ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第148話: かつてない疑惑

 

 

「いちおう聞いておきますけど、女神様がナニカしたわけじゃないんですよね?」

『──何もしていませんよ』

 

 

 それを聞いて、千賀子が取る手段は一つ。

 

 

 ──とりあえずは、だ。

 

 

 千賀子は……持てる『力』を振り絞って、できる限り苦しめと心の底から強く念じた。

 

 いったい、誰を相手に? 

 

 それは、この問題を引き起こした相手に対して、である。

 

 原因とか、理由とか、そんなのはどうでもいい。

 

 直感的に、『神社以外沈没』の原因は自然現象の類ではないというのは感じ取っていて、分かっていた。

 

 だから、渾身の怒りを込めて呪いを放つ。

 

 己の内に宿る巫女的パワー。普段は『魅力』を抑えることに全力なソレを全て、この問題を引き起こしたであろう存在へと叩き込む。

 

 

 ──ぬん! 

 

 

 両手を合わせ、ギュッと目を瞑り、顔をしかめながらも、全力で。

 

 

「……うっわ、甘ったるい。ていうか、本体の私はなんでうっすら汗掻いているのかしら?」

「健康的な色気ってやつでしょ。ほら、ご丁寧に顔とか脇とかにはほとんど汗を掻かず、どういうわけか首筋とか胸元にばかり汗が出てきているし」

「分身の私が言うのもなんだけど、冷静に見ると意味不明な発汗の仕方よね。汗を掻いているのに、汗臭さがまったくないとか不気味だわね」

「──うるせえ! ごちゃごちゃ言わず、あんたらも私に続きなさい!」

 

 

 その際、2号と3号から色々とダメだしという名の失礼過ぎる感想が出たが、これを千賀子は一言で黙らせた。

 

 いや、まあ、客観的に見たら、分身たちの感想はもっともである。というか、むしろ優しい言い回しな方だろう。

 

 なにせ、本当に客観的に見たら、今の千賀子はとてもではないが、人前に出られる姿ではない。

 

 素肌が露わになっているとか、そういう話ではない。

 

 単純に、己の『魅力』への封印を開放した今、見た者の情欲を思わず刺激してしまうような、そんな状態に身体が勝手になっているのだ。

 

 たとえば、目立つのが肌の色だろう。

 

 普段とは違う、まるで直前までゆっくり湯船に浸かっていたかのように赤みを帯びていて、目を凝らせばうっすら汗を掻いているようにも見える。

 

 けれども、玉のような汗は無い。

 

 あくまでも、そう見えるような……という程度。けれども、不思議とそこに忌避感や嫌悪感を覚えず、むしろ活動的な……といった印象を抱いてしまう。

 

 それでいて、汗臭さの類が一切ない。

 

 誰が嗅いでも、反射的に『女の子の匂いだ』と思い浮かべてしまうような感覚。以前はそれだけだったが、今はそこに成熟した女の匂いまでもが追加されている。

 

 ソレはまさしく、色気というやつだろう。

 

 以前は見る者が見れば固さが……言うなれば、処女性をうっすら感じ取れたところに、今は、なんとも言えない艶やかさがプラスされているといった感じである。

 

 こんな女性が傍を通っただけで、思わず目を向けてしまうような……仮に電車に乗れば、車内の視線を無条件で引き寄せてしまう……そんな気配をまとっていた。

 

 

 ──ぬん! 

 

 

 まあ、今の千賀子は『神社』に居て、周りにいる者たちも分身たちとロボット……あとは、『₍₍(ง=^ω^=)ว)⁾⁾』なんかテンション上がって踊り始めている女神様なので、心配する必要はない。

 

 その中で、実はエマも千賀子の影響をほとんど受けていない。

 

 どうやら千賀子の母乳を飲んで成長していうおかげで、相当な耐性が付いているらしく、4号がそっと部屋を離れるだけでも十分なぐらいであった。

 

 

 ──ぬん! 

