ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※現時点での千賀子の年齢は、23~24歳くらいです
ちなみに、エマは2歳ぐらいになります


第130話: (=^ω^=)オマタセ

 

 

 

 ──1973年(昭和48年)、その年を表わす言葉で誰もが記憶しているのは、『オイルショック』という言葉だろうか。

 

 

 その内容を簡単にまとめると、だ。

 

 要は、中東にて4度目となる開戦が勃発したことによって、他国への圧力を兼ねて原油などの輸出量を絞ったのだ。

 

 突然の事に対策が追い付かなかった世界各国は急激な燃料不足に陥り、原油価格が一気に跳ね上がり、燃料の奪い合いが発生した。

 

 それは、日本とて例外ではない。

 

 いや、むしろ、燃料を石炭から石油に置き換え、次々に炭鉱を閉鎖していた日本こそ、そのダメージは計り知れなかった。

 

 

 ……というのが、オイルショックのおおまかな内容である。

 

 

 この話で有名なのは、『トイレットペーパーが作られなくなる』というデマが発生したことにより、市民たちが買い溜めに走った騒動……だろうか。

 

 この騒動は様々な書物やサブカルチャーにも使われているので、覚えている人は多いだろう……が、しかし。

 

 実はこの年は、ある意味では人間の醜さや欲望の醜さが前面に現れた年でもある。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 トイレットペーパー騒動が有名過ぎて後世では蓋をされがちだが、実は『オイルショック』が起こったのは1973年の10月であり、年の後半に当たる。

 

 では、1月~9月はどうだったかというと……答えは、大企業による買い占めが横行し、物価の上昇に歯止めが利かず、貧富の差が拡大したのだ。

 

 

 これに対して、政府は静観していたのか……いや、そんな事はない。

 

 

 物価上昇に関して、実はもっと前から対策に動いてはいたのだ。それこそ、1960年代後半から、何度か歯止めをかけようと動いていた。

 

 田中総理が打ち出した『日本列島改造論』も、東京への一極集中を抑え、地方を発展させることで、物価の上昇を分散させようとした。

 

 しかし、そうする前に、様々な企業が買占めに動いたことで失敗した。結果的に見れば、詰めの甘い考えだと言われたらそれまでだが、やろうとしていた事は別に間違ってはいなかった。

 

 あえて、その点を責めるならば……人間の醜さを見誤った、という点だろうか。

 

 何もかもが次々に買占められ、これによって全国的な物価高を生み出し、中小企業の倒産や夜逃げが次々に発生する事態に陥った。

 

 そこにきて、寝耳に水な10月の『オイルショック』。

 

 これによりさらに物価上昇の歯止めが利かなくなり、『節約令』という、国民総出での燃料節約を行うよう指示が出されるぐらいの事態になってしまった。

 

 これが、いわゆる『オイルショック』と名付けられるに至る大まかな原因というか、流れである。

 

 原油高の急騰が一番大きな原因なのは事実だが、それだけでなく、その下には様々な要因が重なってしまったわけであった。

 

 

 ……まあ、しかし、だ。

 

 

 責められるべきなのは、なにも企業や政府だけではない。

 

 それに便乗した者、加えて、無責任で自分勝手な大半の国民にも、その一因はあったのだが……さすがに話が逸れていくので、戻そう。

 

 とにかく、ただでさえ物価の高騰によってダメージを受けていた最中、オイルショックという第二のブレーキが掛かったことで、それまでどれだけ減速していてもプラスだった経済成長が、戦後初めてマイナスに転じたのも、これが理由であった。

 

 

 

 

 

 ……さて、場面を切り替えて、1973年の1月半ば。ちょうど、お正月の空気も入れ替わり終わった頃。

 

 

「──あ、もしもし? 秋山千賀子です。はい、お世話になっております、はい、急で申しわけありませんが、田中総理はお手隙でしょうか……あ、物価対策会議?」

「あ、いえいえ、別に急ぎではないので、はい。ただ、言伝を……え、その、大丈夫ですか? 落ち着いてください、まだ何も起こりませんから……はい、はい」

「えっとですね、既に政府でも観測していると思いますけど、『長野県の浅間山(あさまやま)がですね、2月1日の……う~ん、午後7時から……たぶん、7時20分ぐらいに噴火すると思います』ので、頭の片隅にでも……あの、落ち着いてくださいね?」

