ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第211話: もう二度とやらねえからな(by 千賀子)

 

 

 

 あまり知られていない(というか、忘れ去られた?)ことだが。

 

 

 1979年というのは、実はけっこう後世にもその名が残っている作品(つまり、ロングセラー)や、非常に画期的な商品が生まれた年でもある。

 

 たとえば、映画作品では『エイリアン』や『スーパーマン』だ。

 

 『エイリアン』は後のモンスターパニック系作品に多大な影響を与えた作品であり、様々なパロディも作られ。

 

 同様に『スーパーマン』もまた、様々な作品に影響を与え、バラエティ番組などでもパロディされたぐらいである。

 

 そして、この年に生まれた画期的な商品と言えば、ソニーが販売した『ウォークマン』である。

 

 どうしてこの商品が画期的なのかというと、この商品が出される前は、音楽機器は大型で持ち運びが大変であった。

 

 いわゆる、ラジカセと呼ばれるモノが小型だとされていたのだ。

 

 現代の若者からすれば『あんな大きなモノが?』と首を傾げるだろうが、当時としては、ラジカセは最先端の小型家電の一つであった。

 

 そんな中で販売開始されたのが、『ウォークマン』だ。

 

 ウォークマンとは、携帯音楽プレイヤーの元祖といっても過言ではない商品であり、『音楽を携帯し気軽に楽しむ』という文化を生み出した。

 

 実際、このウォークマンの理念を元に発展し続けた先に、CDウォークマン、MDウォークマン、そして、デジタルウォークマンが誕生していたりする。

 

 そう、それまで人々の暮らしにおいて音楽とは、お店やテレビ(あるいは、演奏)でしか聞くことがないモノだったのだが。

 

 ウォークマンが登場することによって、人々はもっと気軽に音楽に触れられるようになった。

 

 日本における音楽文化が爆発的に広がったキッカケの一つであり、実際、当時の若者にとってウォークマンを持っているのはある種のステータスになっていた。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 どうしてそんな話を改めてしたのかと言うと……理由は、日本上空……というよりは、地球の上空、大気圏外どころか太陽系外の、はるか彼方にて。

 

 

『──総統! 調査結果が出ました! やはり、例の星の科学力は、我らの足元にも及びません』

『ふん! やはり、所詮は下等な現地生物だ』

『それでは、当初の作戦通りに?』

『うむ! 我ら一族をコケにしたその驕り、死をもって償わせてやろうではないか!!』

 

 

 地球へと向かって突き進み続ける、数万にも達する宇宙艦隊。そう、彼らこそが、宇宙からの侵略者たちであった。

 

 宇宙艦隊の外観は、まるで閉じた傘のよう。

 

 その攻撃は、とにかく攻撃の一手。連射し続ける主砲と共に、時には体当たりによって直接敵を粉砕する、超攻撃型の戦艦である。

 

 そして、その船に乗っている彼らは、誰が見ても人とは異なる外見をしていた。

 

 見たままを語るなら、昆虫とトカゲと人間が混ざり合ったかのような、人型宇宙生物、といった感じだ。

 

 

 ……おそらく、『あれ? 地球に潜伏しているやつと見た目違わない? ほら、あのグレイっぽいやつ……』と思う人がいるはずなので、先に説明しておく。

 

 

 姿形が違うのは、侵略をスムーズに行うために肉体改造を施しているからである。

 

 彼らにとって、姿形はそこまで重要視されない。

 

 見た目の肉体なんぞ、気軽に変えられるのを可能とする科学力を有しているからだ。

 

 

 で、だ。

 

 

 彼らは当初、人類なんぞ宇宙の辺境にて重力に縛られている下等生物だと思っていた。

 

 資源惑星の一つとして侵略しようにも、辺境過ぎて移動するだけでも赤字になるからと放置していた。

 

 とりあえず最低限の調査ぐらいは……ということで使い捨ての隊員を送りはしていたが、それだけ。

 

 所詮は、地べたを這いずることしかできない下等生物だ。

 

 いちおう、この星は我らのモノという程度に唾を付けとくだけで良い……そう、思っていたのだが。

 

 

 ──まさか、その下等生物より真正面から挑発されるとは、想像すらしていなかった。

 

 

 だからこそ、彼らは激怒した。

 

 彼らは、侵略生物である。それゆえに、そのプライドは桁違いであり、どれだけ赤字になろうが問題ではなくなった。

 

 

 身の程を知れ。

 

 

