ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第102話: 親方! 空から女の子が!?

 

 

 ──前回のあらすじ:ヒバゴンはオシッコ好きの変態であった。

 

 

 

 と、いうわけで、深夜だというのに新たに開かれた第二回千賀子会議だが、前回とは違って会議は紛糾した。

 

 何故かといえば、ヒバゴンが変態だったからだ。

 

 人肉を好むという時点で弁解不可能なレベルのマイナス点だったのだが、そこに加えて、オシッコ好きともなれば、話が違う。

 

 だって……アレでは、千賀子のオシッコを見て逃げたのか、千賀子のオシッコに魅せられてやってきたのか、意味合いが全く変わってしまうからだ。

 

 UMAを寄せ付けないために野外放尿をしたというのに、逆に呼び寄せる結果になるのであれば、本末転倒なんてレベルの話ではないのだ。

 

 

「どういうことですか、女神様! あいつ、普通に来たじゃないですか! それも、オシッコをし始めてすぐに!」

 

 ──どういうことも何も、怖がっていましたよ? 

 

「どこが!? むしろお金渡されたんですけど!?」

 

 

 堪らず女神様に文句を付ければ、なんと女神様は『怖がっている』と嘘を付いた。

 

 これには、さすがの千賀子も怒る。

 

 少なくとも、女神様はナチュラルにえげつない事はしても、そういう嘘だけはつかないと思っていたからだ。

 

 だから、千賀子は怒っているのだ。

 

 ただでさえ、ろくな事をしない女神様が、そこからさらに恣意的に嘘をつくともなれば……考えるだけで恐ろしい話になってしまう。

 

 

 ──??? お金を渡したからといって、怖がっていないというわけではありませんよ? 

 

 

 だからこそ、千賀子は女神様に怒っているわけだが……女神様は女神様で困惑しているっぽい雰囲気を醸し出しているのを見て、ちょっとばかり千賀子も冷静になった。

 

 と、同時に、千賀子は思い出す。

 

 女神様は、人間を理解しているようで欠片も理解していない。加えて、尺度もまた人間とは異なっているということを。

 

 考えてみれば、当たり前な話である。

 

 人間の目線からみれば、太陽系という一つ御大層な分類がなされている惑星や衛星の集団や、そもそも太陽という超巨大な恒星も、女神様からすれば大した違いはない。

 

 

 女神様目線からだと。

 

 

 いくつも内包された『世界』の中にあって。

 

 その世界の中で、数えるだけで頭おかしくなる数の宇宙の中にあって。

 

 その頭おかしくなる数の宇宙の中にある、これまた頭おかしくなる数の超銀河団の中にあって。

 

 その頭おかしくなる数の超銀河団の中に、これまた頭おかしくなる数の銀河の中にあって。

 

 その銀河の中の、宇宙の規模で見たら電子顕微鏡を使っても確認出来ないようなサイズの銀河系の中にあって。

 

 その銀河系の中を、もはや女神アイを使わねば確認出来ないようなところまで目を凝らして……ようやく、『太陽系(笑)』という、それはそれは小さいモノを見つけ出すような感じなのだ。

 

 言うなれば、女神様にとって、地球と他の星との違いですら、地球上に存在する砂粒の中の二つ……といった感じでしかないのだ。

 

 違いは、そこに愛し子である千賀子が居るかどうか……それ以外に向けられる女神様の認識など、おおよそ察せられるというものだろう。

 

 

「……マスター。推測というか、可能性の話になりますが、よろしいでしょうか?」

 

 

 女神様に対してどのように質問をしたら良いのかと頭を悩ませていると、ロボ子よりポツリと話し掛けられた。

 

 

「もしかして、ヒバゴンたちにとって、排尿行為はある種の恐れ敬う……畏怖、そういった感覚なのではないでしょうか?」

「え?」

「人間がなんの変哲もない山や海を見て、そこに人知を超えた存在を形作ったり、あるいは、同じ人間の姿を見てそこに神秘を見出したり……ヒバゴンにとって、排尿行為とはソレに該当するのではないでしょうか?」