「大丈夫です、大丈夫。ええ、まだ起きているわけではありませんから。はい、大丈夫、そこまでの被害にはなりませんから」

「ゆっくりと深呼吸をしてください、大丈夫、大丈夫ですよ、地震も起きますけど、近付かない限りは直接的な死傷者は出ませんから……え?」

 

 

「──いえ、本番は3月10日ですね、一番強いのがその日に来ます。近付いては駄目ですよ、岩石とか飛んできますから」

「でも、安心してください、5月末には治まりますので……あ、88回ぐらい来ますのでね、油断しては駄目ですよ」

 

 

「……あの、大丈夫ですか?」

「妙に息が荒いというか、とにかくゆっくりと呼吸を……えっと、とりあえず私からは以上ですので、はい、それだけですので、ではまた──」

 

 

 ひとまず、ビビビッとナニカが来たので、その通りに田中総理へと電話(受けたのは、秘書っぽい人だけど)をした千賀子は、ふうっと居住まいを正すと……改めて、傍の道子へと。

 

 

「お待たせ、それじゃあ部屋に──どうしたの?」

 

 

 話し掛けて部屋に戻ろうとした千賀子だが、できなかった。

 

 理由は、普段はほんわか雰囲気の道子が真顔になって、千賀子を見ていたからである。

 

 道子が真顔になっているのを見るには、実はけっこう珍しい。

 

 本気で苛立っているときか、あるいは旦那さんの浮気疑惑(口紅の跡が衣服に付着していたとか)が出た時ぐらいである。

 

 なお、その件は千賀子より『あ、それ、旦那さんから断られた女性が腹いせに付けただけのやつだから、気にするだけ無駄だよ』と説明しているので、そこで終わっているのだが……で、だ。

 

 

「……千賀子?」

「なに?」

「浅間山、噴火するの?」

「するけど、被害の範囲は広くないよ?」

「……うん、いえ、その、突然の事にびっくりしたから」

「あ、そうなんだ、ごめんね、先に伝えといた方が良かった?」

「……ううん、大丈夫。知らないままでも関係ないことなら、わざわざ私に言わなくても大丈夫だからね~」

「そう? わかった、変に心配しても疲れるだけだものね」

 

 

 いつものように言葉の末尾が伸びていないのは、それだけ緊張しているからなのか……とりあえず、大きなため息を吐いた後には、元に戻っていたので……そこまでな話のようだ。

 

 

 ……で、話を戻して、というか、場所を移して、道子パパがいる部屋へ。

 

 

 いったいどうして……それを語る前に、現在の千賀子の経緯を語ろう。

 

 始まりは、道子から『ちょっと、今年の事で相談したい事がある』との事だった。

 

 千賀子は、いくら道子の他の身とはいえ、最初はその相談に乗るつもりは……あまり、乗り気ではなかった。

 

 時々己はビビビッと巫女的シックスセンスで色々と見えたり感じたりすることはあっても、明確に未来を予見しているわけではない。

 

 なんと言い表せば良いのか、千賀子自身、上手く説明できない領域の感覚であり、フワッとしか認識できない領域の感覚でしかなかったからだ。

 

 だから、変に未来を占ってくれとか頼まれても困るし、未来に何が起こるか教えてくれとか言われても、非常に困ってしまうのだ。

 

 

 ──と、いうか、だ。

 

 

 本当に未来の事を正確に認識できているならば、千賀子の下には自ら腹を痛めて産んだ子と、腹を痛めずとも愛らしい娘との3人……話を戻そう。

 

 とにかく、最初はそんなつもりはなかったのだが……しかし、道子からは邪な感情を覚えなかったので、最終的には了承したわけだ。

 

 場所は、道子宅。神社は駄目で、千賀子の実家は、相談事をするには不向きな結果、そうなった。

 

 そうして、道子宅へとやってきた千賀子は、出されたお茶と菓子にほっと息をつき、そこで本題に入る前の雑談を交え、その途中、ビビビッとナニカがきて、総理に電話をして。

 

 改めて部屋に戻り、タイミングが切り替わったこともあり、本題へと話を移した……というのが、千賀子の現状であった。

 

 

 ……本題とは、なにかって? 

