【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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???

「貴様、何者だ」

 

 白衣を纏い魔晄炉の前に佇む女。

 カプセルの残骸から薄っすらと立ち上がる魔晄の残り香に照らされ、妖しく艶やかな雰囲気を醸し出す。

 背中までかかる長髪はレモン色のリボンが螺旋状になって結ばれ、ポニーテールの髪型を形作っており、肌は病的なまでに白く全く焼けていない。

 これだけで長く外の光を浴びておらず、室内に籠もりきりだということがわかる。

 

「あら、自己紹介が必要かしら? 貴方なら私の顔に見覚えがあるはずよ。尤も昔の写真から歳は取ってないし、ほんの少し研究のため、ここにずっといたから印象は違うかもしれないけど」

 

 クスリと笑う口元は、自信家で妖艶な雰囲気を醸し出す。

 だが、その目は笑っていない。むしろこちらを値踏みするかのような目付きだ。

 そして俺はこの女性を知っている。

 

「元神羅の科学者、ルクレツィア・クレシェントの体を使って何をしていた、ジェノバ!」

「あら、残念。そこまでわかってるのね、せっかく貴方好みに年上のお姉さんを演じてあげたのに、つまんない子」

 

 ヴィンセントがずっと世界中を探し、ついぞ見つけられなかった人。

 宝条博士の妻で、ソルジャー計画が始動するずっと前、ジェノバ細胞の影響で精神を病み、行方不明になっていた。

 

 どうやら中身は違うらしく、どうしてそれがバレたのかわからないといった表情だ。

 しかし、それ自体にどうやらあまりこだわりはないらしい。

 腰に手を当てながら、唇にそっと手を当て、考える仕草をする。

 その一つ一つの動作が妙に色っぽい。

 

「なるほど、きちんとこの体がどうして行方不明になったのか、そして貴方たちがジェノバと呼ぶ私の特性をきっちりと理解してるのね。本当にすごいわ、私の細胞と交わってないなんて信じられない位優秀よ」

 

 年下を甘やかすように、そして時に揶揄うように俺のことを手放しで褒めたたえるその姿は、俺の記憶を盗み見たのだろう。

 

「ねぇ、今からでもソルジャーになってみない? 貴方ならセフィロスの次に優れたソルジャーになれるわよ」

「残念だがスカウトはお断りだ、いい加減スカーレット様の真似はやめろ。いつ俺の記憶を読み取った!」

 

 背中に背負うバスターソードを引き抜き、ジェノバの首元に突きつける。

 しかし、ジェノバは微動だにしない。

 それどころかその動作が面白かったのかクスクスと笑い始めた。

 

 この余裕は何だ? 何か策でもあるというのか? 俺はバスターソードを握る手に力を込める。

 すると彼女はゆっくりと両手を上げ、降参のポーズを取ると口を開いた。

 

「私のことを切る気なんてない癖に、張り切っちゃって可愛らしい」

「黙れ、俺の任務はお前の処理だ。すぐに首を落とすことも出来るんだぞ」

「あらら、強がっちゃって、あなたには無理よ。理由は三つ、一つは私を殺しても無駄だから、だって私の本体はあの扉の奥から数年間ずっと動いてないんですもの、操作してる端末をいくら殺しても無駄だってわかるでしょ?」

 

 そうだ、俺が目の前のルクレツィアさんの体を叩き切ったところでジェノバの存在は消えはしない。

 

「次に、私を殺したくない理由が貴方の中に有りすぎるんだもの、セフィロス・宝条・ヴィンセント……彼らの想い人であるこの体を出来るなら無傷で確保したいんでしょ?」

「ちっ、記憶を読み取れるとそんなことまでわかるのか?」

「まぁね、と言っても貴方から読み取ったのはついさっき、廃人化して倒れてる男のことを調べたでしょ?」

 

 しまった、あの時に記憶を読み取られたのか。

 本来ならジェノバが操る人間もすべて抹殺対象なのだが、俺がなんの躊躇もなく始末するには、ルクレツィアさんを知りすぎてしまった。

 スカーレット様から覚えておくべき重要人物と教わっていたし、ヴィンセントからも話を聞きすぎていた。

 

 だが、舐めてもらっては困る。

 戦闘能力を持たない女性、そして俺が殺したくない人物だとしても、任務に私情は挟まない。

 出来るなら動きを止め、奥にいる本体を叩きたいところだが、このやり取りでわかった。

 ジェノバの恐ろしさとはその能力だけじゃない、この狡猾さで古代種たちを絶滅寸前まで追い込み、一つの星を支配しようとしたのだ。

 

 これ以上情報を得ようとするにはリスクが高すぎる。

 俺はそう判断し、これ以上ルクレツィアさんの尊厳が歪められないよう、手に力を籠める。

 

「そして最後に……母親を守る自慢の息子がいるんだもの」

 

 バスターソードとジェノバの間、一筋の閃光が走り、甲高い金属音が響く。

 ジェノバの首元に当てたはずのバスターソードは、いつの間にか現れた刀によって受け止められていた。

 

「セフィロス……」

「そうよ、コピーだけどたった一人でアバランチという組織を壊滅に追い込んだ、最も過酷な生存競争を勝ち抜いた時を再現してるの」

 

 ジェノバを守るように立ちふさがるのは、神羅最強のソルジャーセフィロスだ。

 しかし、それがどうした?