 その一心で、彼らは敵地制圧用の巨大怪獣を送りつけた。

 

 この怪獣は、遺伝子操作によって改良を重ねた戦闘用生物兵器。

 

 攻撃性だけでなく、非常に繁殖欲が強く、単独生殖を行えるので、ある程度は数を維持できるよう設計されたモデルである。

 

 これによって、下等生物が絶滅するはヨシ。

 

 送りつけた怪獣はおおよそ5年程度で絶滅する設計になっているから、その後に向かえば良い。

 

 絶滅には至らなくとも、現在の下等生物の戦力を調べられる。

 

 敵が弱ければ戦力を摩耗させられるし、想定していたより強いのであれば、続けて送り続ければ良いだけのこと。

 

 どちらにせよ、下等生物どもはワケが分からないまま蹴散らされていく……それを想像するだけで、彼らは胸がすく思いであった。

 

 

 ……だが、しかし、事はそのようには運ばなかった。

 

 

 怪獣の体内に搭載してある記録装置にて、分かったことなのだが……なんと、送り出した怪獣が、即死したというのだ。

 

 それも、外傷によるものではない。原因は不明だが、いきなり生命活動が停止したのである。

 

 これには、さすがの彼らも驚いた。そして、考えた。

 

 調整した生物とはいえ、生物であるのは変わりない。偶然が重なり、突然死してしまった……という可能性は、0ではない。

 

 もちろん、非常に低いというのは分かっていた。けれども、0ではない。0ではない以上、起こる時は起こるのだ。

 

 

 それゆえに、彼らは……二体目を送った。

 

 

 そんな奇跡は二度も起こらない、そう思って……だが、二度目の奇跡は起こった。それも、一度目と同じく、突然死としか言い表しようがない状況で。

 

 これは……いったい、どういうことだ? 

 

 疑念を覚えた彼らは、殲滅のための怪獣ではなく、敵戦力を調べるために、無数の怪獣を送った。

 

 けれども、全てが死んだ。

 

 どれもが戦闘らしい戦闘を行う間もなく、地表に降り立ってから間もなく……その果てに、彼らはとある仮説を導き出した。

 

 もしかすれば、あの星の大気が、怪獣たちにとっては致命的なナニカがあるのではないか……という仮説だ。

 

 実際、これには信憑性があった。

 

 怪獣に搭載された全ての観測機からの通信データには、何かしらの衝撃や外傷を受けたという記録が何一つ残っていなかった。

 

 また、先兵隊として送り出した部隊が、壊滅してしまった(これも原因不明)のもまた、警戒心を上げさせる原因になった。

 

 少数とはいえ、明確に敗北したのだ。

 

 もはや、彼らにとって、片手間に滅ぼすだけではなく、明確かつ全力で……そうして、彼らはついに動いた。

 

 

『──ふはははは、下等生物どもめ……我らを侮った報いを受けるがいい!』

 

 

 主力艦隊を用いて、惑星外からの一方的な砲撃。

 

 抵抗なんて、させない。いや、むしろ、滅びる最後まで抵抗し続ければよい。

 

 それら全てを丁寧に踏み潰し、絶望の中で終わらせる。

 

 プライドを傷付けた報いを与えるため……彼らは、地球へと向かっているのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、宇宙の彼方にて憎悪が膨れ上がり続けている最中。

 

 

 地球の……具体的には、日本という国の中にある『春木競馬場』にて、そのレースは開かれていた。

 

 

 

『怒ってはいないけど、もう二度とフルマラソンに出ないぞ記念:3歳以上 ダート:4219.5m(右)』。

 

 

 

 本賞金:1着2億円/2着1億円/3着5000万円/4着2000万円/5着1000万円/その他、出訴奨励金や出走手当・計4195万円。

 

※ 競争中あるいはこの競争によって馬の負傷が見つかった場合、二度と秋山千賀子が所有する施設やレースには参加できなくなります、良く考えて出走するように。

 

 

 

 さて、実に目立つところにツッコミ所が多数用意されたこのレースだが、実は、そこだけではない。

 

 まず、会場出入り口には垂れ幕やら横幕やらで。

 

 『マラソン関係は二度と出ねえからな!』

 

 という文字が、それはもう力強く書き殴られていて、デデーンと設置されていたのである。

 

 これがまあ、非常に目立つ。

 

 なにせ、馬券を買う場所にすら看板が設置されていて、そこには『もう私は走らねえぞ!』と書かれていた。

 

