ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ 万博開催したので、最後あたりにちょろっとセンシティブを。(注意)


第153話: とあるUR「――今です!」(ラッキースケベ)

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 一昔前の不良(いわゆる、ヤンキー)と呼ばれた者たちの象徴、こぞってこしらえた髪型に、『リーゼント』というものがある。

 

 これ一つとっても実はけっこう種類があるらしいのだが、この始まりは、これまた実のところ、かなり前だったりする。

 

 発祥は、イギリス。当時、リーゼントは紳士の髪型として流行していた。

 

 見た目も、現代人が想像するようなサイドの髪を後方へ撫で伸ばしたり切れ込みを入れたりといったモノとは違い、いわゆるメンズの七三横分けヘアーみたいな髪型が、それであった。

 

 意外にも、戦前の外国もそうだし、太平洋戦争が始まる前にはもう日本に上陸し、富裕層の間で流行した髪型である。

 

 なんで富裕層なのかって、それは髪のセットに使うポマードが高く、当時の一般家庭では維持するだけでもかなり懐が寒くなってしまうからである。

 

 しかし、太平洋戦争が始まったことで贅沢が禁じられたことで、日本では一時的だがリーゼントが消えた。

 

 それは戦時中のアメリカとて例外ではなく、アメリカでもまた日本まではいかなくとも、『勝つまでは我慢!』という節約を強いられていた。

 

 それに対して、貧しい若者たちが中心となって強く反発した。

 

 あえて生地をタップリ使った衣服を身に纏うことで反抗心を示し、現代人がイメージする『リーゼント』スタイル(ソフトタイプ)が広がり始めたのも、この時期らしい。

 

 ちなみに、『イギリス式のリーゼント』と『アメリカ式のリーゼント』とでは名称が違うのだが、今は横に置いておこう。

 

 

 そう、リーゼントのように(女神ギャグ)。

 

 

 これによって、イギリス紳士のヘアスタイルだったリーゼントが、アメリカではアウトローを象徴する髪型へと人々の意識がシフトしていった。

 

 そして、戦後の日本には多くのアメリカ文化が流れ込んできた……そう、皆様の想像通り、この時流れ込んだのが、アメリカ式のリーゼントである。

 

 そこから50年代、60年代、70年代と、時の流れに合わせて様々な文化や流行、独自スタイルの追求によって形を変え。

 

 現代人がイメージする、パーマを当てたリーゼントスタイルが日本に広がったのは1980年代に入ってからで。

 

 1975年頃の日本ではまだ、『リーゼント=不良&非行』のイメージよりも、ロックバンドをやっている者……というイメージが強か──え? 

 

 

 ──そもそも、この頃はロックバンド=不良&非行のイメージが強かったのではないかって? 

 

 

 なんとも勘の良いガキは案件だが、細かい事を気にするとリーゼントをする髪が無くなるので、そこらへんは置いといて、だ。

 

 とにかく、日本においてリーゼントが最も流行った時期は80年代に入ってからであり。

 

 1975年頃はまだロングヘア……いわゆる、ロン毛(ロングな毛、の略)の全盛期であり、全体としてはお洒落で流行りな髪型と言えばロン毛(男女問わず)と思っている人が多かった。

 

 

 ──そう、この頃流行りなナウでヤングなお洒落ヘアと言えば、ロン毛であった。

 

 

 ちなみに、ロン毛の流行には波があり、1970年代が第一次ロン毛ブームであり、第二次は1990年代頃だったりする……さて、話を戻して、だ。

 

 

「お兄ちゃん、相談があります」

 

 

 ──場所は、とある酒屋。飲食の酒屋ではなく、酒を売る酒屋の方。

 

 具体的には、兄の和広が実質的に入り婿(?)みたいな形で働いているところで、普通にフラッと千賀子がやってきた……ん? 

 

 兼業って、和広は音楽で食っているのではないのかって? 

