原神二次   作:出力用

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おそらく原神初心者が迷い込んで極寒ゲージで倒れるであろう場所。


ドラゴンスパインに負けた蛍と立ち向かう七七

「涼しい場所に行きたい」

 

 

 七七に袖を掴まれ上目遣いに懇願された蛍は、先日山開きがあったばかりのドラゴンスパインへ行くことを決意した。

 

 

「麓の学者によると何人か死んだらしいけど、大丈夫かな」

「七七、キョンシーだ。だから大丈夫」

 

 

 ──二時間後、寒さで倒れた蛍を引きずりながら七七は下山した。

 

 

*****

 

 

「無理。氷と岩で行く場所じゃない。死ぬ。いや死んだ」

「冒険者だからってチャレンジャーすぎるよ」

「……」

 

 

 自分の要求のせいで蛍を再起不能にさせてしまった七七はものすごく悲しい顔をして俯いていた。

 蛍はガタガタ震えながらアンバーで暖を取っている。

 アンバーはアンバーで「なんで私に声かけてくれなかったの? ねえなんで?」とヤンデレ気味に囁いていたが、蛍の耳には届いていない。

 アンバーの胸に顔をうずめながら蛍は言った。

 

 

「耐寒装備。ディルックさんのコートとかあんなのが欲しい。むしろディルックさん自体を連れてくる」

「通常攻撃で炎付与できる私の方が使い勝手良くない?」

「溜めが長いんだよ!」

 

 

 叫ばれながら強く抱きしめられるアンバー。

 言いたいことはいろいろあったが、弱気な蛍を見て変な気分になっていたのでわざわざ反応することもなかった。

 

 

「まさかあんなにヤバい場所だとは思わなかった。寒さゲージがあるなら耐寒装備もあるべきでは? 山頂まであとちょっとのところでパイモンに『他の道から行こう……』とか言われて強制的にワープさせられたし」

 

 

 アンバーに抱きしめられながら愚痴をこぼす蛍を見て、七七は思った。

 全然蛍を守れていない、と。

 自分の軽率な発言もそうだが、「いざとなれば冒険者バーガーを食べればいいよね」などとお気楽に構えていた蛍を諌められなかったことも反省すべきだ。

 ──あなたは七七が守るから。

 蛍が敗北した雪山を制覇すべく、七七の徹底抗戦が始まった。

 

 

*****

 

 

 まず七七はクレーの協力でドラゴンスパインを焼くことを考えた。

 もちろんジンの手により止められた。

 

 

「幼い内からそういうことを考えてはいけない」

 

 

 実際は七七の方が恐ろしく年上だが、本人もだいたい忘れていることだったので訂正はしなかった。

 次に七七はベネットを使っての登頂を試みた。

 だが、吹雪や落氷に見舞われて進行不能になった。

 

 

「俺がいるからこんなことになるんだ……でもお前に怪我がなくてよかった!」

 

 

 今まで記憶になかったベネットは普通にいい人だった。だが三日も経てば忘れてしまうだろう。

 三度目の正直。

 七七は「次こそは大丈夫」と己に強く言い聞かせた。

 ディルック、辛炎、蛍から引き剥がしたアンバーのメンバーでドラゴンスパインを倒しに向かった。

 アンバーは蛍から離された不満をバネに、道中に火の雨を降らせた。

 それはディルックでさえドン引きするレベルの乱発だった。

 だが、おかげでワープポイントは全て解放された。蛍も喜んでくれることだろう。

 わずかに表情をほころばせながら、七七は軽やかな足取りで蛍のいる部屋へ向かった。

 

 

「蛍。これ見て」

 

 

 ワープポイントが解放されたマップを掲げながら部屋の中に入った七七の前には、毛布にくるまって丸くなった蛍の姿があった。

 熱源とならない七七では抱いてあたためることもできない。

 それを七七は少しだけ残念に感じた。

 

 

「ドラゴンスパインのマップ……?」

「みんなと行ってきた」

 

 

 蛍はマップをスクロールして細部を確かめていた。

 

 

「確かに全部ワープ可能になってる。大変だった?」

 

 

 大変だった、アンバーが。

 その言葉を七七は飲み込んだ。

 蛍に余計な心配をかけたくなかった。

 なお、元素爆発を乱用しまくってファデュイやらヒルチャールの拠点を火の海に変えたアンバーはジンから説教中である。

 

 

「……みんなが頑張ってくれたから」

 

 

 そう、ドラゴンスパインでは氷元素の七七は基本的に必要なかった。ギミックや回復に何度か手を貸しただけだ。

 これでは蛍を守っているとはいえない。

 拳を握りしめる七七に蛍も気づき、毛布から抜け出してそっとその小さな手を取った。

 七七は不思議そうに蛍を見上げた。

 

 

「七七が先導してくれたから叶ったことだよ。ありがとう」

「でも……」

 

 

 なおも卑屈になろうとする七七を、蛍は軽く抱きしめた。

 この小さな体で自分のためになにかをしようとしてくれたことが嬉しかった。

 それを告げる代わりに、蛍は小さく呟いた。

 

 

「七七、大好きだよ」

 

 

 ──後ろから言ってくれたら、敕令になったのに。

 心があたたかくなるのを感じながら、七七は蛍の背中に手を回した。

 

 

「戻ったよ蛍~! あたためてあげられなくてごめ……ん」

 

 

 数秒後、部屋の中の空気が凍りついたのは言うまでもない。

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