ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ 悪女千賀子の話は別個にまとめますので、これまでの悪女話も削除します。
 なので、これを読んでいる時点でもう無いです


第154話: 千賀子は何事も形から入る方

 

 

 さて、改めて語るのもなんだが、後に暴走族と呼ばれるようになる集団が70年代以降増加した理由は、当時の未成年を取り巻く環境に起因していたという説がある。

 

 

 一言でいえば、この頃の学校教育というのは、『管理教育』。

 

 

 つまり、1から10まで生徒は教師の指示に従い、従わない者は落第点を与え、時には合法的に暴力による躾……すなわち体罰も許される……というものだ。

 

 もちろん、全てが全てそうではないし、法的に暴力が許可されていたわけではない。

 

 だが、この頃の学校はある種の聖域であり、よほど理不尽な行いではない限り、『罰を受けた生徒の方が悪い』という前提の意識があった。

 

 怒られるのであれば、怒られるだけの悪さをしたのだから、反省しなさい……という、なんとも一方的な話である。

 

 ただ、これに関しては、未成年の犯罪が年々増加傾向にあったことへの反動によるのもあるが……まあ、横に置いておこう。

 

 いちおう、生徒の方に正当な理由があれば、大半の教師はそこで終わらせていた。だが、そうではない教師も相応に多かったのだ。

 

 たとえば、よく言われたのが髪だ。

 

 人によっては先天的な体質の関係から、うっすら茶髪に見える子もいたが、管理教育の名の下に、『髪の色は黒、例外は認めない!』というのがまかり通っていた。

 

 同様に、髪の長さや髪型も細かく言われていた。

 

 流行りのロン毛も、教師(あるいは、学校)によっては『学生のうちで、色気づくな!』と短く切るよう強制するところもあった。

 

 同様に、制服に関しても細かく指定しているところが多かった。

 

 男子の場合はボタンや袖の長さ、改造していないかなど。

 

 女子の場合は、スカートの長さ、靴下なんかも言われた。

 

 兎にも角にも、余計な事は考えず勉強して、教師の指示に従い、おとなしくしておけ……というのが、この頃の教育のやり方だったのだ。

 

 当時の空気の中で実際に学生だった者にしか分からない、その窮屈さ、言葉には言い表せられない閉塞感が、少なからず引き金になってしまったのは、けして否定できない話であった。

 

 

「ヨシッ! 難しい事は考えず、殴って言う事を聞かせよう!」

「本体の私? もう少し良く考えたら?」

 

 

 とまあ、そんな前置きは別として、だ。

 

 あの後、明美と顔合わせをして、ちょろっと雑談をして……ひとまず、暴力団には入っていないから、殴ってでも反省させてよいとの許可が下りた。

 

 なんでも、一度明美の方から力づくでなんとかしようとしたらしいのだが、突き飛ばされて返り討ちにあったらしい。ちなみに、明はすぐに逃げたとか。

 

 明美としては、だ。

 

 その時にとても傷付いた顔……いや、痛いのは明美の方だけど、とにかく、明美からしたら、やった明の方がよほど辛い顔をしたのを見て、これはまだ引き戻せるかも……と、思ったらしい。

 

 実に、変な話でしょ……その時の明美は、そう言った。

 

 痛いのは明美の方だし、傷付いたのだって明美の方だし、辛い思いをしたのは明美の方だが……それでもまあ、明よりはマシかなと明美は思ったらしいのだ。

 

 実際、それを語った時の明美の顔も、言葉とは裏腹に、ちょっとばかり嬉しそうというか、申し訳なさそうな顔をしていた。

 

 

『……なんというかね、アレはたぶん、あの子自身がどうしたら良いのか分からなくなっているのでは……って思うわけよ』

 

 

 そう話していた明美は……ほんのり赤くなって痣になっている、ぶつけた場所を軽く摩りながら、苦笑していた。

 

 

『思春期ってやつ? それとも、反抗期? 私も昔はあんな感じだったのかな~って思うと、なんか怒るに怒れなくてさ』

『それに、今にして思うとさ……あの子が一番甘えた盛りの時には伊勢湾台風が来て、反抗期っぽいのが始まろうとした時に、銭湯が廃業になるかも~って騒動でしょ?』

 

『仕方がなかったとはいえ、あの子ってば要所で割りを食っているのよ』

 

『私の場合はさあ、色々あったけど、一番甘えられる時期に甘えさせてもらって、家の中で仕事っていう役割を与えてもらって、反抗期も程々にさせてもらった後だったわけ』

『それに比べたら、明のやつは……ぶっちゃけると放置されていたっていうか、放任されているのが多かったわけ。甘えて反抗しようとしても、私も、両親も、構っていられる余裕がなかったのよ』

