ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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根っこはね、凡人なんすよね


第11話: 先が見えているからこその……

 

 

 

 ──昭和のこの時期、ある意味、同じ日本の中でも、場所によっては発展にかなりの差が生じていた時期でもある。

 

 

 例えば、この時期の東京……というより、東京・横浜・名古屋・京都・大阪の五つの都市で、ビジネス特急と呼ばれている『特急列車こだま』が運行されていた。

 

 これは、後に『新幹線』の前身に当たる……いや、少し意味合いが違う……いや、合っているか。

 

 詳しく説明すると色々と面倒なので詳細は省くが、後に『新幹線こだま』と定められる前は、『特急列車こだま』、あるいは、『ビジネス特急こだま』という名称で運行されていた。

 

 

 どうして、この五つなのか……色々と理由はあるだろう。

 

 

 道路や土地を確保出来たおかげで線路を早く置けた、乗り降りの人が多かったので採算が早期に確保出来ると思われていた、あるいは……そう、色々とある。

 

 まあ、それらを抜きにしても、この五つの都市の発展具合が他の県よりも群を抜いていたからなのが大きいだろう。

 

 対して、線路がまだ伸びていない地方はどうだろうか。

 

 もちろん、そこにもちゃんと電気は通っている。ガスだって通っているし、車だって走っている。そこには、生活の営みがある。

 

 だが、都心とは比べ物にならないぐらいに規模が小さい。

 

 現代に比べたら活気に満ち溢れているというレベルだろうが、この時代の基準で見たら、寂れていると言われるレベルだ。

 

 主流ではないが、移動用に馬車だって使われていたぐらい。また、この時代ですら、地方の電車(というか、列車)の中には赤字となっている路線もあった。

 

 おかげで、当時は閉鎖するのではないかという話も出ていていたし、実際にこれから先、いくつかの路線が閉鎖となるのだが……とにかく、だ。

 

 この時代ですら、都会への一極集中のデメリットが危惧されていた(とはいえ、現代よりも軽く見られていたが)のだから、如何に発展に差が生じていたかが窺い知れるだろう。

 

 

 ──で、話を戻すが、『特急列車こだま』は当時大変な人気であり、新時代を予感させる夢の超特急として注目の的であった。

 

 

 チケットはけして安くはないが、それまでなら朝に出て晩まで時間が掛かる距離が、昼過ぎぐらいには到着出来るほどになった。

 

 その速度は、当時の日本人にとっては正しく超特急と言えるほどに衝撃的で。

 

 これに乗るような仕事をするのが、ある種のステータスとして思われていたぐらいであった。

 

 また、『こだま』が人気だったのは速さだけではない。

 

 当時としては近代的な作り(つまり、現代に通じる造形)になっているのもそうだが、画期的なのは車内の快適性である。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 当時の電車は揺れや騒音が酷く、『短距離を乗る鉄道車両』としてのイメージが強かった。

 

 しかし、『こだま』はこの問題を様々な新技術と新開発によって揺れを軽減し、静寂な客室を実現させた。

 

 また、当時では珍しい冷房装置を装備されたことに加え、ビュッフェ車があるのもまた、人気に拍車を掛けた。

 

 そう、千賀子の前世において1998年のダイヤ改正で廃止されるビュッフェ車は、この時から始まったのである。

 

 後に様々な発展を遂げて乗客を楽しませるようになるのだが、この時のビュッフェは立食スタイルで、軽食と飲み物が楽しめるカウンター形式となっていた。

 

 まあ、軽食とは言っても、本当に軽い物。

 

 当時の感覚では、『ちゃんとした食事は降りてから』であり、あくまでもメインは飲み物であり、食べ物は降りるまで腹をもたせる程度であった。

 

 

 ……で、そんな『こだま』に千賀子たちは乗るわけだが……現代とは違い、席の予約(もちろん、例外はある)なんてのは出来ない。

 

 

 なので、当日の切符は、当日買うのが基本である。

 

