ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ タイトルで分かりますけど、女神様警報発令です


第200話: 女神様「美しい……これ以上に可愛らしい、あ、もっとカワイイ、モットモットモット……」

 

 

 ──『ガチャ』。

 

 

 それを改めて語る必要はないが、千賀子にとってそれはまさしく未来を左右する分岐点に成り得る祝福であり、呪いである。

 

 何故ならば、拒否することが出来ないからだ。

 

 必ず、どこかでガチャの時が訪れる。

 

 そして、その結果を千賀子は拒否できない。

 

 それが役立つモノならまだしも、役立たないどころか害悪になる場合もある。もしくは、過ぎたるは及ばざるが如しというやつで、結果的に害悪になっているモノもある。

 

 その代表例とも言えるのが、千賀子に備わっている『魅力』である。

 

 最初の頃は、良かったのだ。無邪気に自分が美形になっているな~、と暢気に構えていられたから。

 

 しかし、度が過ぎてしまったのは、何時の頃だったか。

 

 気付けば、言葉では説明出来ないほどに高まってしまった『魅力』は、巫女的パワーで抑えなくばまともに外には出られないぐらいになっていた。

 

 具体的な例をあげるならば、千賀子は巫女的パワーを外した瞬間、周囲の人間を例外なく魅了する。

 

 この魅了は、単純に惚れた惚れないとか、そんなレベルでは収まらない。はっきり言ってしまえば、人によって命を奪いかねないレベルなのだ。

 

 言うなれば、愛しく思うあまり気が狂ってしまう、というやつだ。

 

 普通の人間だって、恋しく思うあまり相手が嫌がっていても逆恨みしたりするし、なんなら顔すらまともに合わせていないのに、妄想を重ね過ぎて恋人だと思い込む者だっている。

 

 それと同じで、枷を外した千賀子の『魅力』はもはや、常人では耐えられない領域にある。

 

 精力過多な時期に、異性の裸を目にしただけで反応したり、胸を高鳴らせたりしてしまうのと同じで、気付けば性別問わず反応させてしまう。

 

 視線で、体臭で、声で、身体の動き、ただそこに居るだけで、一挙手一投足の全てが、堪らなく魅力的に見えてしまう。

 

 

 ある者は、ただその背中を眺めただけで勃起してしまい。

 

 ある者は、ただその唇を見ただけで股を濡らしてしまい。

 

 ある者は、歩いている姿を見て鼓動を速めてしまったり。

 

 ある者は、座る姿に見惚れて言葉を失くしてしまったり。

 

 

 それらは、言葉で説明できるものではない。

 

 

 ただ、些細な仕草の一つ一つが魅力的に思ってしまうし、周りからはそう見えてしまうし、千賀子は無自覚にそういった動きをしてしまう。

 

 魅力的なのは、良い事である。ただ、悪い事も起こす。

 

 それゆえに、祝福でありながら、呪いなのである。

 

 そして、今の千賀子はもはや人の身には余る『魅力』を手にしていて……これ以上はもはや、ほとんど呪いにしかなり得ない状態になっていた。

 

 

『──さぁさぁ、愛し子、愛らしい子、200話を記念して、今回は一つだけボーナスを足しました』

 

 

 だからこそ、毎回『ガチャ』の時が来ると千賀子は身構えるわけで。

 

 ましてや、記念を称するガチャの時は、その分だけ祝福(のろい)が中までたっぷりなので、余計に身構えるわけである。

 

 まあ、身構えたところでなんの意味もないのだけど。

 

 その程度でなんとかなるなら、千賀子はもっと気楽に『ガチャ』を迎えているところだ。

 

 

『──それは、追加のログインボーナスです。これまで一日1枚のガチャコインを支給してきましたが、それとは別に、日ごろから頑張っている愛し子のために、今回はボーナスを付けることに決めました』

