ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
……そうして始まった、千賀子を主演とする映画撮影。
撮影場所は、千賀子の実家や神社……ではなく、千賀子にとって思い入れの深い、『小川』の傍に決まった。
理由はまあ、消去法の結果だ。
まず、実家にて撮影をするつもりはない。千賀子の日常とはいえ、あくまでも己だけの話であり、そこに実家を巻き込むつもりはまったくなかった。
ソレに関して、土師田も深々と頷いただけに終わった。
曰く、『そういう無理を通したところで、必ず顔に不満が出る。それは、俺が撮りたいモノの姿ではない』ということらしい。
次に、神社も駄目だ。
理由は言うまでもなく、アレだ。
さすがに二度目は無いと思うが、そんな油断は間違ってもできない。同様に、冴陀等村は刺激が強過ぎるので、そちらも駄目とした。
懇意にしている牧場とかも、知らない人(それも、撮影機材を持った)を連れて行けば邪魔を通り越して営業妨害行為なので、そちらも却下。
では、いっそ街中とかで……そんなのトラブルの下だし、どこでUMAたちがエントリーしてくるか分からないので、そちらも却下。
ならば、癒しの塊みたいな巨女たちの住まう島……いやいや、あそこは存在そのものがR-18みたいなエチエチUMAしかいないから、そこも駄目。
巨女たちには悪気はないのだ。
ただ、普通の服は着られないし、当人たちも裸で居ることに欠片の羞恥心も持っていないからこそ、そうするしかないのである。
少し前に、試着用として少量ばかり浴衣(力士用)を渡したのだが、チラリズム過ぎて目に毒なのは変わらないという結果が出たし。
他にも、あそこは駄目、こっちも駄目、思い返してやっぱり駄目と候補地を減らしてゆき……最終的に、該当する場所がソコになったわけだ。
『小川』にいは、UMAたちとて姿を見せない。
なにせ、千賀子から直接、『小川の辺りで何かしたら一切の弁明許さず殺す、絶対殺す、慈悲無く殺し続ける、永遠に』と真顔で忠告したから。
さすがのUMAたちもそれだけはヤバいと思ったのか、例外なく顔を青ざめてその場で何度も何度も土下座したぐらいには……で、だ。
場所は決まったわけだが、問題はまだまだ出てくる。
撮影する前の段階で、既に素人が作る個人制作ならまだしも、御世辞にも元業界人が撮影したにしてはお粗末な出来になるだろう……というような空気が流れていた。
なにせ、機材が明らかに足りない。いや、足りないのは機材よりも、人だろうか。
ぶっちゃけてしまうが、映像を撮るだけならば一人でも出来る。カメラ道具一式があれば、可能なのだ。
あとは、使い捨てホッカイロがあれば状況によってはヨシだが……しかし、実はこの頃はまだ、使い捨てカイロが無い。日本で使い捨てカイロが登場したのは1975年だから。
この世界でもまだ使い捨てカイロは販売されておらず、『3月も末なので、大丈夫でしょう』とは言いながらも、土師田は少しばかり気にして……話を戻そう。
人が足りないというのは、そのままの意味だ。
撮影範囲に無関係な人や物……ノイズが入り込まないようにする人員、レフ板(反射板)を当てたり、風除けになったり、人手は多い方が良い。
土師田も、その事を気にしていた。そりゃあ、そうだろう。
新たに人を雇うお金はもちろん、会社からトカゲの尻尾切りをされた土師田に協力してくれる者などはいない。
それを、土師田は仕方がない事だと受け入れている……が、それは、それとして。