 

 

 説明すると長くなるので省略するが、要は『日本の物価高騰がどれぐらい先まで続くのか』、である。

 

 そんな事を聞かれても、経済的な知識など最終学歴公立高校卒の知識しかない千賀子が、正確に答えられるわけがない。

 

 前世ではいちおう大学は出ているが、前世で勉強していた時期から今に至るまでの時間は、最低でも50年以上前だ。

 

 さすがに、50年前に勉強した時の事なんぞうっすらとしか覚えていない。

 

 かといって、真剣な眼差しで尋ねてくる道子パパには色々と世話になっているので、無下に拒否するのも……というわけで。

 

 

「ん~……証拠を出せと言われたら出せないけど、直感的に来年の秋口ぐらいまで続く気配がする」

 

 

 前置きとして、『信じるも信じないも貴方の勝手です』と告げてから、パッと思いついた事をそのまま話すことにした。

 

 

「物価も上がりますけど、なんとなく石油とかもめたくそに跳ね上がるような感じがしますね。まあ、こっちは政府が死に物狂いで動いて解決に動いてくれますけど……私としては、その時までにどう動くか、でしょうかね」

「どう、とは?」

「買占め、多方面から相当に恨まれますよ。特に、食料品関係は死者が出ます、それだけの恨みを買います」

 

 

 置かれたお茶にも一切手をつけず、真剣な眼差しの道子パパに……千賀子は、キッパリと告げる。

 

 それを、良いとも、悪いとも、千賀子は言わなかった。

 

 ただ、事実として、恨まれる、とだけ。

 

 恨まれた結果がどうなるかを、千賀子は言わない。

 

 暗に、あるいは言葉にして尋ねられても、千賀子は見つめるだけで何も言わなかった。

 

 

「千賀子くん。たとえばの話だけど──」

 

 

 だからこそ、そう、何も言わないということは。

 

 

「私は、誰かのために生きているのではありません。他者とは異なる力を持っている者は、己を捨てて周りに奉仕する……生贄になったつもりもありません」

 

 

 何も、言わせないということでもあり。

 

 仮に、道子パパがその先を尋ねていたら……おそらく、いや、ほぼ間違いなく関係性が変わっていたかもしれないからこそ、千賀子はそこで待ったをかけた。

 

 

「……すまない。そうだね、私が間違っていたよ」

 

 

 そして、それが分からないわけがない道子パパは、ハッと己が仕出かそうとした過ちに気付き……娘からの厳しい眼差しもあって、千賀子へ深々と頭を下げた。

 

 そう、これまで道子たちにナニカを告げる時は、必ず千賀子の方からであり、道子たちからナニカを相談された時は、事業とは無関係な分野であった。

 

 あるいは、災害が起こるかもしれない時、戦争が長引くといった、一個人ではどうにもならない領域のことぐらいなら、話半分にと千賀子は答えていた。

 

 けれども、コレは違う。これまでとは、決定的に違う。

 

 何故なら、道子パパは事業の経営方針……その行く末の一端を、千賀子の言葉で動かそうとした。言うなれば、千賀子を事業運営の一部に取り込もうとしたわけだ。

 

 当人にその気が無かったとしても、結果的にはそういう事。

 

 例えるなら、田中総理から『どうやれば支持率が上がるか?』と相談され、『具体的に何をしたら良いのか?』と答えを求めようとした……と言えば、分かりやすいだろうか。

 

 困っているのであれば、援助もしよう。

 

 助けられる範囲ならば、助けよう。

 

 敵が来ているならば、場合によっては排除にも動くし、気になる点があったら助言はする。

 

 けれども、判断はしない。あくまでも、決断するのは千賀子ではない。

 

 明美の銭湯騒動の時も、ボイラー代を出したり何なりしたけど、釣り合うかどうかは別として交換条件は出したし、経営そのものには一切口を出したりしていないのが、その証拠である。

 

 

「……少しばかりですが、融通はできます。どうせ私が持っていても腐らせてしまうだけですし、有効活用してください」

 

 

 ゆえに、そんな道子パパに千賀子ができる事はあまりなく……せいぜい、溜め込んでいる様々な物資をいくらか融通するだけに留めたのであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、『神社』に戻った千賀子は……分身たちより用意されたお茶を一口飲んで、溜め息を吐くと……静かに、呟いた。

 

 

「危なかった……下手したら、あのまま完全に依存されるところだったよ」

「その可能性が高そうだったわね、本体の私」

「明美のところとは規模が違い過ぎるのも考えものだわ……さすがに、道子たちだけならともかく、関係者まで背負ったら私が潰れてしまうもの……」

 

