【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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ジェノバ

「都市開発部門の証言も取れたぞ……なぜ、そんなにぐったりしているんだ?」

「幼馴染のティファと後輩のイリーナに挟まれて、そこに母さんが加わってもう俺に出来ることは何もなかった」

「あぁ、そうか」

 

 実家の前でヴィンセントを待っていたら、ほどなくして合流できたが、開幕心配されてしまった。

 女三人は家の中でお茶会を始め、俺のメンタルが持たなそうなので、一人外でヴィンセントを待たせてもらった。

 

 村長宅を後にし、俺の実家にも顔を出しに行ったのだが、何故かティファも付いてくると言ってきかなくて、三人で実家の扉を潜ることになった。

 その間ずっとイリーナがそばを離れないし、ティファも距離が近い気がする。

 もう少し離れて欲しいと言ったのだが、離れてからは二人でずっと会話が弾み、それが俺への質問となって飛び掛かってくる。

 

「クラウドは神羅で彼女とか出来たの?」

「いや、今は仕事を優先する時期だからな、中々そう言った人を作ることは考えてない」

「そうそう、仕事が第一ですからね。一緒に訓練して、一緒に旅行もして、この前は一緒にスイーツバイキングも行きました」

 

 イリーナが早口でまくし立てるが、何一つ嘘は言ってない。

 嘘は言ってないが、本当に一部しか説明してこない。

 一緒に訓練するのは俺がスカウトした責任をもって、しっかりとイリーナを一人前の副官にするためにしてることだ。

 確かに時間的に二人の比率は多いが、ここにザックスやヴィンセントが参加したり、チャドリーが設定してくれたシミュレーションを攻略したりと、決して二人だけでずっと訓練をしてるわけではない。

 

 旅行というのも、あくまで任務の一環でコレル村やゴンガガ村など魔晄炉のあるエリアへの視察。

 アバランチが潜伏しているエリアへ、ヴィンセントの任務のバックアップ要員として二人セットで遠出してるだけだ。

 

 視察の時は特に問題ないのだが、神羅所属を隠す時は身分を偽装して行動する。

 大抵は旅人や、フリーの技術者などに扮するのだが、二人で行動する性質上何かしらの関係性の理由が必要で、表向きは恋人という設定を使うこともある。

 あくまで設定なので、人に聞かれた時に答えるくらいでいいのだが、イリーナが妙に設定を気に入っており。

 何気ない会話や行動もそれっぽくしてくるので、実は少し恥ずかしい。

 

 一度やりすぎじゃないかと注意したが、後で合流したヴィンセント曰く。

 

「普段から設定は心がけていた方が良い、特に潜入捜査などではな」

「ほらほら、元タークスのヴィンセント先輩が言ってるんだから、きちんと細部まで拘ったほうがいいんですって!」

 

 と押し切られてしまった。

 

 一緒に行く食事に関しては、日々訓練に食らいついてくれてるのがわかるからそれに対しての報酬的な側面があったり。

 途中からチャドリー用の飲食物のデータ収集の目的も加わって、今でも定期的に一緒に食べに行くだけだ。

 

 いや、自分で考えてみてもあれだが、年頃のカップルというのはこういうものなのかもしれないと思えて来た。

 訓練や仕事での危険性をどうしても念頭に置いていたが、そのあたりを話すことが出来ないティファのような社外の人間に説明できる範囲のことを纏めると、付き合っている男女に見えるのだろうか?

 

 もしそうだとしたら、この後、母さんに会うのが非常に気まずい。

 話せる範囲の話をイリーナが進んで話した場合、俺のことを立ててくれるのは間違いないのだが、少々盲目的過ぎるというか。

 俺のことを過剰に信頼しすぎてる傾向にある、なぜこうなってしまったのか……。

 

「わ、私だって、いつか私がピンチになった時は助けに来てくれる約束したもん」

「私だって先輩に約束してもらいましたよ、ピンチになったら助けに来てくれるって」

 

 勝ち誇ったように笑みを浮かべるイリーナと悔しそうに頬を膨らますティファ。

 そうかと思えばティファの昔語りで、俺との交流を話し始め、それに対してイリーナがぐぬぬと口元を歪める。

 

「こ、これが故郷の幼馴染の強さ、先輩の知らない一面をむちゃくちゃ知られてる」

 

 もう俺は何か口を挟む気力もない、そんな二人を母さんに合わせたところ、どうなるかなんてマテリアの化学反応を見るよりも明らかだ。

 

 どうして女というのは色恋沙汰の話題が好きなんだろう。

 前回スカーレット様と母さんが話していた時も恥ずかしかったが、こっちの方がよほど居場所がない。

 