被写体である千賀子の魅力を己の不手際で損ねてしまうのは、1人のカメラマンとして許せないのもまた、当然だろう。
なので……そこは、千賀子がこっそり手を貸すことにした。
何をどうするのかって、それは巫女的パワーによる神通力ウェザーチェンジ……つまるところ、天候操作である。
さすがに町一つ県一つは無理だが、神社がある『山』から距離的に近く、撮影場所だけに限定すれば、多少は雲を操ることは可能であった。
まあ、幸いにも当日の天気は晴れ。無風に近いぐらいで、撮影をするにはうってつけ……天は、土師田に味方をしたのであった。
……さて、そんなわけで、無い無い尽くしの撮影を始まったわけだが。
「──釣り?」
「はい、私にとって、これは思い出の一つで、私を形作ったモノの一つですから……意外に思われますか?」
「いえ、いえ、とんでもない。意外なんて言葉は、自らが相手を偏見の目で見ていたという証左ですから」
「……今更だけど、あなたって裏表を隠せない人ね」
「そうですね、親にはよく言われました」
「言われた?」
「治らないと匙を投げられまして、今ではもう口にすら出しませんよ」
「あははは、そうね、そう言われても仕方ないわね」
──千賀子の日常を撮る。
当初よりそれだけは断固たる決意で定められていたが、その『日常』とはいったい……ソレを、なんと土師田は千賀子にまかせたのだ。
それを、いいかげんな、あるいは、人任せな、そう判断する人はいるだろう。
けれども、土師田には、土師田なりのこだわりがあったのだ。
それは、『被写体の日常は、被写体の中にしかない』、というもの。
その人にとっての『日常』は、その人の中にしか存在しない。外部の者が偉そうにコレだと示したところで、それは当人にとっては異物でしかない。
だからこそ、どのような形であれ、その人にとっての『日常』は、その人が自ら見つけ出さねばならない……そう、考えていた。
……千賀子は、その考えを否定しなかった。
だから、千賀子は真剣になって考えた。
そうして、日常とは何か……それを当日まで考えた千賀子が用意したのは、釣り道具であった。
祖父より譲り受けた、年期が入ってボロが目立ち始めている、粗末な作りの釣り道具であった。
「……あの人は?」
ソレを片手に手頃な場所を探してウロウロしていると、土師田は言葉を選ぶかのように視線をさ迷わせ……チラリと、エマを抱き抱えている、顔を隠した女性を指差した。
その女性の正体は、顔を隠した4号である。なんで顔を隠しているのかって、バレたら面倒だからだ。
4号は、基本的にエマの世話を専任している。なので、分身たちの間では一番エマを落ち着かせるのが上手い。
同期では得られない不可思議な経験値があるのか、その部分に関してはいくら同期しても2号と3号は得られなかった。
「気にしないで、私が信頼を置いている乳母みたいな人だから。若いけど、腕は確かだから安心なさい」
「はあ、わかりました。でも、中止する時はすぐに言ってくださいよ」
「分かっているわ、気を使わせて申し訳ないわね」
「いえ、こちらこそ……本当に、ありがとうございます」
そう言って、会話を中断させた千賀子は……ここだなと思った場所で立ち止まると、土師田に当たらないよう気を付けつつ……力強く竿を振った。
……思い返せば、釣りは久しぶりな気がする。
ぽちゃん、と。
飛沫をあげて落ちる重り。糸を引いて軽く張りつつ……それから、チラリと、背後の土師田を見やると。
「土師田さん」
「はい」
「今から、気を抜きます。これが、私の『日常』です」
「はい」
「貴方がどんな事をしでかそうと、この場においては咎めません」
