ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──新たな力である『魔女っ子のドレス(うわキツ)』について説明しよう!
このドレスだが、その名の通り魔女っ子が着る由緒正しき服装であり、女の子が大好きなハートマークが描かれている。
どこにって、胸の谷間の辺りに。
腰の当たりにはウエストを細くみせるよう締め付けがなされており、腰の後ろで大きなリボン結びになっている。
ワンピースの裾にはフリルの他に、パニエでも仕込ませているのか、何もしていないのに裾が膨らんで見える。
靴は真っ赤な革靴で、長い脚が実に強調されている。
どういうわけか、振り返ったり驚いたりした時にスカートがわずかばかり浮いて、中の白いパンティがチラッと露わになる。
ちなみに、このパンツ……露わになるたび柄が変わるという不思議仕様になっている、余計な機能ばかり充実したパンツだ。
頭には花柄のヘアピンがセットされ、どういうわけか感情が高ぶると髪が逆立ったり、ドレスを着ている状態で神通力を使うと、何故か小さなハートマークが飛んで行ったり……まあ、とにかく、だ。
誰がどう見ても恥ずかしくない(女神談)、この世で一番可愛くて女の子たちの注目を集めちゃう魔性の魔女っ子、千賀子が爆誕したわけである。
……ちなみに、だ。
「なんだろう、前世にあった出来の良いAV女優みたいだわ」
2号からの忌憚なき率直な感想がソレで。
「谷間がパツパツ、太ももムチムチ、これが魔女っ子……?」
3号からの忌憚なき率直な感想がソレで。
「お願いですから、エマの前にはその姿を見せないように」
4号からの忌憚なき憐れみの言葉がソレで。
「ご安心を、適正体重です。ただ、一般的な魔女っ子とされるキャラクター像より、最低でも10kg以上重いだけです」
ロボ子からは、どうにも的がズレたフォローをされて。
『──冷静に考えて、可愛い愛し子が可愛い恰好をしたらもう可愛いのが当たり前だから可愛いのでは?』
女神様からは、もう聞くだけ無駄な感想になっていない感想をされて。
「……分かった、もうさっさと異次元の侵略者どもをぶち殺そう、それで全部解決だ。この地上は我らのモノぞ!!」
修羅の境地に達した千賀子は、己の恰好から目を背けたまま宣言をしたのであった。
なお──客観的な事実を述べるならば、だ。
まず、千賀子の美貌は大人である。
その美しさに思わず胸を高鳴らせてしまう者は多いが、100人中100人が成人した女性であると判断する顔であり、子供ですら○○ちゃんではなく、○○お姉さんと判断する顔でもある。
千賀子の身長は、成人女性の平均値である。
骨格や立ち振る舞いからして、年頃の少女には見えない。なんだかんだ言いつつ成人女性である千賀子はもう、子供っぽい仕草は出来ても子供にはなれないのだ。
体重も同様に成人女子……いや、むしろ、胸が出ていてお尻と太ももが柔らかい分、体重は有る方だ。
そう、体形からして、千賀子は誰が見ても子供ではない。
屈めば深い胸の谷間が覗けるし、汗を掻けば子供特有のソレとは違い、妙齢女性特有の甘い匂いがうっすらする。
しゃがめば畳まれた太もも肉がむっちりとはみ出るし、動いた拍子には抑えきれない膨らみがたぽんたぽんと弾んで大きさを強調するし、お尻だってプリプリっと張りが良い。
どう足掻いても、どう頑張っても、『魔女っ子のコスプレをしたボインボイン(死語)でムチムチな成人女性』にしか見えない……それが、今の千賀子であった。
「……で、女神様。巫女的パワーが使えないなら、どうやって戦うのですか?」
勘違いをしてはいけない。魔女のコスプレではなく、魔女っ子のコスプレだ。
現代に例えるなら、日曜朝8:30分ぐらいに放送されたりする、歌って踊るキラキラ魔法少女──の、格好をした2×歳女性である。
それゆえに、醸し出す空気はあまりにも……止めよう、これ以上はあまりにも尊厳を蔑ろにする。
『──そうですね、まずはその服とセットになっている、魔法少女のステッキをお渡ししましょう』
心底嬉しそうにしている女神様は、ニコニコと……それはもう嬉しそうに、自らの腕を一本伸ばすと──それを、ぶちっと千切った──はっ?