「いや、いらないです、そのお気持ちだけで私には十分過ぎますので」

『──ああ、なんていじらしくて可愛らしい……その可愛さに、女神様ポイントを7兆点点けましょうね』

「しまった、余計な事をしてしまった……」

『──その顔も可愛い、ああ、涙が出そう、10兆ポイント追加です』

「えぇ……」

 

 

 せめてもの救いは、だ。

 

 色々考えはするけど、作ったモノには拘りはないのか、前に実装された要素がサラッと削除されている場合が多いという点。

 

 まあ、それぐらいだろうか。

 

 その証拠に、前回はガシャポンだった『ガチャ』の見た目がルーレット盤に戻っている。たぶん、今回はこっちの気分なのだろう。

 

 もしくは原点回帰のつもりなのかもしれない。ボードの上には何だか懐かしい、チビ女神様が準備体操を行っていた。

 

 

『──さて、話を戻しますが、これは愛し子がこの星に生まれた時から換算──いや、待てよ』

「え?」

 

 

 しかし、だからといって、そこで油断をしてはいけない(戒め)。

 

 

『──換算しようと思ったのですけど、それでは足りないと思いまして。それではまるで、愛し子がこの星に生まれてからしかカウントできないと、私は気付きました』

「はっ?」

『──冷静に考えて、生まれる前から既に愛し子は私の心にログインしていましたので、実質的に私と同じ年齢すなわち日数分のカウントを取るべきでは……そう、思ったわけです』

「待って、女神様。その計算方法はおかしい、やり直すべきだと思う」

『──しかし、そうしてしまうとログインボーナスの支給を終えるまでには、貴女の寿命全てを費やしても時間が足りません』

「そうでしょう、そうでしょう、だからお気持ちだけで」

『──なので、これまでの分を1回分にまとめて凝縮しましょう』

「は?」

 

 

 何故ならば、相手はいつも千賀子の予想の斜め上を光の速さでブッ飛ばしてゆく女神様だ。間違っても、気を抜いてはいけないのだ。

 

 

『──さぁ、愛し子よ。ガチャを引きなさい、これは私からのプレゼント……遠慮せず、自由に使うのです』

 

 

 まあ、だからといって、何度も言うけど、油断せずとも気を緩めなくとも、どうにもならない問題だから、大した意味はないのだけど……で、だ。

 

 おさらいしよう、千賀子の眼前にはルーレットが表示されている。

 

 その上部にはミニ女神様が設置されており、回転に合わせてウゾゾゾと元気よく走っている。常人が見たら、正気を失ってしまうような姿だ。

 

 残念ながら、ルーレット盤に記された当たりの内容を知る事はできない。実際に当たりを引くまで、分からないようになっている。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………どうしよう、とんでもなく不安である。

 

 なにせ、とんでもねえ凝縮率の1回だ。

 

 いったいレア排出割合はどれほどなのか……もしかしたら、UR率100%とかではないだろうか? 

 

 

「……あの、女神様、これって当たりの割合、どんな感じなんですか?」

 

 

 あまりにも気になるので、率直に尋ねてみれば、だ。

 

 

『──女神印の花丸率が99.999%です。0.001%でURです』

 

 

 何故なのだろうか。

 

 言葉だけを聞いたら微笑ましい単語なのだが、女神様が言うと、かつてないぐらいの恐怖を覚えてしまうのは。

 

 というか、普通に恐ろしい。

 

 特に、返答が返答になっていない時が一番ヤバいし、そこに意味不明な単語が含まれている時ほど、取り返しのつかない場合が多い。

 

 伊達に、女神様のガチャにさらされてきたわけではない。この程度、予測できていなければ今頃千賀子は発狂して人生を終えているところだろう。

 

 だからこそ、この時の千賀子は、誇張抜きで心底震え上がっていた。巫女としての直感が、これでもかと千賀子自身に訴えていた。

 

 ああ、ついに、その時が来たぞ……と。

 

 その感覚を言葉に表すのは難しい。しかし、分かる部分はある。

 

 自分の力ではどうにもならない未来。

 

 99.999%の確率で、ろくでもない事態に陥るのが確定している……それだけは、千賀子でも理解させられた。

 

 

(……せ、せめて、エマと春人にだけは悪影響を及ぼさないモノが出ますように!!)

