ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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明日はちょい早いので

※ インモラル注意


第150話: 千賀子「ロボ子、どうにかしろ(無茶振り)」

 

 

 

 ──とりあえず、2名が既に身体が汚れている状態だったので、入浴してもらうことにした。

 

 

 いくらなんでも、身体に男性のアレがベッタリ付いているのを放置したまま会話できるほど、千賀子は己を図太いとは思っていない。

 

 なので、問答無用の入浴で……嫌じゃないのかって? 

 

 まあ、嫌と聞かれたら、嫌である。

 

 別世界の己とはいえ、そんな汚れ方をしている身体を、自分も使う入浴設備へ行かせるのは、正直抵抗感はある。

 

 けれども、だ。

 

 外の手水舎で洗ってもらいたいが、時期が時期だ。手水舎の水は年間を通じて冷たいし、それで洗うのは可哀想だと思った。

 

 

 ……とまあ、そんなわけで、小一時間後。

 

 

 別世界にも『神社』があるのか、顔立ちこそ千賀子に似ているが、雰囲気やら何やらが明らかに異なる3人……そう。

 

 骨格や顔立ち的な意味では千賀子とそっくりだが、不思議と、客観的に見たら似ていない。

 

 そんな3人は、分身たちに案内されるがまま自室に来て……コタツに入ってから、改めて千賀子は向かい合った。

 

 

「えっと、説明する必要はないと思うけど、いちおう自己紹介。『巫女』の、千賀子です」

 

 

 手を上げて自己紹介をする千賀子に、最初に返答をしたのは……厳かな雰囲気を放ち、どことなく清廉な空気を見に纏った『千賀子A』であった。

 

 

「自己紹介をする前に、二つ質問を良いかしら?」

「なに?」

「貴女、今は何歳?」

「ん? 25歳だけど?」

「子供はいるの?」

「いるよ、養子の女の子が1人」

「なるほど、道理で……」

 

 

 意味深に笑う『千賀子A』。

 

 いや、彼女だけでなく、他の二人もそれでナニカを察したのか、フッと目に……そう、労わりというか、どこか見覚えがある気がする視線を向けられた──っと。

 

 

「既に察していると思うけど、私は『女王』の千賀子です。具体的には、貴女が『巫女』ではなく『女王』のジョブを会得した世界線の千賀子です」

 

 

 その事に千賀子が疑問を抱くよりも前に、女王と名乗った千賀子A……面倒なので、女王千賀子は、出されたお茶をズズッとすすった。

 

 その言葉を聞いた千賀子は、納得すると同時に、『女王』のジョブを得た己はこうなるのかという、好奇心の眼差しで別世界線の己を見つめた。

 

 

 ──ジョブ:『女王』

 

 

 千賀子の記憶ではたしか、他者を魅了するカリスマを有し、強力に心酔させる素質を持つ……とか、そんな感じだった気がする。

 

 なるほど、確かにそうだなと千賀子は納得する。

 

 立ち振る舞いとか、そういう目に見えるモノではない。今の己のように性欲を刺激させて視線を集めるのとは違う……そう、カリスマだ。

 

 思わず、尊敬の眼差しで見てしまうというか、心酔したくなるというか……ただそこに居るだけで、周囲の者を敬服(けいふく)させてしまう……そんなナニカを感じさせた。

 

 

「ちなみに、秋山は旧姓になります。こう見えて、実年齢57歳です」

「はい?」

「見た目には分からないでしょうけど、これでも7人産んで、2人養子で引き取っていますので、9人の子持ちになりますね」

「きゅ──っ!?」

 

 

 まあ、そっちに注意を向けるよりも前に、女王千賀子の口から飛び出した爆弾発言によって、そんな気持ちなどあらかた吹っ飛んでしまったけれども。

 

 ただ、これは致し方ない。

 

 なにせ、女王千賀子の外見は……どう上に見ても、30歳を超えているようには見えない。

 

 正直なところ、同年齢ぐらいかなと千賀子が思っていたぐらいに若々しい見た目をしていたからで、事情を知らない者からすれば、冗談の類と受け取っても不思議では……いや、そんな事よりも、だ。

 

 

「……こ、子供を産んでいるの?」

 

 

 信じ難いナニカを見るような眼差しから……色々と察した女王千賀子は、フフフッと月日を感じさせる、そんな笑みを浮かべた。

 

