ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第192話: 邪悪な魔女っ娘ステッキの出番は??????

 

 

 時は、1978年の12月。

 

 

 ──『コミックマーケット(通称:コミケ)』という催しをご存じだろうか。

 

 

 現代では世界最大規模の同人誌即売会として日本はおろか、世界的にもその名が知られているぐらいの、有名な催しである……のだが。

 

 実は、その始まりは1975年。

 

 つまり、今より3年前のことであり、その規模も、現代とは比べ物にならないぐらいの小規模であった。

 

 しかも、現在の同人誌即売会とは少々勝手が違う。

 

 本来……という言い方をするのは少し違うかもしれないが、この頃のコミケは現代のコミケとは少し違う。

 

 持ち込んだ同人誌を各自が読み合って批評し合うという場であり、現在のように企業が参加するといったことはなく、あくまでも交流の場であった。

 

 ぶっちゃけてしまえば、現代のような大手サークルとか弱小サークルなんて言葉はなく。

 

 誰もが平等に羞恥と緊張で顔を真っ赤にしながら、鋭い批評をグサグサと刺し合う笑顔絶えない殺伐(笑)とした空間だったらしい。

 

 なお、この頃はコミケという名称ではなく、『迷宮』だったとか……で、どうしてそんな話をしたかと言うと。

 

 

「……ごめん、もう1回言って?」

「はい、復唱します。異次元侵略者たちのボス、通称『王』と呼ばれている個体ですが、どうやら『迷宮』に参加されるようです」

「なんて????」

 

 

 あまりにも想定外の事態に、さすがの千賀子も意味が分からず困惑したからである。

 

 そう、いや、あの『うわキツ』狂いの大本だから、そりゃあもうろくでもないやつとは思っていたが……これは、あまりに想定外過ぎた。

 

 いや、だって、コミケである。

 

 あ、いや、この頃はまだ『迷宮』であり、即売会というよりは、大批評会としての……と、とにかく、だ。

 

 

「……た、確かなの?」

「はい、先日のことですが、マスターが『UR:ヘカテーの愛』にて変身した際、3体に分身しましたよね?」

「え、あ、うん、そうだけど……」

「あの時、彼らが消える前にこっそり教えてくださいました」

「えぇ……」

 

 

 ロボ子の話に、千賀子は先日の事を思い出した。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………それは、先日のこと……以前より気にはしていた『変身:ヘカテー』を発動させたときのこと。

 

 

 この能力が変身系であることは分かっていたので、万が一を考え、神社から離れ、周りに誰もいない場所で、それは行われた。

 

 結論から言えば、千賀子は3人に分身した。

 

 ただし、そのまま3人に分身したのではなく、千賀子自身が、三つの化身となって分かれたのだ。

 

 

 一つ、処女神。

 

 一つ、聖母。

 

 一つ、冥府女王。

 

 

 この3人である。もちろん、3人とも千賀子ではあるのだが、その見た目は大きく異なっていた。

 

 まず、全員が貫頭衣(かんとうい)を身に纏っている。

 

 処女神は、何時ぞやの、ガチャで『魅力』が底上げされた状態で若返ったかのような、少女の姿をしていた。

 

 聖母は、正直見た目はあまり変わらない。しかし、漂う雰囲気には包容力のようなナニカを感じさせる。

 

 そして冥府女王だが……一言でいえば、熟女であった。

 

 なんというか、今の若々しい千賀子の見た目を、+5歳~10歳した感じだろうか。若々しいが、確かにそう感じさせた。

 

 

『お、お~、こんな感じなのか……』

 

『不思議だわ……目の前に自分が居る感覚……』

 

『こればかりは、感覚的な話になるわね……』

 

 

 傍から見たら、『母』・『娘(姉)』・『娘(妹)』という感じの親子にしか見えない光景だが……違いを実感したのは、処女神の方が早かった。

 

 

『か、か、身体が、とってもかる~い!! え、なにこれ、子供の頃ってこんなに身体って軽かったの!?』

 

 

 何故ならば、この中で一番変化が大きかったから。

 

 具体的には、胸のサイズがまだ『その年齢ではある方』の範疇だったからで、ピョンピョンと飛び跳ねる様は、傍目にも身軽に見えた。

 

 

『……反対に、私の方は……ちょっとこう、肉が付いちゃっているのね』

 

 