『だから、あの子はこれまで良い子だったわけよ。私たちが、そういう子にしていたの。根は優しいから、どっちもアイツは我慢し続けてくれたの』

 

『それがさ、今になってようやく、不器用なりに甘えて反抗するようになったのよ』

 

『でも、甘え方も反抗の仕方もよく分からないのよ。今まで、させなかったから。だから、なんとなく悪い事、なんとなく自由な事、そんなイメージだけで、非行少年街道まっしぐら……なわけ』

『あの子自身に問題があるにしても、私たちにも問題があった。でも、私たちが動くと明のやつ、変に意地張って余計に拗れそうじゃない?』

『だから、こんな事をお願いするのも恥ずかしいんだけど……殴ってでもぶん投げてでも良いから、明のやつをちょっと立ち止まらせくれないかな?』

 

『そうしないと、もうあの子は何を言っても曲解しちゃうだろうし……』

 

 

 と、言うのが、だ。

 

 明美からの雑談&相談の中身であり、千賀子としても、親友の明美から菓子折りと共にお願いされたら、断るという選択肢はないのであった。

 

 

「なので、暴力に正当性があるのです!」

「……まあ、理屈は分かったけど、そんな急ぐ必要あるの?」

「甘いよ、2号。転がり落ちる時は、本当にあっさり転がるから。これに関しては、前世の同級生という実例があるから」

「そ、そう……」

 

 

 ──その実例だが、まあ、よくある話だ。

 

 

 それまで非行少年的なナニカでもなかったし、学業の成績も良かったのに、バイク好きの幼馴染に誘われて……そこから、夜の世界に入るのは早かった。

 

 チラホラと素行が悪くなり、学校に来る頻度も減り始め、退学こそしていなかったけど、気付けば卒業式でも見る事はなく、それっきりであった。

 

 ちなみに、その人。

 

 クラスでは上位カースト、周囲の覚えもよく、彼女も居て、順風満帆な日々を送っていたと思っていたのだが……最後は、薬物の所持(後に、使用したのが確認された)で捕まった。

 

 キッカケは、本当に些細な……それこそ、旧来の友人から極微量だけと誘われたところから、らしい。

 

 

 この話の結末は薬物だが、要は、場の空気なのだ。

 

 

 見付けた居場所で、一度でもそういう空気になってしまったら、よほど心が強くなければ断れない。

 

 そして、断れる強さがある者なら、こちらから手を伸ばさなくても自力で戻ってくる。

 

 そう、兄の和広が、そうであったように。

 

 けれども、誰も彼もがそんな強さを持っているわけではない。むしろ、居場所を失いたくないから係合してしまう人がほとんどだろう。

 

 だから、そうなる前に叩いてでも連れ戻すのだ。そのためならば、拳を使うことすら躊躇してはならない……というわけである。

 

 

「それで、どんな屁理屈でやるつもりなの?」

 

 

 そんなわけで、だ。

 

 改めて神社に戻った千賀子は、分身たちを前に宣言をしたわけだが、これまた当然ながら、分身たちからは『うわっ、本体が変な事しようとしている……』という感じの視線を向けられる事となった。

 

 まあ、当たり前と言えば、当たり前である。

 

 それは、事情が分からないからではない。『同期』によって、既に詳細は分かっている。

 

 分からないのは、なんでそこから『答え=殴る』という方程式が生まれるのか、という点だ。

 

 殴って言う事を聞かせるにしても、いきなり向かって殴り倒してとなれば、それはもう説得というか、ただの通り魔である。

 

 相手からしたら、姉の知り合いと顔を合わせた途端に『反省しなさい!』と怒られて殴られるようなものだ。

 

 理不尽を通り越して、頭のおかしい人と遭遇したような状況だろう。

 

 ましてや、その相手が姉の知り合いともなれば、明少年の精神にどれほどの衝撃をもたらすか……だからこそ、分身たちは理由を尋ねたのだ。

 

 

 ──暴力を振るうに値する屁理屈を、どうするのか、と。

 

 

 なにせ、今のところは明くんより何かしらの迷惑を被った事はない。さすがに、小学生の時に一緒に風呂に入った件を今更持ち出すのも、無理があり過ぎる。

 

 かといって、先日の……アレはまあどう見ても事故だし、なんなら千賀子(正確には、女神様だが)が悪い方ですらある。

 

 

「──考えはある」

「へえ、どんなの?」

「こういうのは、大人の理屈で動いては駄目。少年の理屈で動いているのならば、その理屈の中でぶっ叩かないと響かないんだよ」

 

 

 そんな、分身たちの視線を一身に受けた千賀子は……不敵に、笑うのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、小一時間後。

 

 

 なにやらロボ子以外は部屋を追い出され、『同期』もさせないで待機すること、しばらく。

 

 わざわざ『同期』させない理由は、ビックリさせたいから。なので、どうするつもりなのかは分身たちにもサッパリ分からない。

 

