とりあえずクラウド強化計画は順調に進行中。
テスターなどと名ばかり、その実態はバトルシミュレーションをとにかくこなしてもらい、レベリングが目的だ。
装備に関しても、ゲームならすべて個人調達するところだが、今の俺は権力者でかなりの高給取り、おまけに兵器開発部門だから会社の金を合法的にクラウドに使うことも出来る。
俺の伝手で手に入るようなものは金に糸目をつけずに収集してクラウドにぶち込んでいる。
リメイク版からの武器強化もどうやら出来るみたいで、スカーレットが元々持っていた技術を使い、見た目こそソルジャーと同じものだが、性能は段違い。
部下に任せてもよかったのだけど、自分の手でゲームに出てくる武器やアイテムを触るのってテンション上がるんだよね。
立場が偉いから下にある程度仕事を投げて、それを管理することが多いんだけど、楽しめるからクラウド周りの装備を弄るのは俺の趣味なのだ。
この前も治安維持部門で模擬戦をし、強さを見せつけて来た。
ハイデッカーの奴が悔しがってたが、ざまぁみろ。
理不尽なパワハラを横目で見てると、自分の経験がフラッシュバックしてなんかむかつくんだよね。
あれのおかげで名前も売れたし、クラウドの同期入社組もクラウドを見下すようなことはしないだろう。
ぶっちゃけクラウドの待遇ってありえないからな。
そりゃ嫉妬の対象にもなるし、周りに肩を並べる同期がいないから、憶測で判断されやすい。
同期から隔離してるのは横から変なちょっかい出されたくないって俺の理由もあるんだけどね。
かなりクラウドは俺に恩義を感じてるみたいだし、しっかりと上司と部下として立場が構築できたはず。
これから少しづつ他の奴らにもクラウドの有能さを知っていく段階に入っていこう。
避けては通れぬ宝条の実験に俺同伴で付き合ったし、そっちの顔見せもばっちり。
宝条の実験体をガンガンに蹴散らす様は見てて気持ちよかったぞクラウド!
リーブも穏健派で抱え込みやすいだろうから今のうちにパイプを強化しておきたいし、クラウドの社会人としての人格形成にあれほど適した場所もないだろう。
こっちがきちんと利益と筋を通せば、勝手にリーブの心象もよくなるし、クラウドのことも可愛がってくれている。
さて、クラウドだけに仕事をさせるわけにもいかない。
俺も俺で今のうちに出来ることをしなければ。
今俺がいるのは副社長室。
目の前には先日副社長に就任したルーファウス。
さすがに副社長ともなると、統括の俺よりもいい机や椅子、そして調度品に囲まれている。
優雅に足を組み、革張りの椅子に座りながらこちらを見つめている。
「何の用だ、副社長就任のあいさつにしてはずいぶんと遅かったなスカーレット」
「私も少々立て込んでおりまして、その代わり副社長がお喜びになる物をお持ちしましたわ」
「親父ではなく俺にも兵器の売り込みか」
俺が手渡した分厚い封筒を開くと、中の資料に目を通す。
最初のめんどくさそうな顔が一転、集中して資料に目を通している。
まぁ、副社長就任のあいさつに兵器売り込みなんて来るわけもないからな。
ルーファウスは資料を封筒に戻すと、そのまま机に置きなおす。
そして俺に向かって足を組み直すと、不敵に笑う。
「どういうつもりだ、なぜ私にこれを見せた?」
「無論、副社長にしか見せてませんし、今後もその予定です。もちろんプレジデントにもご内密に」
俺が見せたのは兵器部門統括の地位を使って密かに調べ上げた、ソルジャー部門ラザード総括の離反行為の報告書だ。
ソルジャー部門の統括であるラザードは、プレジデントと愛人の間に生まれた子供で、自分を捨てたプレジデントに復讐を誓っている。
優秀な男に間違いはなく、スピード出世で今の地位を手にし、特記戦力であるソルジャー部門を統括することになった。
いつか反旗を翻そうと準備をしていたのだが、数年前に突然その機会が巡って来た。
科学部門統括の後任を巡り宝条に負けたホランダーという科学者。
主導していたプロジェクトが失敗と判断されたが、神羅の機密事項を知りすぎてるため出奔することも許されず飼い殺しの状態。
