【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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ニブルヘイムへ

 まさかこんな形で故郷のニブルヘイムに戻ることになるとは思わなかった。

 ついこの間仕送りと一緒に、出世したことを書いた手紙を出したばかりなのに。

 もしかしたら、郵便中の手紙を追い越して母さんの元に着いてしまうかも。

 

 俺が兵器開発部門に入って、早いもので一年が過ぎようとしている。

 最初は何の役職もないテスターだったが、今では実験部隊隊長という役職までついてしまった。

 部下も誰もいないのだが、きちんと功績に見合った地位を上げないと今後の扱いに困ると言われ、俺の知らぬ間に決まっていた。

 俺みたいな若造が異例の出世すぎて変な感じもするし、肩書とはいえ部隊長だなんてと一度スカーレット様に話をしたが。

 

「ただのテスターにしておくにはクラウドは優秀すぎるのよ、あんた自分の訓練量や戦わされてる兵器の危険度をきちんと把握してる? 正直もう外部から人を呼びつけるのは無理よ」

 

 たしかに、ザックスからも訓練内容に関してはお墨付きをもらってる。

 

「すげぇよなクラウド。いや、俺もここに通い始めて思ってるけど正直訓練のレベル高けぇもん」

 

 ウータイとの戦争の後もザックスはちょこちょこ兵器開発部門のシミュレーターを利用しに来てるし、俺の訓練にも付き合ってくれている。

 よその部門なのに大丈夫なのかと本人に聞いたことがある。

 

「うちの統括はプライベートな時間に他所と仲良くしても特に問題ないって言ってくれてるし。あとほら、実際クラウドと訓練し始めて俺も強くなっちゃってるもんね」

 

 聞いた話では近々クラス1stの昇進試験を受けるらしい。

 実力的には申し分なく、俺と一緒にウータイで戦ったことで、部下を率いての作戦の遂行能力もあると見られたようだ。

 たしかに、気の使い方とか、指示の出し方とか上手かったもんな。

 

 ザックスが相手だと、素で接することが出来るというか、なんでも話しやすすぎるくらいだ。

 スカーレット様に認められて、他の一般兵なんかからのやっかみがひどい時もあったし、俺も迷惑をかけないようにと少し神経質になってた時期がある。

 でも、ザックスと交流するようになってから、なんだか肩の力が抜けたような気がする。

 

「もう神羅を辞めちゃったけど、アンジールって先輩がいてな。その人の真似をしてただけだよ」

 

 なんでもないように笑うザックスは、もし俺に兄がいればこんな感じなのかなと思ってしまう。

 

「クラウドだってすげぇじゃん、入社して一年ちょっとでもう部隊長なんだろ?」

「部下も誰もいない、役職だけだけどね」

「何言ってんだよ、こうやってシミュレーターを俺がここで使えるのもクラウドの許可のおかげなんだろ、もっと胸を張れよ」

 

 ザックスがそう言ってくれると、なんだか本当にそう思えて来るから不思議だ。

 俺に役職が付いたのはある程度の権限を持たせることも目的だと聞かされている。

 おかげでザックスの休みの日に合わせて一緒に訓練も出来るし、この前はザックスに付き合ってプライベートで、花売りをしてる女の子の手伝いなんかもさせられた。

 

 役職手当も付くから給料も増えたし、母さんに色々と説明がてら一度故郷には帰ろうかなと思っていた矢先、極秘任務を言い渡された。

 

「ちょっとあなたの故郷にある神羅屋敷に用があってね、会社の他の部門に知られずに資料を持ちだしたいからあなたにも特命を言い渡すわ」

 

 俺の故郷ニブルヘイムはこれといった特産もないし、元々は何もない田舎だったらしい。

 でも、俺が生まれる前に世界初の魔晄炉が出来上がり、それを管理するための大きな屋敷が村の奥にある。

 村の子供たちが時たま度胸試しに、または好奇心を胸に屋敷の近くまで遊びに行くと、決まってそこに勤める大人たちに怒られた後に、村長が直々に説教をし、さらに自分たちの親に怒られると決まっていた。

