ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ ホラー要素あり
 苦手な方は注意要


メリークリスマス(1日遅れ)、みんなもこれを見て1日遅れのクリスマスを楽しんでくれ


第214話: 大統領「ふん! 少し見てくれがマシなだけの女モンキーが手間を取らせやが(=^ω^=)」

 

 

 自由の国、アメリカ。

 

 これまで幾度となくホワイトなハウスに集められた政界の重鎮、大企業の重鎮、軍部の重鎮、関係各所の重鎮たちを前に、大統領と呼ばれた男は唸り声をあげた。

 

 

「──いったい、どういうことだ?」

 

 

 その問い掛けに、集められた重鎮たちは誰も答えられなかった。

 

 主語が抜けているから分からない……いやいや、そんなわけがない。

 

 ここに集められた理由など、今さら説明する必要はない。

 

 そう、月より手に入れた『シャイニング』を求め、再び始動した『アポロ計画』に関する、報告会みたいな場であり。

 

 今回は以前から進展がない、計画推進のために絶対必要不可欠なスポンサー募集。

 

 その中でも、最優先事項として名が上がっていた、『チカコ・アキヤマ』へのコンタクトがうまく進んでいない……それに関する話であった。

 

 

「接触出来ないという報告が来るなら、まだ良いのだ。少なくとも、物事を前進させようと活動しているのが分かるからだ」

 

 

 そこで、大統領は一度言葉を止めて……それから、苦悶の表情を見せた。

 

 

「しかし、その報告が一切途絶えるのは腑に落ちない。それも、1人や2人ではない」

 

 

 ジロリ、と、大統領の視線がとある人物へと向かう。

 

 

「昨日の時点で、既に何名の人員と連絡が付かなくなっているのだね?」

「──昨日の時点で、98名です」

 

 

 一つ、大統領は頷いた。

 

 

「そうだ、既に98名ものエージェントが失踪している。ロシアや中国ではなく、不穏な気配に満ちている中東でもない……東の、黄色い猿どもの国で、だ」

「…………」

「まさか、日本のポリスが動いているのか?」

「──No、それはありえません」

 

 

 そう答えたのは、CIA長官──とラベルが張られた人形であった。

 

 人形は、一見するととても可愛らしい造形をしている。

 

 しかし、よくよく見ると、髪の毛の材質が妙にリアルというか、唇と目は、まるで本物のようにうっすら湿っていた。

 

 

「──先日、電話を貰いました。日本はこの件には関与しておりません」

「では、なんだというのかね? ターゲットが独自に凄腕のボディガードでも雇っているとでも?」

 

 

 ジロリ、と、大統領の視線が再び──人形へと向けられる。しかし、答えたのは、CIA人形ではない。

 

 

「ボディガードとは行かなくとも、なにかしらの護衛なり身辺警護、あるいは所在地がバレないようカモフラージュしているのかもしれません」

 

 

 応えたのは、別の人形であった。

 

 この人形もまた、CIA長官人形と同じく、妙にリアルな質感を感じ取れる。

 

 特に目立っているのが眼球部分と唇と髪だが、この人形はなにやら舌まで装着しているようだ。

 

 

「『チカコ・アキヤマ』だけではありません。彼女ほどの富豪ともなれば、所在地を隠すのは当たり前のこと。もしかしたら、ガセを掴まされているのかもしれません」

「かもしれません、では話が進まない。私が欲しいのは、接触し、契約を結んだという結果だ」

 

 

 一つ、溜め息をこぼした大統領……その声には、焦りの色が感じ取れた。

 

 いったいどうして……理由は、大統領選挙が近付いているからだ。

 

 そう、大統領が今回の計画……すなわち、『アポロ計画』を再稼働させようと動いていたのは、何も『シャイニング』だけが目的ではなかった。

 

 いや、正確には、『シャイニング』以外の目的を含める必要が出てきた、という方が正しい。

 

 それは、先ほども述べた大統領選挙のこと。

 

 アメリカ……大統領を始めとした首脳陣は、アメリカのこれから100年先にも渡る絶対的なアドバンテージを得るために、月にあると推測される『シャイニング』を求めた。

 