「えぇ……いや、そんな……そうかな?」

「情報が足りなさすぎますので、断定は出来ません。既に日本全国の情報誌などを確認し、ヒバゴンの情報を集めてはいるのですが……どれも信頼性に欠けております」

「……ロボ子にも分からないの?」

「あまりにも現在の文明レベルがアナログ過ぎまして……もう少し、そうですね、後3,40年ぐらい未来ならば、あらゆる媒体を通じて盗み見ることが可能ではあります」

「あ~、そういう……」

 

 

 申し訳なさそうにするロボ子の姿に、千賀子は納得した。

 

 超高性能のスマホやパソコンがその真価を発揮出来るのは、その性能を発揮できるだけの環境、通信網が張り巡らせられた時である。

 

 極論を言えば、縄文時代にパソコンがあったとしても、その能力の1%も発揮出来ず、スマホがあってもほとんど役に立たないだろう。

 

 同様に、ロボ子が開発して製造したらしいスパイロボットも、その真価を発揮するためには、それに見合う通信網などが張り巡らされているのが大前提で。

 

 いちおう、ヒバゴンを直接監視するという事も行っているらしいが、さすがはUMAというべきか……なんと、ロボ子の科学力ですら見付けられないのだとか。

 

 それでも、既に何体かにマーカーを張りつけて、現在位置を常に把握しているらしいが……残念ながら、それ以上のことはほとんど分かっていないとのこと。

 

 

「検体として死体……出来うるならば、生きた個体を捕獲出来れば、そのメカニズムの調査が可能となりますが……」

「え、なに、解剖でもするの?」

「解剖は最後です、そんないきなり解剖だなんて、勿体無いではありませんか、まずはレントゲン等を使って臓器や筋肉を確認後、痛覚期間を刺激して、大脳と神経の相互作用を確認します。その次は薬液などを使用して免疫構造を確認しましょう、やる事はいっぱいあります」

「え、あ、うん……」

 

 

 コイツ、サラッと怖い事を言うなあ……そんな思いでロボ子を見やった千賀子は、それから。

 

 チラリ、と。

 

 女神様に視線を向けた千賀子は、『(=^ω^=)イトシゴカワイイナア』とニコニコ嬉しそうにしているのを見て……あ、これは女神様さん区別ついていないなとため息をこぼした。

 

 女神様にとって、どのような意味での弱点なのかは分からないが……とにかく、ヒバゴンをどうにかせんとアカンのだ。

 

 

「……女神様、本当にヒバゴンはオシッコが弱点なんですか?」

 

 ──はい、弱点ですよ。

 

 

 念押しして確認しても、答えは変わらなかった……ので、千賀子は、もうオシッコ出しちゃったので、また明日にしようと──考えていたのだが。

 

 

「あ、マスター、マーカーを付けておいた個体が神社《ここ》に接近しております。山の麓の辺りで待機しているみたいです」

「え? なんで? もしかして、狙われているの、私ってば?」

 

 

 とんでもない状況に、千賀子は思わず背筋を震わせた。

 

 真正面から戦ったところで、いくらでも対処出来るだろうが……実際に命を賭けた殺し合い経験がない千賀子に、ヒバゴンを相手しろというのはあまりにも酷だ。

 

 いちおう、ヒバゴンは『神社』の存在を感知しているのか、それとも女神様の気配に気付いているのか、それとも別の理由があるのかは不明だが、山には入って来ていないようだ。

 

 それは、ロボ子からの報告だけでなく、山のヌシという立場でもある千賀子には、手に取るように分かっていた。

 

 ……が、これまた残念なことに、ヌシであるとしても、分からない事は多い。

 

 山の中でさえあれば、現時点での動きは分かる。だが、何を考えているのかまでは分からないし、山の外ならば、その動きすら千賀子には分からないのだ。

 

 

「スパイロボットを使い、盗撮と盗聴を試みます。よろしいでしょうか?」

「うん、お願い。目的が分からないのが一番怖いからね」

 

 

 だから、千賀子は素直にロボ子にお願いをした。「では、これを見てください」すると、ロボ子は押入れより……何時の間に用意したのか、千賀子の前世では御馴染みの薄型ディスプレイを運び出すと、それを手早く謎の機械に繋ぎ──少し間を置いてから、フッと映像が映し出された。

 

 

『ウキャー! ウキャー!』

 

『ウキャー! ウキャー!』

 

『ウキャー! ウキャー!』

 

『ウキャー! ウキャー!』

 

 

 そうして、千賀子は……映し出された映像を前に、困惑した。

 