 

 それがまあ、時代の流れというか、環境の変化というか、心境の変化というか、保守的になったというか。

 

 実は、少し前から和広は、音楽関係の仕事を少し減らし、妻の実家の仕事を学び始めたのである。

 

 子供ができて一児の父になったことで、『万が一にも俺が身体を壊したら、誰がこいつらを……』という意識が芽生えたから、らしい。

 

 まあ、和広がそう思うのも無理はない。

 

 現代でも、売れっ子になるために無茶なスケジュールをこなす駆け出しは多いが、この頃の駆け出しは文字通り命を削りに削っている者が多かった。

 

 いや、というか、駆け出しだけではない。

 

 この頃の売れっ子、そこまでは行かなくとも、これからドンドン名を売ってファンを増やして……という時の無茶な働き方は、とんでもなく過酷である。

 

 寝る間も惜しんでというは誇張でもなんでもなく、家に帰るのは2,3カ月に一回とか、マネージャーなどが着替えなどを取りに向かうとか、それぐらい。

 

 あまりにも帰らなさすぎて、『もう引っ越したのかと思って……』と、家主が連絡を入れて来るぐらいに、とにかく忙しい。

 

 実際、1980年代に売れっ子だった女性タレントだが、こんな話がある。

 

 そのあまりの多忙ぶりに仕事以外の過ごし方を完全に忘れてしまい、マネージャーが一生懸命調整して空けてくれた3ヵ月ぶりの休暇だというのに、『何をしたら良いのか分からず、ず~っとソファーに座ったまま終わらせてしまった』という話だ。

 

 このタレントは特に忙しかったからなのもあるが、この頃は特に『他が休んでいる時にこそ動かないでどうする!』という意識が非常に強かった。

 

 なにせ、労働基準なんて言葉すら知らない者が大半な時代で、その中でも特に朝も昼も夜も関係ない業界が、和広が乗り込んだ音楽業界だ。

 

 売れる売れない以前に、身体を壊してしまって離れていく者が多いばかりか、そんな人たちへ『根性無し』だとか『情けない』だとか言われていた時代でもある。

 

 千賀子から、『マジで身体を労わらないと、年内に死ぬよ? (意訳)』と言われたのも決め手となり、少しばかりブレーキを踏むようになったわけである。

 

 

 ……まあ、もっとも。

 

 

 和広自身、心境の変化からか、夢を叶えた反動からか、あるいは才能の限界を感じ始めたのか。

 

 とにかく、デビューを目指していた頃のような熱意に陰りが出てきているらしく、引き際を見て引退するかもしれない……が、それはそれとして、だ。

 

 

「……俺が言うのもなんだが、先に電話ぐらいしたらどうだ?」

「今日の、この時間帯なら居るような気がしたので。ちょうど、客が少ない時間も選んだよ」

「はあ、まったく……」

 

 

 久しぶりに妹の顔を見た和広は、義父と妻に声を掛けてから店の奥へ……行き先は、居住スペースだ。

 

 他人の家は、他人の空気が流れている。

 

 すっかり、兄の臭いも同化している。

 

 そんな兄の手で淹れられたお茶を一口啜った千賀子は、明美から受けた相談を、そのまま兄にも行い……率直に、尋ねた。

 

 

「やっぱり、殴って止めさせた方が良いかな?」

「マテまて待て、前から思っていたが、お前はどうも性急すぎるぞ」

「そうかな?」

「そうだよ」

「でも、これが一番手っ取り早いでしょ」

「そりゃあそうだけど、段階を踏めよ」

 

 

 対して、和広の返答は『No!』であった。

 

 残念ながら、これに関してはほぼ100%和広の意見が正しい。

 

 相手が実の家族ならばともかく、友人とはいえ、初手の対応が『殴って矯正』とか、脳筋対応にも程がある。

 

 

「そうは言うけどさ……たとえばだけど、お兄ちゃんも髪型をリーゼントにしているよね? ちょっと前はロン毛だったのに」

「ん? まあな。でも、これはちょっとでも他と区別付けられやすいようにと思って、この髪型にしているだけだぞ」

「髪型の目的は、ひとまず横に置いといて……私がその髪型を止めろと言ったら、お兄ちゃんは止める?」

 

 