突然の奇行にドン引きを通り越して物理的に距離を取る千賀子たちを他所に、千切れた腕はビクビクっとケイレンしたかと思えば……ビキビキと軋んで変形し、パッと見は棒状のステッキになった。
とはいえ、あくまでもパッと見である。
変形しているので分かり難いが、よくよく見やればそれがナニカの腕なのが分かる。だって、爪とか指とかは原形が残っているから。
ぶっちゃけ、日曜朝8:30の魔法少女が装備する類のステッキではない。
どう贔屓目に考えても、無限に生きては死んで焚き火に当たってまた繰り返す闇の魂というか、外宇宙よりやってきている実は地球の支配者だとか、そういう類の作品に登場するようなアレである。
冷静に考えれば、女神様の奇行に慣れ過ぎてちょっとやそっとではビビらなくなった千賀子がおかしいだけで。
一般人がこのステッキを目にしたら……例外なくその場で嘔吐し、這いつくばって許しを乞い、女神を称える言葉を繰り返すだけの廃人になるのが確定な……そういう禍々しい感じのアレであった。
『──はい、どうぞ』
「……こ、これで、叩き殺せば良いんですか?」
差し出されたステッキ(妙に生暖かい)を、心底嫌そうな顔で受け取った千賀子が、そう尋ねれば。
『──いえ、それは触媒です。魔法少女には必須の、敵を倒すための魔法をストックしましょう──ガチャで』
女神様は、そう言って、どこからともなく『ガチャ』用のルーレットボードを取り出した。
そこに記されているのは、いつものガチャとは違い、『ファイア』とか『アイス』だとか、なんかとっても分かりやす──あ、魔法少女だから、変に凝った名前じゃないのか。
変な所で気が利くというか、こだわる神様だなあ……と思いつつも、グチグチ言っても始まらないので、千賀子は促されるがまま『お試し分』ということで、ダーツを投げた。
『N:ファイア(火の玉を発射する)』
すると、名前からして攻撃魔法なのが当たった。これまた名前からして、だいたい想像できるから地味に助かる。
……で、だ。
巫女的パワー……神通力とは違い、どうやら魔女っ子(うわキツ)系のこれらは感覚的に扱い方を理解出来る類の恩恵ではないようだ。
ただ、まったく分からないわけではない。
魔女っ子系のソレがどれぐらいの数、どれぐらいの種類が己の中にストックされているのかは、感覚的に把握できていた。
なので、女神様へ素直に尋ねたら、『──掌を対象に向けて、唱えたらOKです』と──ステッキは使わんの?
『──しっかり、握っていてくださいね❤』
その言葉と共に、ステッキを掴んでいる部分が変形し……まるで、千賀子を労わるかのように、スルリと握手をする形になった。
あまりの気色悪さに、ゾゾゾッと千賀子の全身に鳥肌が浮かぶ。
いくら図太くなっているとはいえ、女神様の気色悪さは人間の基準を大きく超えている。常人ならば即座に自殺しているような事も笑顔で仕出かすのだからまあ、当然と言えば当然か。
反射的にステッキを放り投げようとしたが、ガッチリと握手をされた状態で固定されているので、ハズレない。
話を聞けば、どうやら今の状態になっている時は『ステッキと握手(邪悪)』が強制的のようで、変身を解除すれば自動的にステッキも消えて介抱されるようだ。
……じゃあこれ、完全に装備を外せない呪いのアイテムじゃん。
そう思った千賀子だが、言ったところで改善される事はない。諦めて、『お試し分』を全て使ってガチャをしたわけだが……で、だ。
『N:ファイア(火の玉を発射する)』
『N:アイス(氷の玉を発射する)』
『N:サンダー(電撃を発射する)』
『お試し分』なだけあって、結果は渋い。
いや、まあ、下手にレアなのが当たっても困る予感がするから良いのだけど、それはそれで、いざという時の切り札が無くなるので悩みどころだ。
神通力ではダメージが通り難いと分かっている以上は、限られた攻撃手段を少しでも増やしておきたい……そう、思うのは当然の事で。
『SR:バニッシュ(対象を消滅させる)』
そんな千賀子の物欲センサーを察知したのか、それとも『うんのよさ』が頑張ってくれたのか、最後の『お試し分』では良いやつが当たった。
……。
……。
…………当たったのだが、これらの魔法……実際に使うと、どんな感じになるのだろうか?
