ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第114話: 願い『は』叶うお札

 

 

 

 ──宝箱(わな)の中身は、短冊に使うようなサイズの紙切れであった。

 

 

 とはいえ、ただの紙切れではない。

 

 裏面と思わしき部分には隙間なくビッシリと読めない文字が書き記されており、表面には『願い事が叶うお札』と直球で記されていた。

 

 

 

『願い事が叶うお札』

 

 ──要約:このお札に願いを込めて念じれば、だいたい叶います。それが現在叶わない願いでも、因果律を引き寄せて、だいたい叶える事が可能です。

 

※ ただし、願う者の状態によってはどうにもならない時もあるので、その時は静かに諦めるように。

 

 

 

 そして、念じて『お札』の効果を確認した千賀子は……ポンポンとエマの背中を優しく揺すってゲップをさせながら、う~ん、と唸った。

 

 

 ……なんだろうか、コレは? 

 

 

 要約を見る限り、これは非常に有益なアイテムに見える。

 

 なにせ、あくまでも千賀子が見た限りの話だが、デメリットが見当たらない。因果律を引き寄せてという小難しい言い回しは気になるが、それだけ。

 

 要は、未来で起こる可能性がある出来事の中でも、自分にとって望ましい未来を引き寄せて現実にするというもの……なのだろう。

 

 考え様というか、使い方によっては、とんでもないアイテムであるのは確かだ。

 

 たとえば、仮の話として、『500年後にこの星に隕石が衝突して人類が絶滅するのが確定している未来』だとして。

 

『お札』に、『10000年後も人類が繁栄してほしい』と願えば、どうなるか……答えは、様々な要因が偶発的に重なって、確定していた未来が変更される……という結果になるわけだ。

 

 

 ……要約後半部分の『※ただし』に関しても、難しく考える必要はない。

 

 

 たとえるなら、余命いくばくもない者が『寿命を伸ばしたい』と願えば、様々な過去に干渉して『寿命を延ばす薬』というモノが生まれ、その者の下に届くようになるだろうが……それでも、伸ばせる寿命は大したものではないだろう。

 

 仮に、『太陽系の外にまで自由に行き来出来るほどに科学が発展していてほしい』と願えば、その願いは叶うだろうが……それが20年後になるか、40年後になるか、あるいは願った者が死ぬ間際になって叶うかもしれない、というわけだ。

 

 いちおう、時間を指定すればだいたいの願いは叶うだろうが……『女神様のような存在になりたい』と願っても、『そんなん無理っす』と願いが無効扱いされてしまうように、『お札』でも叶わない願いもあるから、だいたいの願いはと予防線が……とまあ、うん。

 

 君たちの言いたい事はわかっている……この『お札』の出所こそがヤバい、だろう? 

 

 これが、わざわざ女神様が用意したモノではなく、あの後輩女神さんだったら崇め奉るぐらいはするけど……残念ながら、そうではない。

 

 そう、このアイテムの唯一の懸念は、女神様が用意した、それに尽きる。

 

 とりあえず、巨女たちにこの宝箱(あるいは、お札)について何か知っている事はあるか……と尋ねてみたが、1人として首を縦に振る者はいなかった。

 

 曰く、『ちょっと前に、女神様が現れて宝箱を置いて行った。貴方達を除いて愛し子以外には見えないし触れないので、時が来たら渡してね』と、お願いされたのだとか。

 

 なので、巨女たちからすれば、そもそも『愛し子って誰のこと?』というレベルで、時が来たらと言われても全然分からなかったので、ずーっと放置しっぱなしだった……とのことだ。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 それだけ長く放置していて、誰か1人くらい中を覗いてみようとか思わなかったのかと聞けば、『預かり物を勝手に開けちゃ駄目だよ!』と言われてしまった。

 

 

 いや、まあ、うん。

 

 

 常識的というか、冷静に考えたらそれが当たり前なのだが、この頃の社会常識というか、マナーのレベルを軽く考えてはいけない。

 

 現代では一発で違法判定が出て警察が出てくるような事でも、この頃は合法な場合が多く、それは違法でも似たようなモノだ。

 

 さすがに殺人や強盗のようなレベルになれば警察も目の色を変えるが、未成年の飲酒や喫煙、路上での喧嘩も度が過ぎない程度ならば、扱いも小さい。

 

 むしろ、真面目にそういったルールを守る学生に対して、『マジメ過ぎて、度胸が無いのでは?』と逆に評価を下げることも、けして珍しくはなかった。

 

 さすがに届いた他所様の荷物を勝手に開封したりなんてしたらトラブルにはなるけど、子供がやったなら、『子供がやった事でそこまで?』といった反応を返される。

 

 まあ、その代わり、その親の評価がめたくそに下がるわけだけど、現代とはまったく反応が異なっていて。

 