 

「産んでいますよ、ちゃんと自分のお腹から。もちろん、女神様が用意した相手ではなく、自分が望んだ相手とセックスをしました」

「え、えぇ……い、嫌じゃなかったの?」

「最初の頃は悩みましたし、通り過ぎた後ではありますけど、アレやコレや無駄に考え過ぎでしたね、我ながら」

「そ、そんなモノなの?」

「私にとっては……もちろん、お互い合意のうえですし、私から誘った時もありましたね、それが今の旦那ですけど」

「え、えぇ……」

「念のために言っておきますけど、義務感とかそんなのはではなく、ちゃんと恋愛結婚ですから。まあ、世間一般的なラブロマンスとはちょっと違いますけどね」

 

 

 ズズズッと、お茶を一口……呆然とする千賀子を見て、女王千賀子は少しばかり苦笑した。

 

 

「でもまあ、『巫女』を選んだ貴女とは考え方が違うから一概に私が正しいとは言わないけど、タイムリミットは伸びてくれないから決断は早い方が良いわよ」

「え?」

「子供を産むなら若いうちが一番ってことよ。私の場合は19歳の時が初産だったし『ガチャ』の補助もあったおかげで、2人目、さ……3回目は双子だったけど、産後が違うから」

「そ、そうなの?」

「二十歳で初産と、三十歳で初産って、色々なリスクとダメージが全然違うから。回復力ってやつがね、もうね、目に見えて違うから」

 

 

 あっけらかんと言い放つ女王千賀子に、巫女千賀子の方は色々とタジタジであった。

 

 伊達に、千賀子の倍の年月を生きたわけではない……ということなのだろうか。

 

 

「貴女も、アレコレ考えるより一回やってみたら色々と吹っ切れますよ。やっていること、結局は勃起したアレを私のアレに入れるだけですから」

「いや、それができたら誰も悩んだりはしないよ……」

「そんなに大事なら、貞操帯でも付けたら良いのよ。大切なモノは金庫に仕舞うでしょ? 強盗が悪いのは当たり前だけど、ここは天国じゃないの、自分の事は、自分でどうするかを決めないと」

「そりゃあ、分かっているけど……」

「肉体的なタイムリミットもあるわけだし、いつまでも子供みたいな事を言って駄々を捏ねないで、そろそろ腹をくくって決めなさいな」

 

 

 身も蓋もない話に、思わず千賀子は目を白黒させる。

 

 その後の人生を大きく左右させたと言っても過言ではない『ジョブ』が異なるからだろうか……あるいは、生きた年月の違いか。

 

 同じ自分とはいえ、なんというか……考え方が悟っているというか……いや、そもそも、別世界の自分にどうにも説教され……いや、これ、説教というよりは、忠告か? 

 

 

「……え、えっと、そっちの……その、ピアスしている貴女は、どちら様?」

 

 

 なんか、微妙に気まずくなった千賀子は露骨に話を逸らす。

 

 向こうも察したのか、耳にもピアスをしている『千賀子B』は、ニヤニヤと笑みを隠さずにペロッと舌を出し──あ、舌にもピアスがある。

 

 

「私は、『魔性』のジョブを得た千賀子だよ。こう見えて、年齢は60歳の還暦……どう、見える?」

「見えないよ?」

 

 

 真顔で、千賀子は答える。

 

 実際、まったく見えない。下手すれば、いや、客観的に見ても、女王千賀子よりも3歳も年上なのに、女王千賀子より見た目は年下にしか見えない。

 

 というか、己よりも年下に見えるかもしれない……そう思った千賀子だが、下手にツッコむとどんな返しが来るのか分からないので、それ以上は黙秘に徹した。

 

 

「せっかくだから言うけど、私は分身を含めて999人産んでいるから。『ガチャ』の恩恵のおかげでね、そういうのが可能な身体なのよね」

「はっ?」

「ちなみに、私の胎にはストックされた受精卵があと301個あったりする。私はあくまでも余剰分の残照だから産めないけど、あっちだと来週には1000人目だわね」

「……お、おう」

 

 

 けれども、黙秘したところで、衝撃的な事実は空気を読んではくれなかった。

 

 いや、もう、うん。

 

