ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ アニメとかにある、謎の日常回


第145話: なんてことのない、日常話(2クールで1話ぐらい挟まるやつ)

 

 

 

 

 今さらな話だが、1974年とはいったいどういう年なのだろうか? 

 

 

 ──皆様がおおよそ想像したとおり、この年はオカルトが大ブームとなった年である。

 

 

 様々なオカルト(主に、心霊)をテーマにした番組や本などが作られ、遊園地などにお化け屋敷(現代で言う、ホラーアトラクション)が作られようものなら、子供に引っ張られて入る親子が多かった。

 

 そんな中で、一大ブームと呼ばれるぐらいにお茶の間を沸かせ、日本中の子供たちの関心を集めたのが、『超能力ブーム』である。

 

 キッカケとなったのは、超能力者を名乗る中東出身の外国人がテレビに出て、手を使わずにスプーンを曲げてみせたこと。

 

 もちろん、道具を使ったとか、足で曲げたとか、そんなトンチのようなモノではない。

 

 本当に曲げたのか、なにかしらのトリックを使ったのか、真偽は定かではないが、テレビを見ていた子供たちはその時、確かに見たのだ。

 

 その男が、スプーンに向かって念を込めた瞬間、ぐにゃりとスプーンが曲がったのを。

 

 他にも、視聴者宅の止まっていた時計を動かしたり、視聴者宅のスプーンを曲げたり、それはもう相当な騒ぎになった。

 

 それは、SNSであらゆるモノを何時でも自由に見られるようになった現代では味わえなくなった、見るもの全てが新鮮な時代だからこその感動。

 

 本を読ませる家庭だったり、子供がそういう方面に興味があったり、自ら進んで調べているような子供でもない限り、あらゆるモノが未知の時代。

 

 そう、この時、始めて、子供たちは『オカルト』という存在を強く感じ、『超能力』というものの世界を知ったのだ。

 

 これがまあ、当時の子供たちの間では大ブームとなった。

 

 いや、一部の大人にも流行ったらしいが、特に広がったのは子供たちの間である。信じない子もいたが、どれだけ気が強い子供でも、気を引かれてしまうもので。

 

 学校にこっそりスプーンを持って超能力の練習をしたり、動いている時計を念力で止める練習をしたり。

 

 ○○ちゃんや××くんが念力で物を浮かせたといった根も葉もない噂が毎日のように流れては消えるということが起こり。

 

 ひとたび、『○○さんが地震の夢を見て、×××が~』みたいな噂が流れようものなら、それはもうすごい。

 

 子供たちは電話ボックスや近くの友達の家にお邪魔、『お母ちゃん! ○○時××分に地震が~』と、実家に連絡する子や、知り合いの親などに連絡する子が後を絶たなかった……という話があるぐらいには、子供たちの間では流行っていた。

 

 終いには、週刊雑誌などから『超能力のカラクリ!?』といった感じで、反超能力キャンペーン的な特集が組まれるぐらいのモノとなったのだから、如何に盛り上がったのかが窺い知れるだろう。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 なんでそんな話をするかと言うと、それは9月の終わりの頃。

 

 七夕豪雨への見舞いや炊き出しも、行政が本格的に動いたことで、そろそろ自分も邪魔になるから違う方法に移行するべきかな……と、考えていた時であった。

 

 

 ──あのさ、ちょっといいかな? 

 

 

 電話口より、そんな調子で友人の2人から相談を持ちかけられた千賀子は、明美の家……ではなく、道子の家へと向かった。

 

 毎回道子の家だなと思うかもしれないが、これはもう消去法で仕方がない面もある。

 

 千賀子の実家でも良いが、なにぶん部屋が広いわけでもなく、覗こうと思えば、外から部外者が覗くことが可能だ。

 

 明美の家は単純に家族が多く……後は、明美だけならともかく、千賀子や道子がいると挨拶がてら覗きに来る子が多いから。

 

 悪意とかではなく、単純に距離感が近いせいだ。

 

 現代人からすれば信じ難いかもしれないが、この頃はプライバシーなんて考えがまるで浸透していないこともあって、それが普通(限度はある)のことであった。

 

 時々やるような近況報告のようなお喋りの時ならともかく、こっそり行いたい相談事という、人の目を避けねばならない事となれば……消去法で、道子の家しかないので……ん? 

 

 

 ──Q.冴陀等村は? 

