ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※敵キャラで出てきたら、コントローラー投げる


第190話: 見る→メロメロ・近づく→メロメロ・聞く→メロメロ

 

 ──過ぎたる力は身を滅ぼすとは誰の言葉かはさておき、千賀子にとって、もはや『ガチャ』は過ぎたる力であった。

 

 

 単純に、身体能力が底上げされるぐらいなら、問題はないのだ。はっきり言えば、『SR』ぐらいまでなら、問題ない。

 

 それぐらいなら、巫女的パワーでなんとでもなるから。

 

 現に、身体能力よりもよほど危険性の高い、身体から放たれるフェロモン(同性異性問わず)をほぼ完璧に抑えているわけだし。

 

 しかし、『SSR』以上になると、そうも言っていられなくなる。

 

 と、いうのも、『SSR』以上になると、その恩恵は体質を根本から変えてしまうどころか、下手したら事象そのものに直接作用する類の恩恵があるからだ。

 

 これが『SSR』の上、『UR』ともなれば、事は現在だけではない。

 

 過去の因果すら変化させ、始めからそうだった状態に現在を改変させるばかりか、この宇宙そのものにまで作用させてしまうレベルに……だからこそ、過ぎたる力なのだ。

 

『SR』までならば、『SSR』だとしても、巫女的パワーで抑えられる類の恩恵ならば……が、しかし。

 

 

『──今回はちょっとガチャのやり方を変えまして、ガシャポン形式に致しました』

 

 

 そんな千賀子の内心を他所に、女神様は、それはもう嬉しそうに……というか、嬉しくて堪らないご様子で、いそいそと千賀子の前にガシャポン台を置いた。

 

 そう、それは、うろ覚えな前世の知識であっても、一目見た瞬間に「あ~、懐かしい!」と思わず指差してしまうぐらいに身に覚えのある、ガシャポンであった。

 

 

 ──ガシャポン。それは、誰しもの思い出にあるモノ。

 

 

 発祥はアメリカである。当初は駅のホームや街頭などに設置され、チューインガムやキャンディーなどを販売していた。

 

 その後、単なる菓子の販売に留まらず、球体のカプセルに小さな玩具を封入し、ランダムに子供たちに提供する形態が誕生する……これが、およそ1930年代頃に定着したとされている。

 

 日本に輸入されてきたのは1965年(昭和40年)のことであり、店先に設置してすぐ、奇抜な外観とシンプルなやり方に大人気となった。

 

 ちなみに、『ガシャポン』という名前が広まったのは1977年からであり、それは日本の会社が『ガシャポン』という名称でカプセルトイ事業を本格的にスタートしたからである。

 

 この人気の具合は、凄まじかったと言われている。

 

 ラインナップとして、当時放送が終えたばかり(再放送はバンバンやっていたらしい)のロボットアニメの玩具を始めとして、人気を集めていたスーパーカー消しゴムなどが封入されていたのだとか。

 

 日本に来た当初から、一日に何度もカプセルの補充が行われるぐらいに子供たちの心を掴んでいたのだが、このガシャポンの人気に火が付いて、爆発的に広がったのは1983年頃。

 

 同年に放送されたテレビアニメ『キン肉マン』をかたどった、『キン肉マン消しゴム(通称:キン消し)』の登場がキッカケであった。

 

 以前より人気を集めていたガシャポンだが、この『キン消し』の人気はすさまじいなんて言葉では治まらなかった。

 

 出せば出した分だけ売れる、作った分がその日に完売する、そうまで言われるぐらいの大ヒットとなった。

 

 なにせ、この売れ行きがキッカケとなり、それまで駄菓子屋の片隅や店先の存在だったガシャポンが、大規模に展開される商業商品として確立していくようになったのだ。

 

 これにより、様々なメーカーが続々と参入し、廉価(れんか)なガチャ機が各地に広まり、昭和の文化の一つとして定着したのであった。

 

 

 ……なお、千賀子が『懐かしい』と言ったのは、現代ではお馴染みのガシャポンだが、当然ながら、形状が違うのだ。

 

 

 つまり、女神様が用意したガシャポンは、去年より広まり始めている初期の赤色ガシャポンではなく、現代ではお馴染みになっている白色ガシャポンなのだ。

 

 加えて、千賀子はあまり駄菓子屋に行った経験が無い。

 

 現代ならばスーパーに限らず色々なお店(あるいは、催しで)でガシャポンを見掛けるので物珍しさはないが、この頃は置かれている場所がほぼ決まっていた。

 

 当然、台数も少なく、目にする頻度も少ない。

 

