ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第127話: なお、体重が2kgぐらい落ちたそうな……

 

 

 ──けっこう知られていない話だが、他の季節に比べて夏場は競馬のレースが少なかったりする。

 

 

 夏場は中央競馬上が休止するといった理由もあるが、その中でも大きな要因は、馬は暑さに弱い、だろうか。

 

 いちおう言っておくが、日常生活を送るのも難しいとか、そんなレベルではない。

 

 猛暑日のような、熱気と日差しがピークに達しているような時期以外は、そこまで問題はないのだが……競走馬の場合は、少し事情が変わる。

 

 少し想像すれば分かることだが、夏の蒸し暑い日に走れば、馬だってバテるのだ。

 

 人間だって、そんな日に全力で走れば全身から汗が噴き出し、日陰に居ても中々火照りが取れないのだから、馬だって同じこと。

 

 そのうえ、馬は肉体の構造上、熱がこもりやすいのだ。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 馬は人間に比べて筋肉質なので、運動すると体内の熱の発生がしばらく続いてしまう。馬の体温は平時では37.5℃~38℃ぐらいだが、レース後には42℃~43℃ぐらいにまで上がる。

 

 人間に例えるなら、平熱36℃の人が38℃ぐらいになるのだ……その分だけ、負担も大きくなる。

 

 しかし、馬は運動時や興奮時に反応して汗を掻くが、人間とは汗腺が異なり、気温の上昇に対して機能しづらい。

 

 

 つまり、平時では汗をかきづらい身体なのだ。

 

 

 また、馬の汗は泡立つ性質があるので、発汗による冷却効果も人間に比べて弱く……それらに加えて、人間よりもはるかに周囲の環境に敏感である。

 

 牧場からレース場を往復するストレスだけで調子を崩すことも珍しくはないし、レース後に熱中症を引き起こして倒れてしまうなんて事例もある。

 

 そんなわけで、夏場でもレースこそ開催されているものの、出頭数は明らかに少なく。

 

 大半の競走馬にとって夏はお休みの時期であり、夏バテしないよう気を付けながら、モリモリ食べてゆっくり静養し、力を蓄える時期でもあった。

 

 ……それは、千賀子の所有している馬たちも例外ではない。

 

 大半の競走馬(それも、G1を狙う有力馬ほど)と同じく、よほどの理由が無い限りは静かな日々を送っている……わけなのだが。

 

 

「──ヨシッ! それじゃあ撮影しましょうか!」

「待って? お願いです、待ってください……」

 

 

 まだまだ夏の大勢力が盛んな8月終盤、日本の中でも一番涼しい地、北海道。

 

 そこにやってきた千賀子と土師田は、『馬に乗る千賀子』を撮るために、色々と準備をしていた……ところだったのだけど。

 

 

「ん? どうしたの? 便所?」

「ち、違いますよ……な、なんで、ダービー馬を連れてきているんですか!?」

「え? だって、乗馬しているのを撮りたいって言ったのは、土師田さんでしょう?」

「だからって、現役のダービー馬を連れてくるとは思わないですよ……!!!」

「良い子だよ? 暴れたりしないってば」

「違う、そういう問題ではない……!!!」

「身体も大きくて立派でしょ? 見栄えが良いのは大切だよね」

「お願い、話を聞いて……!!」

 

 

 恐ろしいことに、秋山千賀子さん(愛し子)は撮影のために現役のダービー馬……ロングエース号を連れてきたのである。

 

 これには、万が一にと同行を願い出たロングエースの調教師さんも、主戦騎手である『武国飛虎《たけ・くにひこ》』も、どことなく顔色が悪い。

 

 どちらも明らかに表情が強張っていて、調教師にいたっては幾度となく腹をさすっていて、冷や汗がじんわり出ている。

 

 騎手の武は、どういうわけか、チラチラと調教師へと何度も視線を向けては、『え、マジでやるの?』という顔をしていた。

 

 

 ……この調教師さんは、いったいどうしたと言うのだろうか? (すっとぼけ)

 

 ……この騎手さんは、いったいどうしたと言うのだろうか? (すとぼけ)

 

 

 客観的に見れば、馬主さんが自分の馬を連れて、短編映画の撮影を行うだけである。何一つ、おかしいところは無いのだ! 

 

 万が一を想定して、普段から面倒を見ている調教師や、現役の騎手も控えているだけ。場所も静かで周りの目もなく、馬を驚かせるものはなにも……ん? 

 

 

 ──ロングエース号は現役のダービー馬では、だって? 

