ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第166話: さすがは、千賀子の『魅力』に耐えた漢

 

 

 千賀子が映画に出演するという話に対する反応は、主に二つに分かれた。

 

 

「……いちおう聞いておくけど、脅されているとか、いかがわしい映画ではないんだよね?」

「お父さん、私に脅しが効くと思う? そんな映画に出ると思う?」

「いや、思わないけど……それにしても、どういう風の吹き回しでそうなったんだ?」

「あまりにも後先考えずな無鉄砲バカに、ちょっと絆されて……あそこまで猪突猛進だと、協力したくなるものね」

「千賀子、海口桃恵ちゃんのサイン貰ってきて。店に飾っておくから」

「お母さん、さすがに今をときめく桃恵ちゃんのサインは貰えないというか、そもそも会う機会ないと思うなあ……」

「そうなの? 同じ芸能界なんでしょ?」

「う~ん、いきなり大手の店の社長と顔合わせなんてできないでしょ? そういうものだよ」

「……やるからには、やりきんでよ」

「うん、頑張るよ、お婆ちゃん」

 

 

 一つは、千賀子の両親(というか、家族)から。

 

 主に、脅されていないのかとか、芸能人のサインだとか、そういうの。

 

 なんで脅されていないかを心配したか……それはひとえに、この頃の芸能界はけして良いイメージを持たれていなかったからだ。

 

 いや、芸能界が良いイメージで見られた事なんてほとんどないけど、この頃(1970年代)の芸能界は、現代以上に酷い。

 

 良くも悪くも規制が少なく、ヤクザが公然と姿を見せて関与している姿が見られたぐらいだ。

 

 芸能界と言われて警戒心を見せる親世代は相応にいたし、他人の子供ならともかく、自分の子供が芸能界に……となった時、反対する親も少なくなかった。

 

 もちろん、全てが全て、そうではない。

 

 家計を助けるために芸能界に入った者はいたし、家族から応援された者だっている。ただ、向けられる視線の度合いは、現代とは違っていたのであった。

 

 

 ……で、話を戻して二つ目だが、それは主に友人たちからで、家族からの言葉というか、目線が異なっていた。

 

 

「……っ!? そ、そんな身体で!?」

「どういう意味よ」

「止めた方が良いわよ。そんな……子供に見せられない身体しているんだから」

「明美は私の身体をなんだと思っているのかな?」

「年頃の男の子を精通させてしまう類の身体でしょ。あと、年頃の女の子を百合の道に誘う類」

「…………(言い返したいけど、言い返せない顔)」

 

 

 明美からは、千賀子のボディがあまりに官能的過ぎるから注意した方が良いと言われ。

 

 

「……年頃の子には、ちょっと目に毒かもね~」

「み、道子も、そう思うの?」

「ん~、千賀子はもう少し自分の身体を自覚した方が良いと思うよ~」

「道子も、似たようなものじゃん」

「そうだけど~、千賀子って隙があるから~。なんだろう、時々だけど~、千賀子は男の子みたいに隙だらけになる時がね~」

「………………(心当たりを思い出し、何も言えぬ顔)」

 

 

 道子からも、千賀子のボディがあまりにも目に毒過ぎるから注意した方が良いと言われてしまった。

 

 これには、さすがの千賀子も文句の一つというか、反論したい気持ちが出るわけで。

 

 家族に聞くのは恥ずかしいというか、そんなのを娘から聞かされる両親の事を考えた千賀子は。

 

 そこまで言うならばと、恥を忍んで明美と道子に忌憚のない意見というか、感想を求めた……わけなのだが。

 

 

「……まずね、おっぱいが大きい」

「そりゃあ、見たまんまでしょ」

「違うわよ、そのうえで形がとにかく良いの。同性の私から見ても惚れ惚れするぐらい張りがあって、まったく垂れてない」

「ま、まあ、まだ若いしさ、私もさ」

「10代でも垂れる子は垂れているし、小さい子でも垂れる時は垂れるの! 次に、腰が細い! お尻もおっきく、そっちも垂れてない!」

「そ、そりゃあ、垂れてないけど……」

「正直、千賀子の身体を見ていると、女優の人達がとても貧相に見えてしまうのよ……世間ではセクシーとか言われている人も、子供体形だなって……」

「う、う~ん……」

 

