ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ お知らせ
第187話にて千賀子の年齢を27歳と表記しましたが、誤りです
正確にはその時点では28歳であり、1歳分勘違いしておりました
なので、うわキツ異次元さんたちが『うわキツ』でダメージを受けるのは1歳分増えているので説得力が増すという話です
27歳の魔法少女ではなく、28歳の魔法少女チカコが呪文を唱えながら戦って――うわキツ


第188話: HAHAHA、ご冗談を……

 

 

 現代では成人済みのアイドル、25歳を過ぎてのアイドルなんてのはそう珍しいモノではなくなったが、1978年(昭和53年)頃のアイドルなんてのは、未成年が当たり前であった。

 

 良いとか、悪いとか、そういう話ではない。

 

 

 ただ、そういう時代であった。

 

 

 現代でもアイドルなら未成年でデビューもそう珍しくないが、この頃は現代よりもはるかにシビアであり、アイドルとしてデビューするなら二十歳までが暗黙のタイムリミットになっていた。

 

 実際、この頃はグラビア(いわゆる、水着写真)に限らず、デビューしたのが現役高校生なんてのが珍しくない。

 

 というか、むしろそっちの方が多数派であり、既にデビューしていて、二十歳を過ぎてからスポットライトを浴びた……みたいな状況でなければ、まずそこで終わり。

 

 たかが1歳、されど1歳、そういう時代だったのだ。

 

 よほど有名か、あるいは光るモノが無ければ、二十歳を過ぎた時点で『ちょっとねぇ……年齢がね……』といった感じでやんわりフェードアウトなんてのも、なんら珍しい話ではなかった。

 

 もちろん、それはあくまでも『アイドル』としてであり、モデルなどではまだボーダーラインは緩かったらしい。

 

 ちなみに、この頃のアイドルのグラビアは水着写真しかなく、その水着もせいぜいビキニぐらいなものだったりする。

 

 いちおう、それとは別の、モデルなどが胸を出している写真も販売されていたりしたらしいのだが、それでも胸が限度。

 

 全体的なヌード写真は御法度であり、ヘア部分が見えようものなら一発で規制が入るぐらいに厳しかったし、ロマンスポルノ系でもボカシやモザイクが掛けられるのが当たり前であった。

 

 そう、けっこう意外に思うかもしれないことなのだが。

 

 色々な意味で大らかだったという印象を抱いている『昭和』は、けして間違いではない。

 

 しかし、良くも悪くも……という言い方で表すのは簡単だが、『昭和』はけして全てが大らかな時代ではなかった。

 

 たとえば、ヌード写真。

 

 現代では……というか、時期によって違うが、性器が写っていたり、そういった事を連想させる表現でなければ、ひとまずお咎め無しな状況である。

 

 

 しかし、この頃は逆である。

 

 

 1978年のこの頃は逆にヘアヌードなんてのは御法度もいいところで、少しでも写ろうものなら摘発される……という状況であった。

 

 そう、意外に思えるかもしれないが、現代に比べたら、この頃の方がそういう方面の規制は厳しかったのだ。

 

 ちなみに、ヘアヌードが事実上解禁(という言い方も変な話だが)されるのは昭和が終わって平成になってからの話……で、だ。

 

 

「──すみません、俺には無理です」

 

 

 マルゼンスキー・シアトルスルー・カブラヤオーの3頭と一緒に映った記念写真を撮ったのは少し前。

 

 本日は、『春木競馬場』に併設されている、『春木ダイナミックプール』での撮影である。

 

 

 ……既にご存じの方が多いとは思うしテレビなどで幾度となく紹介されているが、知らない人がいると思うので、改めて説明しておこう。

 

 

 『春木ダイナミックプール』とは、1971年より工事が始まり、1973年にはお披露目となった、秋山オーナーが胸を張って自慢する(という噂)、多目的レジャープールである。

 

 このプールは当時としても非常に画期的なプールであり、現代のプールにも引けを取らない、様々な設備が取り付けられた画期的なプールである。

 

 たとえば、現代では珍しくはない『流れるプール』を始めとして、プール後の身体を温める温水シャワー設備の他、ジャグジープールなんてのも個別に用意されたばかりではない。

 