 

 

 そうして、何度も何度も、『ぬん!』と千賀子は全力の恨みパワーを念じ続け……ゴリゴリと己の巫女的パワー(あるいは、精神力)が消耗しているのを自覚した千賀子は、ふうっと息を吐くと。

 

 

「──ヨシッ! たぶん、良い感じに仕返しができたような気がする!」

 

 

 誰に言うでもなく、そのように宣言をした。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ちなみに。

 

 

 実際のところ、千賀子の『良い感じに仕返しができた』というのは、間違いなく真実であった。

 

 たとえば、ある者は急に気が触れてしまったかのように暴れ始め、長年連れ添った旦那や妻を笑顔のままに撃ち殺したり。

 

 ある者は、目に入れても構わないと思えるぐらいに可愛がっている孫などを、生きたままミキサーに入れてミンチに変えたり。

 

 他にも、幼い子供をまとめて轢き殺したかと思えば生きたまま火にくべて、その前で踊り狂ったり、狂乱して止めようとする周りを逆に殺しまわったり。

 

 所持していたあらゆる燃料を片っ端から爆発させ、町一つ、歳一つを完全に火の海に変え、おびただしい数の焼死体が量産されてゆき。

 

 本来であれば瞬時に鎮火できる設備が整っており、100年以上無縁な出来事だったそれらが、同時多発的に制御装置の故障が発生して、既に総被害者数は2億を突破しているのだが。

 

 

「──汗掻いたし、風呂に入ってくる!」

「そうね、その方が良いわ」

 

 

 当の千賀子はおろか、さすがの分身たちも、そこまで正確には察知できなかった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………一方、その頃。

 

 

 人類をはるかに超越したその者たちは、はるか彼方の星々よりマインドエネルギー……いわゆる、超能力に分類される力が向けられているのを、この時察知していた。

 

 彼らには、それができるだけの優れた科学力があった。

 

 そして、その場所へ瞬時に移動が可能な宇宙船を作る事ができていたし、マインドエネルギーはすでに解明しているので、防御することも可能であった。

 

 だが、しかし……すぐに、彼らは二つに一つの選択を迫られた。

 

 どうしてかって、星々の彼方より向かってくるマインドエネルギーのパワーがあまりにも桁違いであり、彼らが構築していた防御壁を容易く突破してきていたからだ。

 

 それはもはや、エネルギーなんて生易しいモノではなかった。

 

 彼らの中にも先天的に、あるいは後天的に改造手術などを行ってマインドパワーを扱える者はいて、その数は少なくなかった。

 

 だが……なまじに感知できてしまった者は例外なく、そのパワーに耐えられず頭を破裂させてしまった。

 

 おかげで、被害は甚大なんて生易しいものではない。

 

 物理的な障壁で防げる攻撃とは違い、マインドエネルギーによる攻撃は、受けた者たちがそのまま敵の武器となり、兵器となり、爆弾になる。

 

 攻撃を感知し、防御壁が貫通されてから……時間にして、1時間。

 

 たったそれだけで、一つの惑星にて繁栄していた彼らの一族が滅んでしまった。それが、いくつもの内の一つとはいえ、彼らにもたらした衝撃は相当なモノであった。

 

 たった1時間。されど、1時間。そうなるのも、致し方ない。

 

 なにせ、その惑星に住んでいた者たちが一斉に、各自が思いつく限りの、もっともより多く、より効率的に自分を、あるいは他者を殺すようにと動いたからだ。

 

 そんなの、耐えられるわけがない。

 

 そして、それゆえに、彼らは選択した。

 

 いや、それは選んだというよりは、選ばされた、という方が正しいのだろう。

 

 なにせ、隕石の衝突にも十二分に耐えられる防御壁がまったく役に立たないのだ。

 

 マインドエネルギーを感知するレーダーは常にメーターレッド、続々と計器が壊れ始め、感知出来ない者はなすすべもなく自死し、あるいは殺され、または周りを殺し始める。

 

 そんな状況で、生き残るためには……あらゆる犠牲を払ってでも、攻撃を仕掛けてきた相手を倒す以外に方法は無い! 

