ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
1977年(昭和52年)にもなると、もうすっかり昭和レトロと呼ばれる世界から様変わりし始めている時期……いや、まあ、少し誤解を招くか。
いわゆる、『昭和レトロ』という名称で好まれている部分は、主に昭和20~40年代な場合が多い。
理由としては様々だが、単純に昭和で一括りして覚えているからなのと、昭和50年代に入れば、レトロではなくちょっと古臭いという認識が強くなるからだろう。
と、いうのも、だ。
地方を含めて、この頃はもうすっかり各家にカラーテレビが当たり前になっており、現代ではけっこうお馴染みの家電がチラホラ姿を見せていたからだ。
たとえば、『電気ポッド』。
この頃にはもう、上部をプッシュするだけでお湯が注げる『エアーポット』というモノが販売されていた。炊飯器だって、炊飯機能と保温機能が一体化したモノが作られていた。
洗濯機だって二層式(洗濯と脱水が分かれている)が広まり、後10年も経たないうちに全自動洗濯機が登場する。
つまり、今とは形が違うし大型な場合が多いので物珍しさはあるけど、デザイン的な部分は別として、レトロな印象が崩れてしまうからだ。
言うなれば、アレだ。
スマホが当たり前の現代若年層からすれば、ポケベルなんてのは物珍しさぐらいは感じても、レトロに思えるか……といった感じである。
なので、ある程度の層からは『懐かしい』とは思われ、ある程度の層からは『古い』と思われる……言い方はなんだけど、そういう印象を抱かれやすいのが昭和50年代である。
まあ、それも、結局は時間の話だ。
あと10年20年も経てば、その分だけレトロと思う年代がズレるかも……それに、あくまでもソレらは家電などの話である。
視点を少し変えれば、現代に通じる様々な事柄が始まった年代でもあり、1977年(昭和52年)はそういう意味では、様々な始まりの年でもある。
たとえば、テレビ関係。
平成後期~令和に至ってもなお人気がある長寿番組やタレントたちがいよいよもってスポットライトが当てられていた頃でもあり、名前ぐらいは聞いたことがある……という感じのワードがチラホラ出てくるのも、この頃である。
現代では伝説的なコントグループ(実は、音楽バンドでもある)としてその名が知られている『ザ・ドリフターズ』が出演する、『ドリフ大爆笑』の放送が始まったのが、この年だ。
この番組は『8時だョ! 全員集合』に並ぶ、ドリフターズを代表するバラエティ番組の一つであり、長らく冠番組としてお茶の間を笑わせていた伝説的な番組である。
そして、この二つの番組(特に、ドリフの方)で象徴的なのが、当時売れっ子だった若手アイドルが多数出演しているということ。
現代の感覚だと、バラエティNGな歌手が普通にゲストとしてバラエティにも出ていた……と言えば、想像しやすいか。
当時、アイドルたちにとっては、ここで上手くやれば……という感じの、ある種の登竜門という目で見られていたのはあながち言い過ぎではない。
特に有名なのが、グループでは『キャンディーズ』や『ピンク・レディー』、『少女隊』だろうか……いや、少女隊は……秋元がプロモーション……話を戻そう。
個人では『由紀さおり』、『和田アキコ』、『森昌子』等々など、男女問わず、『え、あの人も出ていたの?』と驚いてしまうぐらいに多数の芸能人がレギュラー&ゲストとして出演していたというのだから、驚きである。
まあ、それも仕方がない。
なにせ、この頃のドリフターズは飛ぶ鳥を落とさんばかりの人気絶頂期であり、この番組への出演を切っ掛けに持ち直した……というのも、珍しくはなかったのだ。
……そして、視点をまた変えれば、だ。
1977年(昭和52年)といえば、日本で初めてとなる『静止気象衛星ひまわり』が打ち上げられた年でもある。
また、神戸市市営地下鉄初の路線が開通したり、日本初となる電子レンジと電気オーブンが一体化した『オーブンレンジ』が三菱電機より発売され。
漫画では、『コロコロコミック』が発刊された年であり、煙草で言えば現代にも続くロングセラー『マイルドセブン(現:メビウス)』が販売され。
任天堂が同社として初の家庭用据え置き型テレビゲーム『カラーテレビゲーム15』が販売され(ちなみに、当時の任天堂は後発であった)。
テレビアニメでは、『ヤッターマン』、『あらいぐまラスカル』、『無敵超人ザンボット3』、映画では『宇宙戦艦ヤマト』、などなど。
また、この年に生まれるモノがあったならば、様々な要因から旅立って行った者もいるわけで。
様々なアーティストに影響を与えた『エルヴィス・プレスリー』、や『マーク・ボラン』、ソプラノ歌手として名を馳せた『マリア・カラス』。
