ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
映画史において、実在の事件や出来事を参考にして、あるいはモデルにして作品が作られるというのはけして珍しいことではない。
いわゆる、元ネタがある『本当にあった話』、『実際に起こった事件の映画化』というやつだ。
もちろん、最初から最後までそっくりそのままだと、ただの再現VTRになってしまうので、そこらへんは製作者(監督)の想いによって変わるが……そんな中でも、だ。
1976年のこの年、千賀子の前世でもそうだったが、今生のこの世界でも……映画史に名が残る、とある作品が公開された。
その名を、『愛のコリーダ』。
昭和11年(1936年)に起こった、東京の料亭に仲居として務めていた元遊女『
元の事件からしてショッキングなのだが、この作品がどうして映画史に名を残したのかって、それは全編無修正だからだ。
そう、この作品は、元の事件の内容が内容だから、主人と元遊女との間に起こった出来事……ぶっちゃけると、SEXシーンがちゃんとあるのだ。
そのうえ、モザイク一切無し!
しかも、局部の結合シーンもばっちり映す!
そう、演技とはいえ、実際に○○○に×××が挿入され、前後するシーンも含めて、一切のモザイク処理が無いのである。
この頃の基準はおろか、現代基準でも一発アウト。
当然の如く、この映画そのものが『事件化』してしまい、裁判沙汰となった。これが、1982年まで続く『愛のコリーダ裁判』である。
『芸術か、ワイセツか?』
その判断が司法に委ねられると同時に。
『ワイセツ、なぜ悪い?』
という、監督の発言が物議を生んだぐらいに、この裁判は注目を浴びた。
……で、だ。
そんな映画が、千賀子が生きるこの世界でもバッチリ上映された。
ちなみに、千賀子の前世では『愛のコリーダ』という名前だが、この世界では『哀のブルファイト』とかいう名前になっている。
まあ、紛らわしいので、今は『愛のコリーダ』で呼ぼう。
その映画だが、千賀子はまったく興味が無かったので、母から電話で教えられるまで知らなかった。
なお、その母は『あの野郎、私というモノがありながら……!!』といった感じで、こっそり見に行ったらしい父の所業に頭ボルケーノ状態であったが、ひとまず横に置いておこう。
「……で、土師田さんはなんて?」
『神社』にて、布団にて安静にしていた千賀子の問いに……ん?
なんで、安静にしているのかって?
それは、前話《メタ》にて出現が予告されていた『恐怖の大王』を討伐した反動で、精根尽き果てているからだ。
そう、結局、予想していたとおりに『恐怖の大王』が出現してしまったのだ。
しかも、同時に2体も。1体が分裂して2体になったのか、始めから2体で出現したのかは、正直分からなかった。
おそらく、前者なのだろう……どちらにせよ、こんな初めてなど体験したくなどなかったのだから。
ただ、不幸中の幸いというべきか、この2体はこれまで戦ってきた中では弱かった。そのうえ、この2体……理由は定かではないが、なんと喧嘩を始めたのだ。
これには、さすがの千賀子もビックリである。
まさか、『恐怖の大王』が同士討ちみたいな事を始めるとは想像すらしていなかった。というか、そういう自我みたいなモノがあることにもビックリである。
『……おそらく、解釈違いでしょうね。資本主義は頂点が複数居ても成り立ちますが、共産主義は頂点が一つ……二つあるとすぐに内乱が起こりますので』
なお、話を聞いたロボ子の感想は、そんな感じであった。
いくらなんでも『恐怖の大王』にそういうモノがあるのかと千賀子は思ったが、『人の念が生み出すのであれば、影響を受けないわけがない』と言われてしまい……なるほど、とちょっと納得した。
……で、話が逸れたので戻そう。
安静にしていた千賀子は、2号に土師田について尋ねる。いったいなにを……それはすぐに分かること。
対して2号は、なんとも言い表し難い様子で……ポツリと、事実だけを告げた。
「少し、『風雲・夜叉』撮影を中止させてほしいってさ。本体の私は、それでいい?」
