前回の帰省から数年が経ってしまった。
踏みしめる故郷の土は、記憶の中にあるものと全く変わらない。
この給水塔もきちんと神羅の都市開発部門の人間がメンテナンスしているのか、俺が子供の時と変わらずに綺麗な状態を保っている。
「ここには高い建物がないからな、子供の時は良くこの給水塔に登っては大人たちに怒られた」
「へぇ、先輩にもそんな時期があったんですね」
「そりゃ子供の頃なんてみんなそんなもんだろ、もっとも大人たちが寝た後は子供の遊び場になってたがな」
村の中心にあることも影響してるのだろう。
深夜ここに登って見る星空は、今でも俺の目に焼き付いている。
ここでソルジャーになると母さん以外に初めて宣言したんだよな。
結果としてソルジャーにはなれなかったが、それ以上の役職に就くことになり。今では一部隊を率いるまでになる。
当時の自分には考えられないことばかりだ。
「それで、その幼馴染のガイドさんってのはどこにいるんですか?」
「都市開発部門経由で連絡してるはず、村長の家で待機してるだろう」
ティファの親父さんもいるだろうが、どんな顔して会えばいいか少しわからないな。
少なくても俺に対していい感情を持ってないだろうし。
もっとも、俺も仕事としてここにきているし、向こうも仕事をする人間として接してくれるはずだ。
「なんかちょっと緊張してます? 本当にただの幼馴染なんですか?」
「昔彼女の親父さんにこっぴどく怒られたことがあってな、それ以来ちゃんと話したこともなかったし、どんな顔して会えばいいか……」
「もう、クラウド先輩は神羅の実験部隊エースなんですから、そんでもって私の頼れる先輩なわけで、そんな態度だったらこっちまで見くびられちゃいますよ」
イリーナのいう通りだ、俺があまり変に意識して当たるのは部下である彼女を不安にさせる。
ひいては、他の仲間たちの評価を下げる行為だ。
「ありがとうイリーナ。俺もまだまだ部隊長としての自覚が薄いな、もっとしっかりしないと」
「そうですそうです、自慢の先輩なんですからもっと胸を張って!」
イリーナの言葉に勇気づけられた俺は、村長の家のドアをノックする。
「神羅から来ました、クラウド・ストライフです」
「は~い、今開けま~す」
中から帰って来た声に昔の記憶がフラッシュバックする。
あの頃よりずいぶんと大人びた声だが、間違えるはずもない。
ドアから出てきたのは昔の面影を残しつつ、美しい女性へと成長したティファの姿だった。
思わず見とれてしまったが、すぐに我に返る。
背中をイリーナに軽く叩かれなければ、もっとそのままでいたかもしれない。
ティファも俺の姿を見て驚いているようだ。
「クラウド……久しぶりだね」
「あぁ、久しぶりだな」
この村でガイドをしていたことは聞いていたし、きっと成長すれば綺麗になってると思っていたが、今こうして数年ぶりに顔を合わせると、何を話せばいいか一瞬わからなくなる。
いや、仕事の話をすぐに始めればいいのだが、かつてソルジャーになる夢を話し、個人的に約束をした相手だ。
だめだな、神羅の中では問題ないが、一歩外に出た時のコミュニケーションにまだ難がある。
「はいはい、先輩は村長さんに挨拶してきてください、私がガイドさんに詳しい話を聞いておきますんで」
「うん、あぁ、そうだな」
俺を急かすように、背中をぐいぐい押してくるイリーナ。
そこまで力を入れないでもいいんじゃないかと思うが、イリーナなりの気遣いなのだろう。
確かに、ここで俺が変に話すより、第三者であるイリーナに任せた方が話もスムーズかもしれない。
どこかでティファともゆっくり話したいが、任務が終わってゆっくり出来た時に改めて話をしよう。
「はいはい、初めまして、神羅兵器開発部門実験部隊副隊長のイリーナです」
「あっ、ど、どうも、この村でガイドしてるティファって言います」
ずっと前に故郷を飛び出した幼馴染が帰って来た。
ソルジャーにはなれなかったらしいけど、世界一の大企業神羅で働いて、ソルジャーに匹敵するくらい出世してるらしい。
久々に会ったけどすごくかっこよくなってた。
見た目も違ってるけど、何より雰囲気が昔より自信に満ちあふれてる感じがする。
でも、あのチョコボ頭なんかは昔のままなんだよね。
でも、なんでだろ? なんだか私に対してよそよそしい気がする。
いや、もしかしたら私が意識しすぎてるだけかもしれない。
「さっそくですが、ティファさんが山で見た不審者に就いてお聞きしていいですか?」
「はい、ガイドの仕事のためニブルヘイム山へ定期的に登るんですけど、村の人でも観光の人でもない人たちの影を見たんです」
クラウドは村長さんのところへ行っちゃって、違う人が私の話を聞くことになったんだけど、少し寂しい。
せっかくクラウドと久しぶりに話せると思ってたのに……。
でも、それと仕事は関係ないもんね。
とりあえず、この後も話せるチャンスはあるだろうから、今はしっかりと自分の仕事をこなそう!