また、映画俳優としても有名だった『チャールズ・チャップリン』が亡くなったのも、この年である。
……ちなみに、チャップリンはひょうきんなコメディアンというイメージを持っている日本人は多いが、彼の若い頃はその甘いマスクによるファンが多かったらしく、様々な女性との付き合いがあったとか。
若い頃のチャップリン、マジでイケメン……話が逸れたので、戻そう。
とにかく、けっこう地味っぽい感じに思われる1977年だが、先述した『キャンディーズ』の電撃引退とかもそうだが、知れば知るほど地味な年じゃないやん……と誰もが思ってしまう、それが1977年なのであった。
……。
……。
…………で、正月も終わり、家族に挨拶を終えてから戻ってきた千賀子は、幼稚園の休みも終わったのでエマを送り出した。
その際、ぐずってくれたら合法的にお休みにできるのになあ……と思いつつも、バイタリティが半端無いエマは超笑顔で幼稚園に行ったので、千賀子は泣く泣く諦め……な、わけなのだが。
『──力が、欲しいですか?』
なんだろう、唐突に女神様がまた変な事を言い始めた。
それも、いつもの(=^ω^=)ではない。
なんかちょっと太い感じになっている(= ^ω^ =)な感じだ。めちゃくちゃ太ましくなっている時よりマシだが、コイツが太くなっている時はだいたいヤバい。
あ、いや、太くなっていなくてもヤバいのはヤバイのだけど、太くなっている時のコイツは本当に取り返しがつかないぐらいにヤバいのだ。
なお、場所は『神社』だ。
室内には分身とロボ子と、千賀子しかいない。まるでタイミングを見計らっていたかのように、今日は何の予定も入ってはいなかった。
「いらないです」
まあ、予定が有ろうが無かろうが、千賀子からの返答は同じである。女神様かナニカを言われた時は、一切の躊躇なく拒否するのが最善である。
『──力が、欲しいですか?』
しかし、残念なのは、女神様がまったく人の話を聞かないということだ。
この程度でへこたれてくれるなら、千賀子はもっと気楽に生きている。どう足掻いても欠片もへこたれないばかりか、足掻く姿が可愛いと本気で思っているのが、女神様なのだ。
それが最善だとしても、望んでいる結果に至る可能性は極めて低いというところだが……まあ、いい。
「欲しくないので、何もしないでください」
満面の笑みで全拒否し、そのまま部屋を出ようと千賀子は──が、しかし。
『別次元からの侵略者がそろそろ活動を始めるようなのですが、よろしいのですか?』
「待って、どういうこと?」
あまりにも、あんまりにも、無視するには問題が有り過ぎるワードが飛び出したことで、千賀子の逃走は失敗に終わった。
いや、というか、それ以前に、だ。
反射的にロボ子へと視線を向ければ、『え? 知らんよ、それ?』みたいな感じで困惑した様子で首を傾げるロボ子の姿が……つまり、ロボ子がやらかしたわけではない?
……。
……。
…………しばし迷った千賀子だが、断腸の思いで女神様に尋ねた。
女神様は千賀子に対して嘘はつかないので、『侵略者』というやつが活動を始める……というのは本当の事なのだろうと思ったから。
『──はい、簡潔にまとめますと』
そうして、女神様の口(パッと見、口は見当たらないけど)から詳細を聞けば、だ。
まず、『侵略者』というのは、少しばかり言い回しが違う。
さっそく嘘を付いているのではと思うかもしれないが、女神様は興味が無いから区別が付いていないだけで、人類に対しては侵略をするのだから間違いではない。
何がどう違うのかって、その『侵略者』……外からではなく、内部に居るのだ。
そう、そいつらは人間がこの地上で繁栄するよりも前からこの地上で暮らしていた先住民であり、肉体を捨てて精神生命体(エネルギー生命体?)になった種族らしい。
なんでも、現在の人類とは比べ物にならないぐらいに発達した高度な科学文明による社会を築いていたらしく。
肉体を捨てたのも、新しい肉体へと自由自在に意識を転送させることが可能なぐらいで、肉体の重要度が低かったから、らしい。
まあ、他には、転送した身体は果たして己なのかという疑問にある時から考えるようになり、唯一の自分である『魂』に固執したのが一番の要因らしい。
ロボ子が気付けなかったのも、ロボ子を作った異星人たちの文明でも解明しきれないぐらいに高度だったから、らしい。
ちなみに、今まではこの世界より薄皮一枚分の次元と次元の狭間にある特殊な空間に潜んでいたらしく、そもそもからして、ロボ子では絶対に見付けられないようになっている、とのことだ。
……で、だ。
それほど高度な文明を持てて、肉体を捨てて、次元の狭間で平和に暮らしていたのに、どうして今更になって侵略行為を始めようとしているのか?
