ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第128話: 千賀子「見分け方? ビビビッときたやつを選んだら良いのです」

 

 

 

 

 まずは、田中総理へ。

 

 

「あ、もしもし、秋山千賀子です、お世話になっております。田中総理にお電話を繋いでもらって……え? 今は外出中? 夕方過ぎまで戻らない?」

「え~っと、けっこう急ぎの話というか、是が非でも耳に入れてほしい事があるというか……そうですか」

「それなら、言伝(ことづて)をお願いしてもよろしいでしょうか……良かった、ありがとうございます」

「え~っと、それではよろしいでしょうか……はい、それでは言いますね」

 

「『9月13日、九州鹿児島の桜島にて、噴火の可能性大』、そうお伝えくださ──え? どういう意味かって?」

 

「いえ、ですから、9月13日に桜島が噴火するかもしれませんので、その旨を総理にお伝えをば……ど、どうされました?」

「お、落ち着いてください。いえ、別に決まっているわけじゃないですから、ね?」

「ただ、そうなるかもしれないという話で、なんとか頭の片隅にでも置いといてもらえたらと……ちょ、あの、落ち着いて、ね?」

「大丈夫ですから、ね? 大丈夫ですから」

「起きると決まったわけじゃないですし、馬鹿な女が変な夢を見て電話してきただけ……そう思ってもらっても──え?」

「──御実家、九州の方なのですか?」

「だ、大丈夫……かは分からないですけど、心配し過ぎですって、ね? 深呼吸して? ね? ね?」

「え? いや、さすがに噴火は止められない……あ、そ、な、泣かないで? ね?」

「と、とにかく、言伝をお願いしますね? ね? 確かに伝えましたからね? ね?」

「それでは、これにて──」

 

 

 電話口の向こうより、取り乱す声が聞こえてくるのだが、構わず通話を切って……次に、道子へと電話をかける。

 

 

「もしもし、秋山千賀子です。道子は御在宅でしょうか……はい、ありがとうございます」

「……あ、道子? ごめんね、急に連絡して……そう? そう言ってもらえると気が楽になるよ」

「あ、うん、その、変な事……なのだろうけど、道子の家って、九州の方に親戚とかいる? あと、事業とかやってる?」

「……いる? 法事の時ぐらいにしか会わない? 事業も、ちょっとかじっている? あ、そうなんだ、ふ~ん……え?」

「いや、その……気を悪くしたら申しわけないんだけど……大丈夫?」

「う、う~ん……それじゃあ、その、言うね?」

「えっと……9月13日……うん、来週……よりちょっと先か、その日ね、鹿児島の桜島ってところが噴火しちゃうかも~ってお話をね」

「──え? い、いや、落ち着いて、ね?」

「あくまでも可能性、そう、可能性だから。必ずその日になるって話じゃないから──え、噴火しない可能性はあるのかって?」

 

「いや、噴火はするよ」

 

「うん、こう、ビビッと巫女的なアレが来たから。うん、うん、そう、噴火は確実、遅かれ早かれ9月中には絶対ぼーんと噴き上がると思う」

「だからまあ、頭の片隅にでも入れておいて……え? お父さんに代わる?」

「い、いや、代わってもらっても私にできる事はなにも……あ、ちょ……あ、はい、はい、どうも、お久しぶりです、千賀子です」

「えっと、その、既に道子には話したのですけど、もう一度言いますね」

「9月13日、九州鹿児島の桜島が噴火するかも……なので、気を付けてほしいと……え、噴火しない可能性?」

 

「いや、噴火はします、9月中は確実です」

 

「はい、それはもう確実です。感覚的に、その日が一番ドカーンときそうな感じなので」

「はい、はい、あ、その、13日を外れる場合もありますから……はい、はい、ええ、それでは……」

 

 

 なにやら、通話口の向こう、道子パパさんの声色やらなんやらが強張っているのを感じ取ったけど、構わず電話を切る。

 

 続いて、明美の家へ。

 

 

「……あ、明美? うん、私、今って空いている?」

「ありがとう、そんなに時間は取らせないから……えっと、急に変な事を聞くけどさ、明美のとこって九州の方に親戚とか居る?」

「……いない? 親族で事業をやっているとか、そういうのも?」

「……そっか、ちょっと安心した。あ、いや、安心って言い方は悪いな、これ……ん?」

「いや、ね。さっき道子の方にも電話したんだけどさ」

「9月13日ぐらいに九州鹿児島の桜島ってところで噴火が起こるから、親戚とか居るなら気を付けてって……え?」

 