 

 

 ゆえに、千賀子は神頼み……いや、その神様からの仕打ちがコレだから祈る相手が違うのだけど。

 

 とにかく、自分はどうなってもいいから、2人にだけは……そんな思いで、千賀子は女神様から渡されたダーツを構え──

 

 

 

「待って」

 

 

 

 ──た、その時であった。

 

 

 

 背後より掛けられた声に、振り返る。直後、千賀子は「えっ?」思いもよらなかった人物の登場に、思わず目を瞬かせた。

 

 

「あんた……」

「巫女の私、そのガチャ……私に引かせてくれないかしら?」

 

 

 何故ならば、そこに居たのは千賀子に良く似た……『巫女』ではなく、『悪女』のジョブを得た、別世界線の……千賀子であったからだ。

 

 彼女は、『悪女千賀子』。同じ名前なので、便宜上、そう名乗っている。

 

 別世界線において、その力を制御しきれず、様々な要因が重なって破滅して心が壊れてしまい、その苦しみから逃れるための麻薬漬けによって廃人の一歩手前になっていた、千賀子の別の形である。

 

 彼女はとある出来事からこの世界に呼び寄せられたが、先述のとおり重度の精神障害と薬物障害によって、薬によって正気が保たれている時以外はまともに応対ができない……はずだったのだが。

 

 

「……ロボ子?」

 

 

 己の記憶が確かなら、悪女千賀子は、冴陀等村にある神社の奥にて安静にしているはずだ。

 

 少なくとも、外出する際はロボ子のスパイロボットが秘密裏に監視しているから、もしもこっちに来ているならば、事前に分かるはずなのだ。

 

 

「申し訳ありません、どうやらマスターと同じく、単身でのワープ能力を有していたみたいです」

「あぁ……それじゃあ、仕方がないか。でも、大丈夫なの?」

「いちおう、今は大丈夫であります。以前は、アナザー様は誰かが傍に近寄ると錯乱状態に陥ったり、あるいは精神安定のために性交渉を持ちかけたり、時には発作的に自殺しようとするため、注意が必要でした」

「大丈夫なの、それ????」

「ですので、以前の話であります。少し前から、なにか心境の変化があったのか、全ての薬物を断っています。今はもう、私の治療を受けて健康体に近しいレベルにまで回復している……はずですが」

「……それはそれで、ちょっと不安だわ」

 

 

 思わず、そうツッコミを入れた千賀子だが……こほん、と一つ間を置いてから、改めて悪女千賀子へ問う。

 

 

「私は構わないけど、意味を分かって言っているの? あくまでも私の直感だけど、今回のコレは有無を言わさない結果をもたらすタイプのガチャだよ、これ」

「それでもいい……ううん、違う。そうしたいの……」

 

 

 そう言いながら、悪女千賀子は……『──(=^ω^=)カワイイノガフタリカワイイ』といった感じでニヤニヤしている女神様に、尋ねる。

 

 

「私が引いたガチャの結果は、巫女の私にも渡るの?」

『──いえ、プレゼントは一つだけですので、どちらかだけです』

「じゃあ、このガチャを私が引いて、私が恩恵を得ても良いのね?」

『──(=^ω^=)イイヨー』

 

 

 その言葉に、悪女千賀子は……笑みを浮かべると、呆気に取られている千賀子よりダーツを受け取り……無言のままに、ダーツを放った。

 

 

 

『(=^ω^=):化身・木花之佐久夜毘売《このはなのさくやびめ》(New)』

 

 ──要約:木花之佐久夜毘売の権能により、その身は永劫の美しさと若さが保たれる。けして衰えることのないその身には、傷付いた命が宿り、孤独に寄り添い続ける。

 