 

 ──大丈夫だ、何も起こらない(千賀子的な直感)。

 

 

 さすがに、前回とは異なり部外者が居るので、千賀子も完全に気を抜くつもりはない。

 

 この二人が万が一耐えられたとしても、馬の方が発情してしまう可能性が大だから。

 

 だから、土師田に向かって……言い換えれば、土師田が居る方向以外には、千賀子の魅力が漏れないよう抑えながら撮影を行うことにした。

 

 なんともまあ回りくどい方法だが、千賀子の魅力は種族を問わないのだ、残念ながら。

 

 

「……? 土師田さん、なんか手がすごく震えているようだけど、大丈夫?」

 

 

 さて、そんな千賀子より指摘を受けた土師田だが、その手は傍目にもはっきり分かるぐらいに震えていた。

 

 いや、というか、手だけではない。

 

 カメラを持つ身体が、フルフルと頼りなく震えている。

 

 それは北海道の涼しさがもたらすのか、あるいは……顔からは汗が噴き出ていて、顔色も少し悪かった。

 

 

「そりゃあ震えますよ、万が一何か事が起こって馬を怪我させたら、何千万っていう損害なんですから」

「大丈夫だってば、万が一は起こらないし、請求なんてしないから」

「で、でも、馬を撮るなんて初めてで……その、すっごい臆病なんですよね?」

 

 

 理由は、どうやら馬を撮るのが初めてであるのと、馬を撮影するにあたって、調教師と騎手から、それはもう必死の形相で注意する事を教えられたからである。

 

 2人曰く、普通の競走馬ならまだしも、ダービーを取った馬の価値は計り知れない。

 

 賞金額もそうだが、人気のある競走馬の価値は、そこだけではない。その後に渡って長く金を生み出す種付け料もまた、その価値の一つ。

 

 既に何勝もしているダービー馬ともなれば、下手すれば一般サラリーマンの一生分でも賄えないぐらいの……なるほど、顔色の一つも変わるわけだ。

 

 

「臆病だけど、私が見ているから大丈夫だって、ちょっとぐらいビックリさせても平気だってば」

 

 

 けれども、千賀子にとっては可愛い馬でしかなく、いざとなれば力づくで抑えられるので、安心して撮影してねとしか言い様がないのであった。

 

 

「……土師田さん、万じゃないよ、1億だよ、1億以上だよ」

「うぅ、胃が、胃が痛い……もうすぐレースが……こんな、こんなことが……吐きそう……」

「大丈夫ですか? 俺が見ときますんで、離れたところで休んでいた方が……」

「い、いや、武さん、それはそれで、心配のあまり失神しそうで……」

 

 

 なお、震えている土師田たちと同じく、ボソボソと声を潜めながら囁き合っている調教師と騎手もまた、似たような反応だったのだが、千賀子は特に気にしていなかった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、そんなこんなで千賀子以外が色々な意味で冷や汗を流し、青ざめた顔で撮影が行われ、無事に終わったわけ……なのだが。

 

 結論から言えば──上映不可になった。

 

 上映してくれる映画館が見つからなかったとか、そういう話ではない。単純に、前回よりもあまりに破壊力が有り過ぎたのが原因であった。

 

 

 具体的には……エロ過ぎたのだ。理由は、いくつかある。

 

 

 一つは、北海道とはいえ真夏なので薄着だったから、身体の線が見えたことで、腰の細さやスカートから覗く足の白さが際立ったこと。

 

 前回の撮影の時もそうだったが、日焼けとは無縁の千賀子の肌は、青空の下にこそよく映える。

 

 白人の白さとは違い、病人の青白さとも違う、まさしく、健康的な白さを体現したかのようなソレは、どうしようもなく目立ってしまった。

 

 そして、二つ目は……その、揺れたから。

 

 

 そう、揺れたのだ。

 

 

 ロングエースは千賀子の意思に従って、揺らさないようゆっくり歩いたのだが……しかし、千賀子のKの前では、あまりに無力であった。

 

 一般平均サイズの女性ならばまず気付かれない振動でも、ゆさっゆさっ、たぷったぷっ、そんな擬音が聞こえてしまうな揺れが発生してしまうのだ。

 

 その引力、地球の比ではなく、万有引力の法則が乱れてしまう。

 

 しかも……これはまあ人によりけりだが、千賀子の座り方というか、乗馬の姿勢にも問題があった。

 

 下手で負担が掛かっているというわけではない。

 

 騎手として見れば基本からやり直せってレベルの問題外だが、素人として見れば十分過ぎるといった具合の千賀子だが、その座り方は、ペタッとお尻を乗せるやり方だ。

 

 つまり、騎手がやるようなモンキー乗りではなく、馬の背中に合わせて仙骨を立てて、背筋を伸ばすやり方だが……ここで、問題が一つ生じた。

 

 それは、大きいのはお胸のKだけではなく、尻もまたそれに匹敵する柔らかさだったのだ。

 

 それも、千賀子の尻はデブのケツではない。しっかりと筋肉が付いたうえで美しく、それでいてシミ一つなく柔らかい脂肪が最適な量だけ搭載された……無敵のケツなのだ。

 

