ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第198話: 天照「弟よ……(ドン引き) スサノオ「ち、違う、誤解だ! 信じてくれ!」」

 

 

 

 ──現代人はなにかと軽視しがちだが、文明の発展とは、いかに大量のエネルギーを生み出し、それを効率よく運用できるか、それに尽きる。

 

 

 言い換えれば、より高度な文明を生み出すには、より大量のエネルギーを消耗する必要があって、高性能と高燃費は切っても切り離せない関係にある。

 

 たとえば、『鉄』の加工がまさにソレだ。

 

 現代では有って当たり前の金属として使われる鉄だが、これはある日突然生まれたものではない。

 

 加工技術を確定させるまでに至る膨大な消費によって生み出されたモノであり、これを加工するには途方もない量のエネルギーを必要とする。

 

 今でこそ電気を使った溶鉱炉によって分かり難くなっているが、鉄の生産&加工には、それこそ山を一つ二つ三つ、はげ山にしてしまうぐらいのエネルギーが必要である。

 

 これは、現代でも変わらない。効率性を上げてロスを抑えることは技術開発の末に可能でも、絶対値とも言える必要量は変わらない。

 

 気圧を下げれば低温で水は沸騰するが、その気圧を下げるための装置や道具を作るためにエネルギーが必要なように。

 

 それがガスだったり電気だったり目に見えない形に変わったから分かり難かっただけで、目覚ましい発展には、相応のエネルギーが必要なのである。

 

 そして、競争社会において、いかにこのエネルギーを安定的に確保できるかが勝敗を決めると言っても過言ではない。

 

 供給されるエネルギーが不安定というのは、それだけでも非常にマイナスなのだ。

 

 溶鉱炉に回す電気が3分に1回、10%の割合で切れます……なんてのを使って、高品質な鉄が作れるわけがない。

 

 これは、鉄に限った話ではない。

 

 医療も、食料も、工業も、何もかも、現代社会は安定したエネルギー源があって初めてそこまで発展したわけで。

 

 なにかの拍子に切れてしまうような不安定なモノだったら、今でも明治時代ぐらいの文明で止まっている……なんてのは、けして誇張ではないのである。

 

 

「──マスター、報告があります。どうやら、アメリカの方でアポロ計画が再起される動きがあります」

「はい?」

 

 

 そして、時は少しばかり流れ、4月。

 

 ついにエマも小学3年生か……と、なんか色々な思いで涙がじんわり出てきそうというか、目尻から涙が出ちゃっている千賀子の下に、信じられない報告が飛び込んできた。

 

 

『アポロ計画』

 

 

 それは、千賀子の前世においても1972年まで行っていた、アメリカが総力を結集して運用していた宇宙開発計画である。

 

 この、総力を結集して……というのは、言うほど誇張ではない。

 

 実際、このアポロ計画につぎ込まれた予算は……国が傾きかねないというか、継続していたら本当に傾くレベルだったのだ。

 

 これは、冷戦から来る牽制の意味合いもあったのだが、それを抜きにしても、文字通り国力を削ってまで力を注いだ壮大な計画である。

 

 

 で、だ。

 

 

 このアポロ計画が無期限凍結した理由は、先述した予算の問題と、あとは想定していたよりも成果が見込まれなかったからである。

 

 はっきり言えば、投資する額に比べてリターンがあまりにも釣り合っていなかったのだ。

 

 アポロ計画のおかげで様々な技術が開発され、後に様々な分野で活かされるようになったわけだが……だからといって、じゃあ我慢しろというのも酷い話ではある。

 

 ロマンを求めるのは結構だが、ロマンだけでは腹が膨らまないのもまた、現実で。

 

 再びアポロ計画が再起動するにしても、それは今ではなく……もっと技術が進み、宇宙への移動が低リスクになった頃……そういう次元での話であった──はずなのだが。

 

 

「なんでまた急に? 今のアメリカって、そんな余裕あったかしら?」

 

 

 千賀子は、首を傾げた。

 

 アメリカも2回目のオイルショックに備えているだろうが、それでもダメージを完全に抑えるのは難しいはず。

 

 いや、むしろ、国土も人口も多いアメリカの方が……起死回生の一手だとしても、既にアメリカは月面調査を行い、割に合わないと判断して計画凍結をしたはずだ。

 

 その凍結を撤回してでも、そのうえ、第二次オイルショックの余波を受けている最中だというのに、それでもアポロ計画再起動の……その、目的とは? 