ある日失敗と判断された自分のプロジェクトで生み出したジェネシスという男に、他人に自分の細胞を送り込む『コピー』という能力があることに気づく。
この力を使えば使うほど細胞が劣化し、やがては死んでしまうのだが、この治療を餌に自身の神羅への復讐に利用した。
研究資料を持ちだしたホランダー、大量のソルジャーを自分のコピーに変え離反したジェネシス。
そしてこの背景には彼らを利用して神羅への復讐を狙うラザードの影があった。
ソルジャー部門統括の立場を利用し、彼らのバックアップをしていたのだ。
「わからんな、なぜこれを私に見せる。いったい何が望みなんだ?」
「私の目的はプレジデントには叶えられませんので。そこでルーファウス様のお力をお借りしたくて、とりあえず社長になって神羅を変えて頂きたく思います」
とりあえず神羅という会社が今のままである以上、星の命たるライフストリームを吸い上げ続け魔晄として消費する一方。
そうすると星の守護者達たるウェポンたちが目覚めてしまう。
彼らはこの星に巣くう人間を区別せず、自らを痛める害虫と判断し、人類に牙をむく。
結果的にその余波で神羅は無くなってしまうのだ。
俺の幸せな未来のためにも、星が無くなるのも困るし会社が無くなるのも困る
しかし、今の神羅は魔晄で成り上がった会社。
プレジデントの目的も約束の地と呼ばれるライフストリームが潤沢にある地に新しい都市を作り上げることだ。
会社は存続してほしいが、その方向性は俺の未来には邪魔なのだ。
ゲームでは神羅に真っ向からクラウドたちが対立したが、俺は会社側の人間だし、この地位を捨てたくもない。
ならば内部から上手いこと変えていけると俺は踏んだ。幸いゲームの知識もあれば、組織で立ち回る権力もスカーレットの体にはある。
利用できるものは何でも利用しなければ……。
「魔晄に依存した会社のあり方を変えるには俺が社長として立つのが最も手っ取り早いということか」
「先ほどの資料に、私のプランの正当性も記載されています。すべての出来事の実証は難しいですが、仮説でもあなたには使い道があるんじゃなくって?」
未来でこんなことが起こるから今のうちに備えましょうなど誰も信じない。
まして会社の行く末を決めるなどありえないのだ。
しかし、ある程度の仮説や実証データ、そしてその人物への利益があれば人はそれを利用する。
社長を超えることを目標とするルーファウスには、現体制と相いれないこれらの主張は都合がいい。
プレジデントに対抗する神輿が必要なのだ。
「今回の事態を上手くやり過ごせばあなたの株も上がりさらに立場は万全、おそらくネオ・ミッドガル計画にばかり目が行ってるせいで冷遇され気味の都市開発部門もこっちに付くわ。そうすればあなたがこの会社の社長になれる」
「確かに私にもそういった野心があることを否定はしない。しかし、お前が信用できるかはまた別の話だ」
そりゃそうだ。
早い話が派閥争いでトップを挿げ替えましょうってことだ。
組織では起こりえることだが、きちんとしたやつを仲間に囲い込まないと自分の首を絞める。
正直今のスカーレットがルーファウスにこの話を持ち込むのは話が出来すぎていて疑われて当然。
「お互いに目的があってその方向性は同じだと認識しております。それでいて副社長に話を持ち込んだのは私たちは協力できると思ったからです。少なくともお一人でやろうとしてることよりもずっと成功率が高いと思いませんか?」
「何の話だ?」
「アバランチ」
その一言で初めてルーファウスの顔がわずかに歪んだ。
「ウータイとの戦争も終わりが見えてきて、最近新たにコスモキャニオンの星命学者たちによって生まれた反神羅組織。どうも誰かが資金提供を裏から行ってるみたいで、それも神羅の技術や情報も込みで」
FF7ってのは人気作品で派生作品が大量にある。
そのせいで実は複雑に絡み合う設定や、改変された設定などもあるがアバランチもそのひとつ。
元々はクラウドが物語冒頭で所属するテロリストくらいの存在だったのだが、のちに大量の設定が追加。
星を想う学者たちの研究会から発展し、星の命を削る神羅に対抗するために立ち上がった今風にいうならエコテロリストだろうか。