 そのため、後にダイヤが改正され、合わせて、様々な新幹線が開発&運用されるようになるまで切符売り切れが毎日のように続き、それはもう昭和を象徴とするような賑わいであった。

 

 

「……凄いね、お爺ちゃん」

「なんだ、へばったか? 昔の列車に比べたら、ここは天国みてぇに快適だぞ」

「そんなに?」

「ああ、鮨詰めなんてもんじゃねえ。座れる場所なんてねえから何時間も立ちっぱなしでよ、あの息苦しさときたら忘れられねえや」

 

 

 そして、朝一から列に並び、無事に切符を買い終え……席に腰を下ろした千賀子はもう、深々と背もたれに身体を預けていた。

 

 当然ながら、車内の喧騒も凄まじい。切符代が現代に比べて高いので子供の姿はほとんど無いが、それでも騒がしい。

 

 理由は、この時代には車内マナーなんて考えがほぼ存在していないからだ。

 

 周囲に聞こえるような音量の談笑、それぐらいは当たり前。いや、むしろ、周囲が騒がしい分、相応に大きくなる。

 

 現代の静かな新幹線内を想像していると、面食らうだろう。

 

 この日も切符売り切れなだけあって、ガヤガヤと右に左に真ん中の通路を人が行き交いしていた。

 

 

 ……真新しさを感じないのかって? 

 

 

 そんなの、千賀子からすれば『レトロな新幹線だね』という感想しかない。まあ、ピカピカの車内を見て、ちょっとテンションが上がったのは事実だが。

 

 

「ほれ、これでも飲んでしばらく休め」

「あ、コーラだ」

 

 

 祖父が鞄から取り出したコーラを見やった千賀子は、意外な飲み物の登場に思わず目を瞬かせた。

 

 いったいどうして……それは、昭和のこの時期ではまだ、コーラは限られた場所でしか販売されていないからだ。

 

 どうしてって、大本から許可が出ていないから。なので、『秋山商店』でも販売されていない。

 

 ただ、飲んだ事はある。

 

 取引先の方から、『これ、飲んでみたことあります?』といった具合で、いくらか融通してもらった事があるから。

 

 その時の評価は、千賀子を除いて、良くも悪くもそこまでではなかった。

 

 まあ、現代では見慣れていて何の違和感も覚えないが、昭和当時の黒い飲み物なんて、煮詰めたお茶か、お汁粉ぐらい。

 

 甘いが、色が黒いという部分に忌避感を抱き、誰も彼もが『味は良いけど、色がなあ……』という感想に落ち着いたのであった。

 

 

 ……え、千賀子はどうなのかって? 

 

 

 ぶっちゃけ、涙が滲むぐらいに感動した。とはいえ、千賀子の感動も、秘密にしている事情を考慮すれば、致し方ない事だろう。

 

 そのおかげで父からは、『涙が出る程好きなら、頼み込んでもっと貰ってくれば良かったな……』と苦笑交じりに言われたが……まあ、そんな事よりも、だ。

 

 

「お爺ちゃん、いつのまに?」

 

 

 たしか、コーラの在庫は0だったはず。

 

 店に出すことも出来ないので、兄と半分に分けて……早々に全て飲み終えてしまい、今は兄が所持している分しかなかったはずだが……。

 

 

「このまえ、和広のやつが仕事をさぼった時に、罰として一本頂戴したんだよ。前に、美味そうに飲んでいただろ?」

「うん、ありがとう……ちょっと休憩したら飲むから」

 

 

 差し出されたコーラ(瓶)に笑みを向けた千賀子は、ぼんやりとコーラ瓶を見やりつつ……ふと、隣の祖父に尋ねた。

 

 

「ねえ、お爺ちゃん」

「ん?」

「家を出る前、なんか兄と喧嘩していなかった? 私、便所に行っていたから話を知らないんだけど」

「ん、ん~……アレか。アレは、喧嘩なんてもんじゃねぇよ」

「じゃあ、なに?」

「……そうさな」

 

 

 隣の席で、同じように背もたれに身体を預けてうたた寝しようとしている祖父は……被っている帽子で目元を隠すと、一つ、溜め息を零した。

 

