ルーファウスとの取引も上手くいった。
ソルジャー部門統括ラザードの裏切り行為をプレジデントに直訴したらしく、逃亡する前に身柄を押さえることが出来た。
逃走中のホランダーや、ジェネシスたちの捜索は引き続き行うが、協力者を失ったせいで足並みは鈍るだろう。
ラザードは秘密裏に処理され、表向きはソルジャー部門を好ましく思わない襲撃者の暗殺として公表されることになった。
いや、怖いわ神羅、隠蔽もそうだし平気で嘘を垂れ流す倫理観のかけらもないな。
そして空いたソルジャー部門統括の座をどうするかが重役会議の議題に上がった。
統括が居なくなったが、ソルジャーは大事な戦力だし、ウータイとの戦争が終わりに近づきつつあるときに足並みが揃わないのは不味い。
治安維持部門のハイデッカーがソルジャー部門を自分の指揮下に組み込むことを提案したが、今回の功績者であるルーファウスが統括に名乗りを上げた。
さすがに副社長を押しのけて自分の主張を押し通すことも出来ず、プレジデントも乗り気だったのも幸い。
俺とリーブがそれとなくルーファウスを後押ししたらすぐに決まった。
驚いたのはこういった時に興味がなさそうな宝条もルーファウスをソルジャー部門総括に推したことだ。
おそらく、裏でルーファウスが根回しをしたのだろう。
予算か、それともソルジャー部門があえて会社に流してなかったホランダーやジェネシスのデータを融通することにしたのか。
「それではルーファウスを副社長兼ソルジャー部門統括に任命する」
プレジデントがそう言えば誰も逆らうことはできない。
これでルーファウスの発言力や、会社での地位も盤石になった。
話はそのままウータイとの戦争終結へ向けての作戦に入る。
元々ソルジャー部門を中心に作戦は考えられており、急に統括が変わることを懸念して、治安維持部門と兵器開発部門でサポートする方向で決まった。
俺はもちろん最大限に力を貸すつもりだし、ハイデッカーも社長の息子の方が相手としてやりやすいだろう。
いい機会だし、ここらでクラウドには実戦も経験してもらった方がいいかもしれない。
いくらシミュレーションで結果を残してるとはいえ、実戦経験がないのも困るし、戦争で活躍したという実績は欲しい所だろう。
今ならルーファウスに頼めばソルジャーの作戦に組み込めるはず。
ついでにザックスと組ませてパイプも作っておいた方がいい。
さすがにすでにソルジャーになっているザックスを引き抜けはしないだろうが、ルーファウスの下で力を振るうんだし、敵対しないようにしたい。
強さもそうだが、重要人物でもあるからな、リメイクではなんか生きてるみたいな描写もあったし。
そうと決まればとりあえずルーファウスに頼んでザックスを貸してもらおう。
クラウドもシミュレーション以外に実戦も経験したいって珍しく申請してきたし。
本当にクラウドは強くなることに貪欲で助かる。
俺の言うことも素直に聞くし、きちんと敬ってくれている。
好感度はいくら稼いでも困らないし、強くなるために必要なことでもあるからなるべく希望は叶えてやろう。
それに元々好きなゲームの主人公だったクラウドが勝ち続けるのは見てて気持ちいいんだよね。
急に俺の上司だったラザード統括がいなくなり、代わりに副社長のルーファウスって人が新しくソルジャー部門の統括になった。
表向きは暗殺されたことになっているが、ルーファウス新統括は真実を俺たちに教えてくれた。
最初は信じられなかったが急に離反したジェネシスやアンジールのこと、そして二人が抱えてた劣化っていう現象についても説明された。
「急なことで諸君らも動揺してるかもしれないが、ウータイは待ってくれん。ひとまずソルジャー部門、治安維持部門、兵器開発部門で当初の作戦を決行する」
戦争は待ってくれない。俺もクラス2ndとして戦場に行くことが決定している。
「ザックスだな、すまんが配置に関して少し変更がある、このまま残ってくれ」
ミーティングが終わりみんなが会議室から出ようとしてるところ、新統括から直々に名前が呼ばれ、他の仲間たちがいなくなるのを待った。
「先ほども言ったが今回の作戦に兵器開発部門から人員が派遣される。お前にはそいつと一緒に行動してもらう」