でも、もしかしてイリーナさんもクラウドのこと気にしてるのかな?
なんか、クラウドを見る目が怪しい感じがする……。
どうしよう!?
いくら幼馴染とはいえ、こんな田舎の女の子なんて大したことないと思ってたのに、とんでもない美人さんじゃん。
ほっそりと引き締まった脚線美とか、モデルさんよりも綺麗かも。
たぶんガイドの仕事で日常的に山に登ってるって言うのも本当だし、筋肉の付き方から、たぶん実戦形式の何か格闘技をしてるはず。
そして何よりも……。
「それで……してた時に……を見ましてね……」
何よこの胸の大きさ!?
動きやすい軽装でキュッと引き締まったお腹がかっこいいけど、その上にたわわに実った二つの果実の大きさを余計に強調してる!
さっきから見てたら少し動くだけでプルンって音が聞こえてきそうなくらいボリュームあるし、そのくせ腰や足なんか適度に筋肉が付いて神がかったスタイル。
そりゃ、私はスーツだし着やせするタイプだし、元々そんなに大きい方じゃないけど、それにしたってこの人の胸大きすぎ!
そんなおっきいの体に付いてたら絶対動きにくいじゃん、私みたいに足技なんか仕掛けたら絶対重心のバランス取れないでこけちゃうって。
もしかして子供の頃からこんな感じ?
クラウド先輩の好みってやっぱり男の人だから、大きな方がいいのかな……。
一応話を抑えてるけど、なんていうかこれを見るなって言うのは無理よね。
どうしよう、クラウド先輩が帰って来たら絶対凝視しちゃうよ。
そんな先輩見たくないけど、女の私だってついつい見ちゃうし、クラウド先輩だってきっと……。
「なるほど、魔晄炉周辺でモンスターの数が減っていて、普段ガイドで使うような道に変化はないけど、少し入り組んだ普段人が入らない道に誰かが入っていた形跡があったと」
「そうなんです、万が一登山ルート以外の道を無理やり登ろうとして遭難する人がいたら大変だと思って、私も様子を見てみたんですけど……」
あぁ、すごく真面目な話をきちんとしてくれるし、性格も良い人そうだけど、ここにきてライバルが強すぎる。
そう言えばスカーレット統括も立派なのをお持ちだよね、やっぱりクラウド先輩も大きい方が良かったりするのかな……。
あぁ、クラウド先輩を渡したくない、こんなかわいくてナイスバディ、そんでもって性格もいい子なんて男なら誰でもコロッといっちゃう。
「なるほど……とりあえず必要な情報は纏めさせて頂きましたので、この後私たちが山に入るときにもガイドをお願いします。そこでも何か気が付いたことがあれば報告してください、万が一敵が現れた場合も私たちが身の安全を守りますので」
「はい、ありがとうございます」
素直で嫌な感じが全然しない。
そりゃ、私だってすごく素直だし、先輩の隣にふさわしいと思ってるし、社会人になってからずっと先輩の一番そばで可愛がられた自覚はあるけど、さすがにね……。
ザックス先輩の彼女さんも可愛らしかったけど、ちょっとこの人はダークホースすぎるっていうか、こんな美人さん私知らないかも。
もし任務中にクラウド先輩が妙にデレデレしたら背中にキックをお見舞いしてやるんだから!
こんなかわいい後輩がいるのに他の女性にデレデレするのなんてマナー違反ですもんね。
ヴィンセント先輩も一発だけなら誤射の可能性があるとか言ってたし、一発位なら仕方がないですもんね。
クラウド先輩なら不意打ちでも私の攻撃位防ぎそうだけど……。
すごいなイリーナさん。
私よりも歳は下なんだろうけど、すごくしっかりしてて仕事が出来る女性って感じだ。
副隊長って言ってたから、クラウドを身近で支えてる人だよね。
スーツを着込んでてわかりづらいけど、重心に全然ブレがないし、たぶん私より強い。
私もずっと格闘技の修行はしてるし、時たまザンガンのお弟子さんが村に立ち寄って組手をしてくれたけど、その人たちよりも強いかもしれない。
私の話を聞きながらメモを取って真面目そうに話を纏めてる。
ビシッと決めたスーツから細身でスタイルの良さもわかるし、まさに都会の女の子って感じだ。
こんな素敵な女の子に言い寄られたら、クラウドだってクラッとしちゃうかもしれない。
あんまり自己主張しないタイプだし、クラウドのお母さんもぐいぐい引っ張る子が一緒になってくれたら安心なのにって昔話してたのを聞いたことがある。
さっきもすごく二人とも仲よさそうだったし、同僚っていうには距離が近すぎる気がする。
やっぱり都会に出ると田舎に残った私なんてどうでもよくなっちゃうのかな?