 

「ふてくされている馬鹿の、不真面目なツケが来ただけさ」

「はい?」

「無理に分からなくてもいい。ただ、美味しいところだけ得ようとしたって、そう上手くはいかんよって話だ」

「……?」

 

 

 ワケが分からず首を傾げる千賀子に、祖父は「さあ、一休みだ、今日は長いぞ」それだけを告げただけで。

 

 結局……景色を眺める千賀子を他所に、目的の駅に到着するまで、寝息を立てていたのであった。

 

 

 

 

 

 ──実のところ、千賀子にとって『東京』という場所は、数えるぐらいしか行ったことがない見知らぬ場所であった。

 

 

 動画やら何やらで、前世の東京は知っている。数える程度だが、実際に足を踏み入れたことだってある。

 

 その時の正直な感想は、立ち並ぶ建物や人の多さに辟易するよりも前に、『なんか、臭くないか?』という怒られそうなモノだったが……で、だ。

 

 

「はぇー……思っていたよりも広いわぁ……(けっこう道路とかボロボロだな……)」

 

 

 駅を出て、すぐ。

 

 路面電車の停留所にて電車が来るのを待っていた千賀子は、辛うじて怒られそうな内心を隠しつつ、思わずといった様子で呟いていた。

 

 なんというか、アレだ。

 

 たしかに、これまで見ていた街並みやら何やらが違う。

 

 道路は広く、中央に走る線路と、それに合わせて伸びる電線。歩道に敷き詰められたレンガは一部ひび割れ、あるいは砕けて地面が見えている。

 

 そんな大地を、大勢の……それはもう、様々な恰好をした者たちが右に左に、行き交いして、踏みしめている。

 

 

 聞こえてくる様々な喧騒だって、そうだ。

 

 

 車の走行音は現代に比べて大きく、排気ガスも遠目からでも色が分かる。現代では見なくなった三輪トラックが、次から次に通り過ぎて行く。

 

 それらはまるで、東京の顔……全てが合わさって鼓動する、大きな生き物のように見えた。

 

 立ち並ぶ建物はどれもこれもが大きく立派で、どこかで見た覚えがある社名もあれば、全く身に覚えのない社名もある。

 

 まるで、別世界に足を踏み入れたかのような……住んでいる町には無いものが、ここでは溢れかえっていた。

 

 

「どうだ、初めて見る東京は?」

 

 

 祖父より尋ねられた千賀子は……率直な感想を告げた。

 

 

「小さな子供みたい」

「……子供?」

 

 

 首を傾げる祖父に、千賀子は頷いた。

 

 ──そう、千賀子には、この生き物が……まるで、ようやく立って歩ける程度にまでなった子供に見えた。

 

 

「ここって、戦争で一度は焼け野原になったんだよね?」

「ん、ああ、そうだな」

「それで、一度死んだんだよ、この町は。でも、みんな諦めなかった。もう一度立ち直って、生まれ変わった」

「……そうだな」

「でも、元に戻ったわけじゃない。何もかもが燃えちゃったから、だから、生まれ変わった。生まれ変わったこの町は、まだ自分がどこへ進もうとしているのかが分かっていないの」

 

 

 その言葉と共に、千賀子の脳裏を過ったのは……前世の記憶にある、『現代の東京』である。

 

 あの光景が正しいのか、それは千賀子にも分からない。

 

 アレが東京の最終形なのか、それともアレですらまだ発展の途上にあるのか、それすらも千賀子には分からない。

 

 

 それも、当然だ。

 

 所詮、前世も今も、ただの人間に過ぎない。

 

 

 盛者必衰、東京という都市が廃れるまで、前世の千賀子が生きていられた保障はないし、そもそも、あの後も発展し続けたかもしれない。

 

 そして、この世界……とても似ているけれども、確かに違うこの世界の東京が、これから先どうなるか……それだって、千賀子には分からない。

 

 おそらく、この世界も己は同じ結果になるだろう……とは、思う。

 

 けれども、確信は無い。

 

