えながら行く。

 これは特別というよりも、俺一人が組織からハブられているんじゃないかと、初日から心に暗い影を落とした。

 

 でもそんな心の悩みはスカーレット様に会ってすべてが吹き飛んでしまった。

 いきなり部門のトップが直属の上司になるなんて異例だし、人事の人も絶対に統括の機嫌を損ねないように念を押していた。

 初めて見た印象は、美人だが迫力があり、俺よりも年上の先輩や上司にどこか恐れられているというか、その人がいると周りに緊張感が漂うような雰囲気だった。

 しかし、個室に入って二人きりになったとたんに纏う空気がいくらかやわらぎ、緊張してる俺に対してもどこか気を使ってくれていた。

 

 そして告げられた言葉に俺はドキッとした。

 セフィロスに憧れたが夢破れ、ここに流れ着いたことなどお見通し。

 それどころか、俺の夢をもう一度叶えないかと持ちかけられた。

 

 うれしかった。何の結果も出していない、それどころか素質がないと診断された俺のことをここまで買ってくれてる人がここにいると。

 最初こそ周りの目もあるからテスターとしての立場だが、ゆくゆくは俺をもっと上の立場にして自分の下に置きたいとも言ってくれた。

 

 頭を下げたのは感謝の気持ちもあるが、この人に涙を見せたくなかったからだ。

 目に力を籠めないと、目から涙がこぼれ落ちそうだった。

 

 こうして俺はスカーレット様の部下として、新しい一歩を踏み出すことが出来た。

 

 それからは毎日が充実していた。

 スカーレット様は戦闘シミュレーションを何度も受けさせてくれた。

 最初は一般兵でも出来るような簡単なものからだったが、徐々に難易度を上げていき自分の成長が実感できた。

 支給される装備はすべて会社負担どころか、俺のレベルに合わせてスカーレット様が用意してくれたものばかり。

 後から違う研究員の人が教えてくれたことなのだが、俺の装備はすべてスカーレット様が直々にチェックや調整までしてくれてるらしい。

 

「銃は戦闘相手が使うこともあるから、サラッと形だけ使えるようになってもらうけど、あなたの得物はソードね。まずはソルジャーに支給されるものと同じものを用意したから、慣れて行ったら徐々にグレードを上げていきましょう」

 

 いろんな武器を使ってもしっくりこなかったが、スカーレット様が俺の一番使いやすい武器になるとソルジャーが使うロングソードまで用意してくれた。

 一振りするだけで手に馴染み、すぐにシミュレーションで結果も出せた。

 最初の頃は冷や冷やした目でシミュレーターに入る姿を見ていた社員たちも、いつの間にか俺のことを認めてくれた。

 武器や防具、既存兵器を相手した感想なども求められみんなが可愛がってくれる。

 一応これでテスターとしての役目も果たしているが、業務時間もそのほとんどが俺が強くなるために当てられているのがわかる。

 

 決して無理なことは言われない、体調管理も仕事のうちとしっかりと休憩も取らせてくれる。

 毎日シミュレーターを使っているわけではなく、時たま体を休めるためにと、一切戦闘をしない日もある。

 そんな日も神羅という独特の社会組織の中で上手く立ち回るために、スカーレット様直々に教えを叩き込まれ、高度な勉強を受けさせてもらえる。

 戦闘訓練はソルジャーのものをベースとしているらしいが、そのほかの勉強はタークスという社長直属の特別な組織の教育を流用しているらしい。

 

 俺はこんな恵まれていいのだろうかと思う。

 同期たちの誰よりも目をかけてもらい、期待されている。

 こんな生活にも慣れてきた時に、急に治安維持部門に連れていかれ、模擬戦に飛び入り参加させられた。

 

「どうも、私のお気に入りだって他の部署の奴らに舐められてるみたいね。あなたが見下されるのは私をコケにしてるのと同じなのよ。馬鹿どもにあなたがどれだけ努力して実力を伸ばしたか思い知らせてあげなさい」

 