試し打ちをした方が良いのだろうけど、なんか勿体無い気もするし、神通力とは違って、明確に対象を攻撃するための『力』だから、場所を選ぶ必要もある。
下手に試し打ちして周りに延焼とかしたら大変だし、万が一他所に被害が出たらもっと大変だ……と、考えていると。
『──では、お試し用に私が捕まえておいた『侵略者』を的にしましょう』
「は?」
なんだろう、あまりにも信じ難い発言が女神様より飛び出したことで、思わず目を瞬かせる千賀子……を、他所に、だ。
スーッ、と。
音も無く、千賀子たちは境内に移動していた。それに驚くよりも前に、ドテッとどこからともなく落ちてきたのは……異形の怪物であった。
──見たままを語るなら、5人の人間が一塊に融合した浮遊する、おぞましい造形のヒトデである。
5人の人間が頭を中心に寄せ、全員が手を握り合った状態で融合している。中心部には境目がなくなった10個の目と5つの口が、まるで威嚇をするかのように開閉を繰り返していた。
『──さぁ、アレを倒すのです』
「待って、思っていたよりもずっとおぞましい造形をしていたのだけど?」
『──今こそ、可愛い姿で可愛く倒すのです』
「こんなん可愛らしさで倒せる類ではないよね? どう見ても、重火器で制圧して殺しきる系では?」
これには、さすがの千賀子も思わず背筋に怖気が走った。
何と言うべきか、時間帯が違う。
日曜朝8:30放送のアニメに登場するようなファンシーな敵ではなく、深夜1時とかに放送される大人向け魔法少女に登場するような造形だ。
本当に、色々な意味で図太くなっている千賀子だからこそまだ耐えられるが、一般人はそうもいかない。
なにせ、巫女的センサーがビンビンに感じているのだ。
眼前の『侵略者』……見た目もそうだし、空中を浮遊している時点で普通ではないが、おそらく、視界に納めるだけで影響を与える類の化け物だ。
なるほど、確かにコレはどうにも相性が悪い……と、千賀子は率直に思った。
見た目の悪さにまず注視してしまうが、どうにもそれだけではない。
こう、オーラ的なバリアを張っているようで、これでは本質的には『護り』にある千賀子の巫女的パワーとは相性が悪い。
前知識もなくこんなのと遭遇したら、その場で腰を抜けてしまうぐらいなら良い方だ。
最悪の場合、放たれる怖気《オーラ》に耐えきれず、精神に異常を来たしてしまうところだろう。
『……ツ ……ツ ……ツ』
加えて、眼前の邪悪なヒトデマンは、五つもある口からナニカをブツブツと呟いている。
なんと、おぞましい呪詛か。
これは、存在してはならない。存在しているだけで、生きとし生ける全てを狂わせる……まさしく、狂いきった怪物だ。
──ならば、討伐することに迷い無し!
そう決断を下した千賀子は、邪悪な怪物へ──この世界に姿を見せた『侵略者』に向かって──掌を向けた。
「『ファイア』」
そう言葉に出して念じた瞬間、千賀子の掌より生じたバスケットボール大の炎の塊が放たれ、一直線に侵略者へ──直撃した。
炎は、瞬時に侵略者の総身を覆う。
その熱気は凄まじく、距離があるのに千賀子の方にも伝わったぐらいで、『神社』の境内でなければ、周囲に延焼しても不思議ではないほどであった。
……だが、しかし。
『……ツ ……ツ ……ツ』
侵略者の回復力は、その熱気を持ってしても越えられないようだ。
炎は、確かに侵略者の総身を焼いている。
だが、侵略者の身体は、どうやら常識では説明がつかないほどの再生能力を有しているようで……え、いや、お試しで、これ?