「いや、冗談じゃないよ、噴火するって」

 

「一番可能性が高いのが、9月13日ぐらい……う~ん、一度だけじゃないよ。その後も断続的に噴火するけど、避難が必要なぐらいの、初っ端の被害が9月13日ぐらいからって話」

「親族だけじゃなくて、知り合いがそっちにいるなら声だけでもかけておいた方が良いかも」

「ん? ん~……なんか、すごく縁起の悪い夢を見たから、胸騒ぎがしたって言っておいたら……まあ、あくまでも知り合いがいるならだけど」

「……残念だけど、さすがに天変地異ぐらいだと私には止められないかな」

「うん、うん……さすがに、そこまでになると神様の領域に入るから……うん、うん、気にしないで」

「ごめんね、こっちこそ急にこんな事を話して……うん、それじゃあ、またね」

 

 

 不幸中の幸いと言うのは不謹慎なのだろうけど、明美の場合は親族も知り合いも九州の方にはいないらしいので、驚いただけに終わった。

 

 まあ、そんなものだ。

 

 見ず知らずの他人が不幸になって気の毒に思うまでなら正常だが、動揺を露わにして取り乱すともなれば、それは美談でもなんでもなく、カウセリングを受けた方が良い。

 

 とはいえ、かなり気軽な感じで『千賀子なら止められる?』と聞いてきたのは、少しばかり無神経……いや、違うか。

 

 さすがに、超常現象を引き起こせる人の、その能力の限界を察しろというのが無茶な話であり、直後に謝ってきたあたり、むしろ優しい人である。

 

 

「さて、次は……あ、兄さんにも伝えておかないと……」

 

 

 それが分かっていた千賀子は、本当に気にすることもなく、続いて兄の和広……が、働いている酒屋へと電話する。

 

 以前、和広が下宿していたところではない。

 

 さすがに身重の女と住むには手狭というか、不便が多いので、新居に引っ越しており、今の時間帯だと、2人とも家にいない可能性が高い。

 

 かといって、和広の仕事先の電話番号など知らないので……まあ、気合を出したら閃きそうな気配はするのだけど、それをするとよくない事が起こりそうなので、止めておく。

 

 

 ……幸いにも、だ。

 

 

 電話に出てくれたのは三つ編みの……和広の奥さん(まもなく席を入れるとか)で、話はスムーズに終わった。

 

 兄の和広から既に千賀子の事は聞いているのか、噴火の話を聞いても驚くだけで、不審な気配はないし、○チガイを警戒するような感じもなかった。

 

 

『ところで、千賀子さん』

「はい?」

『最近、夫が疲れた顔を見せる事が増えまして。忙しいからと、ご飯も手早く済ませてしまうことばかりでして』

「はあ、それで?」

『今が一番大事な時らしいのですが、なにかしら元気を付けられる知恵はありますでしょうか?』

「……とりあえず、米とか果物とか漢方薬とか送るから。お金とかは気にしないでいいから、ちゃんと食べさせてね」

『まあ! すみません、なんだか催促したみたいで……』

「いいってことよ。あと、それでも食べなさそうだったら、私の方から『このままだと半年後に倒れてそのまま死ぬ予感がする』と伝えてくれたらいいよ」

『え?』

「大丈夫、ちゃんと食べて抑えてくれたらまだ大丈夫だから……それじゃあ、また」

 

 

 その代わり、ちゃっかりオネダリされたけど。

 

 まあ、見知らぬ他人でもないし、気配からして和広が無理を通して食事がおざなりになっているのは事実なようだ。

 

 こういう時、奥さんや子供よりも、実家の家族とか第三者の言葉の方が届きやすい場合があるのは、昭和も現代も変わらない。

 

 なんと言い表すべきか、要は奥さんに弱いところを見せたくない……という、ある種の意地や甘えが関係しているのだろう。

 

 

 あとは、単純に出世に響くからだ。

 

 

 例外的な会社はあるけど、バリバリ仕事をして、時には無理をしてでも動いてくれる人の方が、やはり、会社としては役職を与えたいものだ。

 

 特に、昭和のこの頃なんて、企業戦士という言葉が生まれるぐらいに朝も夜もバリバリ働くのが、出世への第一歩とも言われていた時代だから、余計に。

 

 加えて、音楽で食って行こうという茨の道を進むわけだ……休んでなどいられないという気持ちがあるのも、致し方ない。

 

 それに比べたら、旦那のためにと真正面からタカる図々しさなど可愛らしいものだと千賀子は思うのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、だ。

 