神羅の敵も多いし、そいつらを取り込みかなりの組織力をもって抵抗をする。
そして昔ガラケー時代にスピンオフが出来て、そこで驚愕の設定が明かされる。
アバランチの活動初期を支えたのが目の前のルーファウスなのだ。
反神羅組織を裏で操り、その対応が後手に回るプレジデントを批判し、社長の座を奪い取ろうとしたのだ。
結果は自分で資金提供したアバランチに裏切られ、神羅のタークスに助けられる。
それでいて数年間幽閉され、本社からジュノン支社へと左遷されるのだ。
「寄せ集めで信用できないテロリストを使うよりも、きちんと利益で手を取り合える派閥争いで社長になったほうがよろしいかと」
「ふん、おまえが優秀な女狐だということは理解した」
「お褒めにあずかり光栄です。それに正面から堂々とプレジデントに勝ちたくはありませんか?」
社長の座を奪い取るってのも暗殺が手段に入ってたけど、正攻法でそれが叶うならそっちを選ぶだろう。
アバランチも場所と活動理念が元々わかってたから存在を把握できたし、ルーファウス副社長の権限で動いてる金や情報の流れを疑って洗いなおしたら、不自然な流れを突き止められた。
クラウドみたいに生身で戦うのは無理だけど、一応元企業戦士ってことでこういう戦いならまだ何とかなるな。
ルーファウスは腕を組みながら、俺を値踏みするように睨みつける。
おもむろに立ち上がると、腰の銃を俺の顔に突きつけ、ゆっくりと口を開く。
俺はそれを一言一句聞き逃すまいと神経を集中させた。
「いいだろう、お前の持ちかけた情報を使ってやろう。その代わり裏切ることは許さん」
むっちゃ怖い、銃口が至近距離であって穴の中が見えそうだよ。
スカーレットの面の皮が厚いおかげでなんとか、緊張感を保ってるけど。
男だった時の俺だったらキャーとか言って騒ぎ立てる自信がある。
厚化粧で面の皮が厚かったことに感謝だ。
「それでは……」
「わかった、アバランチを利用した策は捨てる。代わりにソルジャー部門の不祥事を暴き、ソルジャー部門を丸ごと頂く。三部門も俺が掌握できればそれなりに戦えるだろう」
「タークスもお忘れなく、あれもプレジデントのやり方に疑問を持っている可能性が高いです。私たちに必要なのは数だけが多い無能な駒ではなく、少数精鋭の優秀な駒なのです」
「ソルジャー部門を押さえセフィロスを味方に取り込む、タークスの囲い込みも検討しよう」
よっしゃ!
これでとりあえずガラケー版の事件は先に手を打てた。
そしてルーファウスが失脚しないから後ろ盾として使えるし、ソルジャー部門の離反を早いうちからどうにかできればセフィロスも取り込めるかもしれない。
セフィロスがラスボスなんだけど、本当の敵はその先にあるジェノバ。
よしよし、いい感じに商談を纏められたぞ!
「スカーレットか……まさか俺の工作を見抜くどころか、向こうからプランを持ち込んでくるとは」
先ほどこの部屋を後にした女、スカーレットは親父に取り立てられた幹部の一人だ。
まさか俺に鞍替えするとはな、幹部はすべて親父が選んだ者たちだから俺がその間に食い込むのは難しいと思っていたが、味方に出来るなら親父の力をそのまま削ぐことが出来る。
おそらく都市開発部門のリーブも俺に寝返る可能性が高いのだろう。
いいだろう、俺を利用してるつもりだろうが構わん、俺も利用してやろう。
本気でこの星の未来などを考えてるとは思わんが、こういった大義名分も現体制へのアンチテーゼとして使い勝手がいい。
「タークスか、すまないが至急集めて欲しい資料がある。兵器部門統括のスカーレット……彼女が最近熱を上げてるというテスターの情報を届けてくれ」
タークスとのパイプも確保せねばならん、この機会に少し叩いてみるか。
さすがにスカーレットの情報を直接集めさせるのはこちらの意図がばれて不味い。
ならばと、最近各部門で話題に上がっているスカーレットお気に入りのテスターに私が興味を引かれたといえばちょうどいい目くらましになるだろう。
ほどなくしてタークスのツォンという男が資料をもって俺の部屋に訪れた。
「こちらがクラウド・ストライフの報告書になります」