 何故ならば、ヒバゴンたちは互いを威嚇するかのように牙をむき出しに、ウキャーウキャーと叫んでいたからだ。

 

 そう、どういうわけか、集まっているヒバゴンたちが喧嘩をしている。少なくとも、千賀子の目にはそうにしか見えなかった。

 

 人間に例えるなら、今にも互いの胸ぐらを掴んで殴り合いが始まりそうな……いや、一部では既に殴り合いが始まっている、そんな剣呑な空気であった。

 

 

「……翻訳なさいますか? 信頼性は約78%といったところですが」

「え? 翻訳なんて出来るの?」

「はい、とはいえ、サンプル数が少なすぎるので、全てが正しい翻訳とはなりませんが……それでもよろしければ、どうでしょうか?」

「出来るなら、お願い。いちおう、参考にしたいから」

 

 

 千賀子がそう言えば、ロボ子はしばしの間、謎の機会をポチポチした後で……唐突に、スピーカーより流れるヒバゴンたちの音声が変わった。

 

 …………。

 

 ……。

 

 ……。

 

 

 

『失せろ! あの子は、俺に聖水を掛けてくれる御方なんだぞ! 我、聖水と共に去りぬ!』

 

『ふざけるな! 自然は自然のままに、ただ眺めるだけで良いのだ!』

 

『馬鹿な! お前たちは、あれほど美しい聖水を前に、そのような世迷言を言うのか!?』

 

『そうだ! このままでは、ただ無意味に便所に流されるだけなのだぞ!? 許されない、許してはならない!』

 

『僕が、便所さ』

 

『そうだ! そうだ! そんなのは世界の損失だ! 正しい在り方を示さねばならぬのだ!』

 

『馬鹿な、無理やりの聖水なんぞ邪道! 黄金のようにきらめく天上の温もり、地面にぶつかって弾ける黄金の飛沫、それこそが究極の美なのだ!』

 

『僕も、便所さ』

 

『なにが究極の美だ! 俺たちは飢えているんだ……そこに水があるとなれば、求めずにはいられない荒野の冒険者、それが俺たちだ!』

 

『そのとおり……俺たちはもう登り始めてしまったんだよ……引き返せない、ロマンという坂をな』

 

『僕たちが、便所さ』

 

『だ、だが、ありのままに出されるのが至高……求めるがままは浅ましく、教えはどうした、教えは!』

 

『教えがなんだ! 我慢に我慢を重ねた先に、脱ぐのが間に合わずにちょっと肌を汚してしまう……それがいいんじゃないか』

 

『──っ!!!!!』

 

『で、でも、友達との付き合いで便所に行って、申しわけ程度にチョロっと出して終わるのもわびさびってモノが……』

 

『──っ!!!!!』

 

『……友よ、俺が間違っていたよ』

 

『いや、友よ。俺も間違っていたのだ』

 

『そう、皆が便所なのさ』

 

『ああ、小便に貴賤無し! 小便の上には小便はなく、小便の下には希望が詰まっている!』

 

『そうだ、そうだった……俺たちは忘れていたんだ』

 

『立ったままする子を後ろから眺めるのも、しゃがんだ子を前から眺めるのも、堪らず履いたまま漏らしてしまのも、神様はそこに上下なんて付けなかった』

 

『ただ、有るがままに受け入れるだけでいいんだ』

 

『ソレは、美しい……と』

 

『長老!』

 

『ふふ、若いとは時に突っ走るモノよ。だが、それがいいのだ。そこを追求していくことこそ、生きるという事なのだ!』

 

『長老……長老!!』

 

『皆の衆、たたえるのだ! 神は、この山にいらっしゃる! 黄金の慈悲に頭を垂れ、神の愛に応えるのだ!!』

 

『長老! 長老! 長老!』

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………例えるならば、吹き替え音声といった感じだが……いや、違う、問題はそこではない。

 

 あまりにも……そう、あんまりな会話が繰り広げられている現実に、千賀子はしばしの間言葉を失くすしかなかった。

 

 これはかつて、自分のリコーダーがこっそり舐めまわされている事が発覚した時以来の……けれども、あの時の千賀子ではない。

 

 しばしの間、呆然とするしかなかった千賀子だが、それでもハッと我に返ると、ナニカから逃れるかのように目元を擦り……それから、特大の溜め息を吐くと、改めてロボ子に問うた。