 また、エマはあまりそういった事への関心は薄く、隙あらば泥だらけになる子なので、千賀子も自分から探そうとしない限りは……なので、どちらにしろ、懐かしいという反応が出るのであった。

 

 

『──わたし、気付きました』

 

 

 さて、そんな前置きを他所に、なにやら女神様は……苦渋に満ちた顔(表情なんて、無いけど)で、グッと握り拳を掲げた。

 

 

『──ガチャは、ただ回せば良いわけではない、と』

「おぉ……!」

 

 

 その言葉に、ちょっと千賀子は期待する。

 

 ここにきて、ようやく己に対する慈悲を覚えてくれたのか……もしかしたら、中身に手心を加えてくれるのではないか……という、淡い期待──

 

 

『──一回入魂! 魂を込めて、ガチャは回さねばなりません!』

「おぉ……!!」

 

『──でも、嫌そうな顔でガチャ回す愛し子も可愛いのです!』

「おぉ……おぉ……?」

 

『──なので、これまで溜まった分をギュッとまとめて3回分。UR排出率70%でいきましょう!!!』

「おぉ……oh……」

 

 

 ──しかし、期待は期待でしかなかった。

 

 

 千賀子は、毎度のことながら思い出す……この女神様は、だいたい期待するとその分だけ落差が酷いことになる……という、悲しい現実を。

 

 そりゃあ、これまで回さなかった分(なお、余計に増やされる可能性高し)をそのまま回すとなると、おそらく4桁回数分を回さなければならないだろう。

 

 それを、70%の確率とはいえ、3回だけで済ませてくれるのだ。

 

 はたして、これを良しと判断するか、あるいは悪しと判断するか……いまいち判断に迷うところだが、千賀子としては、前者の判断であった。

 

 何故ならば、千賀子はこういう時の己のガチャ運を欠片も信用していないからだ。特に、女神様のテンションが上がっている時は。

 

 むしろ、最大でも3回で済むあたり、まだ慈悲があるのでは……そう思えるぐらいであった。

 

 

『──ちなみに、今回のガチャはアイテムガチャと混合になりますので、選ぶ必要はありません』

「違う、女神様、私が嘆いているのはそこじゃない……!!」

 

 

 ただし、それはそれとして、相変わらず女神様の気の使い所が間違っているというか、ズレているのは……もう、しょうがないと諦めるとして、だ。

 

 とりあえず、3回である。

 

 3回、神に祈れば……あ、祈った先が女神様だ……とりあえず、私は大丈夫だと強く念じながら……千賀子は、女神様より渡されたコインを、カチャンと投入口にセットすると。

 

 

「……いざ、ナムサン!!」

 

 

 気合を込めて、キリキリキリ……っとハンドルを回せば、コロンとカプセルが落ちてきたので、それを手に取り。

 

 

「……なんだろう、こんなに不安を抱えながらガシャポンをするの、前世を含めて初めてだと思う」

 

 

 グッと力を入れた途端、パカッとカプセルが開いて──パッと光が放たれた直後、そこには1枚の紙が……中に記されていたのは。

 

 

 

『UR: 寄り添う者(New)』

 

 ──要約:弱った者の心に現れ、貴女の望みのままに慰める。私は愛し子の事をよく分かっておりますので、ちゃ~んと、役目を与えましょう

 

 

 

 そのような事が、書かれていた。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………??? 

 

 

(……なにこれ?)

 

 

 なんだろう、過去一になるかもしれないぐらいに、意味不明だ。

 

 どういう類の恩恵なのか、巫女的パワーでなんとかできるモノなのか……少なくとも、手応えは感じられない。

 

 だから、常時発動しているモノなのか、任意で発動させるモノなのか、あるいは、その時にならなければ分からないモノなのか……それすら、不明である。

 

 

「女神様、これってどのような効果なんですか?」

『──説明のとおりです』

 

 

 つまり、既に『要約』の部分で全て説明し終えているというわけか……こういう時、女神様はもう教えているつもりなので、聞くだけ無駄だろう。

 

 と、なれば、実際にその時にならなければ分からない類だが……しかし、『役目を与えましょう』とは、いったい? 

