ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第179話: 日曜朝8:30分放送『魔法少女チカコ』

 

 

 

 ──『ひろしまフラワーフェスティバル(略してFF、ファイナルファンタジーではない)』

 

 

 それは現代にも続いている(コロナ時は感染対策でお休み)広島のお祭りの一つであり、その始まりは1977年(昭和52年)からである。

 

 より正確に言うなら、その2年前の1975年に平和大通りにて行われた、広島東洋カープのリーグ優勝パレードがキッカケなので、始まりはそこからなのかもしれない。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 この優勝パレードが行われた当時、当時としては異例の大人数が動員されたことをキッカケに、平和大通り一帯を会場とした、新たに人を呼び込める祭りを作れないかと話が持ち上がったのだ。

 

 地元の新聞社が中心となり、商工会や市側との間で長らく調整が行われた結果、1977年にようやく開催となったわけである。

 

 場所が広島なので、反戦とか平和とかを願って……と誤解されがち……いや、当初の理念からして別に間違っているわけではないのだが、内容はそこまで堅苦しくない、普通おお祭りである。

 

 祈りを込めた祭りであるのは事実だけど、けしてそれだけではない。みんなで盛り上げる、そういう祭りでもある。

 

 花などで着飾った花車など(当時は、山車と言われていたとか)の行進に合わせて、この日のために練習した様々な団体が衣装を着て行進をしたり、音楽隊が合わせて行進したり、パフォーマンスをしたり。

 

 沿道に並ぶ様々な屋台や、人気歌手や芸人などが参加したり、市民団体によるステージが開かれたりなど、中にはコスプレして参加する者もいる。

 

 なんなら、ミスフラワーというのがあったり、まあこれは『ミス・コンテスト』への批判が出て名称が変わったり、最近のでは男女平等の観点からミスアンバサダーに名称が変わったりもした。

 

 ちなみに、1977年のフラワーフェスティバルでは、長さ10mにもなる巨大こいのぼりが制作され、子供たちが自ら手で押して行進したり。

 

 地元企業などが協力して作った、ヨーロッパの古城を模した花車(アンデルセン号)や、アンデルセン童話の『人魚姫』をモチーフにした衣装を着た女性や着ぐるみを着た人が参加し、風船やフランスパンを配ったりするといった事も行われていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、まあ、そんな祭りに飛び入り(なお、記録上は……)参加することになった千賀子だが……これがまあ、大変である。

 

 

 なにがって、まずは関係者への挨拶から……なのだが。

 

 千賀子としては、普通に実行委員会へと、返送したロボ子(付き人設定)を連れて挨拶に伺っただけである。

 

 

「こんにちは、秋山千賀子です」

「あっ、お話は伺っておりますよ、秋山さんですね」

 

『──っ!?!? (部屋の奥より、信じられないモノを見たかのように硬直する職員が数名)』

『え、マジで? 本物? そっくりさん……では、まさか……』

 

 

 ……そんな、背後の呟きに気付かない担当者さんは、千賀子に笑みを向けた。

 

 

「なんでも、先導用の馬をボランティアで貸してくださるとか」

「はい、さすがに走らせるのは危険ですが、私の方で既におとなしく行進させる程度には調教しておりますので、危険はありません」

「ありがとうございます。再三の確認で申しわけありませんが、本当に謝礼は出せませんよ? せいぜい、商工会の名前が入ったタオルとかそれぐらいですけど……」

「構いませんよ。是非とも、私が所有している馬を見たいと子供からのお手紙をいただきまして……私としても、ハレの舞台に愛馬をお披露目できる機会ですし」

「そう言っていただけますと……ちなみに、どのように先導させるのですか?」

「人間で換算すると高齢に差し掛かっている馬もおりますので、基本的には手綱を引いてでの先導になるかと」

「なるほど、いやあ申し訳ない。実は私、馬の事は本当に無知の素人でして……馬に名前があるのでしたら、名札とかご用意出来ますが……」

「あ、それなら大丈夫ですよ、ほら」

 

 

 千賀子の視線を受けたロボ子が頭上に抱えていた大きなダンボール箱より取り出すのは、優勝レイ(馬の首に掛ける飾り)。

 

 片側には、『第33回日本ダービー』。

 片側には、『テイトオー号』。

 

「テイトオーの優勝レイは借り物みたいなものですので、特に大事にしてくださいね……それで、こっちも」

 

 片側には、『第36回日本ダービー』。

 片側には、『ダイシンボルガード号』。

 

「それもこれも、馬の首に掛けたら目立つので大丈夫です。もちろん、参加させる馬のは全て用意しています」

 

 片側には、『第39回日本ダービー』。片側には、『ロングエース号』。

 片側には、『第14回宝塚記念』。片側には、『ハマノパレード号』。

 片側には、『第33回皐月賞』。片側には、『ハイセイコー号』。

 

「ニルキングという馬もいるのですが、先日から少しばかり調子を崩しているようでして……元気な馬だけになりますけど、先導馬として貸し出す予定です」

 

 片側には、『第42回日本ダービー』。片側には、『カブラヤオー号』。

 片側には、『第36回オークス』。片側には、『テスコガビー号』

 