 とりあえず、己にできる事はこれで終わりかなと思った千賀子だが、来るXデーを前にそわそわしつつ、改めて『千賀子会議』を開いた。

 

 

「さて、どうしたものか……」

「どうにもならんでしょ、本体の私」

 

 

 一言で切り捨てたのは、2号である。

 

 切り分けた桃を乗せた皿を各自の前に配膳しながら、千賀子へ呆れた眼差しを向けた。

 

 

「何事も、一度は痛い目を見ないと対策を用意しないのが人間よ。下手に助けたところで、次の、そのまた次の、これから先に起こる噴火の全てに手を貸すつもりなのかしら?」

「いや、それは……」

「本体の私は女神様ではないの。人より特別な力がある人間でしかないのだから、天変地異そのものを何とかしようだなんて、どこで歪みが生じるか分かったものじゃないでしょ」

 

 

 ちらり、と。

 

 2号の視線を受けたロボ子は……出された桃をモシャモシャと平らげ(なんと、実は飯を食えるのだ、このロボットは)つつ、はっきり2号の言葉を肯定した。

 

 ロボ子曰く、火山活動を含め、そういった災害は様々な要因が絡み合っている可能性が極めて高い、とのこと。

 

 そこだけ潰したらなんとかなる話ではなく、そこを潰したことで、新たな歪みが別の場所に生じてしまい、もっと大きな災害を引き起こす可能性は0ではない、とのことらしい。

 

 それに、火山活動は必ずしもデメリットばかりではない。

 

 火山のおかげで豊富な湧水を得られやすく、また、火山より噴き出すマグマには様々な資源が含まれているので、世界規模で見れば有益な部分も多いのだとか。

 

 

「……それじゃあさ、九州の銀行にお金を預けておけばいいんじゃないの?」

 

 

 なんとも言えない沈黙の中で、桃を一足早く食べ終えた3号より、そんな提案が出る。

 

 

「銀行にたっぷりお金を預けといたら、それだけでも地域経済にはプラスに働くでしょ」

「……そういうもん?」

「そりゃあ、無いよりはねえ~。ちょっとぐらい銀行さんからの融資の基準が甘くなるんじゃないの?」

 

 

 必ずしもそうなるわけではないが、無いよりは有った方が財布のヒモが緩むのは、当たり前の話である。

 

 

「そっか、そういうものか……いくらぐらいが良いかな?」

「難しく考えずに、お気持ちで入れといたらいいんじゃないの?」

「そっか……ロボ子?」

 

 

 チラリと見やれば、ロボ子は一つ頷いた。

 

 

「1971年に開業した、福岡市にある福岡相互銀行に預けてはどうでしょうか? 鮮やかな緋色が目立ち、大阪万博の広場を手掛けた建築士が設計したらしく、地元の新聞でも取り上げられているほど有名です」

「その情報、いる?」

「いります。注目が集まっている方が、それだけ多くの人に知られますから」

「そう……それじゃあ、う~ん」

 

 

 額に指を当てて……ヨシッ、と千賀子は結論を出した。

 

 

「じゃあ、ロボ子。私の口座を作って、そこに5000億円ぐらい振り込んでおいて」

「待って、本体の私? 加減というモノを覚えた方が良いと思うわよ?」

 

 

 直後、2号のみならず、ロボ子からも『え、本気で?』といった眼差しを向けられた千賀子は、軽く凹む事となった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、金額は後々調整するとして、だ。

 

 

「とりあえず、噴火する前に作物とか買い漁ったらどうですか? 火山灰で一気に駄目になってしまうよりは良いでしょうし」

「あ~、それは良いかも」

「あと、牧場とか作ったらどうですか? 北海道でやったみたいに、また馬を買って牧場を作れば、それだけでも地域が活性化するかと」

「う~ん、現時点でも北海道の牧場はノータッチなのに、ここからさらに牧場を増やしてもなあ……」

「では、会社でも新たに設立を──」

「ロボ子?」

「ア、ハイ、すみません、マスター……」

 

 

 ひとまず、いつものように女神様の恩恵を使って、いつものように経済を回す手助けをしようと……思って、ふと、千賀子は首を傾げた。

 

 

「馬を買うとは言っても、コネとか何もないから売ってくれないでしょ」

「あ、それなら、私がちょろっと心当たりがある」

「え? 3号が?」

 

 

 訝しんで目を瞬かせる千賀子に、3号はあっけらかんとした様子で言った。

 

 