 日本では、いや、世界でも上位に入る見事なウォータースライダーは圧巻の一言で、コレに入る為に県外から来る者がいるぐらい、人気で。

 

 直線距離にして横に縦横800mという意味の分からないプールでは、人工的に高い波を作り出すばかりか、それでサーフィンを行えるぐらいで。

 

 特注の飛び込み台が設置された深さのあるプールでは、なんと後のオリンピック選手が練習として幾度となく訪れていた……なんて話があるのだから、驚きである。

 

 他にも、各種の飲食が楽しめる広大なスペースが用意され、中にはサウナルームなんてのも……とにかく、とんでもねえ規模のレジャー施設なのである。

 

 だから、春木ダイナミックプールは連日満員御礼。

 

 最新の汚染フィルターと濾過装置が搭載されているので水質は常に飲んでも問題ないぐらいに綺麗で、塩素の具合を嫌う者たちにとっては、定番の夏のスポットになっていた。

 

 ……そんな中で、話を冒頭に戻して、だ。

 

 

「秋山さんの信頼は嬉しいです。でも、俺には無理なんです……」

 

 

 改めて、場面は春木ダイナミックプールの一角。そこには、水着姿の土師田が、これ以上ないぐらいに項垂れていた。

 

 その前には……呆気に取られている千賀子がいた。

 

 周囲には通りすがりの客が居て、何だなんだと興味深そうに千賀子たちをジロジロと見ている。いちおう、仕切りを立てて入らないようにしているが、そこまで厳重にはしていない。

 

 さすがに、オーナーなのは周知されているので声を掛けてきたり冷やかそうとしてきたりする強者は居なかったが、まあまあ目立っていた。

 

 まあ、それ以前に、顔を常時隠している時点で視線が集まって当たり前なのだけど。

 

 ちなみに、千賀子の恰好は、TPOに合わせて水着である。

 

 周りが水着ばかりだし、エマも一緒に来ているし、土師田が来るまでエマと流れるプールを泳いでいたから、バスタオルを肩に掛けたその身体はしっとりと濡れて……話を戻そう。

 

 とにかく、千賀子は呆気に取られていた。

 

 なんでかって、あの土師田が、『俺には無理だ』と明言したからだ。

 

 土師田は自己過信な人間ではないが、こと映画(もしくは、映像関係)に関しては並々ならぬ情熱というか、プライドというか、負けん気を持っている。

 

 何時ぞやの『愛のコリーダ』の時でも、しばらく引きこもるぐらいのショックは受けても、俺には無理だとかそういう言葉だけは口にしなかった土師田が……いかに、千賀子が驚いたのかが察せられるというものだ。

 

 

「あ、あの、土師田さん? もしや、この水着が駄目なのですか?」

「いえ、そういうわけでは……いや、そういうわけでもありますけど、問題はそこではありません」

「では、どうして?」

「そんなの……そんなの、無茶に決まっているじゃないですか!」

 

 

 まあ、しかし、だ。

 

 

「どう頑張っても、秋山さんをエロくないように撮ることなんてできませんよ!! それこそ天辺から足先まで全部アウトですよ!!!」

「待って、いったい土師田さんには私がどう見えているの???」

 

 

 こればかりは、いや、だいたい千賀子にも原因があるけれども、今回ばかりは全面的に千賀子の方が悪かった。

 

 

 ……語られていない経緯を簡潔にまとめると、だ。

 

 

 まず、プールに来ている千賀子の目的は、二つ。

 

 『エマとのお出かけ』と、『カレンダー制作』のための写真撮影である。

 

 エマの方はわざわざ語るまでもない事だが、二つ目のカレンダー制作とは……これはまあ、春木競馬場の宣伝と、例の『回線』を見つけるための取っ掛かりを見付けるためである。

 

 というのも、だ。

 

 春木競馬場は千賀子すらも全容を把握していないアレの影響を受けているが、だからといって、無限に客が来るかと言えば、そういうわけもない。

 

 やはり、知ってもらわないと駄目なのだ。

 

 来る来ないに限らず、まずは『春木競馬場』の名前を知ってもらわねば、選択肢にすら入らない。

 

 そのために手っ取り早いのが、カレンダーである。

 