 確かにコピーとはいえ、セフィロスは強敵だろう、だが所詮はジェノバの操り人形に過ぎない。

 俺はバスターソードに力を込め、そのまま押し切ろうとすると、背後からも刀で斬りつけられる。

 その一撃を紙一重で躱すと、そのままバスターソードを振りぬいた。

 

「セフィロスだと!?」

 

 そのまま振り向いた先のセフィロスと鍔迫り合いになるが、その一撃は重い。

 コピーとはいえ、この力は本物と変わらないのではないか。

 

 何度もシミュレーションで戦ったセフィロスが使った刀捌き、それが今目の前で繰り広げられている。

 ソルジャーとして、いや人間として最高峰の戦闘力を持つ男が二人?

 ジェノバという存在はどこまで規格外なんだ。

 

 なんにせよ挟まれた状態はまずい。

 一度態勢を立て直すため、足元にファイアの魔法を打ち込むと、そのまま上空へと飛び上がった。

 バスターソードを構えなおし、二人に向き直るがどちらも攻撃する素振りは見せない。

 俺が距離を取り地面に着地すると刀を収め、ジェノバを庇うように立ちふさがった。

 

「セフィロスのコピーを使って何をするつもりだ?」

「素晴らしいわ、私のセフィロス相手に渡りあう戦闘力、そして敵わないとみると少しでも情報を引き出して時間稼ぎに徹する冷静さ」

 

 機嫌がいいのだろうか、こちらが会話する意図も読まれているようだが、上手くいけば会話が成立しそうだ。

 少し手合わせしてみてわかったが、シミュレーション訓練で何度も戦ったセフィロスの刀捌きを完全にコピーしている。

 今までセフィロス一人に多人数で戦うことは想定してきたが、複数のセフィロスを相手にすることなんて考えてもみなかった。

 

 せめてイリーナやヴィンセント、もしくはタークスがこちらに合流するまでの時間を稼がなくてはいけない。

 そしてこいつらが万が一魔晄炉から出て違う戦闘に乱入すれば、まずジェノバたちの勝ちは揺るがなくなるだろう。

 

 悔しいが俺一人でこいつらを倒すのは難しい、ならば時間稼ぎと足止めに徹する。

 

「なぜ二体のセフィロス・コピーを同時に襲わせなかった?」

「簡単よ、この体は操ってるだけで特別な強化をしてないんだもの、イレギュラーが無いよう、こっちのセフィロスには私の護衛を優先させてるのよ」

 

 隣に立つセフィロスに対し、後ろから抱きしめながらそう答える。

 その表情は恍惚としていて、まるで恋する乙女のようだ。

 

「私は過去セトラの民に敗れた。ずっと考えてたの、なぜ私が勝てなかったのか。それは組織を運用出来なかったからよ」

 

 クルクルと指先でセフィロスの銀髪をいじりながら、ジェノバは言葉を続ける。

 

「神羅もアバランチもウータイも……あれほど一つの個人が弱い下等生物の癖にあれほどの戦争を引き起こせる。それは個人が一つの目標のために意思を統一してるから、私が敵対者をモンスターに変えて暴れさせてたのなんて所詮は烏合の衆。だから貴方たち人間の科学技術には感謝してるのよ、セトラの連中にはマテリアの使い方こそ劣るけど、私のためにこんな素晴らしい贈り物をくれたわ」

 

 セフィロスの手に自分の手を重ねると、そのまま指を絡める。

 まるで恋人が愛を囁くかのような光景だ、その表情は愛おしそうにセフィロスを見つめている。

 

「ソルジャー、私の細胞をばら撒いて自由に使える兵士たち。神羅が作り出した奴らは私が操りにくい人間を選んで、魔晄の照射もそれに合わせてたから、容易には操れなかったけど、アバランチは本当に良くしてくれたわ、行方不明になったこの体を洞窟から引っ張りだしたのもアバランチよ」

 

 それで世界中を探しても見つけることが出来なかったのか。

 

「神羅の元科学者ってことはわかってたけど、精神が不安定でね。あいつら実験目的で私の細胞を打ち込んで、魔晄を浴びせたのよ。おかげさまで私の支配力がより浸透して、体の支配権を奪うことが出来たわ。おまけに魔晄炉の中で動けない本体に代わって、この体は自由にどこへでも行けた。おかげ様で距離的に近い所にいるアバランチの実験台たちはみんな簡単に操ることが出来たのよ」

 

 こちらを見つめ、首をかしげると、ジェノバはクスクスと笑い始めた。

 その笑い声は、俺の知っている誰とも似つかない不気味さだ。

 

