ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
※ 千賀子バース的な話は今回でひとまず終わり
微妙にセンシティブ? な要素あり
主役はあくまでも巫女千賀子なので……まあ、一部だけはたまに出たりします
──とりあえず、悪女千賀子は放置するとして。
「……そうね、単体では無理でも、私たちの力を束ねて掛け合わせたら、なんとかできるかもしれないわね」
本題である、『地球内部に潜伏しているΩをどうするか?』という難題に対して、改めて話を聞いた女王千賀子より、そんな感想が出た。
詳しく話を聞くと、だ。
現状、『女王』が取得している能力でも、『魔性』が取得している能力でも、そんな場所にいるΩをどうこうする事はできない。
同様に、『悪女』も。
まあ、悪女千賀子の方はそもそも『お薬』が効いている間はまともに応答できないので、能力の確認のしようがないけど。
それで、束ねるというのは、だ。
別世界の千賀子たち自身を増幅器とし、その増幅したパワーを使って、巫女千賀子が神通力にてΩを完全に破壊する……というものだ。
女王と魔性にも微弱ながら神通力を持っているらしいが、巫女のように持続的な使用はできず、出力も桁違いに弱い。
しかし、別世界とはいえ、根本が同一の存在。その身に宿る『力』の性質こそ違うが、根本的な部分は同じ『力』である。
例えるなら、色や形状が違うだけの、同じオイルライター(あるいは、ガスライター?)みたいなものだ。
どれだけ見た目が複雑な仕組みになろうとも、燃料は同じ。
一つ一つはちっぽけな火でも、数百個、数千個、数万個の燃料を掻き集めて着火すれば、家一つを吹っ飛ばすだけのパワーになる。
……そういった事が可能な『巫女』のジョブを持つ千賀子が中心になれたのは、ある意味、不幸中の幸いであった。
もしも、呼ばれたのが巫女千賀子だったならば……あるいは、そういった能力を持たない千賀子だったならば、この作戦は取れなかっただろうから。
「……だいたいの作戦はわかった」
そうして、全体の流れを確認し終えた千賀子は……いや、だが、同時に、どうしても考えずにはいられない不安を口にした。
「それで、さ」
「うん?」
「呼び寄せた別世界の私が、『悪女』の私よりも悲惨な人生を送っていた場合……どうしようか?」
「…………」
「…………」
「…………その時は、その時で考えましょう」
「あ、はい……」
結果はまあ、やってみてから考えろという、行き当たりばったり戦法であった。
……。
……。
…………で、だ。
とくに時間を掛ける必要もないし、対処はできる限り早い方が良い……ということで。
さすがに室内は狭く、あと、えへえへと笑いながら失禁している(寸でのところで、ロボ子が対処した)悪女千賀子を安静にさせつつ……境内へと場所を移す。
そして、さっそく『来たれ、わたし!』にて50人ほど、別世界の千賀子を呼び寄せたわけ……なのだが。
「こうして見ると、我ながら多種多様ね」
幸いにも能力による呼び出しなので説明する前に、自分がどういう状態なのかを理解しているようで、同じ千賀子同士でも喧嘩が起こる気配はない。
各自が、チラホラ自己紹介を始めている。やはり、自分が置かれた状況が分かった分だけ、周りの、己とは違う自分が気になるのだろう。
そんな、改めて対面する形になった別世界の自分たちを前に、千賀子は正直なところ、そんな感想しか出てこなかった。
なにせ、見た目からしてけっこう違いがある。
顔立ちこそ基本ベースは同じだが、得ているジョブや、今に至るまでの過程や経験が違うからだろうか。
ほんわかした雰囲気な者も居れば、背後に立った瞬間にナイフを抜いてくる……そんな者もいる。
中には、『姉妹……?』と思ってしまうぐらいな人も、分かりやすい者だと、身長が190cm近い千賀子も……いや、待て。
「……え、あの……成人、しているよね?」
そんな中で、なんと身長が140cm前後……具体的には、小学生にしか見えない風貌の子が居て、思わず千賀子は尋ねた。
服装からして、小学生にしか見えない……というのは、見えなくもない、程度の話ではない。誇張抜きで、本当に少女にしか見えないのだ。
しかも、ただの小学生ではない。
