「うわっ、信じられない光景だぞ、と」
「エルフェが強いとは聞いていたが、まさかここまでとは……」
レノとルードが驚きながら二人の戦いを見つめ、感想を零すが無理もない。
先ほどまでタークスが総力戦を挑み、ついぞ勝てなかったセフィロス・コピー相手に正面から剣技で渡り合ってるのだ。
いや、渡り合ってるというのは適切ではないかもしれない。
エルフェは細かい傷こそ負っているが、致命傷に繋がるような大きな傷は一つも負っていない。
対するセフィロス・コピーは、エルフェの猛攻に押され体の至る所から血を流している。
「残念、セフィロスの技を使うにはダメージを負いすぎたわね」
考えてみれば体内から湧き上がる爆風に晒され、モンスター並みの耐性やスタミナがあるとはいえ無傷とは考えづらい。
体内に蓄積したダメージは格下の俺たちと戦う分には問題ない物だったのだろう。
しかし、格下ではなく自分に迫る実力者と戦えば、その限りではないということか。
片手を切り落としてもまるで痛覚がないかのように立ち上がり、戦闘しようとするコピーの胸を、エルフェは容赦なく貫いた。
底が見えないスタミナを見せたはずの英雄の贋作は、あっけなく倒れ、朽ち果てるように体が崩れていく。
その最後を見届けたエルフェは、剣にこびりついた血を振り払いながらこちらに向き直る。
「すさまじいな、俺たちが苦戦したコピーをこんなにあっさりと……」
「私が戦う前に結構な傷を負ってたから、それにコアを壊せばこんなものよ」
「コア?」
「そう、コピーを作るためにアバランチの改造人間を元にしたんだけど、心臓辺りにマテリアを埋め込んで身体を強化してるの。それを壊したらバランスを保てなかったみたい」
何でもないように話すエルフェだが、その戦いぶりを見ればどれほどの研鑽を積んできたのか想像に難くない。
そして体内に埋められたマテリアなど大した大きさではないはず、それを一撃で破壊した技量は、彼女がどれほどの実力者なのかを如実に表している。
「エルフェは先行して魔晄炉に向かってくれ、俺たちもメンバーを再編してすぐに追いつく」
「わかった」
指示を出すとこちらを振り向かず、魔晄炉へ駆け出すエルフェ。
その姿を見送りながら、レノたちに向き直る。
「さぁ、急いで負傷したメンバーを回収。動けるものから山登りだ」
「うげっ、こんだけ戦ってまだおかわりなんて、酷いブラック企業だぞ、と」
「言うな、任務だ。それに早く山登りしたい奴もいるみたいだしな」
露骨に嫌そうな顔のレノに、新しいサングラスを懐から取り出しやる気を見せるルード。
その後ろから駆け寄ってくる、タークス自慢の銃使い。
何やら大量の物資を抱え、足元の悪い村の瓦礫を飛び跳ねる。
「ツォン副主任、チョコボが積んできたポーション持ってきました。ついでにメンバー全員の安否も確認、後方で他のメンバーは治療中。そっちの指揮はヴェルド主任が取ってくれてるので、魔晄炉組の指揮は副主任に任せるとのことです」
一気にまくしたてると、苦情の一つでも言いそうなレノの口に無理やりポーションを流し込む。
「時間は有限です、早いとこ実験部隊と合流しましょう」
さて、早いとこ俺たちも実験部隊に追いつかねばなるまい。
「うおっ、確かにこりゃセフィロスそっくりだ!」
「ほら、あんまり一人で突っ込まない。合わせる私の身にもなってください!」
「大丈夫、イリーナならついてこられると思って飛ばしてるから、クラウドにもついていけてるだろ」
途中参加で元気が有り余っているのか、ザックス先輩はセフィロス相手にガンガン攻撃を繰り出す。
おかげで私もヴィンセント先輩も交代しながらポーションで一息つける余裕が出来た。
それはありがたいけど、ちょいちょいクラウド先輩を引き出して、もっともっと頑張れって焚きつけてくる!