 そのためには莫大な費用を必要とし、その資金を調達するために、世界的にも知る人ぞ知る『愛し子カワイイもうどこから褒めたら良いのか分からないうう涙が出そうああ出ちゃったカワイイ愛し子カワイイぺろぺろしたい会社』のオーナーであるチカコ・アキヤマ氏へとコンタクトを取ろうとしていたのだ。

 

 計画であれば、もう現時点で様々な手段を用いてスポンサーになっていただいている……はずだったのだが、ここに狂いが生じた。

 

 交渉が難航しているどころか、そもそもまともにコンタクトすら取れていないというのだ。

 

 それだけでも大問題だというのに、そのうえ、この計画のために、既に相当な予算を注ぎ込んでしまっている。

 

 前回のような国家予算の数%以上を毎年注ぐようなことはしていない(できないので)が、それでも、突き上げを食らうのは必然な金額だ。

 

 それ以外にも、様々な要因からアメリカ国内の経済にいくらか歪みが生じ始めているのもあって、失敗しましたの一言で終わらせるわけにはいかないのだ。

 

 

「……このままでは、『アポロ計画』を進める以前の問題なのだ。なんとしてでも、チカコ・アキヤマと接触を図らねばならない」

 

 

 苛立ちを誤魔化すように、あるいは不安を紛らわすかのように、大統領はポフポフと綿の詰まった手でテーブルを叩く。

 

 それに対して、重鎮たちの反応は……無言であった。

 

 彼らもまた、大統領と同じ気持ちだ。

 

 今さら泥船になろうとしているココから逃げ出したとて、待っているのは『苦しくなるとすぐに見捨てて逃げ出す人物』という、取り返しのつかない風評だ。

 

 これはなにも、政争に限った話ではない。

 

 ビジネスの場においてもっとも大切なのは、『信用』だ。

 

 信用が無い相手には、お堅い企業はまず扉を開からない。また、信用の無い相手に対して親身になろうとする企業も無い。

 

 いざという時に逃げ出すような人物を信用する者は稀だ。寄って来るのは、そういう行為を行っても欠片の罪悪感も抱かない同類だけ。

 

 少なくとも、一定の者たちからは間違いなく一歩距離を置かれた対応を取られ続けるだろう……それが分かっているからこそ、彼らは焦っていた。

 

 そう、焦っていたからこそ、大統領を始めとして、この場に集まっている者たちは様々な手段を講じていた。

 

 単純な、真正面からの交渉だけではない。

 

 外交を通じて、こちらに引き込んでいる日本の議員から圧力を掛けようとしたり、身辺調査を行って周りから攻めようとしたり、色々とやった。

 

 なんなら、脅迫や誘拐だって選択肢の一つとして考えていた。

 

 まあ、さすがに勇み足にも程があるというか、17日前に発令したのだが、それよりも5日前に中止の指示を出したのだから、未遂のままではあるのだが。

 

 とはいえ、未遂であろうとも資金は減る。

 

 あくまでも最終的な許可を出さなかっただけで、その準備段階の時点でそれなりに手痛い出費が起こっているからだ。

 

 

「……なにか良い案はあるか? とにかく、まずはコンタクトを取らねば話にならん」

 

 

 その言葉に、集まっている誰もがう~んと考え込み……そんな中で、ぽふんと綿がぶつかり合う音が……わずかにした。

 

 

「大統領、シアトルスルーの馬主がたしか、チカコ・アキヤマ氏と交流があると小耳に挟んだ覚えがあります」

「ほう?」

「いきなり将は討てません。いきなり馬を討つのも難しい。しかし、海を挟んだ先の友人まではボディガードの手も届きませんし、地の利は我らにありましょう」

「なるほど……よし、その手で行こう」

 

 

 よくやった──そう言わんばかりに、大統領が手を叩く。

 

 ぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふ。

 

 それを見て、周りの者たちも手を叩く。

 

 ぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふ。

 

 埃が舞う、綿埃だ。

 

 古ぼけた人形の身体からふわふわと飛び散るそれらの中で、大統領は指示を出す。

 

 

「それでは、さっそく事に当たってくれ」

「Yes,Sir!!」

 

 