「報告書? 簡単な登録データくらいしかないと思ったが、たかがテスターの報告書が出来るまでになっているのか?」
「はい、どうもテスターという肩書に収まらず、優れた戦闘力を有してるようです。スカーレット統括直属の部下というのも噂になりやすい存在のようでして、前もって情報を集めていました」
ふむ、思いのほかタークスは優秀だな。
もっと優先順位を上げて掌握する必要がありそうだ。
それにしても上がってくるデータはすさまじいな。
おそらく、ソルジャー部門の統括になる私、治安維持部門のハイデッカー、生体兵器を管理する科学部門の宝条とやり合う時の護衛や懐刀とするつもりか。
地位だけに甘んじず、きちんと信頼できる者を用意しろということか。
認めたくないが、あの女の判断は正しいと認めざるを得ない。
「このクラウドという男は俺が引き抜けそうか?」
「難しいでしょう。スカーレット統括のお気に入りですし、ソルジャー部門、治安維持部門がそれとなく本人にアプローチをかけたらしいのですが、すべて断られています。我々タークスとしても有益な人材と判断し、主任のヴェルドが引き抜きを行いましたが、スカーレット統括の下を異動する気はないと自分の立場を明言しております」
なるほど優秀なことは間違いないのだろう。
それでいて会社ではなくスカーレットに忠義を持つか、私の物にならないのは残念だが好感はもてる。
「本人の評判も悪くありません。その若さでありがちな強さを鼻にかけることもないですし、兵器開発部門以外のヒアリングもおおむね好意的な意見が見られます。兵器開発部門の次期幹部候補とした見方が有力ですね……ただ」
「ただ、なんだ?」
これだけ優秀だということはとにかく人目に付く。
しかも入社時でこれほどの才能があると見抜くことも出来まい、はたから見れば異常な囲い込みゆえに、社長や幹部の血縁者を未来の幹部候補として育成してると思われても仕方がないな。
資料を見るに特にそれといった傾向は見られないが、初の魔晄炉が出来た村出身というのも変な想像を掻き立てやすい所か。
「スカーレット統括の若い愛人なのではないかと、噂が立っていますね」
「はぁ?」
「統括お気に入りなのは隠す気もないのでしょうが、装備の検診や、会社での勉強もすべて部下に任せずにスカーレット統括自ら動かれています。その特別待遇を何のコネもないクラウドが受けているので誹謗中傷としてそのような噂が流れているものと思われます」
「ハハハッ、あの女の愛人か」
下世話な奴らというのは面白い想像を働かせる。
もし本当に愛人だというならそれでも問題ない、むしろ俺を社長にした後に社長夫人なんて地位を望まれたら、それがどんな利益があろうが絶対にお断りだからな。
いくら社長になるためとはいえ、あんな年増女を嫁にしようなどとは思わん。
クラウドとやらが防波堤になってくれるなら、大歓迎だ。
むしろ社長として社員の結婚を祝福してやろう。
「ずいぶんと機嫌がよくなりましたね」
「あぁ、これからのことを真面目に考えすぎてた矢先に、くだらない冗談で笑えたからな。さて、今からツォン、貴様に特命を与える」
感想にありましたクラウドの上層部からの印象はこんな感じ
プレジデント
流石にこのクラスが関心を寄せるほどではない
ハイデッカー
クラウド本人がどうのこうのというよりも自分の手元から優秀な人材がかっさらわれたという気分
自分の部下に無能が多いので逃した魚は大きいと思ってそう
宝条
顔も名前も特に覚える気なし、サンプルとして優秀ならとりあえず手元に欲しい
実験のためのサンプルは多ければ多い方がいい、サンプルの名前など覚えてないが出した結果はきちんと記憶している
リーブ
将来有望な若者、神羅の新入社員でも特に若いのにかなりの待遇なので、自分も期待しているし、教えれることは教えてあげたいと思っている
パルマー
全然興味なし、自分のところのロケットで宇宙に行ける夢にワクワクしてる
ルーファウス
そのうち直接見て存在を測りたいと思われてる
資料や推薦よりも直接自分ので見て判断を下すタイプ
でも、見て見たいと思わせてるので興味は引いている