 

 

「……ごめん、ロボ子。なんか私の耳がおかしくなったのかな……なんか、あまりにもヒバゴンたちの会話がおかしいのだけど……」

「おかしくはありませんよ、多少なり翻訳の不備はあるでしょうが、大まかにはこのとおりです」

「ウッソだろおまえ!? こんな、人の小便のために殴り合いまで始めるのがヒバゴンってわけ!?」

「マスター、老廃物を糧に生きる個体は、自然界においてはけして珍しくはありません。いえ、広義な意味では、人間もまた多種多様な老廃物を糧にして──」

「そういう事じゃねーんだよ!!!!」

「あうん、酷いです、マスター」

 

 

 思わず、ロボ子の頭を叩いた千賀子だが……そんな事をしても欠片も状況が改善されることなどないのは、分かっている。

 

 また、このまま見て見ぬふりをしたところで、ヒバゴンたちが察してどこかへ行ってくれるとも……いや、駄目だ。

 

 それはそれで、家族や明美たちや道子たちの危険が去ったわけではないから、どちらにしても、見なかったことにはできない。

 

 だから……そう、仕方なく、だ。

 

 

「……女神様、本当の本当に、オシッコがヒバゴンたちの弱点なんですね?」

 

 ──はい、そうですよ。

 

 

 最後の最後に、もう一度確認した千賀子は──ロボ子に手を差し出した。

 

 

「はい、マスター。オシッコを出すジュースです」

 

 

 と、同時に、察したロボ子より手渡された、特大ジョッキグラスに入ったオレンジ味のジュース(副作用0の利尿剤)をグイッと一気飲み──そして。

 

 

「──男は度胸! 女も度胸! やったるわい!!!」

 

 

 覚悟を決めて、ヒバゴンたちの下へとワープをしたのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………その後の出来事は、誰も知らない知られちゃいけない、世界の裏側でひっそりと行われた戦いであった。

 

 

『お、おお……見ろ、天に観音様が!!』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

『なんと……地上に月が降臨してくださった!!』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

『天から、ああ、天から黄金の……なんと温かい滴だ……』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

『見ろ、友よ……なんと美しい光景なのだ……』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

『温かい……ああ、意識が……だが、悔いはない……』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

『俺が、俺たちが、便所だったんだ……』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

『おい、どうした……なんだ、先に逝っちまいやがって……』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

『なんて嬉しそうな顔で……俺も、すぐ逝くぜ、待たせねえよ』

 

 らん、らんらら、らんらんらん。

 

 

 闇夜を照らす、天上の慈雨。

 

 それは月の光を浴びて黄金のようにきらめきながら、ヒバゴンたちに甘き温もりと安らぎを与え……その命を、何者よりも優しく奪い去ってゆく。

 

 誰も彼もが、心穏やかにその命を終えてゆく。我が生涯に一片の悔いは無し……そう言わんばかりに、微笑みの浮かべながら。

 

 その中で、千賀子は不本意ながら知った。

 

 女神様の言うとおり、ちゃんとオシッコを引っかけるだけで良いという、その言葉の意味を。

 

 今、ここに……全てではないにしても、集まっていた大量のヒバゴンたちを、無事に退治したのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………だが、しかし。

 

 

『……ヒバゴンたちが、やられたか』

『ふん、しょせん、やつは我らの中で最弱』

『たかが小水でやられるなんぞ、面汚しもいいところだ』

『ああ、そうだ……小水は、俺たちにパワーを与える』

 

 

 千賀子はまだ、気付いていなかった。

 

 UMAとの戦いはまだ、始まったばかりだということに。

 

 

 

 

「──あ、本体の私。さっき、実家の方を通じて、いちおう声を掛けてくれっていう流れで話が来たのだけど」

「ん、なに?」

「詳しくは知らないけど、相撲の後援会に興味はないかって」

「は? 相撲? なんでまた?」

「たぶん、本体の私が宗教法人の代表になったって情報が何処かから漏れたんでしょ」

「あぁ、そう……まあ、個人情報保護なんて、今の時代には存在していないし、仕方ないか」

「あと、馬を買わないかって連絡が来ていたらしいわよ」

「え、また?」

 

 

 ……この時の千賀子には、知る由もないことであった。

 

 

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