ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第156話: 元々、面倒見は良い方(なお、初恋どろぼう)

 

 

 命乞いなど聞く気などないし、謝罪など受けるつもりもない。

 

 謝っている相手、それも謝る理由などない相手に対して、謝っても無視して金銭を奪い、暴力を振るうのに、どうして自分たちの時だけは礼儀正しくそれらが行われると思えるのか。

 

 ゆえに、千賀子は一切躊躇せず、涙を流して額を地面にこすり付けて謝罪する、その脳天へと足を乗せ、力いっぱい踏み潰した。

 

 

 家庭環境の問題? 

 

 社会情勢の不安? 

 

 

 そんなの、千賀子には関係ない。

 

 1975年のこの頃でも、本当に生活が苦しくてどうにもならずに犯罪に手を染める者よりも、楽だから手を染める者の方が多いのだ。

 

 本当に彼らが社会に、大人たちに、憤りを抱えて暴走行為にのみ動いていたならば、世間からの反応はまったく違っていただろう。

 

 だが、そうではない。

 

 結局のところ彼らはそれが楽で、暴力がもたらす利益を選んだだけ。でなければ、窃盗に恐喝に婦女暴行で毎週のように検挙される者が出てくるわけがないのだ。

 

 だから、千賀子は一切考慮しない。

 

 彼らが自分たち以外の事情を一切顧みらず好き勝手していたのだから、こちらも好き勝手にやっただけのこと。

 

 手を殺人で汚すのか……そう、非難する者はいるだろう。それは、千賀子とて否定はしない。

 

 しかし、自然死でない限り、必ず最後は誰かの手が汚れる。

 

 それが訪れるまで、誰かが傷付けられ、誰かが苦しみ、場合によっては誰かが死ぬ。被害者の受けた痛みなど過去の出来事にして、終わった事として処理される。

 

 なんて事はない。

 

 結局、自分の身の回りでソレを見たくないから、もっともらしい理屈を用意して遠ざけているだけなのだ。

 

 だからこそ、千賀子は容赦をしない。

 

 過去の出来事になんぞ、させるつもりもない。

 

 これまで奪って来た者たちを『マヌケ』とせせら笑っていた彼らが、今度は自分たちがその『マヌケ』として踏み潰される……千賀子にとって、ただそれだけの事でしかなかった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、だ。

 

 

 神通力によって心理的な目隠しをしているので、千賀子たちを除いて、誰もこの惨状に気付いていない。

 

 周辺住民はもちろん、『Roboko』に綱を引かれているハイセイコーも、のん気な様子で、カッポカッポと邪魔にならないよう、離れたところで散歩させられていた。

 

 ハイセイコーからすれば、己ではどう頑張っても勝てない絶対的なボス(とても優しい)の手で、直々に散歩に連れ出されているような感覚なのだろう。

 

 普通の馬ならば、見知らぬ場所に連れて行かれたら警戒してしばらく馬運車から出てこないとか、案内された馬房から出てこないなんてのも珍しくはない。

 

 それぐらい、馬という生き物は繊細な一面がある。

 

 だが、そこに群れを率いるボス……もしくは、それに該当する存在が同じ場所に居て、平然としていた場合は、少し違う。

 

 個体差こそあるが、ボスが平然としている、ただそれだけで、その下の者たちも落ち着くのだ。

 

 なぜなら、ボスが何も恐れていないし警戒していないから。

 

 ハイセイコーの目には、耳には、鼻には、自信満々なボスがリラックスしているのが伝わってくるし、大きな音もせず、川の水がチャプチャプ流れている音と、その臭いしかしない。

 

 それだけで、ハイセイコーが不安を覚える要素はなにもなく、何もかもが物珍しい光景をフンフンと鼻息荒く楽しんでいた。

 

 

 ……しかし、だ。

 

 

 ハイセイコーの事は置いといて、いくら神通力による誤魔化しがあるとはいえ、死体を放置すれば、いずれは大問題になる。

 

 さすがに、十数名の腐乱死体が放つ悪臭ともなれば、神通力でもカバーしきれるものではないからだ。

 

 なので、千賀子は全ての遺体を一か所に集め……周辺にて無造作に繁茂している雑草を神通力によって絡み合わせて、一本のロープに変える。

 

 それで、遺体をグルグルとまとめて縛り上げ……河川を使って、海へと流す。

 

