「ウータイと停戦協定を結ぶことになった。内容も生かさず殺さず、適度に搾取し続けることが出来るように落とし込んである」
「ガハハ、若の初陣がこれほどまでに上手くいくとは。協力した治安維持部門としても鼻が高いですぞ」
「キャハハ、私の可愛い兵器たちも忘れてもらっちゃ困るわ」
ウータイとの戦争も終わり、結果を見れば神羅の一人勝ちともいえる状況だ。
途中ソルジャー部門がゴタゴタしたが、ルーファウスは上手く部門をまとめ上げ戦果をたたき出した。
うちが用意した兵器もかなりの活躍したと報告を受けている。
別に何か特別なことをしたわけではないのだが、クラウドをテスター名目で使い続けてることがどうやら影響しているようだ。
使い込んだ装備はクラウド専用にチューンアップしてるが、その技術をソルジャーに転用することでソルジャー部門全体の装備の質が上がっている。
おまけに、うちで作った兵器のほとんどをクラウドがぶちのめしてるおかげで、研究員たちの刺激となり、技術の進歩が加速している。
「うひょ、でもでも、これならもっと一方的にウータイから搾り取れたんじゃない?」
普段からあまり発言力のない宇宙開発部門統括のパルマー。
一応神羅製のロケットの開発は進んでるし、まだ打ち上げに失敗していないのだが、どうもこの頃から威厳がない。
「若が説明しただろう。完全に潰すよりも適度に生かして、利益を吸い続ける方が長期的に見て得なのだ。それこそ魔晄のようにな」
「それに、まだウータイには仮想敵としての役目があるのだよ。共通の敵がいたほうが人をコントロールしやすい」
「その通り、そしてウータイの戦士というのは中々に優秀だ。ソルジャーの実力を測る物差しとして利用価値があるのだよ」
ハイデッカーの説明をプレジデントが補足し、ルーファウスが続く。
それに完全に叩き潰すと、向こうもなりふり構わずに玉砕覚悟で妙なことを起こしかねない。
窮鼠猫を嚙むなんて言葉があるが、ほどほどのここいらで停戦をちらつかせれば、すぐにウータイは乗って来た。
追い詰められた人間は、目の前に出された楽な選択肢に抗えないのだ。
「さて、神羅の各部門のこれからの動きを擦り合わせておこう。ソルジャー部門と治安維持部門は今後国ではなく、反神羅を掲げるテロリストの相手が主になるだろう。兵器開発部門と都市開発部門は新規魔晄炉の建設。科学部門は引き続き約束の地を探索しろ、宝条博士、ソルジャーや研究に熱心なのはいいが本来の責務をしっかりと果たせ。宇宙開発部門は……ひとまず予定されているロケットの打ち上げを成功させろ」
あんまり期待されてないな、パルマー。
そこから各部門統括の今後の予定が報告される。
ルーファウスは逃走中のホランダーとジェネシスの捜索を一手に引き受けると宣言、抹殺ではなく確保を優先すると宣言した。
これに対してプレジデントが難色を示したが、意外にもこの提案を好意的に受け止めたのは宝条だった。
大方貴重なサンプルが手に入ると踏んでいるんだろうが、今この場ではありがたい。
「……以上のことから、建設予定の新型魔晄炉は従来の物よりも魔晄を効率的にエネルギー変換することを目標としています」
「効率的は良いが、これでは初期コストが掛かりすぎるだろ。今更魔晄炉にいらぬコストをかけるくらいならテロ鎮圧のために治安維持部門に予算を回してもらいたいね。約束の地が発見されれば潤沢な魔晄が手に入るのだから、別にこんなところで新しい挑戦をする必要もないだろう」
ハイデッカーがリーブの新型魔晄炉に対して難癖をつける。
約束の地云々はともかく、出来るなら自分の所に予算を集めたいのだろう。
狙ってたソルジャー部門の統合が出来なかったからって、リーブから予算を奪おうと考えてるな、このバカ。
「現段階で約束の地がどこにありどのようなものか不明瞭な以上、今我々が手に入れることが出来る魔晄の価値は計り知れません。限りある資源を無駄なく扱うことにこそ意義があると考えています」
実はリーブと話し合いを進めて、ルーファウス派閥に俺が属していることを伝えている。
プレジデントが興味を失っているミッドガルやそこに住む人々にきちんと目を向ける姿勢をルーファウスにアピールするように頼んでおいたから、リーブも好意的だ。
今更魔晄を使用しない生活など人々は送れないだろうし、人々のライフラインは今や魔晄のおかげで成り立っている。
いきなり代用エネルギーとして石炭や石油に転換することも現実的じゃないし、ひとまずライフストリームから吸い上げる魔晄を抑え込むことを俺は考えた。