 力強く返答をしたその者は、ヒョイッと椅子から飛び降りて……着地したのだが、柔らかい足ゆえにグラッと体勢を崩して──頭を床にぶつけた。

 

 

「ぐぴっ」

 

 

 奇妙な悲鳴をあげると同時にビクッとケイレンしたその人形は、それっきり動かなくなった。

 

 

「あっ」

 

 思わず、大統領が拍手を止める。

 

「あっ」

 

 周りの者たちも、手を止める。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………気まずい沈黙が、この場を流れた。

 

 

 なんでかって、彼らは綿が詰まった人形である。

 

 柔らかいがゆえに、衝撃には極めて弱い。綿しか無い手足ならともかく、胴体もそうだが頭は特に弱い。

 

 なにせ、頑丈さとは皆無な綿に大脳を覆っているのだ。 

 

 身体を踏まれたらそれだけで内蔵が潰れて致命傷になるし、転んだだけで大脳の一部が変形して死んでしまう。

 

 だって、彼らは人形だから。

 

 綿の詰まった人形だから。

 

 

「……彼を、治療室へ」

「……Yes,Sir」

 

 

 でも、大統領と、大統領に付き従う彼らは頑張るのだ。

 

 既に、彼らは後戻りなど出来ない。

 

 何故ならば──っと、その時であった。

 

 

 

 

 

「……今日の現場はここか?」

 

 

 

 

 

『大統領室』……そう書かれた紙切れを片手に部屋に入って来たのは、作業服を着た男の職員であった。

 

 

「……今日はまた、ずいぶんと酷い有様だな」

 

 

 その職員……彼は、傍目にも分かるぐらい困った様子で、室内の惨状に目を白黒させていた。

 

 理由は、室内に置かれている大量の人形である。それらは、無造作に置かれているわけではない。

 

 机が並べられ、椅子も並べられ、わざわざ人形をそこへセットしてある。一見するばかりでは、おままごとの途中で放置された人形たち……といった感じだろうか。

 

 しかし、彼の目に映る印象は異なる。

 

 見たままの感想を語るならば、『なんか不気味な光景』、だろうか。そう判断するだけの理由があった。

 

 まず、置かれている人形が不気味であること。

 

 なんというか、ボディはヌイグルミのようにありふれた感じで、綿が詰まっているのが少しばかり離れていても分かるのだが、そのボディを彩る各種パーツが喜色悪い。

 

 まるで、本物のような手触りの髪。近付けば、これまた本物のような臭いを嗅ぎとれる。

 

 精巧に作られた眼球も、まるで生きた人間のモノからくり抜いたかのように淡く濡れているように見える。

 

 唇もそうだが、わざわざ本物と見間違うぐらい精巧な歯まで取り付けてあり……ボディに触れると、どういう原理なのか温かみすら感じ取れるのだ。

 

 子供向けの人形だが、造形自体は、とてもではないが子供向けには見えない……でもまあ、子供向けの人形だ。

 

 誰が置いたのかは不明だが、何かしらの意図があって置かれているのは明白……おそらく、誰かが置いたのだろう。

 

 そして、今日この時、彼がいつもより不気味だと思った理由は、人形の数がいつもよりも多かったからだ。

 

 しかも、一部中身の綿が噴き出しているモノがあって、そのうえ、床に落ちている人形にいたっては、赤黒いナニカで汚れているのが確認できた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………一つため息をこぼした彼は、中に入って……職務である清掃作業に入る。

 

 

 非常に無気味な仕事だし、誰かに話せるような仕事ではないが、その反面、非常に割りの良い仕事でもある。

 

 なにせ、1回の清掃で5000ドルである。

 

 念入りにピカピカにする必要はあるけど、道具は全部用意されているし、専門性の高い清掃をしろってわけでもなく、作業自体は根気さえあれば難しいことは何もない。

 

 大して広くもなければ物だって置かれてもいない部屋一室を素地するだけで5000ドル……それだけ貰えるなら、多少不気味だろうと無視できる範囲であった。

 

 

「……誰がやっているのかは知らんけど、相当な変態か、将来有望な変態かのどちらかだな」

 

 

 まあ、それはそれとして、愚痴の一つや二つは出る。

 