「どうでしょうか、こういうのを首に掛けて……良く見えますでしょう?」

「お~、これは立派な……用意が万全ですね」

 

 優勝レイを広げて朗らかに笑う千賀子と、「名前を呼ぶとき、便利ですなあ」何も分かっていない担当者。

 

 

『──っ!?!? (部屋の奥より、間近で拝見する優勝レイに堪らず椅子から転げ落ちる人が数名)』

『ほ、ほ、本物の優勝レイ……! 日本ダービー馬の……そ、それに、あのハイセイコーの!? カブラヤオーも!?』

 

 

 なにやら、奥の方が騒がしくなっているが……構う事なく、千賀子は朗らかに言った。

 

 

「私の伝手で愛馬たちのボディガードを付けますので、そちらの方も少しばかりご協力をお願いできますか?」

「それは構わないのですが、馬の扱いに関しては誰も彼もが素人ですので、無いよりはマシ、責任は取れませんけど、本当によろしいのですか?」

「安心してください、愛馬たちの安全は私の方で護ります。ただ、そのための人員が入るということだけは御先に……」

「分かりました、それならば、話を通しておきましょう」

 

 

『い、いやぁぁぁああああ!!??!??!! (馬の価値が分かっているので、今更ながら責任の重さに気付く)』

『おね、お願い、当日休ませて! ボーナスカットでいいから! なんならボーナス無しでもいいから!』

『逃がさん、おまえだけは……おまえも、俺たちと同じ苦しみを背負うのだ……!!』

『イヤッ! イヤッ!』

『それって、1頭あたり億単位になるかもしれない馬の責任を俺たちが背負う……ってこと!?』

『イヤッ! イヤッ!』

『泣いちゃった!!』

 

 

 とまあ、そんな感じで、どういうわけか一部職員を泣かしてしまう事態になったり……また、それは商工会に挨拶に行った時も同様だ。

 

 

「こんにちは、秋山千賀子です。遅れましたが、明日開かれるフラワーフェスティバルの挨拶にお伺いしました」

「──ああ、秋山さん! お待ちしていました。さ、ささ、どうぞこちらへ!」

「いえいえ、御気になさらず。横入りするような形で参加させていただく身でありますので……」

「そんな事を仰らないでください! 秋山さん、私たちは忘れていませんよ、5年前のあの日の事を!」

「5年前、と言いますと……」

「そうです、昭和47年に起こった広島豪雨……あの時、貴女様が寄付してくださった多額の義援金……それのおかげで、どれだけ助かった者が居た事か!」

「親戚の婆さんが、あんたの送ってくれたお金で毛布や食料が提供されたって……遺言に、あんたに会えたら感謝していたって伝えてほしいって……!」

「ありがとうございます! 本当にありがとうございます! 弟家族が巻き込まれて、でも、秋山さんが迅速に救援物資の寄付をしてくれって……」

「雲の上の人に、直接お礼なんて言えないって思っていたけど……こうしちゃいられねえ、みんな、胴上げだ!!」

「おう!!!!!」

「え? いや、そんなの別に──」

「わーっしょい! わーっしょい!」

「わーっしょい! わーっしょい!」「わーっしょい! わーっしょい!」

「わーっしょい! わーっしょい!」「わーっしょい! わーっしょい!」「わーっしょい! わーっしょい!」

「わーっしょい! わーっしょい!」「わーっしょい! わーっしょい!」「わーっしょい! わーっしょい!」「わーっしょい! わーっしょい!」

「……気の済むまでしてください」

 

 

 なんだか有無を言わさず胴上げされて、それはもう虚無の顔で宙を舞ったり……とにかく、行く先々で、想定外の問題が発生して、色々と大変であった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、当日。

 

 

 満足に食事すら取れなくなっている一部職員と、勘の良い職員たちを他所にスタートしたわけだが……これがまあ、中々の盛況っぷりであった。

 

 この頃の競馬人気は相当なモノで、競馬は見なくとも名前ぐらいは知っている人だって大勢いる。

 

 特に、ハイセイコーの人気と来たら、相当なもので。

 

 テレビや新聞もそうだが、歌が作られ、アイドルホースとして有名になっていたから、当然といえば、当然か。

 

 もちろん、人々の注目を集めたのは、ハイセイコーだけではない。なにせ、G1(この頃はまだグレード制ではないけど)だ。

 

 もしかしたら勘違いしている人が居るかもしれないので補足しておくが、G1馬がこういった場に姿を見せることはまずない。

 

 稀とか、そういう話ではない。そもそも、そういう場にG1馬を出すということ自体がありえないのだ。

 

 現役は当然のこと、引退していても、それは同じ。

 

 ぶっちゃけてしまうなら、ボランティアでG1馬を動かす千賀子の頭がおかしいのである。

 

 見物客の中に、先導する馬がどれだけヤバい価値の馬なのかに気付き、思わず4回ぐらい周囲を見回す……それだって、なんら不思議ではない。

 