早い話がエコ思考だよね、この考え方にはリーブも同意してくれたし、ルーファウスも現プレジデント体制へのアンチテーゼとして後ろ盾になってくれる。
「効率的な魔晄のエネルギー運用技術は、マテリア研究や兵器転用も視野に入れてるの。それに新型魔晄炉は私の兵器開発部門も一枚嚙んでるんだから、そんな理由で予算を横取りされるわけにはいかないわ。プレジデント、リーブの新型魔晄炉計画に兵器開発部門は賛成です」
「ぐぬぬ」
リーブだけが相手ならまだ駄々をこねるところだろうが、持ちつ持たれつの兵器開発部門も絡むとなると何も言えなくなるハイデッカー。
「都市開発には興味はないが、今の現状に満足し発展を疎かにするのは科学者として安易に同意できないな。それに魔晄技術が発展すれば私の研究にも役に立つ、私もリーブ君の向上志向には賛成だね」
これまた思わぬところからの援護射撃。
たぶん言ってることは本心だろうし、約束の地にいまいち興味がなく、探すくらいなら他の実験を継続したいというのも見え隠れする。
現状約束の地を本心から最優先してるのはプレジデントただ一人。
ハイデッカーはプレジデントに従ってるだけだろう。
俺とルーファウスとリーブは約束の地に頼らない方向に舵を切ってるし、宝条もあまり魅力を感じていない。
パルマーは……どうでもいいんだけど、仮に宇宙から新たな資源を持ち帰るくらいの計画を考えてもらえたらいいのに。
いくらプレジデントのワンマン経営とはいえ幹部たちがまとまった意見を出せば無視はできない。
それに正面から約束の地を否定しているわけではないのだ。
今ある資源を有効活用して、長期的に見れば神羅に利があると考えて提案している。
プレゼンのコツは、相手にメリットをきちんと提示すること。
否定しないでこっちの方が利がありますよって誘導すると案外円滑に物事が進む。
「新型魔晄炉に関してはリーブの計画通りに進める」
よしよし、これで問題ないな。
この後も重役会議は進みひとまず当面の問題はクリア。
コレルに魔晄炉を建設するまで少し時間が空くから、ニブルヘイムの神羅屋敷に眠るヴィンセントも抱き込めるなら抱き込みたい。
元タークスだし、戦闘力も折り紙付き。
今ならソルジャー部門とタークスにも手を伸ばしてるルーファウスの力で俺の下へつけるように工作することも出来るだろう。
ただ困ったことに神羅屋敷とあそこの魔晄炉って科学部門が例外的に管理してるんだよね。
魔晄炉のメンテナンスも都市開発部門を通さないで、科学部門が整備してるから理由なく俺が立ち入ることも出来ない。
あそこでジェノバを秘密裏に管理して、宝条の研究に魔晄を利用しているから正攻法で申請を出しても通らないはず。
ニブルヘイムならクラウドの故郷だから、休暇を取らせて神羅屋敷に忍び込んでもらうことも考えたけど、さすがに一人だと厳しいしヴィンセントと何の接点もないから説得が難しいよな。
そしてちょっと心配なのがティファの存在だ。
クラウドは元々ティファに認めてもらうためにソルジャーを目指したのだ。
本来ならソルジャーになることができず、故郷にも任務がなければ戻らないはずだったのだが、今のクラウドは精神がかなり安定している。
そうなるように俺が誰にも認められなかったクラウドを褒めまくり、わかりやすい形で成功経験を積ませたのだ。
もし今ティファに会って、クラウドにどんな影響があるかわからないのだ。
何もない可能性もあるが、ティファに寄せた想いを強め神羅を辞めることや、逆にティファがミッドガルにクラウドを追うようなことがあっても困る。
さすがに故郷に帰れば母親に会いに行くだろうし、俺がティファに会わないようにと釘を刺すのも不自然すぎる。
こういう時はタークス案件なんだけど、まだルーファウスも完全に掌握出来てないみたいだし、どうしたもんかな。
いいや、共犯者なんだしちょっと相談してみよう。
もしかしたら何かいいアイディアを持ってるかも。
「ふむ、宝条博士にバレない形でニブルヘイムの神羅屋敷に侵入したいのか……」
さすがにヴィンセントのことを今の段階で話すわけにはいかないので、ガスト博士が残したジェノバの資料を極秘裏に集めたいとして相談してみた。
「魔晄炉もそうだが、神羅屋敷にも少ないながら科学部門の奴らがいる。タークスを使いたいところだが、アバランチが怪しい活動を始めてな。そっちにかかりっきりなうえ、ソルジャーを下手に使うわけにもいかん」