「??? はい?」
「頑張ってください、気を抜いた私を見ると、だいたいの人はおかしくなりますから」
「おかしく??? わ、分かりました、それでは、合図を出したら撮影開始します……どうぞ」
発言の意味を分かっていないのが丸わかりであったが、千賀子はそれ以上何も言わず……視線を眼前の『小川』に戻し、ふうっとため息をこぼすと。
──その直後、千賀子は抑え続けていた護りを外した。
それは、言葉で説明出来る類の変化ではなかった。また、目に見える変化でもなかった。
( え あっ え ?? )
ただ、合図を受けて、カメラを回し始めた土師田が最初に気付いた。
強いて挙げるならば、存在感が増した……というやつだろうか。
カメラ越しに見る千賀子が、その瞬間、大きくなったように見えたのだ。
もちろん、錯覚である。実際には、まったく大きさは変わっていない。
だが、変化はそれだけに留まらなかった。
反射的に顔を上げかけたのを意地で抑えた土師田は……衣服の裾より伸びる、滑らかな千賀子の肌にばかり意識が向いてしまうことに、気付く。
今日の千賀子の恰好は、この時期に着るには些か薄着ではあるが、特に
近頃の、年頃の女性が着るにしてはむしろ野暮ったい厚手のロングスカートに、どこぞのブランド名が書かれたシャツに、七分丈ぐらいのカーディガン。
むしろ、東京の女子に比べたら肌は隠れている方にも……だが、これはどうしたことだろうか。
袖より伸びる指先の、穢れを知らぬ白さ。光の加減で、髪に隠れた首筋がうっすらと……思わず、唾を呑み込んでしまう。
それだけではない。
先程とは違い、東京でも滅多に見掛けない胸の膨らみに視線が吸い寄せられる。そうして、改めて、その大きさが窺い知れる。
土師田は現在、千賀子の斜め後方から、ゆっくり千賀子の横側へと移動している。それは、千賀子の姿をもっと見たいという欲望が無かったかと言えば、嘘になるだろう。
そう、もっと見たいと思った。
ただ、釣竿を構えているだけ。
ただ、それだけなのに、両腕で挟まれた膨らみに視線が移り、シミ一つない美貌に視線が移り、座ったことで分かってしまうお尻のサイズにも、視線が移る。
──本当に、美しい人だと土師田は思った。
何気ない所作の一つ一つに、ふわりと色付いた花を思わせる美しさを想起させる。欠点が、少なくとも土師田には、千賀子の姿形に何一つケチを付けられなかった。
目は大きい。それに見合うまつ毛も、整っている。
けれども、極端に大きいというわけでもなく、本当にちょうどよく大きくて、充血一つ見当たらないそこは、見ていると吸い込まれそうな気さえしてくる。
鼻だって、唇だって、耳の形だって、あごのラインだって、そうだ。
思わず、同じ人間なのかと思ってしまう。何故ならば、人にはどれだけ欠点のない美貌とは言っても、角度や姿勢でそう見えない部分があるからだ。
たとえば、右斜め側から見ると顎の肉が弛んで見えたり、左側から見ると老けて見えたり、逆に綺麗に見える位置もあるが、大なり小なり、そういう部分を誰しもが持っている。
けれども……それが、千賀子にはないのだ。
どの角度から見ても、どの位置から見ても、『わっ、美人な人』と異論を挟む余地なく思わせてしまうナニカがあって、実際にそういう部分が何一つ見当たらないのだ。
そして──どこからともなく、甘い匂いがしてくるのを土師田は感じた。
それは、砂糖菓子のような甘さではないし、香水のような匂いとも違う。もっとこう、桃を思わせる、かといって、果物よりもはるかに神経へガツンとくる匂い。
(──っ、~~~~!!!!!)