 

 

「おそらく、『Moon-X』への再度の接触が狙いかと」

「『Moon-X』? それって……あっ、アレか」

 

 

 嫌な事を思い出した……そう言わんばかりに顔をしかめた千賀子に、「はい、アレです」ロボ子は素直に肯定した。

 

 

「おそらく、以前渡したお土産によって、欲望が花開いたのでしょう」

「お土産? なんか渡したっけ?」

「渡しましたよ、ほら、貴金属の枝葉とか」

「……あ~、アレか」

 

 

 ようやく思い出した千賀子は、ポンと手を叩いた。

 

 

「え、アレだけで? アレだけでアポロ計画再起動するの?」

 

 

 直後、嘘でしょ……と言わんばかりの表情で、千賀子は目を白黒させた。

 

 

「マスターの戸惑いはごもっとも。とはいえ、仕方がありません」

「仕方ないの?」

「はい、アレより取れる金属は、この地球上には存在しない……扱い方によっては、巨万の富を得る可能性を秘めているように見えますから」

「そんなに?」

(ゴールド)が高価なのは、その特性。市場に出てくる量に限りがあるのと、それに変わる事ができる金属が見つかっていないからです」

 

 

 一つ、ロボ子は球体関節が見える指先を立てた。

 

 

「同様に、アレから取れる金属の変わりはありません。正しく扱えば送電ロスを抑えたり、電池としても運用出来たりしますので、血眼になって探し出そうとする気持ちは少し分かります」

「それって、そんなにスゴイの?」

「ちゃんと運用出来たなら、200年ほど劣化せず運用できるロス率0%の送電網や、変換ロス率0%の超大容量バッテリーなんかが作れますので」

「へえ、200年もメンテナンスフリーなら、そりゃあ欲に目が眩むか……」

 

 

 一つ頷いた千賀子は、次いで、ロボ子に尋ねる。

 

 

「私、月面に出向いておいた方が良いかな?」

「いえ、それには及ばず。そもそも、月面の神社にはどう足掻いても侵入などできませんし……」

 

 

 ちらり、と。

 

 ロボ子の視線が、襖のスキマより覗き見している女神様へと向けられる。擬音にすれば、ニチャァ……な、感じである。

 

 この女神様はただ近くで愛でるだけではなく、こうしてあらゆる方向から愛でては勝手に楽しんでいる、なんともおぞましく困った女神様なのである。

 

 

「とりあえず、頭の片隅にでも置いといてください。なにか状況に変化が起これば、その都度報告しますので」

「うん、わかった」

 

 

 ひとまず、それで今回の報告はお終いとなった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、そのようにして千賀子が『アメリカ、また変な事を始めたな~』と思っていた、同時刻。

 

 

 有り体にいえば、一方その頃、というやつだ。

 

 人の手が入っていない(というか、入れる理由がない)山奥の……とある者たち出来た洞窟の、その奥。

 

 そこには、それなりの広さがあるスペースがあって、太陽光が欠片も届かない中に、ポツンと……一つだけ、蝋燭が置かれていた。

 

 ぶっちゃけてしまえば、蝋燭一個の明かりなんて、焼け石に水どころではない。

 

 明かりを近付ければ辛うじて手元が確認できる程度の明るさしかなく、間違ってもこれを松明替わりで移動するのは自殺行為である。

 

 これは実際にそういった空間に行ってみると実感しやすいが、本当の暗闇の中では、懐中電灯の明かり程度では、足元を照らすぐらいが限界である。

 

 ……そんな、暗闇の中に……ポツンと置かれた蝋燭を囲うようにして、いくつもの影が、そこかしこより蠢いていた。

 

 

『──危機が迫っている! 私たちには分かるのだ……遠い宇宙より、むっちりモチプヨボーイの命を奪おうと這い寄る、ならず者たちの雄叫びが!』

『──まて、カパの助! 肋骨の浮き出たヒョロッ子ボーイの間違いではないのか? モチプヨも悪くはないが、狙われるとしたらヒョロッ子ポーイだと思うのだが……』

『──馬鹿め、カパの棒。内気で眼鏡を掛けた、ちょっとオドオドしたボーイの輝きに比べたら、取るに足らぬ些事に過ぎぬのだ』

『なんだぁ、てめぇ……!!』

『争いは止めよ……ここは相撲で決着をつけるのだ!』

『おぉ……その手があったか!!! さすがは今期長老のカバ座衛門!!!』

 

 

 蠢く影の集団の一部で、なにやらバチンバチンとナニカを叩き合う音が聞こえた……と思ったら、また動きが変わる気配がした。

 

 それは、古来より伝わる神聖な儀式、『おちんちランド開演の儀』である。

 

 かつてはスサノオの尊に対する奉納の儀として親しまれ、あの天照大御神すらも真顔になってスサノオから距離を取ったという、伝説の儀でもある。

 

 何人たりとも、この儀式を妨げてはならぬ。

 

 ひとたび邪魔をすれば、彼らは『回転肉法』と呼ばれる、対象を鍛え抜かれたマッスルで囲んで筋肉パワーによる精神的圧力をかける、恐ろしい技を使うのだ。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、神聖なる儀式を厳かに始めている……たちを尻目に、位置的には反対側にて蠢く影より……はぁ~、と深いため息が零れた。