ルーファウスが支援をしなくても反神羅を掲げる奴らが集まってアバランチを結成した。
タークスはその処理に追われていて残念ながら今回は手を借りられなさそうだ。
ソルジャーを使うことも一考したが、ソルジャーの健康管理やデータの採集は科学部門が行うから、極秘裏に科学部門を探るのは向いていない。
万が一セフィロスが来たらアウトだし、ソルジャーが来ないことは全然いいんだけど、どうしたもんかな。
「そう言えばニブルヘイムはクラウドの故郷だったな、彼に任せてはいけないのか? ザックスや他のソルジャーからの評価も高いし、戦闘力だけで言えばクラス2ndでも上位に値すると報告を受けている。まだ若いから部隊を率いる隊長の資格が未知数だが、今から仕込めばソルジャーでもタークスでも通用するぞ」
やっぱりルーファウスもクラウドを使うことを思いつくか。
でもルーファウスの耳にも活躍が届いてるってことはクラウド改造計画は大成功だな。
そりゃ無茶苦茶訓練してるし、ザックスのおかげでここ最近さらに強くなったからな。
これなら俺の護衛も安心して任せられるし、そろそろただのテスターじゃなくてもっと高い役職を与えることも出来ると考えている。
ただ役職や給料でしばりつけても、故郷で幼馴染のティファに会うと色々不味いんだよ。
「クラウドの能力は私も認めてるけど、一人で科学部門にバレずに必要な情報を抜き取るのはまだ無理よ。ソルジャーは今回の戦争で体験出来たけどタークスの経験はないもの」
「確かにいきなり実践をさせるわけにもいかぬか……そうだ、スカーレット、君が直接ニブルヘイムに行けばいいんじゃないか?」
「はぁ? 副社長、大変申し訳ないのですが私の話を聞いてましたか。私が動くと科学部門がいい顔をしないから極秘裏に動ける人材を探してるのよ」
兵器開発部門トップの俺が下手に他所の部門の管轄に首を突っ込むと面倒ごとになるから、他の奴に任せれないかって話をしてたよな。
「だから、ニブルヘイムに行く表向きの理由があればいい。クラウドの出身地だというのが幸いだったな、君たち二人の関係を無能な外野がなんて言ってるか知っているか?」
「もちろん、若い男を権力で無理やり囲った女とか、年増の上司に上手く取り入った男娼だとか。私には直接言わずに陰口だけですが、クラウド相手には本人の前で言い出すバカもいるらしいわね」
はたから見たらありえない依怙贔屓をしてる弊害なんだが、こういった下種な噂が好きな人間はどんな社会にも一定数いるのだ。
無論俺の権力でそんな奴らには問題にならない範囲でやり返してるし、クラウドの方も有名税だから気にする必要はないと言っている。
万が一これでクラウドがすべて俺の力で認められただけで、自分には何の力もないと思い込んだら、成長させたメンタルが揺らいでしまう。
俺が手間暇かけて育成した部下であり、俺が死なないで明るい未来を送るための切り札なのだから、下らぬことで潰されてはたまらない。
「スカーレット統括の愛人クラウドと認識してる愚か者が一定数いるのは事実だ。しかし、今回に限れば利用できる物は利用するに越したことはない」
ルーファウスが考えたプランでは、クラウドには普通に休暇を与え故郷に帰る機会を与える。
これは別に問題にならないが、次は俺だ。
俺も同時にリフレッシュ休暇を取りクラウドに同行するのだ。
これなら、表向きは愛人との秘密旅行としてあまり騒ぎ立てずに移動できるし、ニブルヘイムに行く理由も出来る。
それでいて、お忍びの旅行だから移動に使う人員や護衛に箝口令を敷くことも出来るし、万一漏れてもただの権力者と部下の火遊びとして処理できる。
別に何をするわけでもなく、勘違いするバカどもは勝手にさせておけばいいのだ。
これは条件をすべてクリア出来るのではないか?
それに、クラウドにも極秘任務だからと説明しておけばニブルヘイムで不用意に他人と接触する機会を制限できる。
ティファと極力関わらない大義名分が出来るわけだ。
さすがに母親には会わせてあげたいけど……。
「それにこういった話なら科学部門で話題になったとしても、宝条博士に話が行く可能性は低いだろう」
「人間関係のあれこれに興味があるとは思えませんからね」
「もしも、タークスに余裕が出来れば一人位そちらに付かせよう。三人いれば何とか出来るだろう」
あら、もしかしてお目付け役かな?
ちょっと狡猾で野心家に見合った感じになってきたじゃんルーファウス!