 

 そう決断した彼らは、1秒でも早く宇宙船に、あるいは戦闘艦に乗り込み……攻撃を仕掛けてきた星へと向かう。

 

 幸いにも……という言い方は変だが、相手はまさか逆探知されるとは思っていないのか、居場所をまったく隠していなかった。

 

 それゆえに、絶えず送られてくる攻撃によって迎撃に向かった船が次々に撃沈してゆく中でも、彼らは『そこさえ抑えてしまえば!』の一心で前進を続け。

 

 

『(──発見した! 全艦隊、一斉掃射! 惑星ごと撃ち抜け!!)』

 

 

 そして……ついに、射程距離にまで目的地へ接近した彼らは、届く届かないに関係なく、ありったけの残存エネルギーを全て攻撃に回し、攻撃を

 

 

 

 

 ──( <●>  <●> )──

 

 

 

 

 した瞬間、彼らの繁栄はその瞬間に途絶えたのであった。

 

 

 ……彼らは、そう。

 

 

 いくら大規模な攻撃によって惑星一つ、それだけの同族が絶滅した焦りがあるとはいえ、取り返しのつかない三つのミスを犯していた。

 

 一つは、彼らですら長距離ワープを使わねば、あるいは攻撃されていなければ、まず存在すら気付かない彼方からの攻撃……という時点で、迎撃よりも逃げることに全力を出さなかったこと。

 

 総数が100体以下になろうとも、逃げるべきだったのだ。

 

 次に、彼らは……レーザー砲などによる物理的な攻撃ではなく、その魂すらも焼却してしまう、特殊な攻撃を放ってしまったこと。

 

 と、いうのも、だ。

 

 マインドエネルギーを武器とする強い個体には、稀にだが肉体を失っても完全に死なず、エネルギー体となって活動を続ける場合があることが確認されていた。

 

 いわゆる、霊的存在、というやつだ。

 

 ゆえに、そういった個体には、エネルギーそのものを滅却し、エネルギー体として再活動しないようにする必要があった……が、しかし。

 

 それが──様の逆鱗に触れる結果となった。

 

 これが、ただのレーザービームであったならば──様は動かなかったのだが……不運にも、彼らは絶対に行ってはいけない種類の攻撃を行った結果であった。

 

 そして、最後の三つ目……まあこれは、彼らというよりは、彼らの中の、本当にごく一部が行った惑星規模の実験によるものなのだが。

 

 もしも、それを行った星が、別の星だったならば。

 

 彼らにとっては未来の出来事とはいえ、無限にも等しい数の星々の中で、よりにもよって、その星さえ選ばなければ。

 

 まさか、それが彼ら種族の最後を決めることになるとは……誰も、想像すらしていなかった事であり。

 

 

「……? 女神様、なんか急に怖い顔で天井を見上げてどうしたの? ゴキブリでも出て来たの?」

『──いいえ。ただ、許し難い事をした者がいたので、お仕置きしました』

「ふ~ん……ロボ子もどうしたの? 女神様と揃って天井見上げられると、ちょっと怖いのだけど?」

「いえ、その……とても面倒なやつらが急接近してきたので……でもまあ終わった事なので、御気になさらず」

「ふ~ん……話は変わるけど、ロボ子が作ったこのマッサージチェアーは良いねえ……全身の凝りが解れていくのがわかるよ……」

 

 

 当の攻撃を放った千賀子もまた、そんな危機が迫っていて、知らぬ間に相手が壊滅しているだなんて……知る由もない事であった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、そんな宇宙規模な出来事を他所に、だ。

 

 

「えー、はい、ロボ子。調査報告をよろしく」

「はい、簡潔に結論から述べますと、地球内部のマントル層に、液体生物兵器の存在を発見しました。女神様のおっしゃる『神社以外沈没する』、その原因の可能性が極めて高いと推測されます」

 

 

 『超・千賀子緊急会議!』と書かれた立て看板の横で、プロジェクターにて画像と共にロボ子が説明を始めた。

 