 

 

『は~、やだやだ。これだから川育ちの生臭い野郎どもは……宇宙から来る乱暴者どもが狙っているのは、うら若き乙女意外に居ないでしょうに』

『そうそう、特にソバカスとかがコンプレックスになっている、内気だけど打ち解けるととっても可愛らしい少女なんて、真っ先に狙われるわね』

『そうかしら? 私としては王道である、朗らかで人気者な少女こそ真っ先に狙われ、その子を助けようとした友達もまた……だと思うのだけど?』

『何を言うのかしら、そういう内気な子が裏では明るい少女を攻めて攻めて攻めまくるのが良いんじゃないの』

『う~ん、そういうマニアックなのはちょっと……普通に、内気な子猫ちゃんを愛でるお姉さまって感じでよろしくてよ』

 

 

 こちらの方は、特に開演の儀など開かれることはなく、何処となくマウントを取り合うような雰囲気を醸し出しながらも、表面上は平穏を保っていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そんな二つの勢力を他所に、沈黙を保つ勢力がある。

 

 

『……ウキャ(黄金のきらめき、その美しさ損なうことなかれ)』

 

 

 その者たちは、それ以上の言葉を語らなかった。

 

 彼らは、知っているのだ。

 

 争うことのむなしさを、いがみ合うことの悲しさを、上下を語るその愚かさを。

 

 彼らは、知っているのだ。

 

 どんな生き物も、いずれは出すだけ。

 

 その時に生まれる黄金のきらめき、これに勝る宝はないのだという、宇宙の根源を。

 

 ゆえに、彼らは争わない。

 

 その争いは、きらめきを穢すだけなのだと。心を素直に解き放つ、ただそれだけのことで争いは生まれないと。

 

 ゆえに、彼らはそれ以上の言葉を語らず、沈黙を保つのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そして、そんな三つの勢力より、少し離れたところ。

 

 

 なんか声を掛けられたからと、気楽な気持ちで集まった……人間よりも一回りも二回りも大きな身体を持つ者たちは。

 

 

『ど、どうしよう、なんかみんな難しい話をしているね……』

『う、うん、なんの話なんだろう……』

『たぶん、すっごく難しい話なんだと思う、邪魔しないよう端っこに居ようね』

『そうだね、そうしようか』

『でも、なんでこんなに中を暗くしているんだろう? 外に出たら明るいのにね』

『暗いところが好きなのかも……私は、明るい場所の方が好きかな。あ、でも、寝る時は暗い方が良いかも』

『あ、私も、お揃いだね』

 

 

 とある女神様に愛された巫女が聞けば、それはそれはほっこりした顔になる……そんなお喋りをしながら、片隅にてこしょこしょとお喋りをしているのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、会議は踊る、されど進まず、そんな時間が過ぎた……とある、タイミングであった。

 

 

『──だが、空の彼方より飛来する侵略者どもに、どのように対抗すれば良いのか?』

 

 

 それは、この場に集まっているどの勢力(一部、除く)も考えてはいたが、それを指摘するわけにはいかない、目を逸らしていた問題であった。

 

 そう、実は、この場に集まっているどの勢力も、空より降りてくる侵略者への対抗手段を持っていないのである。

 

 出来ることといえば、せいぜい地上に降り立った時に襲い掛かるぐらい。言い換えれば、空の上から一方的に攻撃されてしまったら、手も足も出せないということ。

 

 

『……鴉天狗や、龍にお頼み申すしかあるまい』

『──長老! だが、それは……!』

『致し方あるまい! 我らには、空への対抗手段がないのだ……!!』

 

 

 だからこそ……苦渋の決断だと言わんばかりのその声に、誰も彼もが(一部、首を傾げている)、それ以上何も言えなかったのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そして、暗闇の奥でそのような密談がなされている中で、海を渡って大陸の先……星条旗がはためく国では。

 

 

『──新たにスポンサーを募る、と?』

『Yes、アポロ計画の再起動には莫大な経費が掛かります。既に計画はすすめられていますが、これから先、さらに費用が掛かるのは明白。口惜しい話ですが、我が国もまたオイルのダメージがすぐにでも表面化するでしょう』

『そのために、新たにスポンサーを募る、と?』

『Yes、しかし、小規模ではなく、大規模で。スポンサーの数を増やし過ぎますと、無用な混乱や不和を生むでしょうから、大口が望ましいでしょう』

『ふむ、候補はあるのかね?』

『Yes、いくつか候補がありますが、その中でも……新たに競馬場を作った凄腕の女性経営者にアプローチするのがよろしいかと』

『競馬場を? それは、もしや──』

『Yes、『愛し子カワイイもうどこから褒めたら良いのか分からないうう涙が出そうああ出ちゃったカワイイ愛し子カワイイぺろぺろしたい会社』のオーナー……チカコ・アキヤマです』

 

 

 陰謀が、動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




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