 普通ならばどこかしらに引っ掛かって漂着してしまうが、『サラスヴァティー』の能力を応用して、海までノンストップで向かうようにしておく。

 

 もちろん、周囲から視線を向けられても、『なんか大きなゴミがあるな、臭いし放っておこう』と、認識されるよう細工も施しておいて。

 

 次いで、地面にこびりついた血やら何やらも、河川より引っ張り出した水をぶちまけ、全て洗い流しておく。

 

 血というのは実に厄介なもので、その程度では完全に流れ落ちてはくれない。

 

 けれども、ここが室内ならばともかく、風通しの良い河川敷だ。多少なり臭いがしたところで、河川から漂ってくる様々な臭いが消してくれる。

 

 加えて、今どきは暴走族同士の喧嘩なんてなんら珍しい事ではない。

 

 仮に血痕に気付いたとしても、『また暴走族同士の喧嘩か……』と判断されてお終いであり、現在進行形で千賀子の神通力で目隠しが行われている。

 

 この件は、どんな熟練の刑事が相手であろうが、どう足掻いても迷宮入りするのが確定しているのであった。

 

 

「──ロボ子、みんなの具合はどう?」

 

 

 そうして諸々の処理を終えた千賀子は、ビニールの膜……簡易処置室としてロボ子が用意した簡易式の完全無菌室、その中で処置をしているロボ子に状態を尋ねる。

 

 そこには、明たち3人が寝台に乗せられており、その周囲を『Roboko』たちが忙しなく、それでいて静かに、正確に処置を行っている。

 

 パッと見た感じだと、手術をしている光景──いや、というより、実際に手術をしているのだが。

 

 

 きゅいん、きゅいん、と。

 

 

 手術用に取り換えた『Roboko』たちの腕が、三人の身体を縦横無尽に行き来する。全てが、多発的に行われていた。

 

 かたん、かたん、使用済みの器具が、赤色を滲ませながら消毒タンクへと入れられてゆく。

 

 点滴スタンドより垂れ下がった輸血パックや、規則的に鳴る心電図モニターが、3人が生きようとしている事を教えてくれる。

 

 それらが、いかに3人の負傷が酷いのかを物語っている。

 

 見る者が見れば、目を剥いて飛び退いてしまうような信じ難い光景の中で、ロボ子は千賀子に背を向けたまま答えた。

 

 

『良くはありませんが、悪くもありません。致命的な内蔵の損傷が無いのは、不幸中の幸いというやつですかね』

 

 

 その声は、ビニール膜の外に設置されたスピーカーより響く……淡々とした口調だが、勘違いをしてはいけない。

 

 ロボ子と『Roboko』たちによる迅速かつ隔絶した治療設備のおかげで一命を取り留められているが、一般的な基準ならば、そのまま死んでいたほどの怪我である。

 

 致命的な損傷というのも、即死一歩手前のような話。ロボ子たちだからこそ間に合っているだけで、普通は手の施しようがない(つまり、手遅れ)と判断されるぐらいであった。

 

 

『これまた幸いにも、万が一のために用意しておいた予備血液が適合してくれたおかげで、失血のショックも軽減できそうで一安心です』

「そんなの用意してくれていたんだ……ん? 適合しなかった場合はどうなるの?」

『別に、どうもなりません。せいぜい、腕が一本余分に生えたり、『おで、おまえ、食う』みたいな感じになったりするぐらいでしょうか』

「おま、なんてモノを……!!!」

『ですが、失血量を考慮しますと、従来の輸血処置では間に合わずに多臓器不全を引き起こすリスクが非常に高いので……やむおえません』

「うっ、それを言われると……」

『ご安心を、ちゃんと詳細にデータを収集して、次にも活かしますので』

「人体実験を兼ねるの、これっきりね?」

 

 

 あまりにも、あんまりな言い草に、こいつは……と思いつつ、改めて尋ねる。

 

 