 

 ──A.あんな邪悪な空気を吸わせたくないでしょ? 

 

 

 酷い言い様だが、一般常識で考えればヤバい要素しかない場所だ。そんなわけで、いつものように集まった3人は、出してもらったお茶を一口。

 

 同じく、室内には道子曰く『非常に口が固い』という給仕服の女性が、エマたち3人の相手をしており、今は用意した玩具を真剣に遊んでいた。

 

 千賀子もそちらに行きたいが、今は友人たちの相談が大事……さて、ようやく明美から話が切り出された。

 

 

「ねえ、千賀子はさ、たしか超能力が使えるんだよね?」

「え? まあ、そりゃあねえ」

「それって、どうやって覚えたの?」

「女神様から与えられたよ。間違ってもおススメはしないけど、それがどうかしたの?」

 

 

 いまさら隠すような間柄でもないので素直に話したら、「実はね……」明美は困ったように溜息をこぼした。

 

 ……そして話し始めた内容はまあ、うん。

 

『友人一家が超能力ブームにはまってしまい、生活が大変なことになっているらしく、なんとかできる方法はないか?』というのを、叔父さんから相談されたのが始まりらしい。

 

 もちろん、明美が直接相談を受けたわけではない。

 

 仕事の関係からたまたま近くに来たので顔を見せた叔父さんが、雑談がてら、両親を含めてたまたま居合わせた明美たちにも話した……という流れだ。

 

 

 つまり、まとめると。

 

 相談者=叔父。

 

 雑談という名の相談を受けた=明美たち一家。

 

 相談内容=叔父の友人の一家がオカルトにはまって、なんとか止めさせたい。

 

 という感じだ。

 

 

 叔父さんの態度からして、出来るならなんとかしてやりたい……といった感じで、何か良い方法はないかという雰囲気だった。

 

 それなら、思いつかないなら、思いつかない、で終わりではないだろうか……そう、千賀子だけでなく、道子も同じ事を思ったのだが。

 

 

「……叔父さん、何年も前の話だけど、交通事故で奥さんと子供を一度に失くしていて……たぶん、黙って見ていられないのだと思うの」

 

 

 それは、この頃には本当に多かった悲劇の内の一つである。

 

 現代のように様々な安全装置や対策が当たり前のように組み込まれた車はまだなく、交通ルールを守らない人が多かった時代だ。

 

 現代では治療が間に合って命が助かるような怪我でも、まだ医療法が確立していなかったり、機械などが生まれていなかったりもあって、死亡者も多かった。

 

 

「私も詳しくは知らないけど、もしも生きていたら、その友人の子供ぐらいの年齢になっているって、お父さんが……」

「……重ねてしまうのね~」

 

 

 しんみりとした空気の中で、道子も普段より声色に元気がなかった。

 

 果たして、重ねてしまったのはその叔父さんだけなのか……なんとも静かになってしまった中で、ふむ、と一つ頷いた千賀子は、率直に答えた。

 

 

「女神様は私以外には人と虫との区別が付いていないぐらいだから別として、私にどうしてほしいの?」

「どうしてって、それは……」

「超能力を本当に持っているかは別として、私が言うのもなんだけど……ぶっちゃけ、スプーン一つ曲げられたって、ちょっとテレビに出られるぐらいだと思うよ」

「私もそう思うけど、どうも熱心なのはその子の両親の方らしくてね。肝心のその子は、本当は興味がないみたいで……」

「あら~、思いもよらなかった才能が見つかったせいで~、両親の方がのぼせちゃったのね~」

 

 

 身も蓋も無いことを言っちゃう道子だが、言っていることは間違っていない。

 

 あらゆる場所でちらほら見付けられる、子供自身よりも親の方が固執し過ぎているパターンだ。

 

 こういう場合、親に苦言を呈しても通じる事はほとんどない。なにせ、親自身が『子供が望んでいるから』と思い込んでいる事が多いから。

 

 子供も、本当は嫌になっていても親が望んでいるからと無理をしたり、そう思い込もうとする場合もあるから、余計に話がこじれたりする。

 

 まあ、仮に、子供から嫌がられても『ちょっと嫌な事があって逃げ出そうとしているだけ』と矮小化させてしまうから、すんなり解決することはないけど……で、だ。

 

 