 カレンダーならば、早々断られることもないし、壊れない限りは1年間は使われる。そこに、馬の写真と己の写真を混ぜることで、最初の取っ掛かりを……と、思ったわけだ。

 

 実際、この頃は会社とはまったく関係ない、水着女性の写真が使われたカレンダーはそれなりに多かったし、なんならヌードモデルのカレンダーだって普通に売られていた。

 

 とにかく、見てもらわねば話にならない……というわけなのかは、定かではないけれども。

 

 そんなわけで、千賀子としても、だ。

 

 始まりこそアレだったが、春木競馬場のオーナーとして、既に何百人、何千人、何万人という人たちの生活を支えているといっても過言ではない。

 

 つまり、春木競馬場がこけたら、それだけの影響が出るわけで。

 

 さすがにそこまで面倒を見る気が無い千賀子でも、最低限の経営努力はしておかねば……という気持ちも、いくらかあったわけだ。

 

 

「冷静に考えてください……秋山さん、貴女は、自分のバストサイズがどれぐらいは分かっているのですか?」

「え? いや、どうかな……」

 

 

 言われて、千賀子はちょっと考える。

 

 分身たちがお店で買ったやつは『なんとなく入るだろう』といった感じで買っていて、千賀子自身もメーカーによってバラバラだからいちいち確認していない。

 

 『神社』で手に入るやつは、毎回ピッタリフィットだからサイズなんて気にしたことないどころか、そもそもタグなんて付いていないし。

 

 ときおりロボ子によるチェックも、太り過ぎor痩せすぎでなければ、『許容範囲ですor健康基準値です』としか言わず、千賀子としても藪蛇が嫌なので詳しく聞いていないし。

 

 実際、現在千賀子が来ているこの水着もロボ子が用意してくれたやつだから、特に気にせず着て来たわけだが……そういえば、サイズはどれぐらいなのだろうか? 

 

 

「測ったのがけっこう前だから覚えていないけど、たしか……100cmは越えていたような……」

「ひゃ、ひゃく……!?」

 

 

 ブツブツと、前にちゃんと測ったのは何時だったか……といった感じの千賀子の呟きに、土師田は思わず目を瞬かせた。

 

 土師田としても、想像以上の数字だったのだろう。

 

 周りの野次馬たちも、見たままだけで『デッッッッ!!!』と思えるようなサイズだったのに、実際に三桁の数字を出されたから、余計に驚いていた。

 

 

『──本体の私』

 

 

 そんな中で、千賀子の脳裏に2号の声が響く。

 

 なんだなんだと意識を向ければ、『事情は把握したわ、正確な数字を言うから』どうやら2号がロボ子よりコソッと聞いてくれたようで──そうして、分かった千賀子のバストサイズだが。

 

 

(……え、Lカップ????)

『ギリギリMカップに届いていないってさ』

 

 

 まさかの、サイズアップである。

 

 しかも、アンダーやウエストのサイズは変化無しなので、純粋にバストだけがサイズアップしたという、えげつない話である。

 

 

(な、なんで!? もう成長期は過ぎているじゃないの!)

『そんなの、エマの寝顔を見て、時々だけど母乳を滲ませているからでしょ』

(…………)

『サイズアップの9割ぐらいは、母乳のせいだと思う。子離れしろとは言わないけど、もう小学2年生なんだから……』

 

 なお、原因はすぐに判明した。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ま、まあ、とにかく、だ。

 

 

「と、とりあえず、写真を撮ってくれないかしら? あまりにも駄目そうなら、お蔵入りするだけだし……」

「……分かりました。やるだけやってみます」

 

 

 まずは写真を撮ってもらわなければ話が進まない。

 

 土師田も、そこらへんはわきまえているようで、予防線を張りつつも出来うる限りは頑張ろうといった様子で、テキパキと準備を進め──

 

 

「……すみません、秋山さん、やっぱり無理ですって」

「え?」

「顔を隠していてもアウトなのに、顔を出したら余計にアウトになるに決まっているじゃないですか……」

「私の顔は凶器かナニカか???」

 

 

 ──さあ、撮影するぞという段階で、またもや土師田からストップが掛かった。

 

 

 原因は、千賀子が素顔を晒したからである。

 

 そう、なんと、地元以外で珍しく公衆の場で素顔を晒したのである。

 