 スクリーンに映し出されたそこには、『灰色の液体』でうっすら濡れている岩石と、その『灰色の液体』を分離させ、様々な機械や試験管などを背景に、それを注視しているロボ子の姿があった。

 

 

「この液体生物兵器……呼称を『Ω(オメガ)』としますが、日本列島全域はおろか、大陸のマントル層にも広がっているのが推測され、実際に『Ω』のモノと思わしき組織も各大陸で確認されました」

 

 

 ポン、とスクリーンの映像が切り替わるに合わせて、レーザーポインターで説明が続く。

 

 

「『Ω』は平時においてはまったくの無害でありますが、ある特定の条件下に長時間さらされますと、機能の一部が誤動作するようで、それが原因でマントル内に異常を起こし、それが地殻(ちかく)へと伝わり、大陸規模の液状化現象を引き起こします」

 

 

 ──つまり。

 

 

「その結果、女神様の御力で守られている『神社』以外は、まるで泥沼の上に乗せられた岩石のごとく、徐々に沈没し……最終的には、グズグズに崩れて海水の中に沈む……というわけであります」

 

 

 それこそが、『神社以外沈没』の全貌であった。

 

 

「……この『Ω』に関して私の頭脳ユニットに記録があります。詳細は省きますが、銀河の彼方にて繁栄している、とある種族が研究していた兵器の一つです」

「……なんで、そんなのがこの星にあるの?」

「可能性として考えるのは、ただの偶然、です」

 

 

 2号の質問に、ロボ子はキッパリと言い切った。

 

 

「この『Ω』は敵対した種族の母星を攻撃するための兵器であり、その特性は超広範囲に渡っての植生完全掌握にあったのですが……プログラムにバグが発生しやすかったらしく、実戦には使われなかった代物なのです」

「実践には?」

「はい、あくまでも、その前段階である実験テストにて使われた兵器でありまして……回収するコストの問題もあって、全てそのまま破棄され、『Ω』の開発計画も白紙になった……と、記録されています」

「なるほど、わかった」

 

 

 一つ頷いた千賀子は、単刀直入に尋ねた。

 

 

「それで、解決する手段はあるの?」

「その点に関して、非常に興味深い情報が関係者より得られました」

「関係者?」

「この『Ω』を開発した種族とは違いますが、遠い昔に交友があった種族の末裔であり、現在は地球上にて生活している異星人からの証言です」

 

 

 その言葉と共に、また映像が切り替わる──今度は音声付きで、そこに映し出されたのは……灰色の肌に、子供のような小さい体格ながらも、アンバランスなまでに巨大な黒目を持つ。

 

 そう、いわゆる、千賀子の前世において『グレイ型宇宙人』と称された生物が、そこに映し出されていた。

 

 あまりにも……そう、あまりにもコテコテな宇宙人の登場に、千賀子のみならず、分身たちからも「まんまじゃん……」と驚きの声が上がった。

 

 いや、だって、冷静に考えてほしい。

 

 いくら前世の事がうろ覚えになっているとはいえ、こんな状況でなかったら、思わず笑ってしまうような光景である。

 

 ぶっちゃけ、その姿を見た瞬間、声にこそ出しはしなかったけど、内心にて『え、ここ笑うところ?』と思った千賀子は悪くないだろう。

 

 

『──まず、年齢を教えてくれますか?』

『((240歳、『釜屋』という名の蕎麦屋を営んでおります))』

『──馬主もやっておられるとか?』

『((はい、ポンポコジミスキーという馬を……))』

『──へえ、身長と体重は?』

『((身長は140cmで、体重は……))』

 

 

 加えて、プライバシー保護とやらが映像右上に表示されているとおり、申しわけない程度にモザイクが掛かり、声も加工され──いや、そこではない。

 

 

「……『釜屋』って、春木競馬場行った時にだいたい出前を頼む蕎麦屋じゃん! あそこの店主、宇宙人だったんかい!!」

 

 

 堪らず吠える千賀子、だがしかし、そこでもない(Part.2)。

 

 ちなみに、店に出る時などは宇宙的科学力で完全にカモフラージュしているので、千賀子も直接その姿を見ないと気付けないレベルだったりする。

 