 その次に変化を自覚したのは、冥府女王である。

 

 見た目からして少し老けた感じではある(なお、元々が若々し過ぎるけど)が、それ以上に、貫頭衣に隠された部分に出ているのだろう。

 

 試しに、2号が……貫頭衣をめくって中へ。ゆったりとした衣服のようで、2号が入っても特に問題は──。

 

 

「ま、ママぁ……」

『あ、あらあら……あの、乳を吸うのは止めてね』

 

 ──どうやら、有るようだ。

 

 

 なんとか引き剥がした後、2号からの感想は『とにかく温かくて柔らかくて良い匂いがして、気付けば乳を吸ってオギャっていた、後悔はない』であった。

 

 これは、なんか見覚えがあるような……そう、以前千賀子が色々な要因が重なってポチャ子になった時に似ている。

 

 感覚的には、その延長線だろうか。

 

 まあ、『冥府』というのは辛く苦しい地獄の世界というイメージがあり、様々な宗教においてはあまり良い場所とはされていないが、けしてそれだけではない。

 

 解釈によっては死者が辿り着く最後の世界、新たな旅立ちを迎えるまで安らぎ眠る場所ともあるので、『冥府女王』には生きとし生ける者全ての心に安らぎを与える力があるのかも……。

 

 で、一番変化が薄くて、あまり変化している自覚がないという聖母の方だが……違いは、どうやら当人よりも周りに出るようで。

 

 

「……ああ、聖母よ。貴女様のために、私はいったい何をしたら良いのでしょうか?」

『え、いや、別に何も……』

「ああ、聖母よ。この身体に流れる血を捧げ、貴女様が健やかに過ごされることが私の望み……」

『まって、3号。あなた、その包丁をどこから……ステイ! 3号、その場にステイ!!!』

 

 

 ある意味、処女神よりも冥府女王よりも、よほどヤバかった。

 

 拳で殴って正気に戻した3号曰く、『とにかく、聖母のためになんでもしたくて堪らなかった、今もちょっと気持ちがふわふわしている』とのこと。

 

 あと、抱き締められた時の柔らかさ、安心感、高揚感、とにかく色々な感情が湧き起こって半端無かったらしい。

 

 まあ、古来より人々よりイメージされる聖母というのは、ふくよかな体形をしている場合が多い。

 

 聖母マリア、システィーナの聖母、ふくよかな体形は豊かさ、包容力、母性の象徴とも言われ、縄文時代に作られた女神の土偶ですら、ふくよかな体形をしている。

 

 『聖母』としての性質が出ているのであれば、なにかしらそういう方向で暴走してもおかしくは……いや、だとしても冥府女王の方でも暴走するのは、これいかに? 

 

 処女神とは、聖母とは、冥府女王とは、いったい……うごごごごごご。

 

 まあ、それはそれとして、ちゃんと検証はしておかなければならない。

 

 なにせ、『UR』である。

 

 うっかりで大惨事を引き起こしかねないので、調べられる限りは調べておくのが無難なのである。

 

 ……で、まあ、ロボ子の力も借りて、色々と調べた結果。

 

 

『つまり、冥府女王の私の体液は、あらゆる病を治すどころか欠損を修復し、全盛期の状態にまで若返る効能すらある万能薬で?』

『処女神の私の体液は、あらゆる不運……つまり、幸運をもたらすわけで』

『聖母の私の場合は、こう、エネルギー生命体な存在に対して特攻的な効果がある……と』

 

 

 と、ということが分かった。

 

 つまり、どういう事になったのかと言うと。

 

 

「冥府女王の体液が万が一医療機関などにて調べられた場合、世界規模の争いが勃発する可能性があります。なにせ、不死身の生物を作り出すことが可能ですので」

「処女神の場合は、ぶっちゃけてしまえば、因果律を操って幸運を引き寄せる、恐ろしい能力ですね。能力発動させたら、その時点で誇張抜きで幸運しかない人生ですよ」

「聖母はアレですね、宇宙にも存在していますけど、肉体を捨てた生命体に対してほぼ無敵です、『メッ!』としただけで消し飛びします」

 

 

 スパッと簡潔にロボ子がまとめてくれた。

 

 そう、どれもが分かる者(あるいは、関係ある者)に知られてしまえば最後、とてつもない争いが勃発する……そういう類の能力であった。

 

 

 当然ながら──そんな能力は、絶対に封印である。

 