 そんな経緯もあったもんだから、村の子供たちは屋敷にあまりいい印象を持っていなかったし、そこそこの歳になるころには誰もあの屋敷には近づかないようになっていた。

 

 神羅の施設なのだから、許可を取って入るものと思っていたら、どうやらこっそり入り込んで中の資料を持ちだしてしまうのが今回の目的らしい。

 同じ会社組織とはいえ一枚岩ではないのだろう、無論俺はスカーレット様の兵器開発部門の人間だし、あの人のためになるのなら特に問題もないと思っている。

 魔晄炉だけに頼り切らない、新しい未来のかじ取りのために副社長と共に会社の今のあり方を変えようとしているという話も聞かされているし、そのために俺が出来ることで少しでもスカーレット様を支えられることが出来たらいいと思っている。

 

 だから、最初は自信がないから断ろうと思ってた昇進の話も受け入れたのだ。

 俺が少しでも偉くなった方が、色々と融通が利く場面も多いのだから、しっかりと与えられた責任を果たしていこうと改めて思った。

 昇進に迷っていて、相談をしていたザックスにこのことを話したら。

 

「俺もよく先輩方に子犬だなんて言われるが、クラウドはまさに忠犬スタンプみたいだな」

 

 そう言いながら笑うザックスに、俺もつられて笑ってしまった。

 

「もしザックスが捨て犬になったら、俺の部下にしてもらえるように頼んであげるよ」

「あっ、言いやがったな。俺よりも偉くなったからって、今に見てろ。すぐに俺もクラス1stに上がって見返してやる」

 

 頭をぐしゃぐしゃにされながら、俺もザックスの髪をぐしゃぐしゃにしてやった。

 そうして俺たちはまた笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 俺がニブルヘイムからミッドガルに来た時は、村から出る行商のおじさんのチョコボが引っ張る馬車に乗せてもらった。

 田舎だし、交通機関なんてそれしかないから、中々里帰りも出来なかったのだが、神羅の社員がニブルヘイムに向かう時は基本的にヘリコプターで向かうらしい。

 モンスターが出た時のためにいつもの装備一式とは別に、一般兵の制服も用意している。

 これならヘルメットで自分の顔がバレることはないだろう、どうも神羅の若手の中では有名人らしく、ひそかにファンクラブが出来てるとザックスに教えてもらった。

 なぜファンクラブなんてものが出来ているんだ……そしてザックス、なぜファンクラブに入っているんだ……。

 

 そんなことを考えていたらヘリポートにスカーレット様が来た。

 いつものワインレッドのドレスに身を包んでいるが、さすがにその格好だと村で目立ってしまうので、ヘリの中でタークスが着るようなスーツに着替えると聞かされている。

 あくまで表向きはプライベート旅行となっているから、出発の時も細やかな偽装をしなければならない。

 

 そして俺たち二人以外にもう一人タークスから協力者が来ることになっていた。

 

「初めましてクラウド君、俺は総務部調査課のツォンというものだ。ニブルヘイムまでの間よろしく頼むよ」

 

 そう言って握手を求められたので、俺はそれを握り返した。

 黒のスーツが、落ち着いた雰囲気と相まって大人の雰囲気を醸し出している。

 少し長い黒髪を後ろで束ね、その端正な顔立ちはザックスから聞いていた通り真面目を絵で描いたような人だった。

 

「兵器開発部門実験部隊隊長、クラウド・ストライフです、よろしくお願いします」

「あまり気を張りすぎないように、君のことはザックスから聞いている」

 

 ザックスとツォンさんは友達らしくて、昔一緒に任務をしたことがきっかけで仲良くなったらしい。

 そのことについて尋ねたら。

 

「あいつは誰とでもすぐに仲良くなって友達認定するからな、クラウド君も気を付けろよ」

 

 と冗談交じりに笑いながら言われた。

 