 言われて、和広は……セットした髪型を指先で確認しながら……おもむろに首を横に振った。

 

 

「どうして?」

「どうしてって、そりゃあ仕事だからな。見た目のイメージもあるし、そう気軽に髪型は変えられんぞ」

「じゃあ、髪型変えなかったらボコボコにするって言ったら?」

「マテまて待て、だから性急すぎると言っておろうが……」

「でも、それ以外の方法がないでしょ。私が業界最大手のスポンサーとかで、『その髪型直さないとスポンサー下りるよ』、とか」

「待て」

「他には、私が国家権力を持っていて、直さないと問答無用で逮捕するよ』ぐらいしか、拳を使わない説得の方法が思いつかないのだけど」

「待てって、いや、いやいや、他にあるだろ……!!」

「たとえば?」

「たとえば……ほら、色々と……」

 

 

 尋ねられて、しばし考えた和広だが……何も思い浮かばなかったことに、けっこう分かりやすく愕然《がくぜん》とした。

 

 そう、そうなのだ。

 

 言葉だけで反省する相手ならば、そもそも初めからそういう事はしない。当の和広だって、反省して立ち直るまで、大勢の人達に迷惑を掛けたのだ。

 

 千賀子の脳筋理論が意外と的を得ていることを理解しているから、和広だって何も言えなくなるわけで……悲しいかな、現実は暴力を必要とする時がある、ということだ。

 

 

「──とりあえず、何も1から10まで矯正するって話じゃないの。ただ、本気で目指すならともかく、逃避の一つとして音楽にのめり込むのは駄目って話なんだよ」

 

 

 それを、ちゃんと理解してくれたことにちょっと機嫌が良くなった千賀子は、あえてキッパリと意見を述べた。

 

 

「お兄ちゃんもさ、音楽の世界に行こうって決めた時、何かあってもなんとかなるように、見習いで働いたでしょ?」

「え、あ、うん……そっちの道には行かなかったけどな」

「でも、お金を貯めたり、練習したり、着々と準備を始めていたわけで、勉強だって後からちゃんとコツコツやっていたでしょ?」

「まあ、な。覚えておいて、損はねえし」

「明美からすれば、学校とか勉強が嫌になった先で音楽に~ってのが、引っ掛かるみたい。ぶっちゃけると、中途半端にやるぐらいなら勉強しておけってことね」

「千賀子の友達なだけあって、身も蓋もねえな……」

 

 

 あまりな物言いに頬を引きつらせて戦々恐々な様子を見せている和広……だが、そこでふと、和広は不安そうに首を傾げた。

 

 

「ところで、その明美ちゃんの弟さん? いちおう聞いておくけど、『カミナリ族』とか『サーキット族』とかに入っているわけじゃねえよな?」

「え? いや、さすがにそこまでは……あれ? どうだろう? もしかして、明美もそこまで把握していないのかもしれない」

 

 

 言われて、始めてそこが不明なままである事に気付いた千賀子は、同じく首を傾げた。

 

 

 ──カミナリ族・サーキット族というのは、要は『暴走族』の昭和の名称である。

 

 

 実は、暴走族という名が生まれたのは、1970年代半ばになってからで、それまでは『カミナリ族』、『ナナハン族』、『サーキット族』、あるいは『ドリフト族』と呼ばれていた。

 

 名称の由来は、雷のように激しい爆音をたてたり、一般道をサーキットコースのように猛スピードで走り抜けたり、あるいは排気量の大きいバイク(750cc)などから。

 

 後に、全てをひっくるめて『暴走族』という名で定着するわけだが……で、だ。

 

 どうして、暴走族に参加しているかどうかを和広が不安視するのか……それはひとえに、この頃の『暴走族』への印象はとてつもなく悪かったからだ。

 

 ……いや、まあ、暴走族への印象が良かった時期は一度として無いのだが……とはいえ、それを抜きにしても、とんでもなく印象は悪かった。

 

 ただの不良とはワケが違う。

 

 ヤクザ……とまではいかなくとも、準ヤクザとして見られる事は多く、実際にヤクザと繋がっている暴走族グループも多かった。

 