「アバランチは早くからお前に乗っ取られていたのか?」

「まぁ、実験体にされた奴らだけね。どうしても後方支援の奴らや科学者たちは自分の体に細胞なんて取り込まないし、結局作れる兵士の質が悪すぎてアバランチなんて乗っ取っても神羅には勝てっこないんだもの。だからね、別のアプローチをすることにしたの」

 

 元のルクレツィアさんがどんな人で、どのような話し方をしていたかはわからないが、どうやらルクレツィアさんの体を使ってる影響か、自分の成果を自慢する科学者のように話し始めるジェノバ。

 こちらとしては話を継続してくれるのはありがたい、可能な限り会話を引き延ばさなければ。

 

「私だけの優秀な手駒を作ることに尽力したわ、アバランチ相手にはセフィロスがいつも出てきてくれたから、何回も実験体と戦わせてデータを集めて。その再現が出来る素体もアバランチに作らせた。あの人たちの研究は人間では完成出来ないけど、細胞自体をコントロール出来る私が手を加えてここまで形に出来たの」

 

 セフィロスはジェノバから離れると、まるで従者のように片膝を突き、ジェノバの手に口づけをする。

 その行動にうっとりとした表情を浮かべると、そのまま話を続けた。

 

「セフィロス……私の細胞から生まれた子供、この世界で最強の戦士になった子。この子がいれば誰も私を止められない、そのために私は神羅が欲しいのよ」

「神羅が?」

「そう、魔晄炉も素晴らしいわ。いちいちセトラの民みたいに星の命が染み出す大地を探さないでライフストリームを吸い出せる。そしてアバランチなんかより質の良いソルジャーたちを大量に抱えてて、彼らを使えばもっとたくさんのセフィロスを作り出せるわ」

 

 なるほど、アバランチの技術や人員ではこのコピー体を作るにはリソースが足りなかったのか。

 そりゃ無限にセフィロスのコピーが作られてたら、今頃神羅どころかこの世界はすべてジェノバに支配されていただろう。

 

「神羅の技術とソルジャーたちがお前の狙いなのか」

「そうよ、そしてオリジナルのセフィロスにも用があるの。あの子は精神が安定してて私が入り込む余地がなかったけど、この体で会えばどうなるでしょうね? 正真正銘お腹を痛めて産んだ母親なのよ、そしてあの子は親の愛に飢えている。きっと私のためにこの星を捧げてくれるわ、なんて親思いな良い子に育ってくれたんでしょう」

「セフィロスはお前に屈することはない!」

「だめねぇ、嘘ついちゃ、私たちの討伐にソルジャーを使わなかったのは本当は怖かったからでしょ? 私と子供たちが直接出会うのが……」

 

 本体に近づけば近づくほど、ジェノバの影響を受ける可能性がある。

 万が一のことを考えて、今回の作戦は俺たちとタークス、ジェノバ細胞と無関係な人員が導入された。

 

「もうわかったでしょ? 貴方に援軍なんて来ない、いくら待っても時間は私の味方。あなたのお仲間じゃなくてここに合流するのはセフィロスたちよ」

 

 得意気に自分の研究成果を話し終え、気分を良くしたのかこちらを見抜く。

 たしかに、これは宝条博士の奥さんだと紹介されたらしっくり来てしまう。

 時折見せるマッドサイエンティストな感じがそっくりだ。

 

「そこで提案よ、私の下に来ない?」

「はぁ?」

 

 思わず素の声をだしてしまう。

 何を言い出すかと思えば、俺をスカウトしてきた。

 

「私は貴方の才能を見込んでるの、ソルジャー化してないのにセフィロスに迫るその強さ、きっとソルジャー化したら今以上に強くなるわ。夢なんでしょ、セフィロスを超えることが」

 

 俺の記憶を覗いてたのだろう。

 それは俺が子供の頃、幼馴染と約束した夢。

 その夢に破れ、今の部門に流れ着いた俺がもう一度掴んだ夢。

 

「私なら貴方の夢を叶えて上げられる……あなたの秘められた才能を最大限に引き出してあげるわ」

 

 こちらに手を差し出し、まるでダンスに誘うかのように妖艶な笑みを浮かべる。

 その仕草はまるで悪魔の誘惑だ、きっとこの手を取れば俺は神羅を……いや、世界を裏切ることになるのだろう。

 だが、俺の答えは決まっていた。

 

「記憶を覗かれるというのは気分が悪いな」

「あら、交渉は決裂? せっかく貴方好みの体なのに勿体ないわね、セフィロスにいつでも会えるように、この体の面影は残してたからそれが良くなかったかしら? どうせなら白衣じゃなくてドレスを、髪色も貴方と同じ金髪にすれば良かったのかもね」

「ここですべて終わらせる」

「出来るかしら? セフィロス二人相手にするなんて訓練でもしてなかったでしょ」

 

 クラウド VS セフィロス・コピー・DEATH&SYNTHESIS




明日も更新19時予定
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