ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第132話: 関係者一同「なんだ、あのでっかいモノ……π」

 

 

 

 とりあえず、『資源系ガチャ(罠有り)』は実質当たりだけど名目上はハズレに該当する物は、置き場所に困るので『山』の中へ保管することにした。

 

 いちおう、使用しても一切千賀子に負担がかからず問題にもならず、不備なく辻褄が合うようになっているらしいが……辻褄が合うのは、あくまでも燃料などを所持している部分だけだ。

 

 そんなにしょっちゅう横流ししていると、そのうち『コネがあって格安で融通してもらっている』という認識を抱かれるのは時間の問題なので、融通する場合はタイミングを考える必要が……ん? 

 

 

 ……辻褄が合うのなら、気にしなくてもいいのでは? 

 

 

 その点に関しては、少し説明しておこう。

 

 女神様の辻褄合わせは、あくまでも過程と結果を合わせるだけ。結果の先、その先の結果までは女神様も静観するだけである。

 

 これを馬主としての千賀子で例えるならば、だ。

 

 馬を購入する資金などに関して誰一人疑問を抱かなくても、馬を所有しているという結果を、ちゃんと周りは認識する。

 

 それでお金を稼いでも、何故かまわりは『まあ、千賀子だものね』と大して気にしないけど、お金を持っている事だけは分かっている。

 

 馬をたくさん所持していることに疑問を抱かなくても、相応の資産がある(ただし、第三者は確認できない)のだろう……と、全員が常識的なレベルで納得するわけだ。

 

 だからまあ、あまり目立つようなことをすると、邪な考えを持つ者に目をつけられる可能性が高くなるわけで。

 

 千賀子としては、いちいち絡まれるのは嫌だし、持っているのだから融通しろと居直られるのも嫌なので、しばらくは秘密にしておくことにした。

 

 ……まあ、ハズレで手に入る量は多くてドラム缶3つとかなので、まだ気にしすぎな段階だけれども。

 

 

 

 

 

 ……さて、そんなひと騒動を脇に置いといて、4月半ば。

 

 

『──ハイセイコー勝利、おめでとうございます!』

「こちらこそ、応援してくれてありがとうございます」

 

 

 千賀子は、中山競馬場のスタンド前にて口取りを行い、記者たちのインタビューに答えていた。

 

 口取りとは、馬の口(この場合、手綱の根元辺りの意味)をとって、馬を誘導したり抑えたりするといった行為のことで。

 

 口取り式とは、そうして馬を抑えた状態で行うヒーローインタビュー……つまり、ウィナーズ・サークルにて行う、勝った馬の記念撮影を意味し……ん? 

 

 

 ……スタンド前に? 

 

 

 賢明な読者は、ここで疑問を覚えただろう。

 

 そう、みなさまご存じの、競馬レースの勝利者が立つ優勝場表彰区画《ウィナーズ・サークル》ができるのは、千賀子の前世では1983年の札幌競馬場に設置されたのが最初である。

 

 それができるまでは、スタンド前(馬主席に近い方の場合もあったとか)で観客から見える位置で行ったり、天候によっては屋根のある場所で行ったり、けっこう自由だったらしい。

 

 なにせ、優勝した騎手が、コースになだれ込んだ観客たちから胴上げされても笑い話とされて新聞などに紹介されるような時代である。

 

 良くも悪くも、この頃(1970年代)はまだまだお互いの距離が色々な意味で近かったのであった。

 

 特に、千賀子の場合は色々な意味で距離が近くなってしまうので、そういう意味合いからでも、千賀子はあまり口取り式には出なかった。

 

 

 ……色々な意味は、どういう意味なのかって? 

 

 

 はっきり言うなれば、千賀子の見た目である。

 

 いまさらな話だが、千賀子は美人である。

 

 それはもう、現代基準で考えても一目見たら忘れられないぐらいで、ただそこに立っているだけで人々の視線を集めてしまうような美貌である。

 

 それに加えて、首から下の色気の暴力性も、2人といないぐらいなのが問題で……と、いうのも、だ。

 

 この時、というか、口取り式に出る際の千賀子の恰好は、基本的には膝下まであるロングスカートタイプのワンピースに、カーディガンなどを羽織ったのが多かった。

 

 この頃(1970年代半ば)でも、公式な場などでは女性でもスーツを着る(年齢や場所によっては和装もある)のが一般的だったが、千賀子はそれができなかった。

 

 

 単純に、体形に合わせられるスーツが無かったからだ。

 

 