それはまるで、何時ぞやの……そう、以前、千賀子の分身がそうなったような、今の千賀子の『魅力』をもったまま幼く……まあ、はっきり言うと。
こんな美少女がこの世に存在するのか……そう思ってしまうような、なんとも言い表し難い色気を放っていた。
千賀子の目を持ってしても、そのようにしか見えないのだから、一般人の目には……それはもう、悪魔的と評価しても過言ではない、人を惑わす色気を放つ美少女にしか見えなかった。
「……そうね、こう見えて成人しているわよ。ただ、ジョブの影響でこんな見た目になっちゃってね」
くわえて、返事をしたその声すらも軽やかで、思わず心が浮き立ってしまうかのような……そんな愛らしさが滲んでいた。
「ちなみに、どんなの?」
「『
「え!? 人外に──っていうか、400歳!?」
「そうよ。まあ、最初の頃は自分の子供と、みんなを見送ってから私も後を追うつもりだったけど……色々と情が湧いちゃってね。気付けば、こんなに長生きよ」
そう、微笑む姿は……確かに、長き年月を感じさせる、そんな雰囲気を醸し出していた。
「……寂しくないの?」
思わず、千賀子は失礼を承知で尋ねる。
「寂しいわ、とっても。でも、思い出が温めてくれる」
けれども、吸血千賀子の笑みには寂しさの他に……確かな温もりが、そこにはあった
「皮肉な話よ。人の寿命を超えた分だけ、いつまでも鮮明に思い出せる。その思い出と、変わりゆく今、この2つを眺めていると……ふふ、1年なんてあっという間よ」
「そう、なんだ」
「もちろん、時にはハッキリと温もりが欲しい時はある。そういう時は……ふふふ、この世界にはいるのかしらね」
そう、誰に言うでもなく呟いた吸血千賀子は、キョロキョロと辺りを見回すと……ペラッと、己のスカートをめくってパンツを露わにした。
瞬間、吸血千賀子はポーンと地を蹴って尻餅をついた──いや、違う。
吸血千賀子の尻に潰されたのは、いつの間にか仰向けでパンツを覗いていた──何時ぞやの『始祖の花子』であり、潰された瞬間、花子の身体がビクンと跳ねた。
「この世界の私はたぶんそうじゃないと思うけど、私が居た世界だと、この子とはひと月に2,3回ぐらい温もりを分け合う仲なの」
「え?」
「お互いを隅々まで……まあ、そういう仲ってこと。さすがに、もう自分の子供を見送りたくないし、普通の人を相手にするわけにはいかないしね」
「お、おう……すごいっすね」
世界が変われば、
未来は無限に広がっているとは誰の言葉だったか。
たぶん、前世で聞いた言葉だったが、それをこんな形で我が事のように実感する日が来るとは……一つ頷いた千賀子は、改めて別世界の自分たちを見回し……こっそり、安堵の溜め息を零した。
とりあえず、悪女千賀子より悲惨な人生を送っている己はいないぞ……と。
『──はい、どうぞ』
スッ、と。
横から差し出されたダーツと、差し出して来た女神様を見上げ。
「え?」
思わず、千賀子は目を瞬かせた。
流れ的には、このまま時間経過のアイキャッチと、勝利確定BGMとかが流れて、『Ω』も無事に倒せて、そのままエンディングが流れてこの話はお終い……みたいな感じだったのだが。
『──あと、1回分ありますので、さあ』
「え、いや、別にもう解決しそうな感じだし……」
『──さあ、どうぞ』
「……あ~、その~」
チラッ、と。
視線を周囲に向ければ……アア、なんという事か!
50人もいる別世界の自分たち全員が、一斉に顔を逸らしている。
今しがた、朗らかに会話をしていた吸血千賀子ですら、素知らぬ顔で人混みの中へ逃げて行っている。
おお、なんという終末!
神よ、救いはないのですか!?
……。
……。
…………やはり、逃げられないようだ。
一つ、溜め息を零した千賀子は……固唾を呑んで見守る薄情者たちの視線を一身に受けながら、眼前にて回転を続けているルーレットに向かって……ダーツを放った。
『UR:意図せぬハプニング(New)』
要約: 愛し子を含め、周囲の者を巻き込んでナニカが起こる時がある。忘れた頃に突然起こる、ほのぼのとした自動発動系です。
すると、能力名からして災厄を予感させる、ヤベーのが当たった。
いや、もう、説明する必要が欠片もないぐらいのアレだ。しかも、身構えている時ではなく、この能力の事を忘れた頃に突然起こるとか……え、これデバフ系じゃない?