 

 明美からは、そう言われてしまい。

 

 

「……ん~、とにかく顔が良いわね~」

「自慢に聞こえるけど、自覚はあります」

「肌もすごくキレイで、お化粧していないのに……羨ましい、なんでおデキ一つ出来ないの、ツルツルなの?」

「おや、道子さん?」

「そもそも、なにしたって良い匂いするのズルい。私は汗っかきだから、気を付けないとすぐに汗疹《あせも》になるし、臭くなっちゃうし」

「み、道子さん?」

「お肉だって、油断するとすぐに付いちゃうし、胸が大きい分肩幅が大きいから太って見られちゃうし、千賀子みたいに全体的に細いのに要所だけ大きいなんて……」

「ごめん、本当に私が悪かったです」

 

 

 道子からは、途中から何時もの語尾を伸ばす癖が無くなり、真顔のままブツブツと言われてしまい……千賀子は、それ以上何も言えなかった。

 

 ……ちなみに。

 

 兄の和広にも、映画に出演するという話をしたわけだけど。

 

 

「……そうか」

「え、それだけ?」

「……その、肌を見せないように、な?」

「…………(さすがに、兄からも同意見はちょっと思うところが出てくる顔)」

 

 

 非常に、こう、とっても言葉を選んで、それでも結局は良い言葉が出ずに、苦悶の顔でそう忠告されてしまった千賀子は。

 

 

(……そ、そんなになのか)

 

 

 今さらだけど、もう少し気を付けよう……と、千賀子は思ったのであった。

 

 

 

 

 

 ──さて、そんなこんなで、だ。

 

 

 少しばかり時は流れ、さっそく映画撮影のために、千賀子たちは出演者と撮影班は温泉地へと向かったわけだが。

 

 ここで、どうして温泉地なのかと言えば、実はちゃんとした理由がある。

 

 それは、温泉地は基本的に都心から離れた場所に多く、自然が多くて人通りも少なく、都心に比べて部外者が入り込まないから。

 

 あとは、撮影のために大きな音を立てたり騒いでも、そういう場所は色々なテレビ局が利用していたりする場合が多いので、周辺の住民も分かっている場合が多いから。

 

 実際、この頃(1970年~1990年代)の特撮系は、実は温泉地などで撮影されているなんて話は非常に多かった。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 舞台が街中などであればそこまで問題はないのだが、特撮系(特に、着ぐるみを多用する場合)の撮影ともなると、けっこう場所を選ぶ。

 

 時代劇が、その顕著な例だろう。

 

 なにせ、時代劇は、『映画村』という大規模なセットを用意したうえで撮影が行われている。今とは違う世界観を作るというのは、それだけ大変な事なのだ。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 『映画村』が一般公開というか、見学できるようテーマパークとして解放されたのは、1975年(つまり、去年)だったりする。

 

 そうなるに至る理由は、映画業界の業績の悪化である。

 

 日勝(前世では、日活)がポルノに力を入れて業績を伸ばしたのも、根本というか原因は同じ。

 

 全盛期だった1950年代を過ぎて、1960年代から右肩下がりを続けた業界は、ついに出せばおおよそ黒字になっていた『ヤクザ映画』、『時代劇映画』ですらも赤字が出るようになった。

 

 当然ながら、赤字が続けば製作本数も減らすしかなくなる。

 

 そして、それは人員とて同じ……そこで考え出されたのが、埃を被るままのセットを流用したテーマパークであった。

 

 

 ……さて、話を戻すが、映画撮影というのはとにかく場所の問題がある。

 

 

 街中で切った張ったの殺陣(たて)なんて、どう頑張ってもすぐに警察を呼ばれて厳重注意。そうでなくとも、部外者が悪戯半分で画面に入れば、その時点で撮り直し。

 