「私は、見ての通り『恐怖の大王』とやりあってしばらく動けないから、渡りに船みたいなものだからいいよ」
実際、今の千賀子はしばらく安静が必要である。
今回は半ば共倒れみたいになりかけたところを、漁夫の利みたいな形で不意打ち討伐(なお、反動あり)したのでこれまでに比べてダメージは少ないが、それでも『巫女服』を着たうえでの、全力を超えた120%神通力である。
倦怠感や疲労感はどうにもならず、下手に無理をすればそこから体調を崩して風邪でも引いたら大変なので、ロボ子から『よろしい』と許されるまでは安静にしているわけだ。
……また話が逸れたので戻すが、土師田が急遽撮影を中止したのは、冒頭にて説明した映画……『愛のコリーダ』が原因である。
と、いうのも、だ。
どうも、自分が映画製作中だというのに、これは是が非でも見ておかなくてはとスケジュールを空けて観に行ったらしい。
千賀子としては、話を聞く限り『あ、これ、そのうち上映中止になるな』としか思わなかったので、それなら芸の肥やしにしなさいなと承諾した……のだが。
──どうやら、その映画が相当に土師田にとってはショックだったようなのだ。
寝込んでいるので直接顔を合わせたわけではないが、様子を見に行った2号や3号曰く、『なんか、すごい形相のまま器用に放心していたぞ』、とのこと。
詳しく聞けば、どうやら土師田は無意識のうちに今の映画界を下に見ていたっぽくて、『愛のコリーダ』も、ちょっと小馬鹿にする感じでいたらしい。
それが、蓋を開けたら……それはもう、言葉では言い表せられないぐらいに、色々と打ちのめされたらしく。
如何に己が天狗でいたかを自覚させられると同時に、己の思い上がり、驕りを真正面から見せ付けられた……みたいな感じらしい。
なんと言うのか、俺は地元で敵無し天才野球少年だと思って強豪校に入ったら、自分以上の才能と身体に恵まれた者たちがゴロゴロいて、ベンチ入りすら夢のまた夢……みたいな現実を目の当たりにしてしまった……という感じだろうか。
「……そんなにショックを受けていたの?」
「嫉妬で気が狂いそうになりつつも、それを作り上げた人を心から称賛したい気持ちがせめぎ合っている……そのように私には見えたわ」
「う~ん、職人気質というやつか……」
「とにかく、今は己の天狗っぷりを恥じて恥じて恥まくっているところだから、そっとしておいた方が良いわね」
「なんか、声を掛けなくても大丈夫っぽい?」
「今は何を言っても矜持を傷付けるだけよ。適当に酒でも飲んで女を買ってダラダラ過ごしていたら、そのうち立ち直るでしょ」
「……立ち直らなかったら?」
「その時は、それまでの男だったってだけでしょ」
そうキッパリ言い切った2号に、千賀子は苦笑を零すだけで否定はしなかった。
実際のところ、土師田は己を恥じるよりも前に、『風雲・夜叉』の制作を勧めなくてはならないし、それが義務である。
本人にとっては青天の
なにせ、どれだけ言い繕ったところで、やっている事は突然の仕事放棄である。
まだ千賀子だから許しているが、これが他所だったなら、激怒して電話して来るか、最悪は損害賠償からの業界から追い出されても不思議ではないぐらいの所業である。
それを分かっているからこそ、2号の言葉は冷たかったし、千賀子もそれを咎めようとはしなかった。
それは、いずれ土師田なら立ち直るから……という、ある種の信頼があるからこそ……とも言えることでもあった。
……。
……。
…………まあ、それはそれとして、ダメージが小さかったので、今回は早めに回復も終わり、千賀子は布団から出られたわけだが。
「はにー、ふら~っしゅ~!!」
ちょっとばかり、もうちょっと寝込んでいても良かったかも……そう、思う問題が発生していた。
「ほら、ママも!」
「は、はい……」
それは、ますます元気かつ生意気盛り(そこがマジカワイイby千賀子)になっていくエマが、最近新たにハマったこと。
「はにー、ふら~っしゅ~!!」
「ハニー、フラーッシュ!!」
それは、再放送されるアニメ……などに登場するキャラクターの、キメポーズを千賀子と一緒にキメること、である。