 そんな中で、なんでロボ子だけは例外かって、どうやら服を用意してもらうためらしい。

 

 そういう事ができるロボ子、一家に一台あれば本当に便利である。

 

 その間、特にする事もない(いつ呼ばれるか、分からないので)のでボケーッと境内を眺めるしかない2号と3号。

 

 最近は何やら泥遊びにハマっているエマが衣服まで泥だらけにしているのを、「洗うの大変だな~」、とぼやきながらも注意深く4号が見ていると。

 

 

『──ヨシ、準備できたから来て──いや、エマが泥んこになっているなら、私が行こう』

 

 

 千賀子より念話が届いた。4号の視点より、泥だらけのエマを見て察した千賀子が、スパン! と襖を開けて出てきた──。

 

 

「どうだ! まずは見た目でナメられないように、だよ!」

 

 

 ──その瞬間、分身たちはぽか~んと呆気に取られた。

 

 

 なんでか、それは……ひとえに、千賀子の恰好が……こう、一言でいえば、『The・暴走族』みたいなアレだったからだ。

 

 なにやらどことなく学生服を思わせる生地だが、色は真っ白。ただし、白い部分には、色々な漢字が書かれている。

 

 そう、漢字だ、珍妙なことに。

 

 しかも、注意して見ると、それは漢字の羅列でしかない。つまり、文章としては成り立たない漢字が羅列している。

 

 ズボンはまあ、いわゆるニッカポッカというやつに近い。これも色は白で、意味不明な漢字がこれでもかと羅列している。

 

 そう、いわゆる、『特攻服』というのが、一番見た目のイメージに近い……かもしれない。

 

 

「どうかな、これならば一目で一筋縄ではいかない……と、思われるよね?」

「そりゃあ、まあ……思われるでしょうけど……」

 

 

 後ろに髪を縛ってポニーテールにしている千賀子の姿を、上から下まで視線を往復させた2号は……おもむろに、サラシで覆われている胸の辺りで視線を止めた。

 

 

「そのデカいモノのせいで、怖いよりもそっちにばかり気を取られてしまうのではないかしら?」

「え?」

 

 

 思わず、ギクッと硬直する千賀子を尻目に、2号と3号が次々に感想……というにはいささか辛辣な評価を下す。

 

 

「ちょっと、本体の私さあ、横向いて……デッッッッッ!!! サラシの中にメロンでも入れているの? もっとキツク締めたら? サラシの意味ないでしょ」

「2号、アレは締めると苦しいから、神通力でピタッとそれとなく巻き付けているだけだよ。だから触ると……ほら、締め付けられていないから、ぷよぷよ柔らかズッシリっすわ」

 

「本当ね、3号。ご丁寧に、どれだけ触っても揺れても隙間なくピッタリとサラシが張り付いているから、御開帳なんてことにはならないけど……これ、青少年の目には毒でしょ」

「しかも、なにコレ……サラシとか言いつつ、谷間がガッツリ見えているじゃん。変なところで横着せず、谷間全部隠すぐらいにピタッと貼り付けたらいいじゃん」

 

「それはね、3号。おそらくだけど、サラシだけをピタッと常時貼り付けたままなのってけっこう精密な作業だから、面倒臭いのでしょうね」

「いや、気持ちは分かるけど、こんな手が突っ込めるぐらいのピタッとI字の谷間とか……うぉ!? サラシが拘束になっていないから、スルスル中に手が入るじゃん……」

 

「そもそも、サラシ巻いているのにπの形がそのまま出ている時点で、サラシの役目が……ん? ちょっと後ろ向いて──あのさ、こんな腰の細い族が居ると思う?」

「ズボンのベルトの位置が高いから、必然的に足が長いように見えるし、腰が細い分だけお尻が大きく見える……これ、腰の細さに合わせてない?」

 

「そもそも、顔にシミ一つ無くて、爪もピカピカで、産毛一つ生えていない白い肌って時点で来るところ間違えているっぽい雰囲気バシバシだわね」

「見てよ、このスベスベなお腹。へその穴が縦だよ、無駄な脂肪が無いうえに筋肉もちゃんとあって、要所に脂肪も搭載とか……こんなの、思春期の少年に見せて良いモノだと思っているわけ?」

 

 

 あまりにも酷い評価である。さすがは分身というべきか、本体に対しても忌憚のない言葉である。

 

 

「……ひん!」

 

 

 これには堪らず涙がこぼれそうなぐらいの精神的ダメージを受けた千賀子は、エマに慰めてもらおうとエマの下へ──

 

 

「……ママ、変なの!」

「     」

 

 

 ──行こうとしたのだが、愛娘から放たれたとんでもない素直な刃に、千賀子は言葉もなくその場に崩れ落ちたのであった。

 

 

 

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