ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第126話: 千賀子「あんた、〇〇歳で死ぬよ?」 ←恐ろしい説得力

 

 

 

 結局、千賀子が布団から出て来たのは翌日の朝であった。

 

 

 理由は、お腹が空いたからである。お腹が空いていなくとも、意地でも食べる、食べられなくても食べる。

 

 それは、祖母からの教えだ。まずは、食べること。

 

 人間、お腹が空いている時はろくな事を考えないし、ろくな判断をしないし、どうでもいい事をくよくよ考えてしまうものだ。

 

 物事は、食べてから悩むべき。

 

 その教えと、空腹を訴える腹の虫にたたき起こされた千賀子は、ロボ子が用意してくれた朝食をよく噛んで食事を終える。

 

 そして、顔を洗って、歯を磨いて、しっかりと身嗜みを整える。

 

 それは、千賀子が前世から心がけている教えである。

 

 言うなれば、メリハリを付けるのだ。精神を、心を、カチリと切り替える。さあ、今日も一日を始めるぞと、命を動かすエンジンに火を入れるわけだ。

 

 

「──おはよう、それじゃあ、気を取り直して諸々の方針を決めましょうか」

「分身の私が言うのもなんだけど、なんだかんだ立ち上がるその図太さは驚嘆に値すると思うわよ、本体の私?」

「分身に褒められても嬉しくないよ……おはよう~、エマ。今日もお母さんは頑張るからね~」

 

 

 まあ、だからどうした……と、言われたらそれまでだが、きゃっきゃと笑いながら元気よくヨチヨチと歩くエマの額にチュッとキスをしてから……さて、と千賀子は居住まいを正した。

 

 

『 ──第○○回、千賀子会議開催── 』

 

 

 背後でロボ子が垂れ看板を置くのを尻目に、分身たちも居住まいを正す。4号よりエマを受け取った千賀子は、エマと戯れながら……話を切り出した。

 

 

「まず、『春木競馬場』の件だけど、これまで通りの開催を続けるとして、新たに着手した方が良いところってあるかしら?」

 

 

 そう話を振れば、2号と3号はすぐに手を挙げた。

 

 

「とりあえず、後回しになっている内装の全面的な修繕と改装、したら良いんじゃないかな? トイレとか下水関係もそうだけど、よーく見ると……ねえ?」

「そうね、3号の言う通りだわ。あと、コースの修繕も、もっと定期的に行った方が良いと思うわ。事故は少ない方がいい、できるかぎり安全な状態で走ってもらった方が良いと思う」

「あ、それと、騎手たちのロッカーとかそこらへんも新しくした方が良いと思う。やっぱ気分も良くなるし、ピカピカなのが一番だよ」

「そうね、フットワークの軽さが民間の強みなのだし、やるなら早い方が良いと思うわ」

 

 

 3号、2号の順の発言……どちらも必要だと思った千賀子は頷き、続いて4号を見やれば……しばし考えていた4号は、おもむろに唇を開いた。

 

 

「そうですね……春木競馬場内に、川が流れていますよね」

「春木川《はるきがわ》のことね?」

 

 

 春木川とは、岸和田市内を流れる河川である。

 

 春木競馬場は全国的にも珍しい、コースを横断する形で河川が通っており、そのため、コース内に橋が設けられていた。

 

 

「場内の河川に沿うように、花壇でも設けてはどうでしょうか? もちろん、コースの邪魔にならないように……景観が良くなりますし、イメージアップを図る意味でも、よろしいかと」

「花壇か……その発想はなかった」

 

 

 本当に無かった発想に、千賀子は軽く目を瞬かせ、2号と3号も、おお……っと、目からうろこな様子であった。

 

 ……分身たちはあくまでも千賀子の分身であり、それ以上でもそれ以下でもないが、千賀子の側面的な部分でもある。

 

 普段はそれが表に出ることはあまりないが、ふとした時にそれが出たりする。

 

 たとえば、2号は冷静な部分が多いが、少々皮肉気質なところがあり、本体の千賀子に対してもそれが出る。

 