 

 同期した事で経緯を把握した2号も軽く頷いた。

 

 そう、千賀子が遠回しに道子パパに牽制を入れたのは、道子パパに寄りかかられたくなかったからである。

 

 本当に道子たちだけなら、千賀子的にはOKなのだ。

 

 ただ、道子パパの事業ともなれば、千賀子的には守ってやりたいカテゴリーから外れてしまう。

 

 明美の時でも、あくまでも明美の家族だからOK。

 

 ただ、明美の親戚までは助けるつもりはないし、頼まれても助けはしないつもりだ。

 

 春木競馬場だって、保護して雇用を生み出すまではやるけど、競馬関係者が馬鹿やったり欲を出したりして自滅した分まで助けるつもりはサラサラない。

 

 和広の奥さんの酒屋さんだって、あくまでも兄の奥さんだから手助けするだけで、そうでないなら助けるつもりはない。

 

 冴陀等村だって、手を出したのだから……という思いがまず有って、収入源の旅館運営などは基本的にノータッチだ。

 

 実験的にアイテムを使ってもらったり、有益ではあるが放置しても危ないモノを合意の元で使ってもらっていたりするだけで、上納などを受けたこともない。

 

 誰彼助けるように見えるかもしれないが、あくまでも、千賀子の基準はそれであり、今のところ、それを変えるつもりはまったくなかった。

 

 

「私って、冷たい人間かな?」

「富める者は貧しい者の奴隷ではありませんよ、マスター」

 

 

 ポツリと零れた呟きに、控えているロボ子がキッパリと答えた。

 

 

「物価が上がるのも、原油代が高騰するのも、人々がより良く便利な暮らしを求め、安価なエネルギーを求めた結果です」

「う~ん……」

「知的異星生命体の手で作られたからこそ客観的に分かる事があります。大半の人間は、一度は痛い目を見なければ改めようとはしないのです」

「……ロボ子には、そう見える?」

「そう見えます。現に、公害でも痛い目に遭っていない人たちにとっては他人事で、それで物の値段が上がれば、仕方がない事とは思わず、企業や政治が悪いと大半は判断するでしょう?」

「…………」

「痛みがあって、始めて人は改めるのです。今回のこの騒動だって1人1人が欲望を優先した結果ですし、この国の輸出によって青息吐息《あおいきといき》な者たちもいるのです。誰もが加害者であり被害者なのです、ただそれだけの事かと私は思います」

「……そう、ありがとう、慰めてくれて」

 

 

 千賀子は、否定しなかった。

 

 いや、正確には、できなかった、という方が正しいか。

 

 なんにせよ、千賀子はモヤモヤする気持ちを呑み込むしかなく、黙って現状を受け入れるしかなかった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………だが、しかし。

 

 この時、千賀子もそうだが、分身たちはおろか、ロボ子ですら……予想していなかった存在が、動いた。

 

 

 

『(=^ω^=)オコマリノヨウデスネ、コマリガオモカワイイヤッター』

 

 

 

 そう、千賀子の絶対なる味方、女神様である。

 

 ゲームやアニメなら、寂しげなBGMから荘厳なBGMに変わっているところである。

 

 

「うわっ、出た」

『(=^ω^=)オマタセ』

「呼んでないけど、珍しいわね。女神様、セクハラが基本で話し掛けて来ることなんてないのに……」

 

 

 堪らず仰け反った千賀子だが、その程度では女神様はへこたれない。

 

 心底嫌そうにしている姿を見て、『(=^ω^=)ホッホッ、カワイスギテタマラン』と悶えているぐらいだから……で、だ。

 

 

『──有効期限の切れた女神様ポイントは、随時施設などの拡張に使用されていますけど、ここらで使ってみます?』

「はい? ポイント? え、拡張? またなんか唐突に言い出しましたね、女神様?」

 

 

 意味が分からない事を言い出したので、率直に尋ねれば……女神様は、あっさり教えてくれた。

 

 

「……え? 女神様ポイントって、使い道あったの?」

 

 

 それは、なんか気色悪いミッションとかを達成した時、なんか女神様がモチョモチョと話していた……『女神様ポイント』の事だった。

 

 

 






※ なお、現時点での女神様ポイントは最低2兆ポイントである
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