「女神様、マジでこれ倒せるの?」
『──倒せますよ』
思わず尋ねれば、女神様はあっけらかんとした様子で……っと、その時だ。
「……部分的にですが、解析できました」
それまで、静観に徹していたロボ子である。
ロボ子はどうやら沈黙を保っていたのではなく、『侵略者』という存在がどういうモノなのかを調べていたようだ。
「どうやら、『侵略者』へダメージを与えるためには、精神的なアプローチを行う必要があるようです」
「精神的なアプローチ?」
「そもそも、『侵略者』は肉体を自ら捨てた存在です。今は何らかの方法で肉の身体を形成出来ているようですが、その本質は魂……スピリチュアルエネルギーと言っても過言ではありません」
「……ゴーストタイプってやつ?」
「概ね当たっています。なので、物理的な外傷を与えてもダメージにはなりません。精神的なショックを与えることで、始めてダメージが通るようになる……と、思って良いでしょう」
「……とは言っても、どうしろと?」
そう言われても、見た目から、どのようなアプローチを仕掛ければ良いのかまったく見当がつかない。
心を読もうにも、千賀子の巫女的シックスセンスが『絶対に止めろ!』と激しく警報を鳴らしているので、それも……が、さすがはロボ子である。
「そう言われると思いまして、急遽こんなものを作りました」
その言葉と共に、ロボ子が……何時の間に用意したのか、とても大きなラジオカセットレコーダー(略して、ラジカセ)をそっと出してきた。
「なに、それ?」
「今年発売予定のラジカセをモデルに作りました」
「……それで?」
「先ほどから、侵略者は何かしらの声を発していると推測されます。通常の聴覚ではただの雑音にしか聞こえませんが、エネルギーを周波に置き換え、ノイズを消して、調整して音声に直します……例えば、このように」
ぽち、と。
なんだかアナログチックなボタンを押すと同時に、キュルキュルとラジカセ内部で音が鳴る……それから、少しして、カチッと止まったかと思えば……調整された音声が流れた。
『 うわキツ 』
瞬間、千賀子を含めた分身たちの動きがピタッと止まった。
『 うわキツ うわキツ 見たい うわキツを 』
だが、無情にも音声は途絶えることなく。
『 無理すんなババァ そんなババァが見せるキツイ恰好 良いよね 』
なんか、急に饒舌になったような気がしなくもない、眼前の侵略者の内心が、これでもかとラジカセより流れ続けた。
……。
……。
…………無言のままに、千賀子は今もなお燃えたままの侵略者に背中を向ける。それを見て、分身たちがタイミングを見計らい……びゅう、と風を放った。
「……いや~ん! エッチな風!」
すると、あら不思議。
大して強くはないのに、吹いたそよ風はヒラリと千賀子のワンピースの裾をめくりあげ、真っ白な……白くて大きな尻を覆い隠す花柄のパンツが露わになった。
『 うわ キツ 』
瞬間、それまで燃えても燃えても再生し続けていた侵略者の身体が一気に燃え上がった。そして、今度は再生することなく……灰になり、跡形もなくなってしまった。
……。
……。
…………?
……。
……。
…………???
これでもかと困惑している千賀子の視線が、ロボ子へと向けられる。ロボ子は、全て分かっていますと言わんばかりに、答えを教えてくれた。
「要は、侵略者たちは個々人の願望を叶えるために、この世界へ来る。それが、結果的には侵略という形になるわけです」
「つまり?」
「ほら、『死ぬ前に○○が見たかった』とか、『××しないと死んでも死にきれない』とか、『童貞卒業するまで絶対に死んでたまるか』、とか」
「……つまり?」
「あの侵略者は、気が狂って記憶を失って自我を失って全てが頭の中から消えた──その果てに残ったのが、『うわキツを最後に見たい』という、想いだったのでしょう」
「え、マジで言っているの?」
思わず、千賀子は真顔になった。
「はい、マジです」
でも、ロボ子は千賀子以上にマジ顔であった。
「まさかとは思うけど、他の侵略者は違うよね?」
だから、千賀子は真顔で尋ねる。
「いえ、おそらく、波長パターンからして、侵略者たちは濃厚な『うわキツ!』を見たくて来る可能性が極めて高いかと」
対して、ロボ子も真顔で答えた。
必然的に、千賀子の視線は分身たちへ……1人の例外もなく、物悲しい顔で視線を逸らす分身たち……女神様を見やれば……あ、いつも通りだ。
どうやら、これは現実らしい。
それを、改めて理解させられた千賀子は。
「……なんなの、これ? いったい私はどうすれば良いの?」
怒りを覚えるよりも前に、困惑するしかなかった。