(救いは、最後辺りの記述にある、『ほのぼのとした』という部分……いや、女神様の言う『ほのぼの』が、本当にそうであった事があっただろうか……いや、無い!)
これは……とりあえず、そういう事が起こると頭の片隅にでも入れておくしかない……と、思っていると。
「……あ~、あんたもソレを引いたのか」
なんと言い表せば良いのか、強いて挙げるなら『ボーイッシュ千賀子』といった感じの風貌の、短髪で日焼けした千賀子が話し掛けてきた。
「え、これってヤバイの?」
「ヤバいと言えばヤバい……私の時は、それでセックスの初体験になった」
「はい?」
「説明が難しいんだが……とりあえず、起こった事をそのまま言うとだな」
本当に説明が難しいのか、ボーイッシュ千賀子は顔をしかめながら、う~んと頭を悩ませた後で、教えてくれた。
──まず、前提として、その時のボーイッシュ千賀子には付き合っている彼氏(現・旦那)が居て、まだ肉体関係は無かったらしい。
で、どちらも奥手な方で、最後の1歩を踏み出せずにいると……その時、この『UR:意図せぬハプニング』が発動したらしく。
そこからはまあ、ボーイッシュ千賀子曰く、文字に起こすと出来の悪いAVというか、ギャグ漫画みたいな流れだったらしいのだが。
1.夏の時期、どういうわけか、彼氏の下に超効果がある謎の媚薬(中身は液体)が届く。どういうルートかは不明。
2.彼氏はそれを不審に思ってゴミに出したわけだが、たまたまゴミ泥棒がそれを拝借……からの、置き忘れ。
3.それを見付けた子供が遊び半分で持ち去り、公園へ。そこの水場で瓶を洗ったわけだが、遊びに夢中になってベンチに放置する。
4.たまたま通りがかったラベル職人が、ムラッと職人魂に火を点けて、既存のジュースのラベルへと張り替え&デコレーション。
5.たまたま通りかかった彼氏の妹が、ベンチで休憩。そこへ、満足して放置されたソレを、また別の子供が悪戯で、その妹のカバンに入れる。
6.妹は気付かず持ち帰り、自宅にて買った覚えのないジュースがあることに困惑。気味が悪かったが、有名なラベルなので、捨てるのがもったいなくて冷蔵庫へ。
7.やってきたボーイッシュ千賀子と彼氏。彼氏は千賀子をもてなすために冷蔵庫へ……そこで、見慣れぬけど見覚えはあるジュースを振る舞う。
8.後は……わかるね?
という、最初から最後までツッコみどころしかない流れで初体験となったらしい。
ボーイッシュ千賀子曰く、『まあ、お互いにキッカケが欲しかったから、怒るに怒れない部分もあってな……』とのこと。
……おそらくの話だが、『ほのぼの』のあたりだ。
その部分のおかげで、最悪千賀子の望まない(いわゆる、レイプとか……)結果にはならないのだろう……けど。
「……なんだろう。女神様のやる事なす事に比べたら、『Ω』ぐらいどうってことない問題に思えてくる」
「……ノーコメント」
そう、顔を逸らしたまま答えたボーイッシュ千賀子に、千賀子はなんだかズシンと肩に疲労が圧し掛かったような感覚を覚えたのであった。
──さて、その後の
まず、『Ω』だが……女王千賀子からの提案によって行われた、巫女千賀子を主軸とした、別世界の千賀子を増幅器にして行う巫女的超能力による対応だが、思いの外、事が上手く運んだ。
別世界とはいえ、同じ千賀子だからだろうか。
あるいは、『来たれ! わたし!』によって、境内どころか山中へと広がるしかないぐらいに呼び寄せたおかげだろか。
増幅もそうだが、増幅した『力』のコントロールも実にスムーズに行われ、あっという間に『Ω』の完全な破壊が完了された。
1年後には人類絶滅必至な問題が、作戦を開始してから30分ほどで終わったのだ。
例えるなら、全24話かけて行われる人類の存亡を賭けた戦いだったはずが、蓋を開けたらダラダラ日常話やラブコメ話やら策略話に22話ぐらい注ぎ込み、最終話でサラッとラスボスが倒されて終わった……みたいな感じだろうか。
拍子抜け……そう、あまりにも、拍子抜けというやつだ。
それはもう、作戦を発案した女王千賀子からも、『いや、まさか、こんなにあっさり解決するとは……』といった感想がこぼれたぐらいで、なんとも言えない空気が千賀子たちの間に流れた。
……でもまあ、うん。
千賀子たちの気持ちを他所に、危機は去ったのだ。それも、千賀子たちを除けば誰一人として、その危機を知らないままに。
思うところはあるが、無駄に不安を覚えてもらうぐらいならば、それが一番だろうと千賀子たちは納得したのであった。
さすがに、『放置すると1年後には地球上の大陸が全部沈むんで……』なんて話は総理にもしていないから、本当に、人類の危機は人知れず解決されたわけであった。
……。
……。
…………で、だ。
そんな流れで、『来たれ! わたし!』を解除し、本来ならば出会うことのない、別世界の自分とのお別れを終えた千賀子……だったのだが。
「……なんで?」
そこで、話は終わらなかった。
いったいなにが……その原因は、千賀子の眼下……布団の上で、『不安が紛れる薬』の反動なのか、ボーっとした顔で唇の端から涎を垂らしたままの悪女千賀子である。
……なんで、まだ残っているのだろうか?