 

 

 そうして、当たったのは……これまでとは違い、『R』や『SSR』の表記とは異なり、『(=^ω^=)』女神様の顔が……いや、それよりも。

 

 

「──やっぱり、こうなると思った!」

 

 

 あまりにも聞き捨てならない要約を見て察した千賀子は、慌てて悪女千賀子の腹に手を当て……その奥より感じ取れる気配に、千賀子は……顔をあげた。

 

 ……これはもう、千賀子にはどうにもならない。

 

 せめて命が根付く前ならば対処出来たのだが、既に根付いてしまったならばもう、千賀子でもどうにも出来ない。

 

 いや、というかこれは、その前でも無理だったかもしれない。

 

 なにせ、感じ取れる肉体の反応が明らかに以前と違う。

 

 少なくとも、実年齢は千賀子よりも上だったはずなのに、手応えが……明らかに、若返っていないと説明が付かない。

 

 いや、それどころか、それ以上だ。

 

 まるで、活力に満ち溢れていた学生時代を思わせるような健康体……そんな手応えすら感じ取れた。

 

 そして、そのうえで千賀子は、それ以上に何も言えなかった。

 

 何故ならば、当の悪女千賀子の表情には、欠片の恐怖も不安もなかったからだ。

 

 むしろ、どこかホッとした顔をしていて、その目には……これまでには無かった感情の色が芽生えていた。

 

 

「巫女の私からしたら、気でも狂ったと思うかしら?」

「……そんなの、分からないわよ。だって、私は貴女じゃないんだもの」

「ふふふ、そうね、どれだけ私に近くとも、別の私なんだものね」

 

 

 そう呟きながら……悪女千賀子は、己の腹を撫でた。

 

 

「もう、誰も居ないけど……誰からも望まれなかった命を育てていきたいの……間違っていると思う?」

「判決を下せるほど、私はえらくなった覚えはない」

 

 

 でも……その先の言葉を、千賀子は目線を逸らして続けた。

 

 

「もしも、1人だったなら……エマや春人と別れて独りになっちゃっていたら……だから、否定はできない」

 

 ──だって、一人ぼっちは寂しいでしょ。

 

 

 そう、言葉を続けた千賀子に……悪女千賀子は、優しく己の腹を撫でつつも、どこか寂しそうに微笑むだけであった。

 

 

「……生活費とかは出すわ。冴陀等村の方にある『神社』は、好きに使っていいから。それと、別に家が欲しいなら、ロボ子に相談しなさい、それぐらいはさせなさいよ」

「あら、いいの?」

「私とは違うけど、同じではあるんだもの。今さら一人二人三人増えたところで、大した違いはないわよ」

「……ありがとう」

 

 

 そう、静かに呟いた悪女千賀子は……スーッと、千賀子のワープの時とは少しばかり違う変化と共に、姿を消した。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………その姿を見送った千賀子は、一つ、溜め息を吐くと。

 

 

「女神様、もしかして狙っていましたか?」

『──え?』

「あ、いえ、こっちの話です……まあ、女神様だから、どうなろうが女神様の感想は同じか……」

『──よく分かりませんが、愛し子たちは本当に可愛らしいのです。あの子もこの世界に来た当初は布団の中で泣き叫んでいたり、自分の腕を噛みちぎっている姿が見られて可愛かったですよ、これは甲乙つけがたいですね』

「…………(ドン引き)」

 

 

 女神様に一言物申さねばと思ったが、当の女神様が人知を超えるレベルでどうにもならなかったので……千賀子はもう、何も言えなくなったのであった。

 

 

 




※ 悪女千賀子さん、経産婦なんすよね、独りになっていますけど

千賀子と決定的に違うのは、実際に腹を痛めて産んだかどうか
同じ母親だし、愛情に上下の差はないのですが、この心境の根っこの部分は、千賀子も想像でしか認識できませんので…
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