 3号は、自由を求める気質が強い。2号に比べて楽観的で、今でも時々だが仕事の合間に旅(という名のサボり)に出ていたりする。

 

 4号の場合は、エマの面倒をサポートするのを目的として生み出したからだろうか、2号と3号に比べて真面目である。

 

 ただ、千賀子や分身たちとは、どこか視点が違うというか……感性が、柔らかいのだろう。

 

 だからなのか、2号や3号に比べても自己主張をしないが、別に内気というわけでもなかったりする。

 

 

「それと、立ち見だけでも構いませんので、場内での飲食スペースを設けてはどうでしょうか?」

「飲食?」

「現状、勝手に持ち込んでくる人がそのままゴミを捨てていくみたいだから、食べる場所があれば改善されるかなって……」

 

 

 その意見に、ふむ……と、千賀子のみならず、分身たちも考える。

 

 現在、そういったスペースは設けられていない。ただ、お茶とか握り飯を立ち売り箱に載せて売りに来る人はいる。

 

 

 ──Q.衛生面というか、許可ってどうなっているの? 

 

 ──A.そんなん必要なん? (昭和脳)

 

 

 いや、ふざけているとかではなく、1970年代の衛生観念というか、法令遵守(コンプライアンス)への意識なんてそんなものだ。

 

 現代のように、ちょっと歩けばコンビニがあるような時代とは違い、ジュース一つ買うだけでも、駅前まで行かなければならない時もある。

 

 さすがに大々的にやったりはしないし、場内でやるやつはいないが、お茶や握り飯だけをササッと買って済ませてしまう者は相応にいた。

 

 もちろん、春木競馬場から許可など貰っていない。周辺の飲食店からも、営業妨害だと白い目で見られていたりする。

 

 無許可で屋台を引いている者なんてザラだったし、毎日のように食品工場や飲食店などへ立ち入り調査が来ていた時代と聞けば、想像付きやすいだろうか。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 とりあえず、4号の意見は採用の方向で進む。場内飲食に関しては道子を通じて相談してから……という感じで終わらせた後は……改めて、本題へと移る。

 

 

 それは、『田中角英総理』との対談に関すること。

 

 内容は、『会って話がしたい』、ただそれだけ。

 

 

 いちおう、体面的には『日本初の個人で競馬場を所有している人物に、挨拶をしておきたい』ということになっているが……それは、間違いなく周囲への言い訳だろう。

 

 ……正直、最初にその話が来た時、千賀子は誰かと間違えているのでは……と、思った。

 

 だって、田中総理との面識なんて、なんか洒落た名刺を貰ったなあ……ぐらいしかないのだ。

 

 少なくとも、千賀子はそれぐらいしか覚えていない。だから、最初は普通に当たり障りなく断ろうとしたのだ。

 

 

 ──すると、実家に電話が掛かってきたのだ。

 

 

 誰からって、田中総理本人から。

 

 そう、なんと田中総理、自分の手で電話してきたのである。

 

 これには基本的に放任なところがある家族も慌てふためき、『粗相のないように!』と口をすっぱくして……まあ、そんなわけで、対談することになったわけだが。

 

 

 問題は──全て、そちら(つまり、千賀子)の都合に合わせる、という話だということ。

 

 

 千賀子としては、そんなん面倒臭いからそっちで全部やってくれといった感じだが、残念ながら、そうもいかないらしい。

 

 総理に就いたわけだが、それでも、盤石というわけではない下手に会食の場を設けようとすれば、どこで情報が漏れるか分からない。

 

 なら、対談をしなければ……そう思ったが、『どうしても、会って話したい』と向こうから懇願されて……そこまで言うならばと、千賀子がセッティングすることになったのだ。

 

 ……なんと言い表せばいいのか分からないが、千賀子の印象は、『なんとも人に好かれる人だなあ』、である。

 

 女神的なドーピングによって得た偽りの筋肉ならぬ、なんちゃって『かりちゅま(笑)』とは根本からして格が違う、『真・カリスマ』の違いだろうか。

 