 それに、窃盗、婦女暴行、恐喝、その他諸々、毎月死傷者が出るような事件を起こしたり発覚したり、警察の対応も日を追うごとに厳しくなっていった時期でもある。

 

 

「いちおう、確認しといた方が良いぞ。警察も、ただの不良学生と、暴走族所属とでは、扱いがまったく違うからな」

「ふ~ん、そっか……ありがとう、ちょっと確認してくるね」

「ん? もう行くのか? もうちょっとゆっくりして行っても良いんだぞ」

「気持ちだけ受け取っていくよ。こういうのは早い方が良いし、またね」

「おう、それじゃあな」

 

 

 心配そうな和広の様子に、これは早めに確認した方が良いかもと思い至った千賀子は、お礼を述べてから、酒屋を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、だ。

 

 

 そうして、確認のために明美の家へ向かった、その時……なんと、タイミング良く件の人物である、明美の弟……明くんが、自宅から出てくるところだった。

 

 これまで不思議とタイミングが合わず、顔を見るのは本当に久しぶりだが……なるほど、記憶の中にある『明くん』とは様変わりしていた。

 

 事前に話を聞いていたとおりだが、まあ、成長期なのだから当たり前だ。

 

 背はもう千賀子よりも高く、髪型はリーゼント。

 

 なるほど、なるほど、ロックバンド志望というだけあって、見た目はもうロックバンドをやっていそうな雰囲気がある。

 

 けれども、だ。

 

 

(……全体的に細いなあ)

 

 

 率直な千賀子の感想が、ソレである。

 

 たしかに、背は伸びている。体格も男のソレで、大人とまではいかなくとも、千賀子が見下ろしていた頃の『明くん』ではなくなっている。

 

 しかし、細い。華奢というわけではないが、背丈の成長に比べて、身体の方が追い付いていない。

 

 まあ、それも仕方ない。それも、成長期だ……っと。

 

 

「──あっ」

 

 

 何気なく、千賀子と視線がかち合った──瞬間、明くんは傍目にも分かるぐらいに大きく舌打ちをすると、荒々しく千賀子の隣を通ってどこかへ──。

 

 

「うっあっ!?」

 

 

 ──行こうと、したのだろう。

 

 その瞬間、地面が濡れているわけでもないのに、明くんは芸術的な滑り方をした。それはもう、コント映画のように、ツルンと足が滑る音がしたと錯覚したぐらいに。

 

 若いとはいえ、さすがに想定外過ぎたのか、明くんは転倒こそしなかったものの、たたらを踏んで──そのまま、千賀子の胸へとダイレクトエントリーをしたのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、ここで状況を改めて説明しよう。

 

 

 まず、千賀子はいつもの巫女服である。そして、着ている下着は、ガチャで手に入れたモノである。

 

 そう、この頃の技術はおろか、現代技術(千賀子の前世)をもってしても、再現不可能な着心地と触り心地の、巫女服と下着だ。

 

 着ている当人はちゃんと装着していてキッチリ押さえられているのが分かるのに、外から触ると、まるで何も着ていないかのような……まあ、つまり、だ。

 

 

 ──もにゅん、と。

 

 

 明くんは、それこそ薄い布一枚越しに、Kカップの谷間に顔を埋めたも同然な状態になったわけだ。

 

 その柔らかさは、おそらく言葉では説明できなかっただろう。

 

 しかも、いくら『神通力』で抑えているとはいえ、さすがに服と下着で抑えられた体臭いや女体の香りは、相当なモノで。

 

 

「……──~~!!??!?!」

 

 

 状況に思い至った明くんは、遠目にも分かるぐらいに顔どころか首筋まで紅潮させると、「ちょ、あの、ご、ごめん!!」それはもう慌てふためいた様子で離れると、どこかへ走って行ってしまったのであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………後に残された、千賀子は。

 

 

「URの『意図せぬハプニング』って、こういうことか……!!」

 

 

 明くんに、悪い事をしたなあ……と、己の不用心さにちょっと反省するのであった。

 

 

 

 





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