 もしかしたら、己の知らない全く別の東京に成るかもしれない。あるいは、そっくりそのままになるかもしれないし、似ているようで似ていない、そんな東京になるかもしれない。

 

 

「──だから、目を離せないと思う」

 

「もしも、私がここで生まれ育っていたなら……たぶん、ず~っとこの町を眺め続けていたかもしれない」

 

「この町が何処へ行くのか、何処へ向かって行くのか」

 

「見ていて、本当に楽しいと思う。テレビの向こうから眺めるように……ず~っと、眺めていたかもしれないかな」

 

 

 そこまで話したあたりで、ハッと我に返った千賀子は……曖昧に笑って首を横に振った。

 

 

「ごめんね、変な事を言っちゃった」

「……いや、変じゃねえよ」

 

 

 それに対して、祖父は……しばし沈黙を続けた後、おもむろに唇を開いた。

 

 

「千賀子」

「なに?」

「おめえ、将来の夢はあるか?」

「……将来の、夢?」

「おう、何かねえのか? お嫁とか、花屋とか、今時は会社員か? とにかく、色々あるだろ?」

「……色々、ねえ」

 

 

 言われて、しばし考えた千賀子は……静かに、首を横に振った。

 

 

「今のところは、特に無いかな」

「無いのか? 何か一つぐらい、やってみたい事があるだろう?」

「う~ん……やってもなあ、そのうち私なんて足元にも及ばない天才がどんどん出てくるから、イマイチその気にならないんだよね……」

 

 

 千賀子のその言葉は紛れもなく本心であった。

 

 そう、千賀子は知っている。前世の記憶、歴史の教科書やら何やらで学んだ……時代の技術革新の数々を。

 

 

 ──とてもではないが、千賀子は己がそこへ食い込めるとは欠片も思っていない。

 

 

 あれらは、己のような紛い物の天才ではなく、真の意味での天才たちと秀才たちが力を合わせて作り出した結晶だ。

 

 そんな場所に、情熱も何もない千賀子は、場違い以外の何者でもない。いや、それどころか、居ない方が良いかもしれない。

 

 

(……『ガチャ』で色々な恩恵を受けているとはいっても、所詮は一般人だしなあ……私は)

 

 

 第三者が見れば、なんとも消極的で主体性の無い子だと馬鹿にされそうだが……それこそが偽りの無い己なのだと、千賀子は自覚していた。

 

 もちろん、だからといって投げやりになるつもりはない。

 

 ただ、分を弁えているだけだ。

 

 己は天才ではない。しかし、努力と才覚次第で秀才には成れる。

 

 ならば、秀才を目指せば良い。

 

 幸いにも、『ガチャ』の恩恵によるアシストはある。天才には成れずとも、そこまでなら成れるだろう……そう、千賀子は考えていた。

 

 

「違うぞ、千賀子。それは、違う」

「え?」

「やる気がないんじゃねえ。それは、負けるのが怖くて逃げているだけだ」

「──っ!」

「千賀子、いいか。逃げるのはいいんだ。だが、つまらん矜持を守るために逃げるのだけは止めろ。その逃げは、癖になるぞ」

「…………」

 

 

 だが──そんな千賀子の考えは、真っ向から祖父に否定された。

 

 それは……千賀子にとって初めてとなる返答。

 

 なんだかんだ、家族の誰よりも甘やかしてくれる祖父からの、初めての叱責であった。

 

 そして、その言葉は……かつてないほど、グサリと千賀子のナイーブな部分に突き刺さった。

 

 

 ……戦争というものを、実際に経験しているからだろうか。

 

 

 大人としての記憶と経験があるのに、どうしてか、千賀子は祖父に勝てる気がしなかった。

 

 それは、単純に力があるとか度胸があるとか、そんな事じゃない。

 

 もっと、根本的な……『格』というべき部分が、精神の気高さが負けているような……そう思えてならなかった。

 

 

 

 ──そうして、そんな時であった。

 

 

 

 ぷっぷー、と。

 

 前方より車のクラクションの音がした。

 