 少なくとも、悪い人物ではないだろう……そう、千賀子に思わせる人物なのは、確かであった。

 

 

「ロボ子、対談って何をするの?」

「目的にもよります。根回しのため、周囲へのアピールのため、あるいは、友好的である事を当人に知らせるため、等々など」

 

 

 スパッと言いきるロボ子に、千賀子は首を傾げた。

 

 

「田中総理は、私と縁を繋ぎたいのかな?」

「言葉通り、話したいだけでは?」

「ん~、そっか……まあ、そんな感じがするし、本当に会って話したいだけならいいんだけど……」

 

 

 そこで、千賀子は……う~ん、と唸った。

 

 

「総理って何歳?」

「今年で54歳になります」

「54歳……54歳かぁ……」

 

 

 深く考え込む千賀子に、分身たちは首を傾げ……率直に尋ねた。

 

 

「いや、だって、50代ってもう量を食えなくなる歳だよ?」

「気にするポイントなの、そこ?」

「大事だよ、私ならから揚げに天ぷらにウナギと来ても平気だけど、50代の総理にはちと厳しいと思わない? 胃もたれは実際に体感する年齢にならないと分からない苦しみなんだよ?」

「減らせばいいじゃないの」

「そりゃあそうだけど……でもさ、総理大臣になるぐらいなんだから、美味しい物だっていっぱい食べているでしょ? 私の好みを押し出すわけにもいかないじゃん?」

「気にし過ぎでしょ」

「そうは言っても、総理だよ……そんな人をもてなした経験も無いのに、どうしろと?」

「それも、気にし過ぎでは? 対等に話し合いたいだけなら、むしろ普段通りで良いと思います」

「う~ん、分かってはいるんだけど……なんか勝手が分からなくて困惑だよ……」

 

 

 2号、3号、4号から、暗に『考え過ぎ』と言われた千賀子は、それでも、う~ん、と悩むのを止められなかった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、結局、どうしたのかというと。

 

 

「……考えるの面倒臭くなった」

「で、どうするの?」

「状況に応じて柔軟に行動し、臨機応変に対応しましょう」

「つまり、行き当たりばったり、なわけね」

 

 

 基本的には頭が良くない千賀子が、アレコレ考えること自体、無駄な事であった。

 

 

 

 

 

 ──で、それから少しばかり時が流れて……セミの声が、いくらか静かになりかけている、熱帯夜。

 

 

 場所は……場所は、まあ、重要ではない。

 

 ただ、東京の一角とだけ。

 

 高給な飲食店が連なる場所ではないが、不審者が通ればすぐに警察官が職務質問を行うような……そんな場所。

 

 その場所にある会場は、傍目には、ただのビルにしか見えないが……そこに、その日、多くの車が止まっていた。

 

 一目で公用車だと分かるそれらの傍には、私服警官たちが油断なく周囲を警戒し、その周囲を囲うようにして、警察官が配備されていた。

 

 

 ……夜とはいえ、なんとも物々しい空気だが……それも、致し方ない。

 

 

 なにせ、現職の総理大臣を始めとして、政界では名高い重鎮たちが集まっているのだ。万が一、ここでテロでも起これば……最悪、国そのものの動きが止まりかねない。

 

 ゆえに、その集まりは非公式である。

 

 マスコミが聞けば是が非でも飛び込んできそうなシチュエーションだが……あるいは、警察官の顔が本気である事に違和感を抱いて、引くかもしれないが、それはいい。

 

 

「──もう、なんでみんな来てしまうのかなあ」

 

 

 最低限のボディガードだけを守りにした田中角英総理は、急遽参加を表明した者たちに向かって、明らかに気分を害した様子であった。

 

 

「いや、総理、当たり前でしょう。現職の総理が1人でこっそり謎の人物と会食とか我々だって困りますよ、そんな事をされたら」

「お堅いなあ、ご飯を御馳走になって、ちょっと雑談をするだけだよ」

「それでも、ですよ。ある事ない事を新聞に書かれたら堪らんでしょ。私らだって、色々考えてしまいますから」

「そりゃあ、そうだけど……」

「アメリカが不安定になっている今、中国とロシアの動きが気になります。幸いにも、この前の災害が向こう側にとっての大打撃になりましたが……」

 