 届いた荷物が破損していても、知らぬ存ぜぬされるぐらいなら可愛いもんで、酷いのになると、中身がすり替えられていた……なんてこともあったのだとか。

 

 それでもニュースになるわけでもなく、『あそこの配達人はろくでもねえやつだ!』という感じの口コミだけで終わり、いちいち相手をするのは根に持つやつだなんて逆に言われてしまうようなこともあった。

 

 良くも悪くも、昭和40年代なんて、そんな感じの色々な意味でゆる~く許されていた(あるいは、見逃されていた)時代なのだ。

 

 

「……そういえば、君らってなんで裸なの?」

 

 

 さて、そんな昭和の感覚に遠い眼差しになっていた千賀子が、ふと、今更ながら巨女たちの恰好に目を向けたわけだが。

 

 

「身体に合う服がなくて……それに、人間さんの服は脆くてすぐに破けちゃうから……」

「まあ、身長2m半ば近くある巨体用の服じゃないしね、普通に動くだけでも破けるのは致し方ないけど」

「それに、人間さんたちは裸で外を出歩くのは駄目なのでしょう? だから、迷惑にならないようにってここで……」

「……今度、服を持ってきてあげるから……せめて、最低限は隠している状態にしようね」

「ええ、そんな……私たちは大丈夫ですよ、ほら、いざという時のために、木の皮を剥いで作ったモノがありますから」

「乳首と割れ目を隠すだけのソレを、しかも隙間だらけのソレを大丈夫とは言わないよ……いいから、ね、お姉さんに任せて……!!!」

 

 

 良くも悪くもそんな常識にすっかり順応していた千賀子にとって、巨女たちの純心かつ雪解け水のように澄みきった心の所作は、実に心が洗われる思いであった。

 

 なんというか、もうね、本当に、巨女たちを見ていると、いかに人間が見苦しい存在なのかを思い知らされる。

 

 少なくとも、巨女たちのマナーの領域まで今の日本が至るのは、20年以上先のこと……それすら、絶対というわけではない。

 

 こんな人たちでいっぱいなら、私も伸び伸び気にせず自由にやれていたのだろうなあ……そんな思いで巨女たちを見つめ……ふと、手元の『お札』を見やった。

 

 

「……欲しければ、あげるよ?」

 

 

 せっかくだし、今まで守ってきた彼女たちこそ使った方が良いのでは……そう思い、千賀子は『お札』を差し出した。

 

 別に、毒見とかそういう類のアレではない。

 

 女神様のやる事なす事に対して基本的に忌避感と嫌悪感を抱いている千賀子の勝手な思い込みであって、『お札』そのものは別に悪いモノではない。

 

 言葉足らずな部分はあるけど、千賀子が読んだ限り、なにかしらの害意をもたらす類のアイテムには見えないし、思えない。

 

 欲しいと言えばあげるつもりだし、いらないと言えば渡さない。

 

 無理に渡すわけでもなく、どちらでもいいよ……というのが千賀子の正直な気持ちであった。

 

 

「叶えたい願いは自分で叶えるものだから、いらないです」

「そう? 遠慮しなくていいよ?」

「そういうモノで願いを叶えると、必ずどこかでしっぺ返しをもらうと思うので……身の丈に合った願いは自分で叶えますので、お気持ちだけ……」

「君たち、私が所有している山に来ない? 温泉とか家とか用意するから、もうこんな聖人みたいな人こそ幸せになってほしいよ……」

 

 

 なので、いらないよと言われた千賀子はそれで納得し、分身たちにも『お札』のことをテレパシーにて説明する。

 

 分身たちに使わせる……というわけではない。改めて説明するが、分身たちは、あくまでも分身に過ぎないのだ。

 

 つまり、千賀子は分身たちに『お札』の使い道を相談しているに過ぎないわけで……が、この時、意外なところから手が挙がった。

 

 

(──えっ? ロウシが?)

『ええ、そうよ、本体の私。3号が何気なくロウシに話を振ってみたら、是非とも使いたいって』

(本当なの、3号)

『マジだよ、いやあビックリ。どうしたものかねとロウシのブラッシングをしながら雑談したら、使いたいって……』

(おお、マジか……いや、別に良いんだけどね)

 

 

 なんとそれは、ロウシであった。

 

 このまま押入れの奥に永久封印するか、月のどこかに埋めてしまおうかと思っていた千賀子は、驚いた。

 

 そう、これには、千賀子は本気で驚いたのだ。

 

 なにせ、あのロウシだ。

 

 馬ではあるが、その精神性は千賀子よりもよほど達観しており、ロウシより教えられ、嗜められたことは数知れない。

 

 こういう言い方もなんだが、千賀子にとって本気で尊敬している者はと尋ねられたら、殿堂入りを果たしていると答える……それぐらいの存在なのだ。

 

 だからこそ、そんなロウシが、あの女神様の用意したモノを使いたいと訴えてくるとは……意外だが、ちょっとばかし嬉しいと千賀子は思った。

 

 なにせ、これまで幾度となくロウシに助けられてきた千賀子だが、ロウシを助けた事はほとんどない。

 

 ロウシからは、『貴女に買われて良かった、ありがとう』と言われた事はあるけど……千賀子からすれば、『自分のところに来てくれて、こちらこそありがとう』という言葉しかなかった。

 

 

(ロウシ、本当に欲しいの? 変に私に気を使ったりとかしていないよね?)