これだから体育会系のノリって面倒くさい、そりゃ先輩の名前を出されたらやる気も出すし、恥をかかせないためにも頑張っちゃうけどさ。
「あとでどれだけ私が頑張ったかクラウド先輩に報告してくださいよ!」
「わかってるって、これ以上ない立派な副官に成長してるって報告書にも書いとくよ」
「あまり期待するなよイリーナ。こいつの報告書は提出が遅い、俺の方で先にスカーレットに報告しておく」
「さすがヴィンセント先輩! ついでに健気で尽くす女だってそれとなくクラウド先輩に吹き込んどいてください」
「あれ、せっかく助けに来たのに俺の扱い雑じゃね?」
軽口を叩きながらも動きに無駄はない。
少しずつ訓練で培ってきた連携のリズムを取りながら、戦闘に反映させる。
技巧派のクラウド先輩に比べて、ちょっとゴリ押し気味のザックス先輩とじゃ歩調の合わせ方が違うけど、一人前衛が増えた以上の結果が反映される。
そりゃそうだ、実験部隊は三人でチームなのだから、当然チームワークも連携も三人で動く前提で組まれている。
さっきまでは二人で出来ることの幅が少なかったけど、ここからが実験部隊の本領発揮だ。
ほらほら、ザックス先輩に掛かりっきりでいいのかな?
打ち込みたい隙に合わせて私が攻撃しちゃう。
そりゃ、比べたら大したダメージにならないけど、うざったいでしょ。
私って元々手数で勝負するタイプで、あんまり一撃が重たくないから、さっきまで一人でセフィロスの相手をするのってきつかったんだよね。
「なんだ合わせるの完璧じゃん、それならいつでもソルジャー部門大歓迎!」
「無理です、私はずっとクラウド先輩の隣に永久就職してますので!」
戦ってる目の前でこんなに喋られたらいやでも気になるじゃん?
そりゃセフィロスだって人間だし、目は二つしかないもんね、私たち二人を見てたら別軸にいる一人は視覚出来ないよね。
突然背後から撃たれる弾丸を咄嗟に回避するのはさすが、銃声がした時点で回避行動するよね普通なら。
でもね、私たちって普通じゃないから。
「ったく、いつも訓練に付き合わされてくうちにこんな曲芸まで覚えちまったよ」
一度放たれた弾丸をザックス先輩がバスターソードで打ち返す。
潰れた弾丸だけど、そこはソルジャーの怪力で跳ね返された鉄の塊、顔目掛けて飛んだそれを迎撃するために刀を使うよね。
軌道上に刀が置かれるのが分かってたらそこに先に私の蹴りがスタンバってるのよ。
「いっけぇええええええ!!!」
刀を持つ手を思い切り蹴り上げて、がら空きになった身体に銃底を叩き込む。
そのまま銃身を固定して、引き金を引くとゼロ距離で弾丸が発射される。
至近距離で放たれたそれは、確実にセフィロスの腹部に着弾し、その身体をくの字に曲げた。
そして、そこにザックス先輩から横っ面への一撃が入る。
こんだけやってもまだまだ動いてくるし、なんか傷も再生してるし、とんでもない体力オバケだ。
でもこれでお膳立ては完璧! 私の仕事はここまで! あとはヴィンセント先輩が決めてください!!!
「さらばだ、ジェノバ!」
真っ赤なマントから真っ赤な羽をはためかせ、ヴィンセント先輩が空へ舞う。
なんかよくわかんないけど、まさに必殺技って感じ!
「なぁ……なんだあれ? 俺初めて見るんだけど」
「対セフィロス用の文字通り必殺技ですって、私も詳しいことは知らないです」
「なんか銃から出ちゃいけない感じの破壊力出てるんだけど」
「それも的確に心臓を撃ち抜いてますよね。まぁ、心臓を撃ち抜いたらさすがのセフィロスも動けないだろって今まで秘密にしてたプランですから」
心臓を撃ち抜かれたコピーは塵のように体が崩れていく。
「体の中に埋め込まれた不自然なマテリアを破壊した、こいつがコピーを維持する秘密らしいな」
「なぁなぁ、今の技ってなに? それになんか変身してるの俺初めて見たんだけど」
「全部企業秘密だ、秘密を洩らしたらうちの新兵器のテスターにするぞ」
「はいはい! それじゃさっさと魔晄炉に向かいますか。二人ともサボってないで駆け足!」
ちょっと時間が掛かっちゃったけど、これにて無事イリーナ任務遂行完了。
続いて、クラウド先輩を助けに可愛い後輩頑張っちゃいますよ!
「一番傷ついてるのに元気いっぱいじゃん」
「当たり前です、さっさと任務を切り上げて祝賀会して盛り上がりましょ!」
いざ行かん、クラウド先輩が待つ魔晄炉へ!
