【完結】FF7スカーレット成り代わり物語   作:発火雨

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クラウドの実家

「ここが俺の実家です」

 

 クラウドに案内されて一軒家のドアの前へとやってきた。

 

「いきなり私が入るのもおかしいから、先にお母様に挨拶してきなさい。急がないからしっかりと説明もすること。私に気を使ってすぐに家に入れようなんてしなくていいから」

 

 お母さんからしたら突然村から飛び出した息子が一年ぶりに帰ってきたのだ。

 しかも、事前に連絡もなくこれまた突然の来訪。

 そこに俺が突然現れて説明するのもおかしな話だし、きちんとやるべきことはクラウド本人がやるべきである。

 

 まぁ、母親孝行な息子なわけだし、自分の給料を仕送りしてることはもちろん知っている。

 おそらく故郷、いや、母親や幼馴染のティファ相手に精神的負い目が無くなった影響だろう。

 本来であれば夢を語り田舎から上京したにもかかわらず、夢破れ何者にもなれぬまま時間だけを消費していたのだ。

 でも、今のクラウドはきちんと努力が実を結び、会社という組織の中で確かな地位を築いている。

 

 これは母親としても自慢の息子だし、親子水入らずの時間を少しぐらい融通しても罰は当たらないだろう。

 ゲームだと、二年ぶりに出会ったと思ったら、それが最後の別れになるなんて思わなかっただろうし、すべてを知る俺としては何かこう胸に来るものがある。

 

 俺も過労で倒れて多分死んだんだろうからね、人間いつ死ぬかわからないなんて言うけど、生きてるうちにそんなこと考えもしないもんな。

 いや、一度死んでもう一度人生を与えられた俺はどんな形であれ幸せなのかもしれない。

 ならば、手の届く範囲で少しばかりおせっかいを若者にしてもいいと思えるくらいの余裕がスカーレットの人生にはある。

 

 やっぱりブラック企業って糞だよな。

 心の余裕とか全くなかったもん。

 神羅もある意味ブラックな部分すげぇけど世界とベクトルの両方が全然違うし、そのことに関しては考えないものとする。

 

「スカーレット様、母さんへの説明を終わりましたので、どうぞ中へ」

 

 ありゃ、色々考えてたらもう説明終わったのか。

 ちょっと可愛がってる若者のこととか、自分の前世とか思い出したら思考がトリップしてしまったみたい。

 あんまり前世の会社のこと考えたら体に悪いな。

 もし以前の上司や、顔も合わせない社長とかと現世で出会ったら、そいつらのためだけに新兵器を作ってテスターにしてやるのに。

 いや、すぐ終わらせるんじゃなくて、毒性の弱いガスを延々と吸わせ、苦しみもがくようにしてやりたい。

 もちろん、首や脚は固定せず手錠のみで椅子に縛り付けた状態でだ。

 

「失礼します、初めましてクラウディアさん。私、神羅カンパニー兵器開発部門で統括を務めております、クラウド君の上司のスカーレットと申します」

 

 いかんいかん、ブラックのことを思い出して俺の頭の中までブラックになりかけてた。

 社会人の処世術でもある、挨拶第一!

 綺麗な挨拶に、にっこり笑顔。

 とりあえずこれが出来たら、どんな所でも通用するし失敗することもほぼない。

 簡単お手軽で、効果も抜群、少なくともこれで社外の人から好感度を得ていたんだから。

 

「いつもクラウドがお世話になっています。さぁ、大したおもてなしも出来ませんが上がっていってください」

 

 クラウドのお母さんは丁寧に頭を下げ、俺を家の中へ迎え入れてくれた。

 

 とりあえず簡単な自己紹介と、今回のクラウドの帰省が任務に基づくものなので、なるべく秘密にして欲しいことを話した。

 快く承諾してくれて一安心、それどころか、クラウドのことをこれからもよろしくお願いしますとか、息子はご迷惑おかけしておりませんかなど、お母さんムーブ全開で隣のクラウドは恥ずかしそうだ。

 

 わかるよクラウド、会社の上司に母親が話し込んでるのって恥ずかしいよな。

 すごくその気持ちはわかるが、お母さんの気持ちもわからなくはない。

 ある意味、家を突然飛び出した少し不安定な息子が心配なんだろう。

 色々手紙で話を聞いてるとはいえ、クラウドからの自己申告だし。

 兵器開発部門とはいえ、一歩間違えたら大怪我を負う可能性だってある。

 ってか、テスターで入社させたはずなのに、ウータイとの戦争にも行かせてるからね。

 