 これもいまさらな話だが、千賀子のバストは豊満である。また、ヒップも豊満である。なのに、背丈は日本人女性の平均ラインしかない。

 

 胸に合わせれば袖が余り過ぎてしまうし、袖に合わせると胸が入らない。同様に、ヒップを合わせると腰回りが余り過ぎて、ベルトでも矯正しきれなかった。

 

 なので、TPOを考えると無難な恰好が多くなる……のだが、それはそれで、スタイルの暴力性を隠せていない……その結果、どうなるか。

 

 

 答えは──千賀子目当てに来る客が出てくるのだ。

 

 

 もちろん、メインは競馬の方である。

 

 しかし、勝っても負けても、美貌こそ様々な方法で隠しているけどボディの方は隠せない千賀子を間近で見ようと、それはもう乗り出してくるわけだ。

 

 もちろん、万が一コースに出てきて近付こうものなら、警備員による拳(ガチ)が飛ぶので、馬鹿な事をするやつはいなかった……が、しかし(Part.2)。

 

 

 ──そうなると、自称カメラマンが、ね? 

 

 

 そう、実は1970年代というのは、カメラ写真(いわゆる、一眼レフを使用したモノ)全盛期の始まりと言っても過言ではない時期である。

 

 この頃は次々に革新的かつ進化したカメラが販売され、個人で高価なカメラを所有する人が増えていた。

 

 なので、千賀子が口取り式に出ると、それはもうパシャパシャとカメラを構える客たちが我先にと前に出てくる。

 

 

 千賀子としても、だ。

 

 

 相手はお客さんだし、これもまた美人になった定めかと受け入れて、ちゃんと笑顔を見せて、手を振ってサービスもする。

 

 競馬というのは結局のところ、客があってこその世界なのだ。

 

 己の笑顔一つ、手を振るだけでも客が来てくれるのであれば、安いものだと……それは、千賀子の本心でもあった。

 

 まあ、しかし、先述したとおり、千賀子の胸は豊満である。

 

 最近になって、女神様より『愛し子に最適なブラジャーです』と、何を思ったのか用意され、そのあまりの着心地の良さに渋々付けているが……それでも、限度はあるらしい。

 

 

 なにせ、Kカップだ。

 

 

 女神様的には、そこらへんは疎いようで。遠くの人にも分かるように手を振ったり、馬の手綱を持って動いたりすると、たっぷたっぷと揺れるわけで。

 

 そのおかげで、さらにカメラマンたちはヒートアップするのだが……とにかく、だ。

 

 そういう意味からも、千賀子の場合は客との距離が近いこともあって、本来ならばどの馬主も胸を張って喜び勇んで出てくる口取り式にも、あまり乗り気ではなかった。

 

 

『『大井から来た怪物というあだ名が付けられたハイセイコーですが、皐月賞を勝利しました。感想を一言どうぞ!』

「ハイセイコーはよく頑張りました。慣れない環境、慣れない空気、慣れない芝という逆境にもめげず、最後まで走り抜いてくれたことを誇りに思います」

 

 

 けれども、それでもG1(この頃はまだ、グレード制ではない)を勝利した持ち馬の健闘を称えたい気持ちは、紛れもなく本気なのだった。

 

 

『──はい、ありがとうございます! では、続いてなんですが、次は日本ダービーを狙うという噂を小耳に挟んだのですが、本当なのでしょうか?』

「そうですね、どうするかは調教師さんや厩務員さんとの相談になりますが、問題がなければ出走登録を希望しようかなと」

『──なるほど! どうですか? 日本ダービー、勝てそうですか?』

「ふふふ、それは私には分かりません。なにせ、誰しもが死にもの狂いでダービートロフィーを手にしようと走りますから」

『──気合十分、ということですね! ありがとうございます!』

 

 

 まあ、それはそれとして。

 

 

『──ところで、秋山オーナーにご質問なのですが、たいへんお美しいとの噂なのですが、どうして顔を隠しているのですか?』

「体質的な問題なので」

『そうですか、ありがとうございます。ところで、すんばらしい~スタイルですけど、なにかモデルさんも兼業なさっているのですか?』

「いいえ、まあ、色々とやってはおります」

『──なるほど! いやあ、しかし、モデル顔負けのスタイル! ボインボインで、さぞ周りの男たちが放ってはおかないでしょうね!』

「まあ、モテますね、昔から」

『──彼氏や旦那さんは募集中とか? 羨ましいですなあ~、私も立候補しちゃいましょうかな~、なんて!』

「ははは、まあ、応援してやってください」

 