 千賀子でなかったら脳の血管切れても不思議ではないぐらいの所業……そりゃあ、ボーナス返上してでも責任逃れしようとするわけである。

 

 でもまあ、何も知らない一般人からすれば、『馬って、あんなにデカいんだなぁ……』ってなもんで。

 

 やはり、現代に比べて競馬人気があるとはいえ、直接馬(それも、サラブレット)を見るのは初めてという人は相応に多い。

 

 特に、『賭け事の場に子供なんて絶対に駄目!!』という考えの母親は多く、始めてみる馬の姿に興奮する子供は、1人や2人ではなかった。

 

 普段なら顔をしかめる母親も、場所が場所だし、賭け事とは無縁な空気も相まって、動物園の動物を眺めるかのように、子供と一緒になって指差している者も多かった。

 

 

 ……まあ、それは、だ。

 

 

 行進の途中……ハイセイコーの背に乗って手を振る千賀子の……一線を凌駕する美貌が目立っていた……という理由もあったのだけど。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そんな中で、人々はまだ気付いていなかった。

 

 そう──この世界は、狙われているということを。異次元からの侵略者によって、危機的状況に陥ろうとしていることに。

 

 

『──(=^ω^=) 大変です、侵略者(インベーダー)です』

「──っ、びっくりした。いきなりなんですか、マスコットみたいに小さくなって……え、まさか、マスコットのつもりなんですか?」

『──魔法少女には、付き物でしょう?』

「なんておぞましいんだ……!!!」

 

 

 そして、そんな侵略者に対抗するために生み出された、全長約20cmの『ぷち女神』が、ハイセイコーの背に乗る千賀子へ警告を発した。

 

 ……ちなみに、『ぷち女神』は常人の目には見る事は叶わない。

 

 千賀子のような巫女的シックスセンスを持っていなければ、その姿を確認することは不可能である。

 

 まあ、なんの対策も取らずにその姿を見てしまったが最後、高確率で根源的な恐怖に精神を焼かれ、良くて廃人になってしまうところだが……で、だ。

 

 

『──さあ、変身ですよ』

「はっ? いや、ちょっと待っ──待って! せめて顔だけでも隠させ──」

 

 

 有無を言わさず、千賀子は魔法少女へと変身させられた。まるで深夜に放送される大人向け魔法少女のような、強引さである。

 

 

 ……さて。

 

 

 ここで、思い出そう。

 

 千賀子が変身する魔法少女は、少女ではない。少女の皮を被った、うわキツ魔法少女2×歳(目逸らし)である。

 

 胸の谷間には、女の子が大好きなハートマークの切れ込みが。

 

 ウエストを細くみせるよう締め付けがなされた腰の後ろには、大きなリボン。

 

 ワンピースの裾にはフリルの他に、パニエでも仕込ませているのか、何もしていないのに裾が膨らんで見える。

 

 真っ赤な革靴に、大人のように長い脚。

 

 どういうわけか、何もしていないのにスカートがわずかばかり浮いて、中の白いパンティがチラッと露わになる。

 

 頭には花柄のヘアピンがセットされ、どういうわけか感情が高ぶると髪が逆立ったり、ドレスを着ている状態で神通力を使うと、何故か小さなハートマークが飛んで行ったり……そのうえ、だ。

 

 

 ──わぁ~!! 魔女っ子チカコちゃんだ~!!! 

 ──チカコちゃ~ん! マジカルステッキだよ~!! 

 ──きららん、きららん、魔女っ子チカコ~!! 

 

 

 どういうわけか、周りから向けられる視線が明らかに、想定していたソレと違う。まるで、着ぐるみを着たウルトラマンを応援するかのような……え、なにこれ? 

 

 

『──(=^ω^=)ご存じないのですか? 日曜朝8:30分から『魔法少女チカコ』が放送されていて、大人気なのですよ』

「はっ?」

『──(=^ω^=)ロボ子に、可愛い可愛い愛し子の可愛らしさをもっと大勢の人達に知ってもらおうかと思い、頼みまして……平均視聴率35%越えですよ』

「な、なんだと……!!!」

『──(=^ω^=)大丈夫ですよ、ソレが愛し子と結びつかないようになっておりますので、可愛い可愛い貴女の可愛い姿は私だけのモノですからね……』

「いや、そういう問題じゃなくてね?」

『──(=^ω^=)さあ、私とお手てを繋いで……』

「待って、やっぱこの生暖かくて気色悪い杖って、女神様と感覚が──ちょ、鳥肌立つから、杖の方から握って来るの止めて……」

 

 

 思わず背筋を震わせる千賀子(魔法少女2×歳)の前に立ち塞がる、侵略者。

 

 

『 濃厚な  うわキツ  うわキツ  』

 

 

 今、戦いの火ぶたは切って落とされようとしていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………なお、精神的なライフがガリガリ削られてゆく千賀子を他所に。

 

 

「ママだ! 可愛いね、ママ!」

「──しっ! 見ちゃ駄目! 不幸が移りますよ!」

 

 

 観客として、パレードを見ていたエマと、千賀子の姿を見せないようにしている4号の姿があったけど……気付ける者はいなかった。

 

 

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