 

 

(……考えるだけ、無駄だな)

 

 

 とりあえず、気持ちを切り替えた千賀子は……続けて、2回目のガチャをスタート……キリキリキリ、とハンドルを回せば。

 

 

 

『UR: ヘカテ―の愛(New)』

 

 ──要約:愛し子の血肉によって生み出される恵は、あらゆる病を遠ざけ、あらゆる不吉を跳ね除け、聖なる力を宿す。(定期的に出しましょう by女神)

 

 

 

 すると、また意味不明な『UR』が当たった。

 

 『UR』の恐ろしいところは、単純に制御出来ないだけでなく、要約部分だけだといまいち分からないうえに、分かった時はだいたいヤバい状況になっているという……話を戻そう。

 

 とりあえずは、だ。

 

 要約を見るかぎり、いますぐ害をもたらすようなナニカには思えない。むしろ、なんか身を守るというか、そういった類の恩恵ではないだろうか。

 

 ただ……気になるのは、最初の説明部分と、最後に女神様が付け足している『定期的に出しましょう』という部分だ。

 

 

(……まさか、増血作用のある恩恵、とか?)

 

 

 感覚的にどのような能力なのかを探れば、『サラスヴァティー』や『ククノチ』といった、なにかしらの変身系の能力なのは分かるのだが……それ以上は、実際に変身してみなければ分からない。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………とりあえず、しばらくロボ子に自身のバイタルを24時間監視してもらうとして、だ。

 

 3回目、最後の一回……「いざ、ナムサン!!」これまで二つがURだったのだ、最後の1回ぐらいはSRぐらいで許してくれても──

 

 

 

『SSR: カリオペーの睦言』

 

 ──要約:可愛らしい愛し子の囁きを、もっと可愛らしく彩る。どんなに偏屈で性根が腐りきった頑固な人でも、一発で愛し子の虜(声がなくても一番可愛いわぁby 女神)

 

 

 

 

 

 ──が、駄目だった。いや、まあ、URではないだけマシだけど。

 

 しかし、愛し子の囁きを彩る……いったい、どういう感じなのだろうか。とりあえず、声に関する事なのは想像出来る。

 

 感覚的に、常時発動系の能力っぽいが、これぐらいなら巫女的パワーで抑えられるし、既に反射的に抑えて……ふむ。

 

 

「ねえ、なんか私の声に変化ある?」

 

 

 とりあえず、分身たちとロボ子に尋ねてみる。

 

 すると、全員が首を横に振った。ロボ子からも、「声量・音域・発音、変化はありません」と言われた。

 

 と、なれば……ほんのちょっとばかり『声』の制御を緩めた千賀子は、再び同じ事を言った。

 

 

 

【ねえ、なんか私の声に変化ある?】

 

 

 

 変化は、劇的であった。

 

 ロボ子の方は、「若干、先ほどとは変化が……」と首を傾げるだけだったが、分身たちの方は酷かった。

 

 

「……ほ、本体の私、次から『その声』を出すのは控えた方が良いわよ」

「え、なんで?」

「分身の私たちが言うのもなんだけど……ちょっと、濡れた」

「は?」

 

 

 呆気に取られる千賀子を尻目に、分身たちは……4号すらも、少しばかりフルフルと肩を震わせてから、気恥ずかしそうに居住まいを正していた。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………なるほど。

 

 

『見た目』という視覚に訴え。

 

『匂い』という嗅覚に訴え。

 

 そして、『声』という聴覚に訴え……ふむ、つまりは、だ。

 

 

「……これ、万が一、私が制御を解いたらどうなるの?」

「見た目で魅了され、その後に匂いで魅了され、最後に声で魅了される……うわっ、逃れられる人間っているの?」

「たぶん、土師田のやつなら耐えられると思う」

「あの人は土師田っていう種族だから、人間と一緒にしちゃ駄目よ」

「えぇ……」

 

 

 ──結論! 

 

 今回のガチャ結果は、『UR』、『UR』、『SSR』! 

 

 

 なんとも無惨な結果になった……わけだが、不幸中の幸いと言ってよいのか不明だけど、ひとまず今すぐどうこうなるようなモノは無かった。

 

 そのかわり、『UR』の二つの内、一つは何もかもが詳細不明で、一つは変身系(変身するまで不明)。

 

 マシな方の『SSR』は、巫女的パワーで抑えることはできるが、万が一にも制御を外せば……間違っても人前では一言すら発せられないので、ある意味では分かりやすいけれども。

 

 ……ひとまずは、だ。

 

 

「な、なんとか、今回も乗り切ったようね……」

 

 

 それが分かっただけでも、千賀子としてはヨシッ! であった。

 

 なお、それからしばらくして。

 

 あまり放置すると女神様が焦れてナニカをしでかすかもしれないので……意を決して、『UR: ヘカテ―の愛』を発動し、変身したのだが。

 

 当然ながら、平穏に終わるわけがなく……具体的には、3人に分身(本体が)するという、とんでもない事態になったのだが。

 

 ひとまず、『実質200話達成記念ガチャ』というおぞましいイベントは、終幕となったわけであった。

 

 

 

 

 

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