 

 この頃のインタビューというのは、現代基準だと一発でセクハラ判定を食らって大問題になるような事をポンポン口走ったりするので……千賀子としては、流すのが面倒だなあ、という気持ちが大きかったりもする。

 

 ちなみに、『ボイン』という言葉は、この頃より少し前に生まれた言葉であり、若くて大きい乳房を意味する俗語である。

 

 あまり良い意味ではないが、この頃はあまりそういった認識はなく、男も女も若くて大きい乳房をボインだとか、ボインちゃんとか、呼んだりすることもあったのである。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………少し話がそれるけど、実はこの頃(1970年代半ばぐらいから)の日本人は、それまでに比べて徐々に肥満の傾向が見られるようになっていたりする。

 

 理由は、この頃の日本人(20代後半以降、特に30代以降から)は、食生活の変化と家電の普及、交通関係の急速な発展によって、それまでに比べて太り気味な傾向の割合が増えたから……らしい。

 

 意外に思われる話だが、実は日本人の一日摂取カロリーの量は、現代よりもこの頃の方が高かったりする。

 

 それは現代のように保存技術が確立していなかったので、日持ちさせるために大量に砂糖を使用したり、その分だけ高カロリーになってしまったりした食品が多かった……というのもあるけど。

 

 いきなり食べる量を減らせる人などそう多くはなく、運動量が減った事で必然的に肥満体形になってしまう人が多かった。

 

 それは、子供とて例外ではない。

 

 さすがに中年男女よりもマシだが、それでも中には肥満児に該当される子も増えてきていて……とまあ、そんな前置きをしてから、だ。

 

 

「……えっと、ごめん、どういう事?」

『そうね、そりゃあ面食らうわよね』

「いや、だって、そりゃあそうでしょうよ……」

 

 

 千賀子は、母から掛かってきた一本の電話にとても困惑していた。正直なところ、まるでワケが分からなかった。

 

 どうしてか……いまいち要領を得ない母の話を、分かった範囲だけでまとめると、だ。

 

 『子供たちの間で、とある話題が原因で、なんか揉め事が起こっている』らしく、『解決に協力してほしい』と、『知り合いの教師から相談を受けたので、助けてほしい』、である。

 

 いちおう、子供たちとは言っても中学生である。そして、揉め事が起こっているのは中学校だ。

 

 

 もう、この時点で意味が分からない。

 

 

 だって、母も千賀子も教師ではないし、教職関係者ですらない、雑貨屋の母娘である。

 

 現代でもそうだが、この頃の学校はある種の聖域なのだ。

 

 学校の事は学校に任せるのが当たり前であり、学校内での揉め事ならば、学校内で解決するのが当たり前である。

 

 

 そんな時代に、どうして母は己にそんな相談をするのだろうか? 

 

 ましてや、解決に協力してほしい、等と言ってくるのだろうか? 

 

 

 電話口より感じ取れる気配で、母が冗談ではなく、かなり真剣に千賀子へ相談してきているのが分かる。分かるからこそ、千賀子は余計に困惑する。

 

 そう、中学生なんて中々に多感な時期なので、揉め事の一つや二つぐらい起こって当たり前だ。そんな時分に、わざわざ……いや、まあ、うん。

 

 

(なんだろう、嫌な予感がするぞ……なんかハズレてほしい気がするぞ……)

 

 

 勿体ぶった言い回しをしているが、既にこの時点で千賀子は……おぼろげながら、母が言葉を濁している『とある話題』を察知していた。

 

 これも、巫女的シックスセンスが成せる業よ……と、どこか現実逃避を兼ねながらも、お願いしますハズレていてくださいと千賀子は心の中で祈った。

 

 

『──それでね、揉め事になっている話題なんだけど』

(頼むぞ……!!)

『どうもね、胸の大きな人はバカでドジになるって話が学校内で広まって、なんとか違うってことを納得させられないかって……』

(ま、まだいけるか!?)

『その知り合いの教師がね、胸が人並より大きくて……そのうえ、保護者から、胸の大きな教師はバカだから変えろって言われ続けて、ちょっとまいっちゃってしまって……』

(……駄目だった! ていうか、それ学校内で収まってないよね、お母さん? 一瞬で話が大きくなってない?)

 

 

 が、残念なことに、祈った先に居るのは女神様なので、そんな願いが届いたところで……という話でもあった。

 

 なお、当の女神様はずっとニヨニヨしながら(=^ω^=)という感じで千賀子を眺めていた。

 

 

 

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