 

 

 だからこそ、扱いに困る千賀子の姿を予想して、預かろうとしているのでは……と、思ったわけなのだが。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………しばし、傍にいる3号を通じて話を聞くが、どうやら、そういうわけではなさそうだ。

 

 ロウシが叶えたい願いというのがなんなのかを教えてはくれなかったが、ロウシにも、ロウシのプライバシーというものがある。

 

 

 ──ロウシも歳だし、叶えたい願いがあるなら、是非とも。

 

 

 そう結論を出した千賀子は、ロウシのお願いを承諾する。

 

 ワープにて3号に来てもらい、エネルギーを補充。そのままワープで帰宅……所要時間17秒ほどで、『お札』は千賀子→3号→ロウシへと渡った。

 

 

(……え、もう使ったの?)

 

 

 そして、直後にロウシは『お札』を使ったようだ。

 

 3号より差し出された『お札』を、ロウシの額に押し付けた──直後、札が光り輝いたかと思ったら、そのままフッと消えてしまった。

 

 おそらく、それが『お札』が正常に作動した証なのだろう。女神様に聞けば、問題なく発動した、とのこと。

 

 3号を通して全てを見ていた千賀子は、だ。

 

 機会があればロウシからどんな願い事をしたのか聞こうかな……その時は、またエマも連れて行って、その背中に乗せてあげたいなあ……と。

 

 そんな、帰宅した後の事を考えて、ちょっとばかり妄想の世界に意識を飛ばしてニヤニヤしている──っと。

 

 

『──本体の私! ロウシが消えた! そっちに向かっていない!?』

(えっ!?)

『──いきなりロウシが光ったかと思ったら、消えたの! あれは、ワープに近い現象だと思う!』

(ワープ!?)

 

 

 唐突に脳裏へ飛んできた、3号からの焦りを多分に滲ませた思念に、千賀子はハッと我に返った。

 

 次いで、反射的に──千賀子は、傍の女神様へと振り返る。

 

 

 

「女神様?」

 

 ──あの馬野郎の願いは確かに叶いますよ、これから。その結果を受け入れるのは、あの馬野郎の勝手です。

 

 

 

 尋ねれば、なんとも辛辣な言葉と共に、正常に『お札』は発動し、ロウシの願いは叶うのだと女神様は語った。

 

 つまり、どこかへワープしたのはロウシの願い事を叶えるために必要だから……では、どこへ? 

 

 

『とりあえず、神社の外の冴陀等村を探ってみたけど、ロウシの気配はないよ』

(双の葉牧場へ行ったりとかは?)

『双の葉……ロウシの故郷の牧場ね、分かった、ちょっと見に行くね』

(お願い、なんか嫌な予感がするから……)

 

 

 3号からの情報より、冴陀等村から居なくなっていると判断した千賀子は、ロウシが生まれ育った牧場へ向かうよう指示を出す。

 

 

(2号、そっちの神社は?)

『──来ている気配を感じないわ。もしかしたら、本体の私の方の下に来ていたりとかはないかしら?』

(……調べてみる)

 

 

 2号の話を聞いた千賀子は、エマをロボ子に手渡し……全身の気を集中すると、一気に感覚を広げ──島全体を探る。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………淡い期待を込めていたわけだが、残念ながら島からはロウシの気配を感じなかった。

 

 

『──本体の私、双の葉牧場でもロウシの気配を感じないわ』

(そう、分かった。神社でも、冴陀等村でも、双の葉牧場でもない……か)

 

 

 と、なれば、だ。

 

 

(……4号、実家の様子を見に行ってみて。そこに居なかったら、正直もう思いつかないわ)

 

 

 一つだけ残された、千賀子の実家を探すしかないわけで、取りこぼしがあるかもと2号と3号は続けて捜索を行い、4号には実家へと向かわせた。

 

 

『……本体の私! いたわ、ロウシは実家に居た!』

 

 

 その、結果。

 

 

『でも、普通じゃない! 撃たれているわ! 怪我をして動けなくなっているみたい!』

 

 

 見つかりはしたが、それは千賀子の望んでいた結果ではなかった。

 

 

 

 

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