「ちょ、ちょっと待ってください!? 兵器開発部門ってことは後方支援でしょ、まさか俺前線に出れないんですか!」
せっかくクラス2ndからクラス1stへの道も見えてきた矢先だってのに、こんなところで立ち止まるなんてまっぴらごめんだ。
副社長相手なのだからもっと丁寧に話さなければいけないのだろうが、思わず初対面にも関わらず素で反応してしまった俺は悪くない。
「私相手には砕けた口調でも構わんが、ハイデッカー辺りには気を付けろよ。そして当然の疑問だろうが問題ない、兵器開発部門から来るのは戦闘員だ。今日から作戦決行日まで兵器開発部門へ行ってそいつと訓練して、互いの認識を擦り合わせろ」
そう言われて兵器開発部門への出向命令が書かれた書類を渡された。
何が何だかわからないが、俺は普段行くことのない地下の兵器開発部門の研究開発ブロックへと足を運んだ。
「こんちは! ソルジャー部門から出向してきましたザックスです!」
とりあえず元気よく近くに居た白衣の研究員に声をかける。
「おぉ、君がザックス君ね。話は聞いてるから、一緒に付いて来て」
どこに行けばいいかもわからんし、普段立ち入ることのないエリアなので全然土地勘がない。
迷わないように後ろを付いていくと、俺たちが訓練でも使う巨大なバトルシミュレーターが鎮座していた。
「すげぇ、うちのよりもデカいじゃん」
「ははっ、クラウド君専用にスカーレット統括が用意した最新型だからね。統括、ソルジャー部門から出向した2ndソルジャーザックスをお連れしました」
「下がっていいわ」
そこには美人ではあるがどこか化粧の濃い、つま先から爪の先、身に纏う服装まで全身真っ赤で着飾った女が立っていた。
あまり関わることも話すこともないが、この部門の統括、スカーレットだ。
きつい性格で関わった戦闘兵の話だと、ハイデッカーとどっこいどっこいの気難しい幹部らしい。
どっちも地獄ならせめて美人がいる地獄の方がいい何て言ってたが、美人だけどかなり性格もきつそうだな。
「私があなたを招集したスカーレットよ、もうすぐクラウドの訓練が一息つくからそこで待ってなさい」
モニターに映るシミュレーションの内容を見ると、これがえげつない。
俺も訓練でやらされるが、俺たちがやってる内容よりもきついんじゃないかってくらい高度な戦闘内容だ。
このツンツン頭の男がクラウドか、思わず身のこなしに感心してしまう。
歳は俺よりもずっと若そうだが、並みのソルジャーなんかよりもずっといい動き、ソルジャーで例えるとクラス2ndは確実。
俺だって負ける気はさらさらないが、もし模擬戦をするとなったらかなり気合入れないと厳しいだろうな。
そんなことを考えながら訓練を眺めていると訓練が終了し、シミュレーターの中からクラウドが出てくる。
「お疲れ様クラウド。クラス1st用に調整したこのデータでもこれだけ戦えるようになるなんて本当に素晴らしいわ」
「ありがとうございます。それもこれもスカーレット様の日頃の指導のおかげです」
「いいのよ、あなたは私にとっても特別な存在なんだから。それよりも今回の武器の調子はどう? マテリアの効果を引き出すようにチューンアップしたから、少し威力が抑えめになってるのよね」
「そうですね。属性魔法や、回復魔法が効果的に使えるのはいいのですが、やはり基礎攻撃力が下がるのがネックですね。一人で立ち回ってると隙も大きくなりますし、全体的に敵の殲滅速度が遅くなってしまうのが気になります」
なんか噂と全然違うな。
スカーレット統括もそんなに気難しい感じはしないし、むしろクラウド相手に妙に優しいというか。
俺も自分の所の上司や先輩にはあんな風に気遣われたことはあるが、統括クラスにはねぇや。
クラウドの方も無理やり訓練をさせられてる感じもないし、統括との精神的距離が近いのか、緊張もせずに意見を言えている。
ハイデッカーに意見しようものなら、ひどい目に合うからな。
うん、共同作戦中も怒鳴り声が聞こえるから、こっちまで士気が下がるんだよな、あれ。
っていうか、二人とも俺のことは無視ですか?
クラウドなんか、スカーレット統括しか目に入ってねぇのか。全然こっちを見ねぇ。
そういや、兵器開発部門に統括の愛人が囲い込まれてるって噂を聞いたことあるけど、もしかして本当にそうなのか?