「全治まで、どれぐらい掛かりそう?」

『回復増進薬は、人体に対して強過ぎますので……マスターの神通力で、回復を加速させることは可能でしょうか?』

「えぇ……う~ん、外傷なら塞ぐことができるけど、塞ぐだけで体力の消耗とかはどうにも……」

『それならば、程々に治す程度でお願いします』

「え? 全部治さないと、治るまで苦しいじゃん」

『当人たちも自分たちが暴行を受けたと分かっていますので、傷が全て塞がっているとなれば、相当な疑念が生じるでしょう』

「まあ、そうだけど……」

『それに、原因を遡っていけば、彼ら3人にも落ち度はあります。痛み分け……と言うには理不尽でありますが、心配を掛け続けた罰として受け入れてもらいましょう』

「う、う~ん、それはそれで、明美たちが心配というか、怒りそうな気が……」

『だからこそ、馬鹿な行いをしたと身に浸みるというものです』

 

 

 無慈悲なロボ子の対応に、千賀子はう~んと悩みつつ、否定は出来なかったのであった。

 

 

 

 

 

 ……そうして、無事に治療を終えた3人だが、搬送先をどうするかでまた問題が生じた。

 

 

 なにせ、3人は全身包帯だらけ。

 

 もう容体が急変する状態ではなくなったが、見た目はもうミイラというか、包帯人間みたいな有様である。

 

 おまけに、3人とも出歩ける状態ではない。千賀子の協力も当て傷口は塞がっているが、身体へのダメージだけはどうにもならない。

 

 ぶっちゃけると、入院して点滴療養(術後なので、胃が受け付けない)が必要なのだが、それはそれで、大変な騒ぎになってしまう。

 

 なにせ、できるかぎり目立たないよう処置をしたとはいえ、全身のいたるところを外科的な処置をしたのだ。

 

 だいたいの医者が見れば、全身に手術の痕(言うなれば、切開の痕)があるのが分かってしまう。

 

 そうなれば、どこでそんな大手術を行ったのか……という疑念が、当たり前のように出てきてしまうわけで、そうなると、確実に警察が動いてしまう。

 

 

「──とまあ、そんなわけで、ここなら警察も来ないし、動けるようになるまで私が面倒をみておくから」

「……何事かと思ったら、思っていたより大事になっていたのね」

「そう、ごめんね、ここの事は、できる限り外では話さないようにしているから……」

「いいよ、そんなの。むしろ、明のためにそこまでしてくれて、本当にありがとう」

 

 

 なので、千賀子は3人を『冴陀等村』にある家屋を一つ借りて、そこで静養させることにした。

 

 これには、千賀子の話を聞いてびっくりした明美も、学生の時以来のワープを受けて、さらにびっくりしてしまうのも致し方ない事であった。

 

 まあ、それは千賀子の説明が足りていないのが原因だけど、警察沙汰になると、なによりも明たち3人が困ったことになるので、むしろ隠してくれて有り難い……との事だった。

 

 実際、隠れるという目的を考えたら、『冴陀等村』は秘境みたいな場所である。

 

 警察はおろか、マスコミの目もまず入らない。ロボ子による未来的な科学技術による治療を見られる心配も、外部に漏れる心配もない。

 

 極々稀に血迷ったフリーライターが潜入しようとしてくるらしいが、まあ、それは村人たちが対処するので問題はないらしい。

 

 

「まだ鎮痛剤が効いていてぐっすり眠っているけど、どうする? 起きたらまた連絡しようか?」

「……ううん。無事なのが分かったから、それでいい。明も男の子だし、友達の前だと変に意地張るだろうから、しばらくそっとしておきたい」

「そう? それじゃあ、声だけ掛けておくから」

「ありがとう。ところで、明の友達の……あの二人の家にも連絡とかしたの?」

「それが、どうも(ロボ子調べでは)複雑な家庭っぽくて……目覚めてから当人に決めてもらおうかなと思いましてね」

「そうなんだ……ありがとう、本当に、ありがとう」

 

 

 そうして、眠っている3人……その中でも、明の寝顔を確認した明美は、何度も何度も千賀子に頭を下げて、それでひとまず此度の騒動は区切りが付いたのであった。

 

 

 

 

 

 ──そして、3人が目を覚ましたのは、それから三日後であった。

 

 

 ロボ子特性の点滴液(カロリー・ビタミン・ミネラル・抗生物質)を四つ、それをキッチリ行い、神通力による回復アシストを行ったおかげだろうか。

 

 普通ならば全治数ヶ月(若さ込みで)は掛かる怪我も、目覚めた翌日には完全に全て塞がり、動く分にはとりあえず問題がない状態になっていた。

 

 