 なにせ、この人形たち……相当に金を掛けた人形だというのを聞いているのでいまさら驚きはしないが、こちらの行動一つで表情を変えるのである。

 

 彼が部屋に入った途端、あるいは、その前からなのかは不明だが、人形たちの目がギョロギョロと忙しなく動き回っている。

 

 人形たちの視界に入れば、まるで巨人を前にしたかのように大きく見開かれ……これまた君の悪さを覚えるぐらい本物っぽい唇が、カタカタと上下に動く。

 

 これで不気味に思わず可愛いと思える子供が居たら、『将来有望、僕の近くには居て欲しくないけどね』って彼が思うのもまあ、当然といえば当然なのかもしれない。

 

 

 で、だ。

 

 

 この気持ち悪い人形だが、触れてみるとこれまた気持ち悪さが半端無い。

 

 触感こそ人形のそれだが、妙に生暖かい。今しがたまで人肌で温めていたかのような、なんとも嫌悪感を覚えさせる感触だ。

 

 これらの人形を全て指定の場所に一旦安置し、室内に並べられたテーブルやら、おままごとのセットやら、それら全てを廃棄し、汚れがあれば清掃し。

 

 安置した人形を全て指定のダストボックスに入れて、部屋の外に置いて……そして、責任者より清掃完了のスタンプと、報酬の5000ドルを貰って、仕事終了である。

 

 だいたい終わる頃合いを見計らって責任者が来てくれるから、あまり愚痴をこぼして時間を掛けていると怒られるかもしれない……と思った彼は、溜め息と共に気持ちを切り替えた。

 

 

「……アポロ計画? また懐かしいやつが出たな。俺も子供の頃に買ってもらったぞ、スペースシャトルの模型……弟が壊しちまったけどな」

 

 

 そんなわけで、妙に生暖かい人形を安置し、清掃を開始し……黒板に書かれていたり張られていたり、テーブルに並べられた『アポロ計画』に関するそれらを、無造作にダストボックスへと捨てて行く。

 

 指示されているのは人形だけだ。

 

 それ以外の小道具は全て捨てろとの指示を受けているので、雑に丸めたり破いたり足で踏んで小さくしたり、黒板の文字もさっさと消してゆく。

 

 そのたびに、カタカタと変な動きを見せる人形が気味悪いけど……これも5000ドルのためだ、我慢するしかない。

 

 そして、清掃が終われば人形もダストボックスへ……その際、中の空気が変に抜けるのか、クピィだとかゴベだとか変な音がするが……無視して、手早く放り入れていく。

 

 それから、何時ものように清掃し忘れがないかを指差し確認し……廊下に出て、ダストボックスを扉の横に置いて……これにて、本日の5000ドルは完了である。

 

 

『──お疲れ様です』

「あ、待たせてしまいましたか?」

 

 

 今日も、タイミングを見計らっていたのかちょうど良く責任者が姿を見せた。

 

 

『──いえいえ、時間ピッタリですよ。では、スタンプと、5000ドルです』

「……確かに。今日もありがとうございます、この仕事のおかげで、すごく助かっていますから」

『──また、よろしくお願いしますね』

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 正直、こんな仕事の責任者を務めているだけあって、責任者もまた不気味である。

 

 どう言い表せば良いのか。

 

 責任者の近くに居ると頭の中が白くなってゆくというか。

 

 自分というものが消えていくというか。

 

 言葉では言い表せられないナニカが。

 

 背筋を登ってくる感覚がするというか。

 

 

 あるいは──(<●><●>)──あれ、何を考えていたんだっけ? 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………あ、思い出した。

 

 

「あの」

『──なんでしょうか?』

「チカコ・アキヤマさんは、これ以上ないぐらいに可愛らしい人ですよね」

『──あなたは分かっておりますね』

 

 

 ちゃんと、チカコ・アキヤマさんを褒め称えないと。

 

 その事を忘れず思い出し、今日もスッキリした気持ちで仕事を終えた彼は……明日も、あの人形を壊すのだろうな……ん? 

 

 

(……まあ、いいか)

 

 

 ナニカが頭の中を過ったような気がしたが……まあ、いいかと彼は考える事を止めたのであった。

 

 

 

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