 

 いつもの、試しに使った後は二度と日の目を浴びない系のカテゴリー行きである。

 

 致し方ない話だ……なにせ、本当に露見したら取り返しのつかない系統の能力だ。

 

 こんなの、ファンタジー世界でどうこうなる系統であって、間違っても昭和なこの世界で登場してよい能力ではないのだから。

 

 

 ……でもまあ、それは、それとして、だ。

 

 

 せっかく手に入った能力、それも『UR』だ。

 

 もしかしたら、思いもよらない使い方があるかもしれない……と、考えるのは極々自然な事であり、色々と考えた……その結果。

 

 

『あ、あの、さすがに、この私の見た目で高校の時の制服は……!!』

 

 

 3人の中で見た目が一番年上(老けているとも言う)な感じになった冥府女王が、なんと高校の時の制服を着ることになった。

 

 なんでそうなったのか、それは千賀子たちにも分からなかった。

 

 強いて挙げるならば、ロボ子による徹底的な検査と疲労と寝不足だろうか。

 

 さすがの千賀子とて、生身である。

 

 また、変身した3人の状態でも、どうやら体力的な部分は見た目相応らしく、途中で色々と疲れて面倒臭くなり始めた結果……誰かが、ポツリと言った。

 

 

 ──一番見た目が年上の冥府女王がコスプレしたら、うわキツなんじゃね……っと。

 

 

 本当に、意図したわけではない。

 

 ただ、脳裏に浮かんだ疑問をそのまま口に出しただけで、言った当人すら、自分が何を口走ったのか忘れたぐらいだ。

 

 けれども、その瞬間。

 

 

 

『 ── え? ── 』

 

 

 

 境内にて成り行きを見ていた異次元の侵略者たちが、一斉に動きを止めた。

 

 あまりにピタリと挙動が合っていたので、気にも留めていなかった千賀子たちがつられて動きを止めたぐらいであった。

 

 ……とりあえずは、だ。

 

 少々考えた後、物は試しだと、実家の押入れに入れっぱなしの制服をコソッと持ち出してきて、それを冥府女王が……それはもう、頑張って着たわけだが。

 

 

 

『 光が ここにあった (うわキツ)』

 

『 ああ そうか 迎えに来てくれたんだな (うわキツ)』

 

『 そうか ここが 最後の場所だったのか (うわキツ)』

 

 

 

 想定していた以上の効果に、行った千賀子たちの方がちょっと引くぐらいであった──が、それも当然だ。

 

 なにせ、冥府女王の見た目は非常に若々しい雰囲気を醸し出しつつも、傍目には実年齢30代半ばと思われそうな……まさしく、美熟女である。

 

 そう、美熟女だ。あるいは、美魔女というやつか。

 

 とにかく、そう評価する以外の言葉ができない見た目であり、年上好き、あるいは熟女好きが見たら、下手しなくとも破産するまで貢いでしまうような……そんなヤベーレベルである。

 

 そんなヤベーレベルの美熟女が、なんと学生服を着ているのだ。現在の千賀子よりもムチムチとしたボディで。

 

 そう、それは、まさしくムチムチであった。

 

 若々しいが、やはり肉付きに現れている。今にもボタンが弾けそうなシャツに、ムチムチっとスカートから伸びるツルリとしつつもちょい太ましい足。

 

 それでいて、見た目相応の感性というか、感覚になっているのか、それはもう傍目にも分かるぐらい真っ赤な顔で、少しでもスカートの裾を伸ばして隠そうとする、その姿。

 

 けれども、それでも、隠しきれない年不相応な恰好が生み出す、なんとも言えない痛々しさ。その痛々しさの中に見え隠れする……可愛らしさ。

 

 そんなの……耐えられるわけがなかった。

 

 どうやら異次元の侵略者たちは、独自の通信を互いに送り合っていたようで、続々と『神社』に姿を見せる……が、結果は同じ。

 

 

『 ああ 光が そうか そうだったのか (うわキツ)』

 

『 わかる あは あははは そうか そうだったのか(うわキツ)』

 

『 じかんとは くうかんとは こんなかんたんな事だったのか (うわキツ)』

 

『 我らとは 宇宙とは 今なら全てが (うわキツ)』

 

 

 どいつもこいつも、モジモジと恥ずかしそうにする冥府女王を目にした途端、なにやらブツブツと呟いたかと思えば、満たされた顔で消滅してゆく。

 

 

 ……あれ? 聖母の方が特攻なのでは? 