「九州を旅した時に、牧場の人と仲良くなって一泊泊めてもらった事があるから。その際、お風呂とかパンツ覗かれたけどね」

「私ってばぜんぜん覚えていないのだけど?」

「同期してその時は覚えてはいても、細かいところを忘れちゃうのはどうにもならないから、しょうがないね」

 

 

 3号の話は、事実である。

 

 分身たちは、見た目が千賀子なだけで中身は人間ではないので、見たモノ触れたモノはほぼ100%覚え続けているし、それに問題は生じないが、千賀子は違う。

 

 女神の恩恵によって記憶力があるとはいえ、2号3号4号、計3人分の記憶を自らの頭に留めておくことは不可能であり、パンクしてしまう。

 

 特に、3号が見聞きしていた『ベトナム戦争』の記憶がソレで、同期しているとはいえ千賀子が認識出来ているのは10%も無く、それですらけっこうな部分を忘れていた。

 

 これがまあ、千賀子が肉体的に神の領域に至ったならば話は別だが……で、だ。

 

 

「とりあえず、私の双子の姉がすごい実業家って事で話を通してみるから、買うだけ買ってみたら?」

「う~ん……でも、買わない場合もあるよ?」

「その時は、その時でいいでしょ。それに、北海道の方に作った牧場も使わなきゃ損だし、また馬を買ってみるのもいいんじゃないの?」

「そう?」

「そうそう、馬一頭をドカンと買うだけで、相当に周囲が潤うわけだし? 春木競馬場の事もあるし、いっぱい競走馬を所有しているってだけで、安心する人も出てくるだろうしさ」

「……そっか。それなら、もう少し買おうかな。エマがもうちょっと大きくなったら、馬さんに乗ったところを写真に撮りたいし」

「その前に、反抗期がくると思うわよ、本体の私?」

「──っ!?!?」

「マスター。一瞬ばかり、心臓が止まったのを感知しました、状態を確認致しますので、安静な姿勢をとってください」

 

 

 行動を移す前に、なんともまあ締まらない流れで、此度の『千賀子会議』は終わるのであった。

 

 なお、その際、4号に抱かれたエマが、きゃっきゃと笑っている姿を見た3号が。

 

 

(……2歳ぐらいからの反抗期が始まったら、本体の私……死ぬんじゃね? 死なないよね?)

 

 

 密かに、冷や汗を流していたが、触れると大変な事が起こりそうなので、あくまでも胸の内に留めておくおとにしたのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ちなみに、だ。

 

 

 それからしばらくして、千賀子は3号を伴って九州へ。そして、その後で北海道の生産牧場へとおもむいた結果。

 

 九州にて、『ニルキング』と名付けられた馬と、冴陀等村の人より『女神信教』の祭事にと、買い手の無かった頑丈な馬(アラブ系)を購入し。

 

 北海道では、どうにも千賀子の事が知られていたようで、行く先々で丁重に挨拶され……必ずしも買うわけではないのでと、ちょっと気まずい思いをしつつも。

 

 新冠町《にいかっぷちょう》にある牧場にて。

 

 

 黒鹿毛《くろかげ》のやんちゃ(千賀子曰く、ちょっと臆病)な仔馬と。

 

 ちょっと顔が大きく白い線が入った(千賀子曰く、どっしりとしている)青毛の仔馬と。

 

 あとは、まだ生まれてもいないが、腹に子が居る牝馬を指名し、生まれてくる子供を購入させてもらった。

 

 

 特に、最後の生まれていない馬を購入するに当たって。

 

 『あなたのおかげで助かっている人が知り合いにもいる。そこまで見込まれているのならば、売りましょう』と、OKをもらった。

 

 

 ……そうして、だ。

 

 

 黒い毛並みのやんちゃな仔馬には、後に母馬の名前にちなんで『カブラヤオー』と名付け。

 

 青毛の仔馬……牝馬(ひんば)(メスの馬)なのと、それもまた美人という意味と、父馬の名にあやかり、『テスコガビー』と名付け。

 

 まだ生まれてもいない馬には、『──ピン、と来た!』といった感じで、『テンポイント』と名付け。 

 

 新たに、千賀子は所有馬を3頭(内、1頭は予定だけど)増やしたのであった。

 

 

 

 




──────────────―



※ 千賀子の所有馬(生きている競走馬、時間軸など順不同)



 1.テイトオー

 2.ダイシンボルガード

 3.ロングエース

 4.ハマノパレード

 5.ハイセイコー

 6.ニルキング

 7.カブラヤオー

 8.テスコガビー

 9.テンポイント



 ──殿堂入り『ポンポコロウシ』



 競馬関係者「なんだろう、ロウシが癒しに見える……」


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