「今回はヘリの操縦もするということだったが、優秀なんだな。ソルジャーはバイクや車までは任務で運転するが、ヘリを運転できるものは基本的にいない。まるで我々タークスのようだ」

 

 ソルジャーにはいくつか必修として訓練する項目がある。

 その一つが運転技能で、ほぼ全員がバイクと車の運転が出来るようになっている。

 いくらソルジャーが普通の人よりも強靭とはいえ、足の速さは機械には敵わない。

 行動範囲を広げ、移動速度を高めるためにも乗り物に乗れることは必須の技能なのだ。

 ただ、あくまでもバイクや車のような地上を移動するものだけで、船やヘリのようなものは専用の訓練を受けた一般兵が受け持つのが普通なのだが……。

 

「兵器開発部門では搭乗型の兵器のテスターもしていますので、一通りの乗り物であれば操縦できますよ」

「なるほどな、それじゃ行きのフライトは任せるとしよう、帰りは私の操縦でいいかな?」

「あっ、出来たら帰りも俺の操縦でも構いませんか?」

「別に構わないが、フライトは中々に神経を使う、君の負担がかかりすぎてしまわないか? 一応は里帰りなのだから多少楽をしても罰は当たるまい」

 

 こちらに気を使ってくれているのか、ツォンさんはそう言ってくれるが、実は俺がヘリを操縦するのにはもう一つ別の理由がある。

 

「じ、実は俺すごく乗り物に酔いやすい体質で……」

「それで?」

「自分で運転してる時は全然大丈夫なんですけど、人の運転だとすぐに酔っちゃって使い物にならなくて……」

 

 電車は平気なのだが、ザックスのバイクにサイドカーを付けてドライブに行った時もすぐに酔ったし、ヘリみたいな空中に浮かぶ奴なんか最悪。

 移動時間をずっと自分の三半規管の狂いと戦っていなければならない。

 ヘリでニブルヘイムまで行くとしたら、その間ずっと苦しむのはさすがにつらい。

 

「そういうことか、わかった。支障が出ないならその方がいいのだろう。操縦は任せるが、何かあればすぐに俺に声をかけてくれ」

「ありがとうございます!」

 

 よかった、これが運転するのを心配されてヘリの後ろに座らされてたらずっとグロッキー状態でスカーレット様に迷惑をかけてしまう。

 たぶん俺のことを心配して背中をさすったり、酔い止めをくれたりと気を使ってくれるんだろうけど、あまりの情けなさに別の意味でメンタルがやられてしまう。

 

「それじゃ、さっそく出発しようか。今から行けば昼前には着くはずだ」

 

 

 

 

 

 

 ヘリポートを飛び立ってからしばらくすると、隣に座っていたツォンさんが話しかけてきてくれた。

 

「どうだ、調子は?」

「はい、大丈夫ですよ」

「喋っても構わないか?」

「はい、むしろ酔わないので話相手になってもらえた方がありがたいです」

「そうか……。久々の故郷なのだろう、気分はどうだ?」

 

 特に仕事の話をするわけでもなく、単純に雑談を選んでもらえた。

 もしかして酔わないために気を使ってくれてるのだろうか。

 真面目仕事人間すぎて、冷たい印象で誤解されそうだけど根はいい奴だってザックスも話してたな。

 もっとも、そのことを伝えたらまたザックスがどやされそうだけど。

 

 何を話そうかと思ったが、俺がニブルヘイムを飛び出してミッドガルに来た話をすることにした。

 セフィロスに憧れて、彼みたいな立派なソルジャーになるために、幼馴染と約束して故郷を飛び出したこと。

 でも、ソルジャーにはなれずに、現実に打ちのめされたときにスカーレット様に拾ってもらったこと。

 なんだか自分語りなんて恥ずかしいけど、思い返せばたった一年ちょっとの出来事なんだよな。

 