 なにより、お金よりも問題なのは時間だろう。

 

 その時間を買うという意味でも、温泉地(あるいは、避暑地)での撮影が増えるのは必然の結果であった。

 

 

 ……ちなみに、これはまあ、余談なのだが。

 

 

 確かに、撮影環境をよ~く考えた結果、『温泉地』が選ばれる頻度が高いわけだが……実は、それだけではなく。

 

 監督などが温泉好きで、特にそこで撮影するまでもない場面だけど、あえて温泉地に行って撮影し、一泊して帰る……という話がチラホラあったりする。

 

 この頃の特撮系の作品にある、街中で戦っていたはずなのに、場面が変わるといきなり周りに建物がない森の中に移動している……というのが、ソレだ。

 

 良くも悪くも、現代よりはるかに経費の締め付けが緩く、色々なモノを経費で落とすのが可能だった時代だからこそできる、この頃の賢い節税であった。

 

 

 

 ……ただ、今回の『風雲・夜叉(仮)』の場合は、そういう節税をする必要はない。

 

 だって、千賀子がスポンサーなのだ。

 

 むしろ、下手に節税して他所の目が入る方が千賀子的にはやり難くなるので、そこらへんは全部任せてほしいぐらいまである。

 

 実際、千賀子が全部そこらへんをやるならば、これ以上ないぐらいにやりやすい。

 

 複雑なセットもロボ子の手を借りられたらすぐに用意出来るし、『ククノチ』で素早く地形を整えたり、それらしい樹木を用意するのも簡単だ。

 

 洞窟を用意して、内部にセットを組み込むのも、そのための小道具を敷き詰めるのも、人力ならばそれなりの時間が必要な事でも、小一時間で完成である。

 

 衣装だって、ロボ子の手でちゃっちゃと用意できるし、そうでなくとも、『賽銭箱』による暴力的な資金パンチで、用意するのは比較的簡単だろう。

 

 

 ──Q.こいつ、ロボ子に頼り過ぎじゃない? 

 ──A.ロボ子からすれば、頼って貰うのが存在意義なので。

 

 

 幸いにも、土師田は撮影環境が良くなるのであれば、細かい事は気にしない。

 

 それこそ、人知を超えた現象だとしても、土師田の頭の中にあるのは『映画撮影』だけである。

 

 気が狂っていると言われたらそれまでだが、そんなのは今更な話。頭がおかしいと土師田を評価するのは、周回遅れもいいところ。

 

 土師田はそれこそ、千賀子と出会う前から『映画』というモノに心底狂ってしまっている、狂人である。

 

 

「──やれ、河童」

「ぜえ! ぜえ! あ、あの、千賀子様!? (それがし)、役作りとはいえ、全身木刀滅多打ちで痣だらけ内出血だらけなのですが!?」

「そうか、やれ」

「くっ、くそぅ……やらせていただきますとも、フン! 見ませい、この筋肉を!! (筋肉ムキムキ―!!!)」

「おら、飛び込め」

「え、ちょ、河童とはいえ、今のこの身体で滝壺は──」

「安心しろ、ちゃんと助かるようにしてあるから──行け」

「ちょ、甲羅を──あぁぁぁ……!!!」

「──いいよ! そうだ、その悲鳴! ヨシッ、練習はこれぐらいで、次は本番撮影行くよ!!!」

 

 

 なにせ、どう見ても着ぐるみには見えない河童が、マジモンの悲鳴をあげて滝壺へ落とされる様を前にしても。

 

 

「──ほら、ヒバゴン。刀で切られたら、火花が散るようになっているだけだから」

『ウキャー!? (え、あの、これ、肌の上で直接爆発するんですけど……そ、相当に痛いのでは!?)』

「大丈夫、治療してくれる名医(ロボ子)がいるから、安心して──さあ、頑張れ」

『ウギャー! (止めて、こんな、こんな酷い……辞めさせてもらいます!)』

「後で、小便するところ覗いていいから」

『ウキャー!!! (何でも言ってください!!)』

「──いいよ、良い感じだ! 火花の具合もヨシ! 派手にバチンと、切られた時は大きく仰け反って!!!」

 