さて、セフィロスに一言二言話した後、気を使ってコピーの一体を引き離してみたが、これでようやく一対一で戦える。
「……」
「相変わらずだんまりか? 見てわかると思うが意外にセフィロスはおしゃべりだぞ」
ザックスみたいに進んで雑談をするタイプではないが、きちんと会話で意思疎通は出来るし、他人のことをよく見ている。
少し調子が良くない奴がいればフォローするし、後輩の面倒見もいい。
英雄ってのは強さだけじゃない、そんなセフィロスの一面を尊敬していた。
「悪いが、セフィロス相手に試そうとした技のテスターになってもらう」
まだ開発したばかりで技名も考えていない。
クリティカルを狙う必殺の一撃もセフィロス相手には届かないだろう。
ならば、それを連続で放てば?
「攻撃を一度見ないとコピー出来ないんだろ? だったらコピーする間もなく一斉に叩き込む」
スカーレット様に強化されたバスターソードを握る手に力が篭る。
精神すべて刃の切っ先に集中させ、一気に振りぬく。
横一文字に振るわれたバスターソードから放たれた斬撃がコピーを襲い、その身体を袈裟懸けに切り裂く。
そして、返す刀でもう一撃を放つと、今度は逆の袈裟懸けだ。
二撃目の衝撃で吹き飛んだ身体は三撃目でさらに切り刻まれる。
四撃目は下から上に切り上げるように放ち、五撃目は上から下に叩き落すように放つ。
ここまでは刀でいなされるが、徐々に防御は綻びを見せて来た。
六撃目は右袈裟に、七撃目は左袈裟に。
八撃目で身体を回転させ、九撃目と十撃目を同時に放つ。
斬撃が重なり合い、紛い物の刀を打ち砕く。
十一撃目、ここからは防御の暇を与えない。
十二撃目、吸い込まれるように攻撃が敵に入り込む。
十三撃目、胸の奥を抉り取りマテリアを発見。
十四撃目、再生は間に合わない。
「テスターとしては合格だったな」
十五撃目、心臓の奥に光る結晶体は一撃で粉々に砕け、コピーは魔晄炉の底へと落ちていく。
あれではライフストリームに還るよりも先に、体が塵になってしまうだろう。
「セフィロス相手にも通用しそうだな。防御を抜けたのは十を超えてからか……」
これが二体同時に相手していれば十五連撃では足りなかったかもしれない。
防御と回避に専念し、こちらの攻撃パターンを覚えさせずに一気に攻め立てる。
どうやら磨いて来た技は裏切らなそうだ。
「もっとも二体相手でもイリーナとヴィンセントが居ればどうにかなりそうだったな」
仮に本物のセフィロスと戦うことがあってもあの二人がいれば勝てる気がする。
まぁ、本当に恰好が付くのは一対一で勝利を収めた時だろうが、今回のことで少し自信が付いたな。
実戦で人に使うのは初めてだったが、むしろあそこまで原型をとどめたコピーを褒めるべきか。
「さて、次はジェノバの本体を潰しに行くか……セフィロスのことだから助けは要らないかもしれないが、うちが任された任務だからな」
一気に攻撃で押し込んだせいか、魔晄炉内部をずいぶんと下降してしまった。
「今日は高い所に登ってばかりだな」
早い所動くか、あまり行動が遅いと後ろからイリーナが追い付いてくるかもしれない。
「技の名前も決めておかないと連携を取る時に困るよな、何か良いアイデアはないかな」
技名があると他人に説明しやすいし、連携を取るならどんな攻撃をどんな時に仕掛けるか把握してもらわねばならない。
せっかくの必殺技だし、出来たらここぞという時に使う技としてきちんとした名前を付けたい。
「スカーレット様に見せたが、俺の好きな名前を付けろとおっしゃるからな。イリーナに相談して女性の意見を取り入れてみるか、きちんと名前が決まればまた披露しよう」
一瞬幼馴染の顔が浮かんだが、ティファにこの技を見せるわけにもいかないからな。
やはりイリーナに見てもらって、一緒に考えるべきか。
俺の隣に立って戦う相棒なわけだし、あの連続攻撃に合わせてもらうのもイリーナの仕事になるだろう。
「おっと、任務中なのに違うことを考えすぎだな」
早いとこジェノバの本体に向かおう。
さすがに本体を処理するのは実験部隊の任務だからな、セフィロスに全部譲るわけにはいかない。
さて、ここまで来ましたね。
次回更新は出来るなら明日19時、間に合わなければ来週水曜日の予定です。
本当は今月中に完結させたかったんですけどね