 

 

 そう、疑念を覚えた人、勘が鋭い。だが、性癖の前では勘など無意味であり……気付けば、あっという間に異次元の侵略者たちは満足して消えていった。

 

 

 

『──やりましたね、異次元からの侵略者たちは、愛し子の勇気でもって壊滅しました。残っているのは、王と呼ばれる個体だけですね』

 

 

 

 ぽかん、と呆けるしかない千賀子たちを尻目に、女神様は実に微笑ましそうにニヤニヤと全身の手を蠢かせながら、冥府女王(千賀子)の姿をジーッと眺めていた。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、と。

 

 

「──思い出されましたか?」

「あ~、うん。そういえば、あの時は驚きすぎて色々と後回しにしちゃったなあ」

 

 

 そんな回想を終えた千賀子を他所に、場面を戻す。

 

 具体的には、女神様の話や、現在の動きをまとめると、だ。

 

 現時点で、人類の敵になっているのは、『宇宙からの侵略者』・『異次元からの侵略者』の2大勢力。

 

 宇宙から送られてくる怪獣はその都度千賀子が倒していて、最近は送られてきていない。

 

 ロボ子曰く、『おそらくこれ以上送っても戦力の無駄になると判断した。次に来る時は、本体が来るだろう』とのこと。

 

 異次元からの方は、先ほどの冥府女王が見せた『うわキツ』で壊滅。実質的に残された戦力は『王』だけであるが、生半可な『うわキツ』では倒せない可能性高し。

 

 つまり、どちらも手下や先兵は倒し終えた状況で。

 

 そんな状況でロボ子から、コミケの前身でもある批評会『迷宮』に、その『王』が参加する……という話が出たわけだ。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………??? 

 

 

 いや、まあ、ワケが分からないよお……という感想しか出てこないのだが、そこに疑問を抱いたところで話は進まない。

 

 

 とりあえず──潜入することにした。

 

 何処へって、『迷宮』が開かれる会場に、だ。

 

 

 さすがの千賀子でも、なんの縁も無いところに無理やりねじ込むわけにはいかない。

 

 あまりにも切羽詰まっているとかならともかく、場違いにも程があるというか、いくら事情があるにしても、失礼過ぎるからだ。

 

 だから……こっそりと、ロボ子の力も借りて、千賀子は天井にて貼り付いていた。

 

 そうして……その時は来た。

 

 ゾロゾロと入ってくる人たち……その中で、ロボ子からの指示と、千賀子自身の巫女的パワーで探りを入れた結果……ついに、『王』を見つけた。

 

 その姿は……一見すると、普通の青年にしか見えなかった。

 

 いわゆる、チェック柄のシャツに、ズボン。よく言えば無造作ヘア、分厚い眼鏡に、ちょっとポチャッとした体形。

 

 さすがは、『王』と称えるべきか。

 

 本当に、事前に来るという情報が無かったら気付けなかったぐらいで……当然ながら、周りの者たちは誰一人として、その事には気付いていなかった。

 

 ……まあ、しかし、そんな事よりも、だ。

 

 批評会が開催され、各自が持ち込んだ同人誌が回し読みされ、いざ批評が始まった……わけなのだが。

 

 

「──拙者、こんな可愛い子が女の子なのは冒涜だと判断せざるうを得ないでござる! 可愛い子にちん○○が付いている、こんなお得な話を書かない理由を説明せよ!」

 

 こう、どう表現したら良いのか。

 

「──常識に囚われては駄目でござる! さりとて、高尚だと大人向けにしても駄目でござる! 漫画は子供が楽しみ、大人は子供に返って楽しむ事が至高でござる」

 

 けして……そう、少なくとも、千賀子が見る限り、敵意は感じられなかったのだが。

 

「そも、これがウケるだろうだなんて考えは捨てるべきでござる! 子供はけしてバカではござらぬ!」

 

 なんだろうか……こう、妙に熱意があるというか、なんというか。

 

「──デュフフフ!!! 良いでござるよ~!!」

 

 

 ただ、一つ言える事は。

 

 

(……これが、『王』の姿か……?)

 

 

 なんか、思っていたんと違う……という、なんとも言い難い虚無感であった。

 

 

 

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