 

 明らかに人間ではない(だって、言葉話さないし)ヒバゴンを前にしても、ひたすら殺陣の注文をつけて。

 

 

「──ほら、残り187回。復讐に燃える姫君なのだから、血豆の一つや二つは潰さないと」

「ひぃ、ひぃ、で、でも、お姉さま!? 木刀の持ち手が既に血だらけで、掌の感覚が無くなってきているんですけど!?」

「それでいいのよ、全てを捨ててでも復讐を果たすって設定だから、それぐらいじゃないと」

「待ってください! こんな、お姉さまも頑張るのがスジでしょう!? なんで私たちばかり……!!!」

「なによ、それぐらい、土師田さんの話を聞いた時に覚悟したでしょ?」

「だ、だって、これでうまく有名子役になれたら、世の美少女芸能人たちのトイレへ大手を振って入り込めるとばかり……」

「残念ね……まあ、制作期間中ぐらいは私のを見て良いから、頑張りなさいな」

「うっ、うっ、うっ、負けない、私……全国の乙女たちのために、負けない!!」

「──そうだ! やつれて血走ったその目、それこそが復讐の目! いいよ、歯を食いしばって、もっと!!」

 

 

 見た目というか、傍目には小学生女児にしか見えない花子に、両手が血まみれになるぐらいに木刀を振らせたり。

 

 いくら、千賀子の口から『こいつら私の知り合いだから、いくらでもこき使っていいよ』と言われたからとしても、だ。

 

 やる事なす事、狂人としか言い表しようがないだろう。

 

 

 だが、しかし。

 

 

 昭和のこの時代、これぐらいが普通だったのか、それとも、土師田が狂人なのか、それを判断するのは難しかったりする。

 

 撮影関係の逸話には、真剣を使って死者が出たり、火薬の量が多過ぎて大怪我したり、モデルガンかと思ったら本物で死者が出たりとか、信じ難い話が多いので。

 

 一概に、狂人と断定するのは……というところであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、それはそれとして、だ。

 

 

「──いいっすよ! そうです、背中を見せて! 隠さないで、動じず自然体で……ヨシッ! 本番行きます、同じようにやってください!!!」

 

 カメラに背中を向けたまま湯船から立ち上がり、身体のラインに沿って湯水が滴り落ちていく千賀子の背中を、それはもう血走った眼で撮影したり。

 

「──違います! 千賀子さんは、何千年と生きた敵の親玉! おっぱいの一つや二つ出たからって動じない! 赤ちゃんにおっぱい見られて恥ずかしがる人がいますか!?」

 

 殺陣の練習シーン。

 

 避けた刀が衣装を切り裂いて、乳房が露わになるシーン……反射的に身体の角度を変えようとした千賀子に、真正面から注文を入れたり。

 

「──そうです! そうですよ! 味方の天女様と、悪の親玉は表裏一体! どちらも同じなので、どちらも恥ずかしがっては駄目なのです、たかが人間相手に狼狽えては駄目ぇえええ!!!」

 

 味方である天女と悪の親玉が登場するシーン。

 

 要は、千賀子と分身が登場するわけで、冷静に考えなくてもとんでもない光景なのだが、頭がハイになっている土師田にはもう、そんなつまらない事など無いわけで。

 

 

「す、すごい、あの人間……とんでもねえ御人だ……」

「お、お姉さまが、圧されて言われるがままだなんて……」

『ウキャー(な、なんという武士か……!!)」

 

 

 スポンサー兼主演女優である千賀子に対しても、まったく臆することなく指示を出す土師田の姿に、UMAたちは恐れ戦いていたのだが。

 

 

「──いいっすよ、俺はこれが撮りたかった! これは良い作品になりますよ……!!!」

 

 

 当の土師田は、まるで気付いておらず、撮影に全てを注いでいるばかりであった。

 

 

 

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