 

 それに対して、大臣を務める……まあ、うん。

 

 大臣のみならず、言葉には発しなくとも、似たような考えの者たちが大多数のこの場において、その発言は正当であった。

 

 というか、そうでなくとも、普通に正論である。

 

 地方の市長や町長ぐらいならば……いや、それも大概だが、それよりもはるかに、内閣総理大臣という役職は重いのだ。

 

 たかが総理大臣、されど総理大臣。

 

 誰にも告げずに謎の人物と会食を行うとか、派閥外であっても、『ちょ、ちょっと待って!? 聞いてないよそれ!?』と狼狽してしまうような行いであった。

 

 だから、無理を承知での参加表明である。

 

 これには田中総理も難色を示したが、幸いにも、相手は『それじゃあ、大目に作っておくから』と軽い調子で了承してくれたが……とはいえ、だ。

 

 

「皆様方の気持ちは分かるけど、今回のコレは本当に個人的な事なんだよ、そういう政治の世界とは関係ないんだ」

 

 

 田中総理が怒るのもまあ、無理からぬ話である──が、しかし。

 

 

「それが事実だとしても、周りがそうは思いません。少なくとも、自らを正義だと思い込んでいる報道連中は、そうは思いません」

「総理、そろそろ教えてください。いったい、誰に会うつもりなのですか?」

「あさま山荘の件で下火にはなりましたが、どこに極左の目があるか……余計な火種を作りかねませんよ」

 

 

 それに対する反論もまた、正論であった。

 

 つまり、平行線。

 

 時間が時間なので声を潜めつつ、国家の重鎮たちは所々に置かれている『←』の看板に従って歩く事、4分。

 

 照明が落とされているが、不思議な事に足元がほんのり明るい。

 

 まるで、月の光を敷き詰めたかのような通路……その先へと進んだところに、明かりが漏れている部屋が一つ。

 

 合わせて、うっすらと漂ってくる香り。日本人ならば馴染みの、炊いた米と味噌の匂い。

 

 空きっ腹には、中々に酷な事である。日本人に耐えろというに……目を光らせた田中総理の背中を追いかける形で、他の者たちも続く。

 

 

 ──中に入れば、巫女服に身を包んだ美女がいた。

 

 

 そう、美女だ。それも、ただの美女ではない。

 

 一般人よりも美女を見慣れている、この場の者たちですら思わず見惚れ、呼吸をすることを忘れてしまうぐらいの……言葉には表現できない、不可思議な雰囲気を放つ美女であった。

 

 その美女の傍には、大きな寸胴鍋が3つ。

 

 色合いの異なる具沢山の汁物があって、並べられたテーブルの上には様々な料理が、様々な器に盛られ、その傍には大小様々な大きさの食器が置かれていた。

 

 

「おひさしぶりね」

「──覚えていて、くれたいのかい?」

「さすがに、まったく覚えていない人と食事をしようとは思わないわよ」

「ははは、そうだね、それでも嬉しいよ」

 

 

 呆気に取られている者たちを尻目に、美女はふわりと微笑んで──自然と、誰もが再び見惚れた。

 

 

「まず、食べましょう。あいにく、椅子はないわよ。適当に、食べたい物を自分で皿によそって食べなさい」

 

 

 そして、そんな美女から言われたら……不思議と、この場にいる誰もが、反感を抱かずに指示に頷いていた。

 

 集まっている彼らにとって……自分で自分の器に飯を盛るのは、それこそ、本当にひさしぶりの事であった。

 

 