「えぇい、たった一人相手になんだこの体たらくは! ましてやソルジャーでも何でもない、お前らと変わらん人間なんだぞ。俺様の顔に泥を塗りおって!!!」

「キャハハ、ざまぁないわね、クラウドはあんたの所の有象無象よりよっぽど優秀なのさ」

「ぐぬぬ、こんなことなら何が何でもうちに入れるべきだった。スカーレットのところが嫌になったら俺の所に来い、特別待遇で迎え入れてやる」

「私の目の前で何引き抜いてるんだいこのバカ、クラウドはどこにも渡さないよ」

 

 おかげで今では俺を見下すような同期もいないし、ハイデッカー統括の覚えもよくなった。

 もちろん、スカーレット様の下を離れる気なんかさらさらない。

 出来るならずっとこの人のそばにいて、恩を返したい。

 

「ハイデッカーはバカだけど、一応統括だし、あれでいて出来る部分も持ち合わせてる、無駄に敵対するんじゃなくて上手く利用してやんな」

「はい!」

 

 はたから見てキツイ口調の人だけど、俺のことを思って話してくれてるのがわかる。

 またある時は、新型生体兵器のテスターとしてスカーレット様と科学部門に顔を出した。

 

「なんと、ソルジャーじゃないにもかかわらず、これほどのデータを出せるとは……。君は非常に優秀なサンプルだ。科学の発展のために私の実験に協力しないかね?」

「絶対にお断りよ、私の許可なくうちのクラウドに変なことしないでよね。指一本でも触れたら兵器開発部門総出で潰すから」

「クックック……。そいつは残念だ、スカーレット君はずいぶん若い男にご執心なようだなぁ」

「あら、人間に興味がない宝条博士にしては珍しい勘ぐりですこと」

「観察は研究の基本だよ。手っ取り早く強くしたかったら私を頼るといい、サンプルの提供はいつでも大歓迎だと伝えておこう」

 

 宝条博士はかなりの危険人物だから、何か頼まれても自分の名前を出して拒否するように教え込まれてる。

 マッドサイエンティストという言葉がこれほど似合う人がいたのかと驚くが、ソルジャーの基礎を作り上げた人らしい。

 スカーレット様の対応に過保護なのではと感じたが、宝条博士相手にはこれでも対策が十分ではないと言われた。

 

 そして意外なことに、一番顔を出す外部の部署が都市開発部門だ。

 

「いらっしゃいクラウド君」

「リーブ統括、魔晄炉に配置する無人機の資料をお届けにまいりました」

「ありがとう、スカーレットさんからこの後の魔晄炉の企画会議にクラウド君を参加させるようにと連絡を受けているから、勉強だと思って参加していくといい」

「よろしいのですか?」

「もちろん、うちの部署が一番社会勉強になるから育ててくれと直々に頼まれたからね。本当にクラウド君に目をかけてるのがわかるよ。君が兵器開発部門に来てからなんだかスカーレットさんも人当たりが良くなったようだし、君の影響かな?」

 

 そう言ってリーブ統括は人当たりの良い笑顔で俺を迎えてくれる。

 兵器開発部門と都市開発部門は魔晄炉建設でお互いに協力しあうため、こういったすり合わせの機会がそこそこあるらしい。

 ソルジャーは魔晄適正がないので無理な話だが、最近では会社の社員の中でもエリートと呼ばれるタークスに入れるのではないかと周りからも褒められる。

 

「シミュレーションの結果もだいぶ良くなってるね。まさか短期間にここまでの成長するなんて私も鼻が高いわ」

「ありがとうございます。すべてスカーレット様のおかげです」

 

 本当に感謝してもしきれない。

 ソルジャーになれなかったが、今なら胸を張って故郷に帰って母さんに報告も出来る。

 

「キャハハ、その調子よクラウド。あなたには期待してるわ」

 

 ティファ、俺はソルジャーになれなかったけど、君に認めてもらえるような男になるよ。




意外なことにFF7悪役転生を妄想したことがあるとご感想頂き、どこかに同士がいるものなのだなとしみじみ。
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