 

 そんな尻が、だ。

 

 

 ロングエース号の動きに合わせて、重心を極力ずらさないようにする座り方をしても……柔らかいから、ゆっさ、ゆっさ、と動いてしまう。

 

 それは、本当にわずかな重心の揺れであった。少なくとも、一般女性がやっても、誰も気に留めないような揺れでしかなかった。

 

 しかし……カメラに向かって気を抜いた千賀子がやれば、いったいどうカメラから見えていたのかと言うと。

 

 

 ……具体的に述べるなら、男に跨った女の騎乗位である。

 

 

 日差しを受けて、ロングエースの毛並みが明るく見えたからだろうか。

 

 こう、馬の部分を見ないようにすると、まるで筋肉質の毛深い男に跨った千賀子が、快感のあまり悶えて身体を揺らしているように……まあ、うん。

 

 妄想でしかないのだけど、少なくとも、改めて映像を見返した土師田は、瞬間的にそんな妄想をしてしまった。

 

 最初は溜まっているせいかと思ったが、何度も見返しても、そんな妄想が脳裏を過ってしまう。どういうわけか、そんな光景を思い浮かべてしまうのだ。

 

 あくまでも顔は映らないよう、背中側を中心に映しているからこそ、余計に……見えない分だけ、妄想してしまうのかもしれない。

 

 

(……その、俺が溜まっているだけならいいんですけど……これ、アレのシーンにしか見えない──)

(──シッ! 残念だけど、これはヤバいよ……どうにもならん)

 

 

 実際、誰にも見られないよう、前回上映してくれた映画館の主人にも相談した結果、似たような感想が出た。

 

 映像が映像なので、不思議と互いが息を潜めるようにして、ひそひそと……それぐらいに、今回の『乗馬をする女』は刺激的過ぎた。

 

 

(今更だけど、服装が駄目でしたね。俺としてはありのままを撮りたいから良いんですけど、薄着だから身体の線が……)

(う~ん、姿勢を戻そうとしているのだろうけど、まるで差し込まれた快感に背筋を伸ばしているように……)

(……これ、駄目ですかね?)

(さすがに、うちの映画館を出た人が事件を起こすとかされたら……悪いけど、コレは無理だよ)

(うう、そ、そうですか……千賀子さんに、なんて説明しようか……)

(……一週間、いや、二週間限定で上映しよう)

(え!? い、いいんですか!?)

(前回のおかげで、うちも助かった。こっちばかり助けられているのは、居心地が悪いだろ)

(あ、ありがとうございます……!!)

(いいってことよ、困った時はお互い様だ)

 

 

 そう、握手をする2人……男同士の、奇妙な友情がそこにはあた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………なお、撮影を無事に終えた調教師はしばらく胃の調子を悪くしていたらしいが、まあ、それは別の話である。

 

 

 

 

 

 ──まあ、しかし、だ。

 

 

 せっかく撮影したのに上映すらできないままお蔵入りする可能性に、土師田がすったもんだしている頃。

 

 肝心の千賀子は、そんな事をしたことすら、すっかり頭の中から無くなっていた。

 

 

「──むむっ!? なんか嫌な予感がしたよ!? エマ、なんか危ない感じだから、ママに抱っこされていようねえ」

「どうしたの、本体の私? 遊ぶのを中断されたエマが不満顔になっているのだけど?」

「いや、なんか遠くの方から、こう、パワー的なアレの嫌な予感がビシバシと……」

「なにそれ?」

「う~ん、上手く説明出来ないんだけど……とにかく、かなり遠くの方……あっちの方角から、すごく嫌な予感がして……」

「あちら、ですか? 方角的に九州の鹿児島の辺りでしょうか?」

「九州? なんかあったっけ?」

「……え~っと、本体の私? あくまでも憶測でしかないんだけど、九州の鹿児島辺りに嫌な予感って……それ、まさか桜島からじゃないよね?」

「え? いや、さすがにそこまでは……」

「──大正解です、3号様。スパイロボットより確認、『桜島』のエネルギー量増大を確認。噴火活動の兆候、9月13日頃に噴火する可能性が、現時点で87%となりました」

「へぇあ!?」

 

 

 理由は、日本人の誰よりも早く、正確な噴火予測を千賀子は知ってしまったからで。

 

 

「さ、さすがに噴火を止めるなんて無理だよ!? どうすんの!?」

「諦めるしかないのでは、マスター?」

「そんなあっさり決断できたら、誰だって苦労しないわよ! エマぁ~、ママの頭を撫でて癒して~」

「あうあ、まんま、ま~」

「あら~❤ 元気百倍だわ~❤」

 

 

 現実逃避も兼ねて、千賀子がエマを可愛がるのもまあ……致し方ない話であった。

 

 

 

 

 

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