「なんでも予言ができるとか、どうとか」

「予言ができたってロクな事にならないわ。周りが信じてくれないし、ハズレたらハズレたで、そりゃあもうボロクソに文句を言いに来るだろうし、黙っておくのが一番よ」

 

 

 その言葉とともに、千賀子は座っているソファーに置かれていたクッションを、シュバッと投げる。

 

 その先に居たのは明美の子供、尻餅をつこうとしたそこへ、クッションが滑り込んだ。キョトンとしている明美(子)とは裏腹に、給仕服の女性はペコペコと千賀子へ頭を下げていた。

 

 

「……スプーン曲げ以外にも色々できるみたいで」

「空飛んだり分身したりできるけど、それができたって、たいした事はできないしなあ……神通力で防御しないと寒くって堪らんし、体調悪かったら分身も出せないし、健康な身体に勝るモノ無しだね」

 

 

 その言葉とともに、千賀子は神通力にてポッドを浮かして運び、空になっているカップに順に注いでいく。その際、パチンと千賀子が指を鳴らせば、ほのかに湯気が立ち始める。

 

 もちろん、飛沫も全てふわりと音もなくカップの中に入り、役目を終えたポッドは元の場所に……誰の手にも触れられないまま、置かれた。

 

 

「……テレビの人たちがどうとか、話も出ているみたいで」

「向こうが金になると思ったら、黙っていても来るよ。全部向こうの都合だから、お構いなしで。一回本気で怒鳴ったら、来なくなったけど」

 

 

 その言葉とともに、一瞬ばかり千賀子の髪が逆立った──のを見て、明美は深々とため息をこぼした。

 

 

「……なんか千賀子に相談すると、いろんな事がとても些細な問題に思えてきて困るわ」

「なんで!?」

 

 

 非常に不本意な評価を受けたことに対して、道子からも曖昧に微笑むだけで否定はしないことに、ちょっとショックを受ける千賀子を他所に、だ。

 

 とりあえず、『具体的に、どうしたら良いだろうか?』という、根本的な問題だが……しばし考えていた道子から、質問が出た。

 

 

「ねえ、明美~」

「なに?」

「その人の御両親って~、最近になって失業したとか、そういうのはある~?」

「えっと……詳しくは知らないけど、オジサンがポロッと『あいつもそんな事しないで、さっさと次の仕事を見付けないと』みたいな感じの事を小さく呟いていたから、そうかも……」

「じゃあ、それがキッカケね~」

 

 

 道子の言わんとしている事はまあ、昔から言われることでもある。

 

 人間、環境が苦しくなったり辛くなったりしたら、占いやオカルトの世界に逃避したり、身を任せてしまうのはよくあることだ。

 

 実際、千賀子の前世において1974年頃にオカルトが流行ったのも、だ。

 

 少なからずオイルショックによる経済の低迷、社会の閉塞感、見通しが暗い未来しかない……といった国民感情が作用した可能性があるという報告もある。

 

 子供たちとて、大人たちが醸し出すそういった感情を無意識のうちに敏感に察知し、それから逃れるために、人知を超えたナニカに目を向けたという可能性も0では……話が逸れたので、戻そう。

 

 

「それじゃあ、就職できたら目が覚めるとか?」

「……それがねえ、なんか自分の子供の超能力を当てにして生活しようとしているっぽい気配があるみたいで」

「あっ(察し)」

「叔父さんも何となく察したらしくて、それとなく注意はしたらしいんだけど……喧嘩別れみたいな感じになったらしくて」

「う~ん、この……」

「叔父さん曰く、子供の方も自分の肩に生活が圧し掛かっているのを理解していて、だからこそ嫌でもやるしかない……って状態らしくて」

「家族の子供ならまだ動けただろうけど、他人の家の子供だものなあ……そりゃあ、叔父さんとやらも歯がゆいだろうね……」

 

 

 しかし、それならそれで、どうしたものかなぁ……と、千賀子たちは考える。

 

 仕事を斡旋したところで、当人にその気が無ければなんの意味もない。良い返事だけして当日すっぽかす……なんてことをされたら、それこそ目も当てられない。

 

 

「……実際のところ、どうなの?」

「ん?」

 

 

 考えていると、今度は明美から尋ねられた。

 

 

「千賀子には、そういう不思議な力があるわけだけど、特別な訓練とか、そういうのはするの?」

「ん~、とくに何かをするって事はないかな」

 

 