あぁもう! なんでこんなにネガティブになっちゃうんだろ!? しっかりしろティファ!!
せっかく久しぶりにクラウドに会えたんだから、こんなんじゃ嫌われちゃうぞ! よしっ! 気合を入れろティファ・ロックハート。
心の中で自分の顔にビンタをくらわせて気合を入れる。
クラウドもお仕事でここに来てるんだし、私も仕事モードにならなくっちゃ!
「イリーナ、任せっぱなしにしてすまなかったな……」
村長との挨拶もそこそこに、ティファとイリーナの下へ戻ると……。
「えっ、クラウドってそんな風にかっこつけられるようになったんだ!」
「そうそう、もう無茶苦茶かっこいいんですよ! 昔のクラウド先輩ってどんな感じだったんですか!?」
「えっとねぇ、引っ込み思案であんまり誰とも喋ってなかったけど、優しくて……」
「引っ込み思案だったんですか!? うっそ~今と全然違う。訓練の時は鬼みたいにぐいぐい突っかかってきますよ」
なんだか女同士盛り上がってるみたいだ。
この感覚は前に村に帰ってきた時も味わった気がする。
自分が不在の時にかなり恥ずかしい会話がなされていたと見た。
「はぁ、その様子だとしっかりと聞きこみは終わったようだな」
「ほらほら、すごく先輩っぽいでしょ」
「本当だ、すごく大人っぽい」
これはイリーナを軽く小突いた方がいいのか?
それとも、しっかりと現地の協力者とコミュニケーションを取れたことを褒めたほうがいいのか?
少なくても俺の男としての尊厳というか、威厳が損なわれている気がする。
イリーナは俺がいない間にティファとかなり仲良くなったようだし、ティファも俺の前とは打って変わって明るくなっている。
これはこれで良かったのかもしれないな。
ジェノバという懸念事項がある以上、あまり気を張っていられても困るしな。
それに、俺も少し肩の力を抜いてもいいかもしれない。
「改めて、久しぶりだなティファ」
「うん、いつの間にかこんなに立派になっちゃって、男の子って少し見ない間に変わっちゃうんだね」
ティファも少し緊張がほぐれたのか、昔のような笑顔で答えてくれる。
子供の頃の可愛らしかったイメージから一転、美人で少し大人っぽくなった。
イリーナがじっと俺を見つめている。
あれは俺の視線がどこに向いているか探る注目の仕方だ。
残念だったな、相手の目線で行動を先読みするのは戦闘を優位に進める必須スキル。
そんなにじっと見つめては探ってるのが逆にバレバレで、視線誘導で逆に罠に嵌められる。
「おぉ、全然おっぱい見てない……」
こら、小声でも聞こえてるぞ。
女性の胸を凝視するのも、ちらちらと見るのも、相手からしたら不快に思うポイントだろう。
そう言うところに視線を合わせない様にしたり、見てても相手にわからないようにするというのは必要な技能だ。
タークスになると、その辺も気を配らなくちゃいけない。
女性が色香を振りまいて陽動をしている場合もあるし、逆に男だと遠慮してしまうところに危険物を仕込んでる可能性もある。
スカーレット様の服装も際どいというか、お傍にお仕えして間もない頃散々弄られたからな……。
もう少し露出の抑えた服装を着て欲しいとも思うのだが、あれがスカーレット様の魅力を引き出してるのも事実。
どうして女性は胸元を強調した服装が好きなんだ?
正直目のやり場に困る……。
遂にティファと出会うクラウド。
すでに30話を超え、物語も佳境ですが、原作ヒロインと初エンカウントです。
やはり二人の出会いに期待してくれてる方も多かったので、今回はティファの魅力全開回(何が魅力的なのかは追求しません)
両手に花ですね、クラウド。
ここで次回更新のお知らせ
一週間後の8/21水曜日19時予定……と普段ならいうところですが!
物語も佳境ですし、一気に進みたいですよね?
確信に触れる部分も多く説明も多くなる予定ですので、勢いよく行きます。
ストック切れるまで毎日更新します!
次回『ジェノバ』お楽しみに!
毎日更新すると感想を送る方々も大変でしょうが、お付き合い頂けたら幸いです(感想でティファのたわわについて記載があったから、この話もそれに合わせて修正しました。本当に感想を読むのは楽しいです、作品に水や栄養を与えるに等しい)
こぼれ話
実は他所でも作品書いてまして(こことは全然違うテイストです)
他にも冬コミの合同誌参加とか、初のDL同人誌制作とか、違うサイトへの投稿とか、停滞してるハーメルン内の他の作品の完結とか……
やりたい創作活動が多すぎて、リソースの見直し中です。
とりあえず最優先事項として今作の完結を目指します!