ただのコネじゃなくて、きちんと実力があるのは実際に見てわかったから何にも言わねぇけどよ。
統括みたいな偉い役職の人と話すのがそんなに楽しいかね。
出来たらそろそろ俺に気が付いて欲しいんだけど……。
「スカーレット様、彼は一体?」
おっ、ようやく気が付いた。
「前に話してた今度の作戦で一緒になるクラス2ndのソルジャー、ザックスよ。あなたが要望していた実戦形式の訓練相手になるわ」
「ありがとうございます、スカーレット様。初めまして、俺は兵器開発部門テスターのクラウド・ストライフです、よろしくお願いします」
「おう、今紹介にあずかったザックス・フェアってんだ。俺の方が先輩だけど、これから一緒に背中を預け合うんだから気軽にザックスって呼んでくれ」
「わかった、俺のこともクラウドで頼む、よろしくなザックス」
にこやかな笑顔で俺に手を差し出してきた。
俺もその手を握り返して握手を交わす。
うん、いい笑顔だ、俺の勘だけどクラウドは悪いやつじゃないと思う。
「それじゃさっそく二人で模擬戦をしましょうか、お互いの実力を正確に把握しておきなさい」
「おっしゃ、ここの総括は話が早い。訓練だからって負けねぇからなクラウド!」
「悪いが、スカーレット様の前で無様な姿は見せれない。勝つのは俺だザックス!」
やる気十分なのは良いんだけど、何この忠誠心。
たしかに戦闘兵ってのは誰かしら尊敬する奴に忠誠心を抱くことがある。
前にいたラザード統括だってソルジャーに慕ってる奴もいたし、上司じゃなくたって、尊敬できる奴はそういった念を抱かれることも珍しくない。
うちだと、圧倒的なカリスマをもつセフィロスとか、後輩の面倒見がよかったアンジールとか。
でもあんまり評判の良くないスカーレット総括にこんなに懐いてるってのも珍しいのかも。
こりゃ、愛人疑惑が出てもおかしくないわな。
さっきまでのやり取りも見てると、ただの上司と部下ってよりは親密すぎるし。
でも恋人ってのにはさすがに歳が離れすぎてるし、いや、変なこと考えてないでとりあえず今は模擬戦に集中だ。
相手は油断していいような奴じゃないんだから。
俺だってクラス1st目指してるんだ、ここは一丁先輩として後輩に実力を見せつけてやるぞ!
「負けたら承知しないわよ、クラウド」
「もちろんです、スカーレット様」
それから俺たちはシミュレーターに入って市街地や平原、モンスターが乱入する草原など様々な舞台を想定した場所で模擬戦をしまくった。
たしかにクラウドは肉体的に強化されたソルジャーじゃないが、その技量はそこらのソルジャー顔負けの立ち回りだ。
最初こそ、実戦経験がない穴を突いて俺の方が優位に立ち回ってたが、すぐに感覚を掴んだのか、何度かヒヤリとさせられる場面も出てきた。
だが俺にだって先輩として後輩にかっこつけたい意地ってのがある。
簡単に勝てそうにはないが、簡単に勝たせてもやらねぇ。
さっきの会話で魔法がやばい代わりに基本的な武器性能が低いってのを狙わせてもらって、とにかく魔法を使う手数を減らすように攻めまくる。
そのまま、設定を変えて何戦も何戦も繰り返す。
さすがに俺の体力も底が見えてきた時に統括からストップがかかって、結局二人の勝敗は引き分けたままだ。
シミュレーターから出て行くと二人して統括からポーションを受け取り、部屋に置いてあったベンチに腰をかけた。
戦闘で汗をかいた体にポーションが染み渡る。
クラウドも俺と同じく、統括に貰ったポーションを一気飲みして大きく息を吐いた。
「申し訳ありません、負けることこそありませんでしたが、明確に勝つことが出来ませんでした」
「いいのよ、あなたが生きてさえいれば問題ないんだから、負けなければいいの。それよりも見なさいこの戦闘データ。見る見る動きが良くなってったし、これはクラス1stとしてもやっていけるほどよ。まだあなたには伸びしろがあるの、次は調整し直した装備で再度戦闘データを取りましょう」
「はい、スカーレット様! いつの日かセフィロスを超える男になって見せます!」
「おっ、すげぇ目標だな。俺だって負けちゃいられねぇぜ、セフィロス以上の英雄になるのは俺だ!」
セフィロスを超える。そんな目標は近くに居る奴ほど諦めちまうが、こんな風に気持ちよく目標を追い続ける姿に、田舎から出て来たばかりの俺を思い出す。
後輩がこんな目標掲げてんだ、俺が負けるわけにはいかねぇ!
「とりあえず二人とも今日の所は訓練終了、ザックスはまた明日この部屋に来なさい。今度は二人での連携を確認するためにシミュレーションを受けてもらうわ。クラウドはこのまま私と一緒に装備の調整ね」
「はい、よろしくお願いします、スカーレット様。ザックスまた明日な」
二人はそのまま部屋を出て行ってしまった。
移動しながら、今回の戦闘での武器の使用感や今後の改造案を話し合っている。
うん、ちょっと待てよ。
もしかして俺たちがシミュレーターに入って訓練してる間ずっとクラウドのこと見てたのか!?
「仲良すぎんだろ……」
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