 どうしてかって、千賀子は己の美貌の威力を理解しているからだ。

 

 特定のグループ内、あるいは商談の場、クローズされた場ならばともかく、こういったオープンの場で千賀子が素顔を晒すのは本当に珍しい事で。

 

 この時、初めて千賀子の素顔を見た観衆から、『おぉ~~!!!』っと、どよめきが起こったぐらいであった。

 

 

「とにかく、撮るだけ撮ってよ。後からセーフかアウトかを決めれば良いわけだし」

「はあ、わかりました」

 

 

 ……で、まあ、そんな感じで気を取り直して撮影再開……となったわけだが。

 

 

「とりあえず真正面ではなく、背中から行きましょう。そうですね、足を揃えて、俺に背中を向けて……」

「こう?」

「そうそう、それで、ちょっと髪を両手で掻き上げて頭の上に持っていく感じで──いや、これどうだろう」

「え?」

「後ろからでも、秋山さんのおっぱいが横からはみ出ているんですよね……ていうか、腰細すぎませんか?」

「貶しているのか、褒めているのか、どっちかにしてよ」

 

 

 これがまあ、上手くいっているようで、そうではなく。

 

 

「そのおっぱいはどう足掻いても刺激が強過ぎるので、シャツを着てから撮りましょう……いえ、サイズピッタリだと心許ないので、もっとブカブカな、スタイルが分からないように」

「こう?」

「そうそう、良い感じです。あ、胸は張らないでください、ちょっと前かがみで……真正面からだと谷間が危ないので、横向きで──いや、これどうだろう」

「え?」

「こう、逆光というか光の加減で、シャツ越しにおっぱいの形が……前屈みになっているから、それはもう余計に……あの、肌が若々しいと言われません?」

「その取ってつけたようなフォロー、嫌いじゃないわよ」

 

 

 一つ写真を撮る為にポーズを付けると、その度に『これ、どうだろう』みたいな流れでストップが掛かるせいで、時間が掛かる。

 

 足を組んで座れば、ちょっと太ももから足首までのラインがセクシー過ぎますねと注意され。

 

 ならば背筋を伸ばして座れば、美人過ぎるうえに胸もダイナミックですねと注意され。

 

 ならばと、だらしなく横向きになって寝そべれば、おっぱいで鏡餅を作らないでくださいと注意され。

 

 もう色々と面倒臭くなってダラッと適当にポーズを取ったら、ヤバい色気を出さないでくださいと注意されてしまい。

 

 最初の頃は『俺には……』なんて言っていたのに、途中から熱が入ってきたのか、それはもういつものアレみたいな状態になってきた土師田を見て。

 

 

「……ねえ、土師田さん」

 

 

 エマからの目線が『まだ終わらんの?』みたいな感じになってきた事もあってだが……ひとまず、千賀子はストップを掛けることにした。

 

 

「土師田さんはナニカ勘違いしているかもしれないけど、そもそも難しく考えすぎなのだと思うの」

「勘違い、ですか?」

「ええ、そうよ」

 

 

 首を傾げる土師田に、千賀子はニコッと笑みを浮かべた。

 

 

「貴方が撮ろうとしているのは、フレッシュな高校生アイドルの水着写真じゃないの。ちょっと前に29歳になったオバサンの水着写真なの」

「はっ?」

 

 

 対して、土師田の顔は……なんだろう、言葉では言い表せられない、すごい顔をした。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………本当にすごい顔で、言った千賀子の方が思わず「えっ?」と聞き返したぐらいで……いや、そうではない。

 

 

「……秋山さん、29歳なんですか?」

「ええ、そうよ。言ってなかったかしら?」

「あはは、えっと、冗談とかじゃなくて?」

「??? 私、この手の冗談は言わないけど?」

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………あえて言葉にするならば、だ。

 

 

「……あの、土師田さん? そんな化け物を前にしたかのような形相はやめてくださる?」

 

 

 まさに、そんな感じであった。

 

 なお、結局この日の撮影はほとんど上手くいかず、2枚しか合格ラインには達していなかった。

 

 なお、これとは別に、エマとの2ショットが土師田曰く『一番良い』という話らしいが、千賀子の方からそれは駄目とのことで、結局2枚だけが合格であった。

 

 

 

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