 元居た世界の平和な日本と違って、この世界はモンスターの脅威を人々は身近な脅威として感じてるし、ニブルヘイムのような田舎ではモンスターによる事故死だって少なくない。

 神羅がウータイと戦争をしていたこともついこの間までのリアルなのだ。

 そして息子がそんな戦いの最前線に赴き、命がけで戦うこともあると知れば心配は尽きぬだろう。

 

 お母さんとしては立派な仕事を息子が選び、会社に認められてるのは誇らしいのだが、心配じゃないかと言ったらそれは別問題。

 息子の道を応援すると決めた母親に出来ることは、こうやって出会った上司にお願いするくらいしか出来ないのだ。

 

 とにかく息子さん無茶苦茶優秀で、うちの部門にはなくてはならない存在ですとか。

 むしろ助けられてますとか、もうねこれはお世辞じゃなくて本当なんだよ。

 

 これから星と俺の未来を救うという超重大な仕事をこなしてもらうので、万が一でもここでお母様に悪印象を持ってもらっては困るし。

 息子の夢を応援し続けてもらわねば俺が不味い。

 自分勝手な話だが、なるべくクラウドにも悪いようにはしないから、おこぼれをください、俺の人生に!!!

 

 心の中ではすげぇ必死なのだが、そんなことをおくびにも出さず、淡々とクラウド君すげぇ優秀ですよトークをする。

 スカーレットの面の皮って厚いよね。

 いや、社会人で管理職なんかすると自然と面の皮が厚くなるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久々に実家に帰って母さんと会う。

 一年ぶりに会う母親は、驚きこそしたものの、俺のことを強く抱きしめ、おかえりとただ一言。

 手紙でソルジャーにこそなれなかったが、兵器開発部門でお世話になっていて、武器や兵器のテスターとして働いてることは伝えていた。

 しかし、きちんと最後に出した手紙も届いていたみたいで、それを見て不安になったらしい。

 まさかウータイとの戦争にまで出ることになり、それどころか一つの部隊の隊長になったことを心配になったらしい。

 

 なるべく心配をかけないよう、手紙には上司はいい人だし、仲良くなった先輩もいるからと書いていたが、それとこれとは別問題だと怒られてしまった。

 

 母親から怒られるのも悪くない、昔は親に怒られるなんて楽しいものではなかったが、こちらのことを考えてるからこそこうやって小言を言うのだとわかっている。

 スカーレット様も、俺に対して理不尽に怒ることはないが、俺が訓練をしすぎた時とか、自分を大事にしないでリスクを取るような行動をすると毎回怒ってくれる。

 母さんとは違って、理屈っぽくて、話し方はきついし、こちらを睨むときの眼といい、声色と言い、スカーレット様の説教は怖いが、それでも俺のことを思って言ってくれるのはわかる。

 

 これが社会に出るということなのだろうか。

 

「いつかあんたの上司のスカーレットさんにもしっかりとご挨拶しなきゃね」

「それなんだけど母さん、実は今任務でこの村に来てるんだ」

 

 家の前で待ってもらってると伝えるとまた怒られた。

 

 それからスカーレット様が家に入って母さんと話すが、正直ここから離れたい気持ちに駆られてしまう。

 

 母さんは心配のし過ぎで、とにかくスカーレット様に息子をお願いしますと頭を下げる。

 スカーレット様はそんな母さんを安心させるように、俺は一部隊のエースで仕事も問題ないと語る。

 母さんにはわからないだろうが、兵器開発部門という部署はその特性上外部に話せる話も限られていて、下手するとソルジャーよりも情報の秘匿性が高いのだ。

 もちろんウータイとの戦争のことも細かいことは話せないのだが、俺がお世話になってるザックスの話とか、話せる範囲で話してくれている。

 

 母さんは俺をひたすら心配してくるし、それを打ち消すようにスカーレット様はひたすら俺のことを褒めまくる。

 出来たらいち早く自分の部屋のベッドに潜り込みたいが、敬愛する上司の前でそんなことをするわけにもいかず、俺の心はザックスとの訓練よりも疲労困憊だ。

 そして、母さんも話を聞くうちに安心したんだろうか、そこからは雑談と称して色々質問し、それに丁寧に答えるスカーレット様。

 もはや俺は蚊帳の外であり、一刻も早くツォンさんが扉をノックしてくれないかと願うことしかできない。

 

 話は機密事項とか、俺の仕事内容とはもう関係なく。

 ちゃんと食事を取っているかとか、友達は出来たとか、彼女はいるのかと俺のプライベートな話にシフトしていった。

 