それはひとえに──『退屈を持て余し過ぎたから』、らしい。
肉体がもたらすあらゆる苦痛から解放され、精神生命体ゆえにどんな姿にもなれて、どんな快楽も意志一つで再現できるようになり、外敵に襲われる心配も永遠に無くなった。
最初はもう、それはそれは誰も彼もが浮かれ、天国としか言い様がない日々を送っていたらしい。
しかし、それが1000年、5000年、10000万年という月日を経るに連れて……『侵略者』たちの心に、ある感情が芽生え始めていた。
それは、『飽きる』ということ。あまりにも満たされ過ぎた結果、あらゆる刺激に何も感じなくなってしまったのだ。
……そう、かの種族もまた、長き時を生きる者たちが必ず発症する、『退屈』という死に至る病を発症し始めたのだ。
いかに優れた文明、その果てに全ての苦痛から解き放ったとしても、知性がある限りは、長き時がもたらす『慣れ』という適応からは逃れることができなかった。
そう、かの種族は慣れてしまった。あまりにも長く生き過ぎたせいで、全ての事に心がまったく動かなくなったのだ。
それなのに、かの種族は死を恐れた。それでもなお、死にたくなかったのだ。
結果、かの種族は……徐々に狂っていった。
精神生命体となり、死とは無縁の空間に居る事で不死になったおかげで、自殺も出来なくなったかの種族は……何時しか、捨てたはずの肉体に固執するようになり。
そして、絶対に外敵が来ないようにしていた特殊空間を自ら破壊し、次元の狭間を無理やりこじ開けて、千賀子が生きるこの世界へとやってきている……というのが、女神様の語った大まかな話であった。
女神様曰く、『肉体の死から解き放たれ、万が一を想定して外部から魂を傷付けられないよう次元の狭間に逃げた事で疑似的な不死になったけれども、永劫に続く時への耐性を軽く考えていたのでは?』、とのこと。
ちなみに、別次元ってことは別の世界かと尋ねてみたら、『人から薄皮を剥いだら別人になるのか?』という、分かるようで分からない返答をされた……で、だ。
「……それで?」
『──力が』
「いや、なんで女神様は私に新たに追加しようとするの?」
『──愛し子の巫女としての『力』は、護りの力。何かを破壊し倒す力とは、本来真逆なモノ』
「……ああ、なるほど。1000℃の熱まで吸収する水弱点の炎タイプに、5000℃の炎をぶつけて力技で倒すようなものか」
『──だいたい正解です』
「巫女としての力だと、めちゃくちゃ効率が悪いわけか……」
『では、力を授けましょう』
「は!? ちょ、まだ受け取るとは──」
千賀子の言葉に、ちょっとばかり太ましくなった女神は──えい、と千賀子の頭に手を置いた。
拒否権が無い……いやいや、違う違う。
女神様は既に、千賀子の心を見ていた。
口では色々言いつつも、心ではなんとかするためには『力』を授かるしかないと喜んでいるのを把握していたから、すっ飛ばしてさっさと『力』を与えたのである。
実際、千賀子もそれはイヤイヤだけれども理解していた。
なので、遅かれ早かれ受けるつもりではいたが……せめて、心の準備ぐらいはさせろと思ったのは、当然の話だろう。
……。
……。
…………そうして、漫画的表現に例えると『カッ!』みたいな感じで千賀子の全身が光ったかと思えば、次の瞬間には治まり……ロボ子が無表情に用意した姿見には!
「 」
そこにはなんと──妙にファンシーというか、少女っぽいというか……うん、まあ、はっきり言うと、だ。
魔法少女……そう、魔法少女(昭和風味)の恰好をした千賀子が、立っていた。
そう、あくまでも、格好だけである。
欧米人でも上位に入るダイナマイトボディをそのままに、無理やり……こう、ファンシーなコスプレをしているようにしか見えない、その姿は。
「うわキツ……」
2号からは、率直な感想を零され。
「うわキツ……」
3号からも、率直な感想を零され。
「うわキツ……」
4号からも、率直な感想を零され。
「似合っていますよ」
ロボ子からは、称賛の言葉を送られ。
『──能力使用回数は、ガチャで補充されますよ』
(=^ω^=)からは、目に見えて太くなりながらも、地獄のガチャ要素を提示され。
「 」
遅れて、ようやくコレが現実であることを理解した千賀子は。
「 」
その頬を伝う、大粒の涙を見て、( = ^ ω ^ =)なんかどんどん太くなっている、女神様を他所に。
無言のままに……そっと布団を敷いてくれたロボ子に手を引かれて、横になったのであった。
次回より、『激動昭和・魔法少女(2×歳うわキツ)千賀子―別次元からの侵略者―』 編となります。