「親孝行だと思って諦めろ、それよりも仕事の話だ。少々きな臭くなってきたぞ」

「何かあったのか?」

「アバランチに潜入してるタークスから緊急連絡が入った、これによりジェノバ討伐は神羅の最重要ミッションに変更。最悪の場合、魔晄炉やニブルヘイムごとこの区画一帯を焼き払う可能性もあり得る」

「なんだと!?」

 

 驚く俺に対して胸ポケットの端末が警戒アラートを響かせる。

 

「どうした?」

『クラウド隊長へ緊急連絡、山から異形のモンスターが下りて来たわよ! 自然界に生息してる生物じゃない、恐らくジェノバの影響を受けたであろう生物たちがね!!!』

 

 何度か面識があるイリーナの姉がスピーカーで声を上げる。

 

「わかった、タークスは山から下りてくるモンスターの対処をお願いします、実験部隊は魔晄炉のジェノバを目指します!」

『村の方は私たちに任せて、妹のことも頼んだわよ!』

 

 俺が端末を切ると、実家の扉からイリーナが飛び出してきた。

 

「先輩、今の緊急アラームって!?」

「あぁ、のんびりガイド付きで登山する余裕は無くなった。これから三人で一気に魔晄炉まで駆け上がるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェノバ討伐をクラウドたちに任せてから、俺とルーファウスは何度も打ち合わせを重ねている。

 

 今回のジェノバ討伐は、神羅カンパニーにとって非常にデリケートな案件だ。

 ジェノバを利用して神羅は利益を上げてきたが、そのジェノバが人類に牙を剥けば、神羅が築き上げて来た利益や社会的信頼を根こそぎ失うことになる。

 だが今の段階では問題なく討伐も可能だと判断し、兵器開発部門の実験部隊とタークスだけで事態の収拾を可能だと見込んだのだが……。

 

 アバランチに潜入していたエルフェから、ルーファウスの端末に緊急連絡が入り、スピーカーモードで端末から切迫した声が響く。

 

『ルーファウス統括、緊急事態ゆえに手短に話します。ホランダーが残した資料からアバランチが秘密裏に計画していたジェノバを利用した計画が分かりました』

 

 ものすごく嫌な予感がする。

 片付いたつもりのホランダーの離反も、もう虫の息になっていたアバランチのテロ活動も、まだ終わっていなかった。

 

『大至急宝条博士に連絡を、それと治安維持部門にも協力を要請してください』

「それほどまでのことか?」

 

 ルーファウスの問いを肯定するように、エルフェの声は重々しくスピーカーから響く。

 

『はい、今までのどの組織と敵対するよりも危険です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく緊急招集とは穏やかじゃないね」

 

 ニブルヘイムへの同行も、安全確保のためと副社長の要望を飲んでやったのに、また何か問題ごとを持ち込んできたらしい。

 正直ジェノバの始末も実験部隊とタークスが出張るなら特に問題なく遂行できるだろう。

 

 なにやらホランダーの残したソルジャーもどきたち、そしてアバランチの残党が何やら企んでるらしいが、どうにかなるほど神羅の戦力は甘くない。

 

「ほらほら、だから言ったじゃないか、本当の脅威は宇宙から来るって!」

「パルマー統括、あまり興奮なさらない方がよろしいですよ。健康診断で血圧のこと、担当医に言われてるでしょ」

 

 まったく、ジェノバとかかわりのない宇宙開発部門と都市開発部門は呑気なものだ。

 本来ならタークスと兵器開発部門で事足りる案件だろうに、ジェノバに関係するというなら私が関わるのは致し方がないが、こいつらを呼ぶ必要があるのか?

 

「ガハハ、若に言われました通り、足の速い部隊からニブルヘイムに送り込んでいます。一応爆撃の準備を進めておりますが、最終手段ですな」

「もちろんだ、しかし万が一のことを考えると備えないわけにはいかん」

 

 どうやら治安維持部門には先にいくらか話が通ってるようだな。

 しかしわからん、いかにジェノバの意思が覚醒し、我々の手を離れようとしていても、精々劣化したソルジャーや、アバランチが作り出した粗悪品のソルジャーもどきをコントロールするのが関の山だ。

 それであれば神羅の持つ戦力でどうとでもなる。

 

 万が一、ソルジャーが操られることを想定して、今回は兵器開発部門の実験部隊とタークスの全戦力を投下してるはず。

 

 少なくともこの状況を正確に把握し、実質ジェノバ討伐部隊の管理者でもある女に仕方なく声をかける。

 

「それで、一体何が起こってるのかね?」

「ジェノバが明確に反旗を翻したのよ」

 