 ──まあ、幼い時から『ガチャ』は回していたけど。

 

 そう心の中で呟くと同時に、窓の向こうから当たり前のように『(=^ω^=)ガチャ?』←こいつが覗いてきたので、違うよと心の中で答えつつ……千賀子は、率直に本心を告げた。

 

 

「正直、その御友人をどうこうするのは私には無理かな。札束をあげたとしても、それを元手に就職を……なんて事はしないだろうし」

「そっか……やっぱり、千賀子にも無理なのね」

「結局、その子の両親にその気が無かったら、何をしようが都合よく解釈しちゃうし、お金だって渡した傍から言い訳して使い込むだろうし……それこそ、殴り飛ばすぐらいはしないと意味ないよ」

「殴ったぐらいで改心するなら誰も苦労なんてしないけど~、殴ったぐらいで改心する程度なら~、そもそも最初の説得で改心しているわね~」

「なんか、道子が言うととんでもなく重い言葉に思えてくるわね……」

「まあでも、道子の言い分も一理あるよ。殴ったぐらいで誰でも性根が変わるなら、今頃日本は全員が善人で物価高騰も起こってないし」

 

 

 言葉で通じないやつは暴力で多少なり改めてもらうしかない、というのは千賀子も納得だが、相手は大人だ。

 

 子供同士(中学生、高校生ぐらい)なら喧嘩両成敗という形で見逃されるが、大人同士になると話は変わる。

 

 どちらかが留置所で反省するか、最悪は執行猶予からの実刑……さすがに、叔父さんもそこまではしないだろうけど。

 

 

「それじゃあ~、ずど~んと改心しちゃうくらいのナニカが起こらないと~、どうにもならないってことね~」

 

 

 とはいえ、だ。

 

 物事は、時に些細なキッカケで解決に繋がる事はある。

 

 何時間と頭を悩ませても解決出来なかったバグが、何気なく一眠りした後で、ハッと脳裏を過った閃きのままに手を動かし、解決した……という話だってある。

 

 

「……そうだ、河童に任せよう」

 

 

 それが、この時、千賀子にも起こったので──え、河童!? 

 

 

 ──Q.なぜ、河童に? 

 ──A.面倒臭くなったので。

 

 ──Q.なんで河童に? 

 ──A.男相手だし、河童から気合入れてもらえ。

 

 ──Q.いや、なんか扱い雑じゃない? 

 ──A.いや、だって、どうにもできないじゃん? 

 

 ──Q.だからって、なんで河童に? 

 ──A.難しく考えすぎ、河童を見習え! 

 

 

 ちなみに、その結論が出るに至る千賀子の思考のチャートが、これであったりするが、ひとまず横に置いといて。

 

 実際、千賀子からできることなんて何もないわけで。

 

 ましてや、ロボ子による物理的マインドチェンジ何をしても恨まれそうな相手に尽力する理由も千賀子にはないわけで。

 

 

「河童と相撲でも取れば、超能力なんて馬鹿馬鹿しいって思うし、けっこう良い考えかもしれない」

 

 

 事情を知る第三者が知ったら、『こいつ……』と思われそうな思いつきで、千賀子はそう決めたのであった。

 

 

(相談した私が言うのもなんだけど、また千賀子がなんか変なこと呟いている……)

(河童さんって、いるんだ~……でも、私たちに会わせないってことは~、あまりよろしくない人たちなのかな~?)

 

 

 なお、明美と道子は聞こえなかったフリをして、その場を誤魔化したのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ああ、それと、これは余談なのだが。

 

 

 それまで近所から白い目で見られるぐらいにオカルトに傾倒していた、とある県庁所在地に住んでいた一家が。

 

 ある日を境に、人が変わったかのようにオカルト関係のモノを全て捨て去ったことで、ちょっとした噂話になったが……まあ、うん。

 

 真実を知る者は、まさしく神のみぞ知る……というやつで。

 

 キッカケは分からないけど、叔父さん安堵の溜め息をこぼし。

 

 明美は明美で『叔父さんが安心したなら、それで……』で納得し。

 

 道子は道子で、『触れない方が良いのかもね~』と、見て見ぬふりを決め込み。

 

 千賀子は千賀子で、『可哀想だったかも……』と、ちょっとばかり後悔していたけど。

 

 結果だけを見れば、良い方向に動いたので……まあ、気にする者はそこまでいなかった。

 

 

 

 

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