 ハッと我に返った千賀子と、気を取られた祖父がそちらに目を向ければ……道路の路肩にて止まっている車内より手を振る、道子が居た。

 

 

「えっ、道子!?」

「こんにちは、千賀子~」

 

 

 あまりに想定外な状況に、千賀子は祖父を見上げる。「──行くか」祖父からの許可が出た千賀子は、祖父と手を繋いだまま道路へと出て……グルリと回って、歩道側より話しかけた。

 

 

「どうしたの、こんな場所で?」

 

 

 千賀子がそう尋ねた理由は先日、明美と道子の両名に、『祖父に東京競馬場へ連れて行ってもらう』ことを告げた時、道子も東京に行くとを口にしなかったからだ。

 

 

「実はね、昨日パパに誘われたの。パパの馬の応援に東京へ行かないかって」

「パパ?」

 

 

 首を傾げながら視線を上げれば、車の陰(つまり、運転席側)から出てきたダンディな雰囲気と風貌の男が、軽く会釈をした。

 

 

「道子の父です。君が、千賀子ちゃんだね?」

「え、あ、はい」

「いつも娘が世話になっている。今後とも、道子の友達でいてやってほしい」

「いや、別に言われなくても友達を辞めるつもりはないから……」

 

 

 そう答えれば、道子の父はニッコリと笑うと……ふと、思い付いたかのように祖父へと向き直った。

 

 

「娘から聞いておりますが、行き先は一緒なのでしょう? どうです、よろしければ、ご一緒に行きませんか?」

「それは有り難いが、2人も乗れるんか?」

「詰めれば、なんてことはありませんよ」

「じゃあ、御厚意に甘えさせてもらおう……千賀子も、良いな?」

「うん」

 

 

 頷けば、道子父の指示に従って、祖父が助手席に。千賀子は後部座席の方へと乗り込むことになった……っと。

 

 

「……ええっと?」

 

 

 さっきは気付かなかったが、車内には高そうな洋服を着た、千賀子たちより少し年下に見える、見慣れぬ男の子が1人居た。

 

 線が細く、顔立ちは整っている。時代が時代なら、ショタコン大歓喜間違いなしの、文句なしな美少年であった。

 

 

「は~い、(まこと)くんは、こっちだよ」

 

 

 そんな美少年が、道子の手でクルリと道子の太ももを経由して、車内の端っこに移動する。その際、ポッと少年の頬が赤くなったが、千賀子は彼を思ってあえて触れなかった。

 

 上から見れば、千賀子・道子・少年(誠)の席順である。

 

 

「ええっと……弟がいたの?」

「弟はいるけど、違うよ~。この子は、私の許婚(いいなずけ)さんだよ~」

「え?」

「私は将来、誠くんのお嫁さんになるんだよ~。それじゃあ、誠くん。この人は私のお友達だよ」

 

 

 率直に尋ねれば……とんでもない爆弾発言が飛び出した。そして、呆ける千賀子を他所に、車はもう走り出していた。

 

 

「……その、ご紹介に(あずか)りました、遠藤誠と言います」

「あ、はい、道子の友人で、秋山千賀子と言います」

 

 

 とりあえず、千賀子と、道子の許嫁のファーストコンタクトは、なんとも唐突に行われたのであった。

 

 

「あ、先に言っておくけど、誠くんのことを名前で呼んじゃ駄目だからね~。お名前で呼んでいいのは、奥さんになる私だけだからね~」

「え?」

「だから、千賀子は誠くんのことを遠藤さんか、遠藤くんって呼ばないとダメなんだからね~」

「……ええっ、と?」

 

 

 チラリと、千賀子が少年を見やれば。

 

 

「……僕のことは、遠藤くんとでも呼んでください」

 

 

「あ、はい」

 

 

「いちおう、慣れっこですので。遠藤くんとか、遠藤さんって呼ばれるのは……」

「あ、はい……」

 

 

 あと、道子が意外と嫉妬深いというか、中々に独占欲のある女子であることを、千賀子は知ったのであった。

 

 




昭和は魔境じゃけえ・・・
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