 実際、『釜屋』を長らく利用している者たちは誰一人として、その事に気付いていないのだから、いかに念入りに溶け込んでいるかが窺い知れるだろう。

 

 さて、そんなこんなで、驚愕の事実に思わず目を白黒させる千賀子を他所に、ロボ子によるインタビューは続き。

 

 

『──それで、『Ω』への対応策は、どうしたら良いのでしょうか?』

『((正直に申し上げますと、人類の科学力では不可能です。私が知っている限りの最新技術を使っても、対応している間は地上では震度10~11クラスの地震が絶えず起こりますので……))』

『──つまり、それに耐えられるような文明が無いと難しい……と?』

『((率直に申し上げますと……ですが、可能性は低くとも、どうにもならないわけではありません))』

『──それは、いったい?』

『((それは、ですね──))』

 

 

 そして、ついに、その時が来た! 

 

 

『((──そう、『ガチャ』です))』

 

 

 それを、その目で目撃した千賀子は……真顔のまま、傍で己を見ている女神様を見返した。

 

 

「女神様、本当にこの件に関して無実なんですよね?」

『──無実です』

 

 

 そう答えた女神様の手は、『ガチャ』のルーレットを掴んでいた。

 

 

 

 

 

 






※ ポンポコジミスキー


 ダート馬:通算出走数87戦・7勝80敗。


 重賞を取ってはいないが、健康で頑強で、掲示板入りの割合が高く、『鉄の馬』と地元では称えられた孝行馬である。

 末脚こそ鈍いが、長く続くスタミナと切れ間なく緩やかに加速し続ける強い逃げ方に、人気があった馬だ。

 正確はとても温厚で、調教も時々サボろうとするが素直に従い、『人間はすぐ怪我をしてしまう生き物』というのを理解していたという証言があるぐらい、賢い馬である。

 そんなポンポコジミスキーだが、ある時を境に途端に走る気力を失くしてしまい、掲示板入りはおろか、下から数えた方が常に早いぐらいにまで戦績が落ち込んでしまった。

 これを重く見た馬主は、『限界まで走ってくれて、もう走れなくなった。身体が、言う事を聞かなくなったのだろう。それなら後は、ゆっくり余生を送ってもらおう』と決断し、ポンポコジミスキーは競走馬を引退したのであった。

 ……。

 ……。

 …………しかし、馬主と関係者は気付いていなかったが、ポンポコジミスキーが活力を失ったのは、年齢からくる衰えではない。

 実は……そう、ポンポコジミスキーは、『地味っ子が3度の飯よりも好き』という血の定めを背負った馬なのである。

 そして、これまた実はな話だが、馬主さんには娘さんがいて、その娘さんがまた絵に描いたかのような地味っ娘だったのだ。

 髪は三つ編みで、引っ込み思案で、話声も小さく、どこか動きも鈍臭い、それでいて眼鏡をかけた、それはもうポンポコジミスキーからしたら、天使が如き女性であった。

 そんな子が傍に居たら、そりゃあもう怪我なんてしている場合じゃねえとポンポコジミスキーは思っていたわけだ。

 ──だが、しかし。

 そんなポンポコジミスキーを、悲劇が襲った。

 その天使は当然ながら、馬の目線から見ても人間の少女にしか見えなかったのだが、それでもまあ、時の流れに合わせて成長するわけで。

 ……ここまで言えば勘の良い読者は気付いているかもしれないが……まあ、うん。

 ハッキリ簡潔に述べると、髪型を変えて口紅を差して、短いスカートを履き、眼鏡もなんか妙なデザインのやつに変えていくのを見て、そして、見知らぬ男と腕を組んで歩いているのを目撃してしまったことで。

 ──ポンポコジミスキーの脳は、不可逆的に破壊されてしまったのであった。



 ……。

 ……。

 …………ちなみに、実はシンザンの血を引いている良血馬らしいのだが、神馬と称えられたその血も、ポンポコの宿命には勝てなかった。


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