 別世界の自分が9人の子持ちであるだけでも驚いたというのに、ここにきて1000人の子持ち確定の自分が登場だ。

 

 しかも、魔性千賀子はその事になんら罪悪感というか、忌避感も嫌悪感も抱いている様子がない。

 

 むしろ、1000人も子供がいてあたしってば幸せ~、みたいな雰囲気を醸し出しており……こう、巫女とも女王とも違うのだと、見た目以外にも色々と察せられた。

 

 

「──子供は良いわよ。女にだけ許された特権だもの」

 

 

 すると、そんな千賀子の視線の中身を察した魔性千賀子は……にちゃぁ、どこや湿り気を感じさせる、色気を多分に含んだ笑みを浮かべた。

 

 

「愛おしいわ。私の中で、私の血肉を糧に、私と愛しい人の遺伝子を受け継いだ子が産まれる、全てが愛おしく、この愛おしい世界で産声をあげる日が待ち遠しくて堪らないの……」

「……怖くなかったの?」

「怖い? 生まれてくる子が一生懸命なのに、大人の私が泣き言をこぼしてどうするのよ」

「いや、だって……」

「……ああ、なるほど。愛らしい心の揺れ動きだわね」

 

 

 言いよどむ千賀子に対して、魔性千賀子は愛らしいモノを見るかのように、艶やかに目を細めた。

 

 

「貴女は一つ勘違いをしているっぽいから訂正しておくけど、私は愛しい相手とセックスをした果てに子供ができたわけで、子供が欲しいからセックスをしたわけじゃないの」

「……あ~、その」

「言葉を選ばなくても分かるわ。私には、特別な分身を出す能力があってね。その分身の私が、母親としてそれぞれの家で暮らしているのよ……あ、もちろん、分身の私たちも夫婦の営みはするわよ」

「お、おう……?」

「そ・れ・に……セックスの快楽なんて、元々そのための副次的な機能でしょう? 屁理屈をこねて、セックスそのものを高尚なモノにしてお高く留まるより、よほど私の方が健全よ」

 

 

 魔性千賀子は何一つ気負った様子もなく、あっさりそう言った。

 

 

「心から、愛しているわ。だから、その人の子を産むの。そんな私に色々言ってくる人もいるわ。でも、その人の事も私は愛おしい」

「え?」

「御立派なナニカを成し遂げたり、デキの良い子を育て上げたりしたわけでもないのに、まるで私の方が上だと言わんばかりの物言い……あまりに滑稽で、惨めで、それがとても可愛らしいと思わない?」

「……えっと、そちらは?」

 

 

 ニタニタと楽しげな魔性千賀子から視線を逸らし、千賀子は最後の1人……『千賀子C』へと尋ねた。

 

 

「私は……そうねぇ、『悪女』のジョブを得た、貴女のもう一つの可能性よぅ。好きなように呼びなさいな」

 

 

 彼女は、官能的な下着を身に纏っていた千賀子だ。魔性千賀子とは違い、行為の途中だったのか、最後まではやっていなかった。

 

 ただ、ある意味では、魔性千賀子よりも……こう、なんというか、気配が背徳(はいとく)的というか、退廃(たいはい)的というか。

 

 

「…………」

「…………」

「…………なに?」

「え、いや、それだけ?」

「それだけって?」

「いや、その……ねえ?」

 

 

 これまでとは違い、どこかアンニュイな雰囲気も見せている悪女千賀子に、千賀子はどうしたら良いのか分からず言葉を濁す。

 

 

「……若いわねぇ」

 

 

 それでも、同じ千賀子なのか、どこか気怠けな様子で千賀子へと向き直り……ふ~ん、と唇が弧を描いた。

 

 

「0人よぉ」

「……それって」

「違う、産んだわぁ。ただぁ、そうねぇ……私の世界だと、第三次世界大戦が始まっちゃったのよぉ」

「え!?」

「冷戦の熱が冷めなくてねぇ……なんとか上官たちを誑し込んで止めさせようとしたけどぉ、それはそれで、余計な嫉妬を煽っちゃったみたいでぇ……ミサイルの応酬が起こっちゃってぇ」