 ふん、ずっと魔晄炉で管理されていた古代の化石が、今頃になって動き始めたというのか。

 

「多少の抵抗は想定していただろう」

「多少なんて言葉で収まらないくらいの抵抗をしてきたのよ」

「ふむ、いくら魔晄炉が吸い上げた魔晄を使おうともそこまで極端に戦力など用意できまい」

 

 私も魔晄炉のエネルギーをジェノバが私的利用してるデータは解析したが、あれをばら撒くだけなら周囲のモンスターを狂暴化させ、多少強化するのが関の山だ。

 仮に操っているアバランチのソルジャーもどきを強化したところで、精々2ndクラスの戦闘力だろう。

 

「それが私たちの失敗よ、まさかホランダーの奴がアバランチでこんな研究を続けてたなんて知らなかったわ」

 

 手渡されたのは今どき紙に印刷された研究資料、データとしても残したくないということか。

 

「アバランチに潜入してるタークスが引っ張ってきたのよ、ホランダーが亡くなったあとも独自に研究を続けてたみたいね」

「くだらん、どれだけG細胞を研究してもS細胞を使ったソルジャーに敵うわけがない、コピーによる細胞劣化が致命的過ぎるからな」

 

 やはりコピー能力を優位性と捉え、それを生かす方向で研究はアプローチされている。

 そもそもの出発点が間違いなのだ、コピーすればするほど細胞を急激に劣化させるなど、それで戦力が増えたわけでもない。

 

「うひょひょ、でもでも、コピーで兵隊を増やせるならすんごく強いんじゃない? 兵士だって強さに個人差があるし、それなら弱い兵士を強い兵士にコピーし続けたら手軽に軍隊が作れそうだけど」

「ふむ、確かに兵たちの育成には時間もコストもかかるからな、もし仮に優秀な兵が増え続けるなら強固な軍隊が出来上がるだろう」

「まったく、これだから科学を知らぬ素人は困る。ホランダーが説いていたコピー能力の優位性など張りぼてだ、重要な欠陥があるからな」

 

 宇宙開発部門と治安維持部門の統括が大した詰まってもない頭を使って話に割り込んでくる。

 たしかに文面だけ切り取れば魅力的に映らないわけじゃないが、そんな単純な話ではない。

 

「コピーした後の素体が問題なのだ、コピーすればするほど細胞が劣化し弱くなり続ける、そしてコピー先もどんどん劣化したコピーへと成り下がる」

「なるほど、コピー機で書類をコピーしたものを何度もコピーにかけ続けるようなものでしょうか?」

 

 こいつらよりも少しはましな思考が出来る都市開発部門の統括が答えるが、素人の発想ではそのあたりが限界だろう。

 

「そんなところだ。強い戦士をコピーすれば、弱くなった元強い戦士が二人増えるだけ、続ければどんどんと劣化し続けるまがい物だよ」

「コピーって言うよりも分裂ね、自分の力を分け与えて、片方は強くできるけど、元が弱くなってくんじゃ数を揃えられても、本当に強い戦士は作れっこないわ」

 

 無機質な兵器のように工場で同じ規格の部品を大量生産するのとはわけが違うのだ。

 

「すでに私の研究で安定したスペックのソルジャーも供給可能になっている。仮に卓越した個人の能力を求めるなら、ソルジャー計画の最高傑作であるセフィロスを推薦しよう」

「ずいぶんとセフィロスに自信があるんだな」

「もちろんです、ソルジャーを生み出した科学開発部門の統括として絶対の自信を持っていますから、それは運用する副社長もご存じでしょう?」

「もちろん、我が社の最高戦力は誰かと個人名を上げるなら私は迷わずセフィロスと答えるよ」

 

 社長と違いしっかりとセフィロスの価値を認識している点、科学開発部門への投資も惜しまない点もスポンサーとして非常に付き合いやすい。

 おかげで科学を理解しない凡人に説明する過程が省けるからな。

 

「ではセフィロスの生みの親でもある宝条博士にお聞きしよう、セフィロスが敵になった場合、我が社の戦力で討伐は可能かね?」




楽しいニブルヘイムでティファとイリーナの絡みを書くのもいいですが、ジェノバは待ってくれません。

ここでご報告、ストック分で重大なミス発覚、訂正しますので毎日更新ではなく、二日に一話のペースで更新させて頂きます(その代わり感想返しや、そこで聞かれたことを本編やあとがきに反映させる時間を多く取るという形で行きます)

次回『ジェノバ細胞』8/17土曜日19時更新予定!

いつの間にか投票者数400人を超えました、感想数も550超え。
皆様から反応を貰えるのは書き手としてうれしい限りでございます。
この場を借りまして感謝を……。
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