しかも、この悪女千賀子……巫女的シックスセンスによって分かったことなのだが、どうやら本体っぽいのだ。
そう、余剰エネルギーが具現化したやつではない。
悪女千賀子がいた世界から、いつの間にか悪女千賀子の本体がやってきていて……つまり、千賀子が呼び寄せたソレと同化した形で、こっちの世界に来ているのだ。
……いや、もう、これ、どういう事なのだろうか?
とりあえず、ロボ子に聞いてみる。
しかし、ロボ子は千賀子から指摘されるまで本体に成っている事に気付いていなかったようで、『え? え? ……えぇ!?』といった様子で本気で驚いていた。
なお、分身たちは『なんか気配が濃くなった?』という程度の認識だったらしい……で、だ。
「女神様、なんで?」
『──『悪女』ですから』
「説明になってないよ、女神様」
『──そう言われましても、『悪女』ですし』
「う~ん、この……まあ、調べたらわかるか」
とりあえず、どのような理由でそうなったのかを把握しておこうと、千賀子は……正直、探りたくはないけど、悪女千賀子の能力を巫女的シックスセンスで──。
「…………(絶句)」
──探ってすぐ、千賀子は言葉を失くした。
あまりにも酷すぎる、これまで悪女千賀子が辿って来た道を見てしまい、千賀子はしばし唇をパクパクと震わせることしかできなかった。
それは、千賀子が想像していたよりもはるかに『悪女』が持つ能力がえげつないというか、なんというか。
有り体に言えば……『悪女千賀子』というやつは、だ。
何をやっても不幸に見舞われず、不思議と周りが責任を背負い、のらりくらりと危険から遠ざかり、実を得る……そういった類の恩恵を多々受けているようなのだが。
(……分身たちよ)
(あら、わざわざ念話?)
(何も言わず聞いて、想像してみてほしい)
(なによ、改まって)
(いいから……いいね、伝えるよ)
とてもではないが、衝撃が強過ぎて己1人ではどうにもできなかった千賀子は、『同期』させる気にもならず、己が見た者を念話で伝えた。
(仮に、そう、仮に、だ)
(自分の何気ない行動や選択が、自分の生死の境を分ける決め手になる大事故や大事件に見舞われた際に)
(その選択が、全て己の能力によって、己だけは助かる様な結果を意識せずとも強制的に引き寄せるのだけれども)
(たとえば……そう、たとえば、道路を歩く時に、何気なく右側じゃなくて左側へ無意識に移動した、その結果)
(本来ならば、己が轢かれる位置に友人が移動して、結果的に己だけは無傷に助かるとか)
(本来ならば、己がそこへ行って死ぬはずだったのに、たまたま事故で己が遅れた結果、友人が代わりいそこで死ぬとか)
(そんな結果を……しかも、自死しようにも、様々な偶然が重なって実行できず、代わりに違う人が死亡するとか)
(それを、悪女千賀子は……そうだ)
(目の前で……そう、小学生の時からの友人が、機銃によって蜂の巣になって……しかも、その身体が盾になって、己自身には奇跡的に弾丸が逸れて無傷とか……うん)
──もしも、己がそうなったら……はたして、罪悪感で壊れてしまうのではないだろうか。
そう、念話で尋ねた千賀子だが……当然ながら、分身たちからの返答はなかったのであった。