「今回は任務の性質上、村の人たちに君の姿を大々的に晒すことが出来なくて残念だな。今の君なら立派に故郷に凱旋できるというのに」

「いえいえ、こんな機会でもないと中々実家なんて帰れませんから、それに母さんに会うのは認めてもらってるので」

「幼馴染にも内緒なんだろ。ソルジャーにはなれなくても今の君は神羅の一部門の長なんだ、胸を張って報告出来るはずだ」

 

 たしかにソルジャーにはなれなかったから、あの時の約束を守ることは出来ないけど、きっとティファも今の自分を認めてくれると思う。

 それに、今なら自分から、胸を張って今の自分を彼女に紹介出来る気がする。

 

「そうですね、ちょっと話せないのはもどかしいけど、また機会もありますから」

「もしその気があるのならミッドガルに招待してやればいい、今の君なら住む場所も上層プレートに構えることができるはずだ」

 

 正直給料もすごい貰ってるし、何よりも肩書の価値というのを思い知った。

 更新された俺のIDカードを見せたら、今まで以上にいろんなところに入ることが出来るようになったのはもちろん。

 買い物にも社割が効いたり、住宅を構えるためのローン申請も容易になると都市開発部門の人に教わった。

 もし家が欲しいなら、上層プレートのかなりいい所を紹介できると、みんなが自分のことのように喜んでくれた。

 

「実は母さんをミッドガルに呼ばないのかって、都市開発部門の人たちに言われたこともあったんです。多いみたいですね、こっちで稼いだ人が家をもって家族を呼ぶって」

「そうだな、特に田舎から出てきた社員が生活基盤を持てば家族を呼ぶケースはかなり多い。モンスターによる被害も少ないし、治安維持もされている。あとは病院を含めた様々な施設が充実してることも要因だな」

「でも、母さんも村で友達もいるだろうし、急に都会に出て生活するなんて考えられないと思います。俺なんて仕事で家にいない時間が多いだろうし」

 

 もし仮に家を買って母さんを呼んだとしても、それがいいことなのかわからない。

 長年の付き合いがある友達とも離れ離れになっちゃうし、俺がいない家で一人ぽつんといる母さんを想像したらやはり寂しそうだ。

 村を出る時だって一生ミッドガルに腰を落ち着けるなんてことは考えてなかった。

 ただ、夢を叶えてニブルヘイムに帰って、ティファに立派になった姿を見せて、ゆくゆくは故郷で母さんと過ごしたいとも思っていた。

 我ながら、考えなしに動いたというか、現実を見てなかったというか。

 

「田舎から夢見て飛び出してくる少年なんてそんなものだ、ザックスの奴も今の君より二つも若い時に故郷から飛び出して来たそうだ。英雄になると言ってな」

「ははっ、ザックスらしいや。今度昇進試験を受けるって張り切ってましたよ」

「あいつが受からんかったとしたらおそらく筆記試験だ。その時は思いっきり笑い飛ばしてやれ」

 

 笑いながら空の旅を楽しむと、地上の遥か先、大きな山の上に見える魔晄炉。

 そしてそのふもとに小さな村が見える。

 まさか故郷をこんな空の上から眺めることになるなんて思いもしなかった。

 

 故郷に着いたら実家に顔は出せるけど、なるべく他の人と関わらないようにしなくちゃならない。

 どこで神羅の人間に顔を見られるかわからないからだ。

 

 ティファは一体どうしてるだろうか、手紙でのやり取りもしてないし、あの時の約束をまだ覚えてくれているだろうか……。




これにて一週間連続投稿はいったん終わり
次回はスカーレット視点からスタートとなります

次回更新予定日は7だけに一週間後、来週の水曜日19時です

すでに次の分も書き始めてすぐにでも投稿は出来るのですが、ちょっと他にもやらなくちゃいけないことがありまして、少しお時間頂きます(知り合いとCG集を出す予定がありそれの原作とか、他サイトでも執筆しててそっちの更新とか)

次の話まで少しお時間開きますが、また次回!

すべての感想に目を通させていただいております。
次まで期間が空くので、感想から魔晄を搾り取ってエネルギーにする予定
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