……令和生まれのキッズ、あるいは平成後期生まれのキッズにはいまいち想像しにくいかもしれないが、この頃のアニメなどはとにかく再放送が多かった。
さすがに全国放送されているチャンネルではあまりないが、地方局や、夏休み(学校)の時期にのみ……といった具合だが、その頻度たるや、現代の比ではなかった。
理由としては色々あるが、単純に子供たちからの視聴率が高く、番組を作る手間が省けるからだ。
現代のように、春アニメ、夏アニメ、秋アニメ、冬アニメといった具合に次から次にアニメが作られる時代ではない。
放映が開始したら、半年間~1年間放映されるなんてのがザラだった。つまり、現代のように供給が飽和になることもなかった。
また、放映時間帯に父や母がテレビを独占するので見られず、再放送されてから初めて視聴する(または、理解出来る年齢になってから)なんて話も多かった。
この話で有名なのが、『宇宙戦艦ヤマト』だろう。
現在では伝説的アニメの一つに数えられる『宇宙戦艦ヤマト』だが、実は放送当時は視聴率が悪く、3ヵ月以上も早く放送終了……すなわち、打ち切りになった。
それがどうして人気を得たのかって、再放送のおかげである。
繰り返し繰り返し再放送されたことで、徐々に作品を評価する(面白いと思う)子が増え始め……それが、現代にまで繋がったわけだ。
まあ、それだけ再放送が出来る=契約料が安いという話もあったとか、なかったとか……とにかく、そういう事情もあって、この頃は毎日どこかのチャンネルで再放送されていた。
そんな中で、だ。
エマがなんか急に熱を上げ始めたのが、1973年~74年にアニメ放送された、『キューティーハニー』。
……ではなく、『
千賀子は見ていないので知らないが、なんでも『ハニー塾』という、日本一の大和撫子を育てるための学校に通う主人公たちを中心とした、格闘乙女塾アニメらしい。
エマは、そのアニメの主人公のセリフ……胸にハニーの傷を持つキューティーハニーのキメ台詞が大好きらしく、それはもう、画面の動きに合わせてポーズをキメるぐらいで。
(は、恥ずかしい……さ、さすがに25歳過ぎて、アニメのキメポーズは……うごごごご……)
神社の中とはいえ、千賀子は羞恥心に頬を染めつつ引きつらせ……それでも、愛しい娘の要望に応えるため、一生懸命フラーッシュを行うのであった。
というか、手を抜くと一発でバレる。熱中しているようで、こういう時の子供の目をナメてはいけない。
まあ、それ以前に、エマが心からお母さんと一緒に楽しもうと思ってやっているのだ。
これもまた母の務めなり……そんな思いで、千賀子は羞恥心を多大に刺激されながらも、キメ台詞と共に、何度も何度もポーズを取るわけであった。
……。
……。
…………ちなみに、この一連の流れ、実は今回が初めてではないうえに、エマの好みには少年向けとか少女向けとかの区別はない。
その時、ビビビッと来たモノが全てなのだ。
なので、別にキメポーズだけではない。今回はキューティーハニーだが、その時々によって(つまり、その時のアニメによって)内容が異なるわけで。
「ママー! ぱいるだー、おん!」
「がしょーん! がしょーん!」
少し経った頃には、男の子向けのロボットアニメよろしく、2号と3号に両脇を抱えられたエマを、千賀子は肩車することで合体し。
「うおー! おっぱいミサイル!」
「ずどーん!」
エマの指示に従い、前開きの衣服をパッと開き、神通力にてブラジャーをミサイルの如く発射したりもするのであった。
……遠い昔から人々が追い求めた『超能力』を使って、こんなしょうもない遊びをしているなんて。
おそらく、後にも先にも千賀子ぐらいだが……当の千賀子は、大して気にしていなかったりする。
だって、来年にはエマも小学校に通い始める。そうなれば、今以上にエマの世界は外に広がっていく。
こんな感じで甘えてもらえるのも、今年が最後かもしれない。
そう思えば、我ながらデカいブラジャーだと思うそれをポーンとロケットのようにぶっ放すのも、なんだか楽しく思えてくる千賀子なのであった。
※ もうすぐ、行け行けゴーゴー編が終わり、新章へと突入します