少し遅れて、己がかつてないほどに……ズボンに押さえられて痛みすら覚えるほどに勃起していることに気付いた土師田は、辛うじて構えたカメラを動かさなかった。
こんなのは、初めてであった。
会社に居た時にはロマンポルノの撮影に参加したが……あの時、ほとんどSEX同然の男女の絡みを見た時も、土師田は勃起などしなかった。
そんな事よりも、目の前の演技を撮る事に全神経を集中させていたからだ。
けれども、あの時とは違った。
あの時と違ってSEXをしているわけでも、裸になっているわけでもないのに、土師田は……千賀子の横顔を見て、妄想を抑えられなかった。
そう、どれだけ集中しようとしても、次から次に膨らんでくる妄想を、止められない。
あの身体に抱き着いたら、どんな匂いがするだろうか。
遠目にも分かるあの乳房は、とても柔らかいのだろう。乳首はどんな形で、大きいのだろうか。
脇の毛は剃っているのだろうか、あそこは剛毛なのだろうか、パンツの中は汗臭いのだろうか、股の奥はどんな味がするのだろうか。
ふーっ、ふーっ、ふーっ。
徐々に荒くなってゆく、自らの呼吸。妄想は、どんどん具体的になる。
カメラ越しに見える姿はちゃんと服を着ているのに、パッパッパッ、と裸になってこちらを向く千賀子の姿が、フィルムのように拡大してチラつく。
それは、柔らかそうな乳房だ。硬く勃起した○○○をすりつけたい、出したい、突き入れたい。
腰は細いのだろう、お尻は大きいのだろう。そのお尻に腰を叩き付けたら、さぞ気持ちいいだろうか?
そうだ、千賀子はどのように喘ぐのだろうか。
処女のように時々息を詰まらせ、顔を赤らめ、恥ずかしそうに身体を固くしながら喘ぐのだろうか。
それとも、熟れた女のように快楽のあまり苦悶に唇を噛み締め、絡みつくように指先を伸ばして鳴くのだろうか。
──見てみたい、いや、やりたい、犯してやりたい!
汗でしっとり濡れたその身体を、衣服の下に隠したその裸体を、押し倒して舌を這わせたら、さぞ甘く──甘く? あ? いや、待っ──っ!!!!???
そこで──我に返った土師田の反応は、反射的であった。
足元に転がっていた、先が尖った石。それを握り締めると、力いっぱい……己の太ももに叩きつけたのだ。
それも、1回や2回ではない。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
履いているズボンが汚れて穴が開き、その奥より血が滲んで濡れるのを構わず、叩いて叩いて叩いて……土師田の手からすっぽ抜けた石には、鮮血が付着していた。
(──撮るんだ!!)
そして、土師田は再びカメラを構える。
滲んだ鮮血が太ももより滲んで流れてゆくが分かる。場に尻餅を突きたくなるような激痛が、ジンジンと脳天へと響く。
でも、撮影を続ける。
それは、1人の男としての、1人の映画人としての、けして頭が良いとは自覚していない、ちっぽけな土師田の矜持であった。
千賀子が己を返り討ちに出来る自信が有るか無いか、それは問題ではない。そんなのは、関係ない。
襲われる可能性を理解したうえで、押し倒されて犯される可能性を覚悟したうえで、こちらに委ねてくれたのだ。
(ここで撮らなきゃあ男が廃る! 痛かろうが小便垂れ流そうが、撮れ! 撮るんだ! 俺なら出来る!!!)
激痛の中でも、それでも、今すぐにでもカメラを放り捨てて、千賀子を押し倒して、硬くいきり立ったブツを思いっきり差し込みたい──そんな欲求が止まらない。
でも、耐える。
男ならば、耐えなければならない。
たとえ、激痛の最中だというのに興奮のあまり射精して……腰が抜けそうになりながらも、それでもなお、欠片も性欲が落ちなくてもなお、耐えるのだ。
ここで耐えられなかったら、ここでカメラを下ろしたら、俺は一生自分を情けない人間だと思って生き続けるだろう。
(──撮る! 絶対に、最後まで撮り続けてやる!!)
そんなのは、許さない。他でもない、己自身が。
ゆえに、土師田は撮り続けた。
痛みに耐え、股間の疼きに耐え、自分が何を撮っているのかすらあやふやになりかけていてもなお……撮り続け、そして。
「 」
何を言われたのか、それは土師田には分からない。
ただ、振り返った千賀子から微笑まれるのと、あらかじめセットしておいた、撮影終了を意味する目覚まし時計が鳴り響くのを耳にして。
土師田は、フッと目の前が暗くなるのを最後に、気絶したのであった。