「──美味いな」

「のっぺだ、久しぶりだなあ……」

「ああ、美味しいなあ、この味噌汁」

「卵焼きも美味いぞ、こっちのは甘いやつだな」

「こっちはしょっぱいな、俺はこっちの方が好きだ」

「く~、このイワシの糠漬けを焼いたやつがまた美味いんだ……」

「小豆ばっとうじゃないか、懐かしいなぁ」

「ああ、懐かしい。子供の頃は、こうやって机を囲んで箸を伸ばしたっけ」

「ああ、そうだな。懐かしいなあ、兄弟と奪い合いをしたな」

「やった、やった、弟だからって譲ってはくれなかったんだよな」

「仕方ない、仕方ない、飯が食えなかった時代だからな」

 

 

 1人、また1人、箸を伸ばすたびに心の緊張感が解れてきたのか、思い思いに雑談が始まる。

 

 そこには、派閥も駆け引きもなにも無かった。

 

 千賀子に話し掛けようと思った者たちも、給仕に徹する千賀子に、中々話し掛けられず……気付けば、その空気に引っ張られる

 

 あとはただ、思い思いに過去を振り返り、各自が共感する。

 

 飢えた事がない人も、飢えて苦しむ者を間近にした事は多く、あの頃にはなかった、穏やかで豊かな食事に、頬を緩めていた。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、会食の時は流れ、各自の腹がある程度は膨れた頃。

 

 

「う~ん、どうしたものかな」

 

 

 雑談の中で、ふと、思い出したように唸りながら零れたその呟きに、その場の誰もが……田中総理を見やった。

 

 

「本当に、色々と話したい事があったんだ。でも、こうして腹が膨れると、それを聞く必要があるのかとか不思議に思って、その次に、何を言おうとしていたのか忘れてしまったよ」

 

 

 その言葉に、誰もが同じ事を思ったのか、ふふふっと笑った。

 

 それは千賀子も例外ではなく……普通なら怒りだしてもおかしくない状況だが、そんなのは千賀子には関係ない。

 

 

「その程度で忘れてしまうなら、大した事ではないのでしょうね」

「おや、手厳しい。もしかしたら、すごく重要な事かもしれないよ?」

「それって、ご飯を食べる事よりも重要な事なの?」

 

 

 その言葉に、わははは、と総理だけでなく、誰もが笑った。

 

 

「──ああ、思い出した。一つだけ、どうしても聞いておきたいことがあったんだ」

 

 

 そうして、ひとしきり笑ってから──ふと、田中総理は真面目な顔になった。それを見て、周りの者もスッと背筋を伸ばす中で……総理は千賀子に尋ねた。

 

 

「千賀子くん」

「はい、なんでしょうか、田中総理」

「君は、この国が……これから先、どうなっていくと思う?」

 

 

 それは、あまりに曖昧な質問であった。

 

 

「どうなっていくも何も、これまでと変わりませんよ」

 

 

 対して、千賀子はあくまでも自然体のまま……総理の問いに答えた。

 

 

「発展して、衰退して、また発展して、衰退して……まあ、何十年か後には、外国生まれの外国育ちの国籍日本人が街中にあふれかえるような気がしますけど」

「え?」

「田中総理の思うようにやれば良いんですよ、未来のことなんて誰にも分かりませんから。そもそも、誰かに言われたから止めようなんて性格、していないでしょう?」

「…………」

「ただ、これはお願いというわけではありませんけど、どうか心の片隅にでも置いといてください」

 

 

 困った様子で苦笑いをする総理に、千賀子は──フワッと、笑った。

 

 

「今日みたいに、みんなでご飯を食べて、平和に談笑し合えるような……そんな未来が続いたら、私としては万々歳でございます」

「……それは、良いね。私なりに、頑張らさせていただくよ」

 

 

 そして、田中総理も……そんな千賀子の笑顔につられて、ニコッと笑ったのであった。

 

 

「──あ、そうそう。飛行機関係の企業などからの接待とか賄賂は気を付けてね。下手すると、それで政権交代になるかもだから」

「え?」

「あと、塩辛いの食べ過ぎ。その調子だと、67歳ごろに頭の血管詰まらせて、75歳ぐらいで死ぬわよ」

「──え?」

 

 

 ──直後に、その笑顔は引っ込んだけれども。

 

 

 

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