「…………」

「みんなぁ……み~んなぁ、死んじゃった……大好きだった人たちぃ、みんな死んじゃったぁ……」

「…………」

「実家もぉ、お墓もぉ、お友達もぉ……みんな、み~んなぁ……焼け野原になっちゃったぁ……っ! う、う、うぅ、うぅぅぅ~~──っ!!!」

「え、ちょ、どうしたの!?」

 

 

 あまりにも重苦しい悪女千賀子の経歴に、千賀子だけでなく、女王と魔性も言葉を失くしている最中、突然、頭を抱えるようにしてうずくまり、呻き始める悪女千賀子。

 

 

「うう、うう……寂しいよぉ……」

 

 

 慌てて介抱しようとした千賀子たちだが、悪女千賀子の唇よりこぼれた、乾いた雑巾から一滴の水を絞り出したかのようなその声は……嫌でも、そんな感情を抱かせた。

 

 

 

 お父さん……お母さん……寂しいよぉ

 

 お爺ちゃん……お婆ちゃん……寂しいよぉ

 

 寂しいよぉ……明美ぃ……寂しいよぉ……

 

 道子ぉ……1人は嫌だよぉ……寂しいよぉ……

 

 ロウシぃ……叱ってよぉ……また叱ってよぉ……

 

 置いてかないでよぉ……1人は嫌だよぉ……

 

 嫌だよぉ……1人にしないでよぉ……

 

 どこに行ったんだよぉ……置いてかないでよぉ……

 

 千賀子って呼んでよぉ……叱ってよぉ……嫌だよぉ……

 

 

 

 心の奥深くより滲み出たその声は、けして大きくない。

 

 けれども、この場の誰よりも大きな声に聞こえた。

 

 少なくとも、千賀子だけでなく、女王と魔性も、分身たちすらも、硬直して何も言えないぐらいの……っと、その時であった。

 

 

「──うっ、あっ、あっ、さ、寒い、寒い! 嫌だ、寒い! 寒い! 怖い! 怖いよぉ! 怖いよぉ!!!」

 

 

 いきなり、反応が劇的に変わった。

 

 けして『神社』の中は寒くないのに、まるで極寒の中に放り出されたかのように、悪女千賀子は全身を震わせ始めた。

 

 その顔色は悪く、顔どころか、首筋にも冷や汗が滲み始めていた。

 

 あまりに突然の変化に、倍以上生きている女王と魔性も面食らい──けれども、状況はすぐに動いた。

 

 何も無い空間に悪女千賀子が手を伸ばしたかと思ったら、ナニカ……そう、液体らしきモノが見え隠れするソレを、勢いよく腹に押し当て──いや、突き刺した。

 

 

「うぅ! うぅ! うぅ! うぅ!! うぅ──うっ、うぅ……うぅ……うぅ……」

 

 

 すると、どうだろうか。

 

 まるで潮が引いていくかのように、総身から震えが治まってゆく。加えて、顔面蒼白としか言い表しようがなかった顔に、赤みが差す。

 

 

「うえへ……えへ、えへへ、えへ、こわくなぁ~い……❤」

 

 

 とろ~ん、と。

 

 それはまるで、冷え切った身体を熱い湯船に肩まで浸したかのような……それはそれは、幸せそうな顔をしていた。

 

 

「えへへ、へへ、なんだぁ、みんなそこにいたんだぁ……さみしかったよぉ、もう、置いてかないでよぉ……」

 

 

 額に浮かんだ玉の汗をそのままに。

 

 いくつもの涙が流れ。

 

 鼻水を垂らし。

 

 唇の端から涎がしたたり。

 

 それが、首筋にまで伝っているというのに、欠片も気にした……いや、気付いていないのだろう。

 

 何故なら、悪女千賀子の心は此処にはいないから。

 

 今はもう無くなった、幸せだったあの頃にいる。それを、いったい誰が呼び寄せる権利があるというのか。

 

 

「……ど、どうしよう?」

「ど、どうすると言われても……」

「還暦だからって、分からないモノはあるのよ?」

 

 

 少なくとも、巫女・女王・魔性の3人と、分身たち(あと、ロボ子も)は……それをする気にはなれなかった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………なお、そんな地獄の底のような空気の中で。

 

 

 ──(=^ω^=)キョウモイトシゴカワイイヤッター

 

 

 女神様だけは、通常運転であった。

 

 

 

 







千賀子「ロボ子、なんとかしろ(懇願)」
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