 ……なお、目覚めた3人は……明には、『明美に、無事であると伝えている』とだけ伝えたが、他の2人……三郎と正徳は、家族への連絡を拒否した。

 

 

 三郎は、元々以前から家では肩身が狭く、事あるごとに『何時でも出て行っていい、高校を出たら二度と帰ってくるな』と言われており。

 

 正徳にいたっては、普段から家では居ても居なくてもいい者として扱われており、着ているシャツとかも全部自分で洗濯しているとのことだった。

 

 

 それならばまあ、話は早い。どうせ、学校に通える状態ではないのだ。

 

 3人には速やかにリハビリをしてもらう必要があり、家族からの邪魔が無いのであれば、リハビリが終わるまでは冴陀等村にて面倒を見ることになった。

 

 

 ……ただし、3人は部外者である。

 

 

 冴陀等村の因習というか、そういうのには絶対に触れさせないよう厳命させたうえでの滞在なので、夜間の外出は禁止した。

 

 まあ、禁止しなくとも、3人は出歩けなかっただろう。

 

 何故なら、リハビリは……と~っても辛くて大変で、苦痛を伴うからで、物を消化していない胃腸を動かす時の不快感は、言葉では言い表せられないだろう。

 

 傷が塞がったとはいえ、全身骨折に全身への手術に大量失血。たった数日間とはいえ肉体が負ったダメージは相当なもので、若さでカバーできる範囲を超えている。

 

 寝たきりのせいで硬直していた手足や、一度は切って繋げた筋肉繊維などを元の状態にまで回復するまでは、まともに出歩くことなど出来ないのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、とはいえ、だ。

 

 

 いくら彼らのためとはいえ、彼ら自身は歳若い。

 

 特に、10代なんて一番体力に満ち満ちている時だ。

 

 初日と翌日ぐらいは気にする余裕はなかったが、娯楽など何一つない『冴陀等村』の空気は、水と油みたいな……ん、村人はって? 

 

 

 ──冴陀等村の人達は、冴陀等村特化の遺伝子をしているから(目逸らし)、比べてはいけない(戒め)。

 

 

 とにかく、身体は動かなくとも、精神的な不満というか、フラストレーションは溜まってゆく……それは、仕方がない事だと千賀子は思った。

 

 ……では、どうするか? 

 

 

「ほら、もう一本! あんよが上手、あんよが上手」

「ふっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ……!!」

 

 

 答えは、千賀子が自らリハビリに参加し、彼らが頑張る餌というか、眼前にぶら下げた人参の役割を買って出る、というものだった。

 

 

 ……どういう事かって、やっている事は単純明快。

 

 

 手術の後遺症(あと、回復を早めた副作用もある)で凝り固まった身体を解すために、兎にも角にも歩いてもらっているだけ。

 

 ただ、これがまた痛くて辛いわけで……いくら若いとはいえ、ただただ機械のようにリハビリさせ続けるのは……そう思った千賀子は。

 

 

「ほら、あとちょっと、あとちょっと!」

「ふぐ、ふぐ、ふぐ……だぁああ!!」

「よ~し、よし、良く頑張ったね、ちょっと休憩して、また頑張ろうね」

「ふう、ふう、ふう、はい、ありがとうございます」

 

 

 自らをゴール地点にして、頑張ってゴールを果たした者を抱き締めて労わることにしたのである。

 

 

 ……これがまあ、効果てきめんというやつで。

 

 

 服の上からとはいえ、千賀子のような美人のπの谷間へ向かって倒れ込むように顔を埋めても、ヨシヨシと頭を撫でられるだけなんて、二度とは無い機会であり。

 

 

 ──秘伝の漢方薬のおかげで、身体を動かせば動かすほど治りが早くなるから、頑張ろうね。

 

 

 本音を言わせてもらえば、もっと長い時間を掛けてやりたかったけど、ここまで手厚くしてもらっている以上、そんな一方的なワガママを押し通すほどの図々しさは、3人にはなく。

 

 リハビリも終わり、昨日よりも動けるようになった後……する事もないし、クタクタになった3人は、並べられた布団の中で。

 

 

「……大きかったよな、俺の顔よりも大きい」

「……良い匂いだったなあ、女の人って良い匂いだなあ」

「……頭撫でられるの、癖になりそう」

 

 

 その日もまた、誰に言うでもなく感想をこぼしたのであった。

 

 

 

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