 食事はきちんと社員食堂で取ってるし、訓練の合間にもソルジャーが食べる栄養補給用のお菓子とかも試してるよ。

 友達と呼べる同期はまだいないけど、先輩のザックスがもう友達みたいなもんだとスカーレット様が太鼓判を押してる。

 彼女に関しては、兵器開発部門に同じ年頃の女の子がいないけど、俺のファンクラブが出来て、女子社員の人気が高いことをバラされた。

 

「あらあら、クラウドったらモテるのね。さすが父さんの子だよ」

「興味ないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一通り村の中も見て回ったし、特におかしなところはなさそうだ。

 出向してる神羅の社員たちも村人との関係性で特に亀裂などはなさそうだが、あまり交流らしい交流はしていないらしい。

 特に科学部門の人間の評判はあまりいいとは言えない。

 まぁ、近くに居る存在なのに何をしているのかほとんどわからないのだから、村人も距離感を掴みかねているのだろう。

 

 その代わり、魔晄炉のメンテナンスのために時折立ち寄る都市開発部門の社員の方が村人と打ち解けてるようで、各部門の統括の性格がそのまま反映されてるようだ。

 ニブル山にある魔晄炉で作り出す電気の一部をこの村にも供給しているから、村にとっても魔晄炉の存在は好意的に受け止められている。

 それを整備する人間も、村にとっては好意的に受け入れられているようでなによりだ。

 

「へぇ、お兄さん神羅の人なんですか!」

「あぁ、たまたま仕事で近くまで来てね。ここで働く同僚の様子を見に立ち寄ったんだ」

「いいなぁ、神羅位大きな会社だとあちこちに飛び回るんですね。私の友達なんかみんな仕事を求めてミッドガルに行っちゃうんですよ」

 

 クラウド君の実家に向かう最中、隣の家から出てきた少女が話しかけてきた。

 もしかしてクラウド君が話していた幼馴染だろうか?

 少し会話してみると、魔晄炉があるニブル山のガイドもしているという。

 情報収集がてら少し長く話をしたら自然と、神羅やミッドガルについての話になった。

 

 年頃の娘さんだ、都会に憧れるのも自然なことだし、村にいる同世代は仕事を求め都会へと離れてしまう寂しさもあるのだろう。

 都会に対していわば幻想を抱いてるといっても過言ではないが、幼馴染があれだけ成功を収めているのだ。

 若いうちは自分の可能性を試したくなるし、根拠のない自信も持つだろう。

 

 出来たらクラウド君のことも聞いておきたいところだが、変につついて今回の任務に支障をきたすのも不味い。

 頭の中でリスクとリターンを天秤に乗せるが、クラウド君の素行についてはあくまでわかる範囲で拾えたらいい。

 今は神羅屋敷にある科学部門が保有してある資料を回収することが先決だ。

 

 そのまま適当に話をしていると、彼女はガイドのためにニブル山の様子を見に行くと言って去っていった。

 元気もいいし、見たところ何か武術を習っているようだ。

 険しい山道をガイドしてるだけあって足腰もしっかりしているし、格闘の手ほどきをすればタークスで通用するやもしれん。

 

 毎年神羅軍事学校から、一般兵やソルジャー候補が入社してくるが、タークスの門も潜れるものは少ない。

 もし学校に入っていれば格闘のエンブレムを取ることも……。

 

「おっと、余計なことを考えすぎてしまった。そろそろスカーレット統括と合流するか」

 

 ソルジャー部門もルーファウス副社長が統括になってからの広報活動が上手く行ってるのだろう、希望者がさらに増えているらしい。

 兵器開発部門に入ったクラウドもそうだが、まさか優秀な人材を治安維持部門以外と取り合うことになるとは思っても見なかった。

 

 今はタークスの人員もそれなりに増えてきたが、抱える仕事量を考えるともう少し人が欲しいと思わざるを得ない。

 副社長としては、タークスの人員増加も将来的には見据えているようで、もしかすると才能ある若者を今のうちに鍛え上げることになるやもしれん。

 

「タークス専用訓練シミュレーターの要望をヴェルド主任に頼んでみるか……」

 




あんまりゲーム本編やリメイク版では出番がないですが、実は神羅は学校の運営もしているみたいです。本編に出てくるタークスのイリーナなんかは在学中のエピソードがあったりします。

次回更新は同じく一週間後の水曜日19時を予定しています。
実はストックがそこそこ溜まりましたが、一週間連続更新するほどではなく、なるべく毎週水曜日投稿を心がけようと思います。

せっかくストックがあるので次回予告なんかを……。

次回はいよいよ神羅屋敷突入、皆さんご存じあのキャラも登場予定。
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