 いったい、何をそこまで千賀子の怒りを買ったのか……いや、まあ、事はとにかくもうこういう系には出ねえからなという牽制なのだが、それはいい。

 

 そんな事よりも、関係者からしたら、だ。

 

 目に留まるのは、賞金額や、レースの長さだ。

 

 なにせ、この時(1979年)はまだ開催されていなかったが、千賀子の前世の世界において、1979年の有馬記念の賞金額は、1着5500万円である。

 

 つまり、1着だけでも約3倍強、全体では約4倍にもなる、超高額レースである。

 

 もう、それだけでも注目されるというのに、そこに加えて『4219.5m』とかいう、中途半端なのに長すぎるとかいう、とんでも長距離レースである。

 

 しかも、このレースの異質な点は、そこだけではない。

 

 なんと、このレースでは、少しでも馬に異常を覚えたら、騎手の判断で絶対に競争を中止しなさい……という厳命が成されたのである。

 

 

 つまり、だ。

 

 

 多少無理をさせて勝ちを拾いに行き、万が一競走馬に負傷が見つかれば、今大会も失格&二度と千賀子が開催するレースへの出走は駄目……という、特殊ルールが課せられているのだ。

 

 それでいて、初めから運良く勝てたら……みたいな馬は千賀子アイによって弾かれるのだから、必然的に顔ぶれが変わり……そりゃあもう、関係者がざわついて当たり前であった。

 

 

 ……一時期、こいつ何も考えてねえなって疑っていた諸君! 

 

 

 安心してほしい、変に考えてレースを決めると、こういう意味不明なレースを作ったりするからこそ、そこまで考えずにレースを作っていたのである。

 

 で、まあ、話を戻そう。

 

 とにかく、今回の『マラソン出ないぞ記念』の距離は4000m越えなのだが……さすがに、4000mともなれば、少しばかり出てくる馬が変わってくる。

 

 出走するだけでも黒字になるようなレースだが、始めから勝つ気はないけどレースに出て賞金欲しい……だなんて者は、千賀子チェックによって弾かれていた。

 

 また、(芝)ではなく、(ダート)なのもまた、馬主泣かせである。

 

 どうして芝ではなくダートなのかというと、12月に入ってすぐの現在、有力とされている馬は12月半ばに開かれる有馬記念に向けて調整に入っているからだ。

 

 別にえり好みするわけではないが、千賀子としても、芝の高い高額レースがそっちで開かれるわけだし、こっちはダートでやろう……とまあ、思ったわけである。

 

 

 ──Q.4000m越えのダートコースなんて何時の間に? 

 

 ──A.公式では、2年前に改修済みらしいぞ、なお千賀子は知らなかった。

 

 

 そんなわけで、今回の『マラソン出ないぞ記念』が決まったわけである。

 

 

「──秋山オーナー! ○○放送の者です! 今回もまた、とんでもなく豪華なレースになりましたね」

「そうね、最近ちょっとレースを開いていなかったし、その分も込めました──あ、シップの臭いがしたらごめんなさいね、まだ筋肉痛が取れなくて……」

「いえいえ! 早速なんですが、オーナーは今回の出走馬で、コレはと目を光らせている馬はいますでしょうか?」

「……そうね、7番のハツシバオーかしら。足に少し不安が見られますが、もしかすれば1着を狙えるかもしれませんね」

「なるほど! 他に、注目している馬はいますでしょうか?」

「10番のビンゴガルーかしら。こちらも、少しばかり足に不安がみられますわね。ですが、それでもただ漫然と走らせるつもりはないって気迫を感じます」

「ビンゴガルーはたしか、芝コースを得意としておりますね……他には、どんな馬がいますか?」

「2番のメジロトランザムかしら。あと、4番のメジロイーグルも……イーグルは逃げで行くのかしら? 二週間前に天皇賞(春)の出走取り止めをしたという話もあるから、少し不安だわね」

「なるほど、無事に走り終えてくれるのが一番、ということですね! インタビュー協力、ありがとうございました!」

「こちらこそ、貴方も楽しんでいっ──あいたたた……」

 

 

 それはけして、筋肉痛へのやつ当たりではないことを、ここに記しておく。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ちなみに、だ。

 

 

 これに合わせて、年末に。

 

『帰って来た千賀子だ~び~:3歳以上 ダート700(右) ポニー限定』

 

 とかいう、これまたとんでもレース開催が予告されているからこその注目もあったのだが……まあ、これは今語ることではないだろう。

 

 

 

 

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