ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ ちょいセンシティブかな?




第217話: なお、さらなる後遺症としてそこから一か月ほどウンともスンともしなくなる

 

 1980年頃の授業参観だけに限った話ではないが、この頃の学校行事は、ある意味では保護者たちの戦いの場であった。

 

 なんでかって、単純に人数が多いのだ。

 

 現代では1学年2クラス、場所によっては1クラスなんてのも不思議ではなくなっているが、この頃は1学年ごとのクラスが多かった。

 

 1学年4クラスある学校は珍しくなかったし、そのうえ、1クラス35~38人なんてところもあったとか。

 

 そして、それだけ生徒が多いということは、その分だけ保護者が来るというわけで。

 

 

 単純に、一人の生徒に一人の親が来るだけで人数は倍。

 

 

 1学年50人の学校と、1学年100人居る学校と比べたら、いかに窮屈な環境になるかを察せられるだろう。

 

 もちろん、すべての学校がそうなるかといえば、そんなわけもない。

 

 保護者が来ても余裕がある学校もあれば、生徒数がギリギリいっぱいで、保護者が入りきらず廊下から顔をのぞかせるようにして見ているところもあった。

 

 また、学校側も対策を立てて各クラスや学年で参観日を分けたりなどを行っていたので、トラブルが起こるほど混雑するなんてのは、けっこう稀なことでもあった。

 

 この頃の学校というのは……いや、まあ、新しく内装工事をされた学校しか知らない人なら分からないかもしれないが、とにかく、授業参観日は普段とは違うわけである。

 

 保護者も教室の場所までは覚えていないから、あっちに行ったりこっちに行ったり、案内板が置かれるなど対策を取られたりはするものの、根本的な解決には至らず。

 

 父親が来る場合は稀で、だいたい母親が来る……となればまあ、学校にはいつもと違う空気が漂うわけだ。

 

 知らない大人が大勢入ってくるだけではない。

 

 どの親も、大なり小なり化粧をして身ぎれいにしていることもあって、授業参観が行われている場所では、化粧品などの臭いがうっすら漂っていた。

 

 

 ……さて、だ。

 

 

 そんな環境にて、どうしても必然的に起こることは……保護者間での互いの様子の確認と、子供たち同士での自分たちの親に対する雑談である。

 

 やはり、ほとんどの子供は自分の親だけでなく、友達の親がどんな姿をしているのかが気になってしまうものだ。

 

 友達同士で遊んだり一緒に行動したりすることはあっても、互いの親が姿を見せて関わってくるなんてのは、あまり無いわけだ。

 

 さすがに何か問題が起きたら互いの親が出てくるけど、どちらの親も必要でもないのに出張ってくるほど暇ではない。

 

 さすがに幼稚園児や小学校低学年のような幼子ならばともかく、ある程度子供が大きくなったら、この頃でもアルバイトやパートに出ていくのはけっこう普通なことであった。

 

 だからこそ、この頃でも友達の親の顔を見たことがない……なんてのも、けっこう普通なことで。

 

 まあ、子供だからこそ、無遠慮に見知らぬ大人をジロジロ見回すのも致し方ないことであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そんなわけで、だ。

 

 

 教師もよほど子供が騒がない限り、あるいは後ろを振り返ったりといった、明らかに注意が逸れていたりといった行動を取らない限りは、しれ~っと流すのが普通になっていたのだが。

 

 

(……なあ、秋山の母ちゃんって、すっげぇ美人って本当か?)

(本当だぞ、俺は去年、秋山と同じクラスだったから知っているんだ……マジで美人だぞ)

(秋山さんのお母さんって、前にテレビで見たよ。すっごく美人で、女優さんみたい)

(秋山のお母さんって、たしか馬主って仕事をしているんでしょ? お父さんが、粗相はするなよって話してた)

 

 

 今日、この時の教室の空気は、これまで経験した授業参観日の空気とは、どこか違っていた。

 

 理由は言うまでもなく、『秋山千賀子』が来るからである。

 

 そう、娘であるエマとは血の繋がりがないうえにハーフなので誰もそこまで意識していなかったが、あの秋山千賀子が来るのである。

 

 千賀子はそこまで深く考えてない意識していないが、実は、世間一般の人たちにとって、秋山千賀子はもうけっこうな有名人になっていた。

 

 さすがに全国区のテレビ番組出演なんてのはしていないから、そういった意味での知名度は薄いが、それでも、これまで幾度となく馬主関係でその姿を放送されているのだ。

 

 現代人(それも、令和世代など)には少々想像しにくいかもしれないが、この頃のテレビの影響力は、現代の比ではなかった。

 

 現代では視聴率が15%取れたら御の字と言われるようになってはいるが、この頃のテレビは視聴率15%なんてのは、『ちょっと人気がある』に分類された。

 

 なにせ、千賀子の前世の話ではあるが、1983年より放送された朝ドラマ『おしん』の平均視聴率は52%超え。

 

 最高視聴率は62.9%にも達したとされているのだから、いかにこの頃の人々の情報源がテレビで占められているのかがうかがい知れるというものだ。

 

 ネットのことは若者しか知らない、テレビのことは老人しか知らない……なんてのは、遠い未来の話。

 

 この頃はテレビで放送されたのは、老人も大人も子供も知っている……というのが当たり前だったわけである。

 

 

 だからこそ、だ。

 

 

 けっこうな割合で『テレビで秋山さんのお母さんを見た』という子供はそれなりに居て、それは保護者達にとっても同じことで。

 

 自然と、本物の秋山千賀子を見られるかも……といった感じで、娘のエマよりも、下手したら周りの人たちの方がよほどそわそわしていた。

 

 

 

 ……そうして、ついにその時が来た。

 

 

 

 それを言葉にするなら、ひょい、だろうか。

 

 授業中なので声を掛けるわけにはいかない。だから、ひょいっと顔を覗かせた、千賀子の登場に……ざわっと、場の空気が変わった。

 

 最初に反応したのは、教師や保護者たちであった。

 

 これはまあ、生理的に致し方ないことなのだが、同性異性問わず、本当にきれいな人を前にすると、思わず言葉を無くしてしまうものだ。

 

 派手な服装をしているわけでもない。

 

 むしろ、服装そのものは地味で、一般的な女性が着れば、普通に野暮ったい恰好と評価される姿をしていた。

 

 でも、千賀子の美しさが、そう思わせなかった。

 

 ゆったりとしたシャツではあるものの、その胸元は今にもはちきれそうで、服越しでもわかる大きな乳房の膨らみが目を引く……けれども、そこではない。

 

 化粧が濃くて目を引くわけでもなく、香水の匂いがキツイわけでもない。

 

 

 ただ、美しすぎたのだ。

 

 

 ましてや、そのきれいな人というのは、女神様によるガチャにて20年以上に渡って魅力を底上げされ続けた、美の怪物のような存在である。

 

 自分たちとは明らかに骨格からして格が違う、そのうえ何やら良い匂いがするだけでなく、同性であろうと思わず注目せずにはいられない暴力的なスタイルが目の前を通るのだ。

 

 すっご……と思わず声に出してしまうのも、無理はない。

 

 ぽかんと呆けるぐらいで済んでいるものはかなりマシな方で、大半の人たちは反射的に口に手を当てたぐらいに……千賀子は、目立っていた。

 

 そして、大人たちが反応すれば、子供たちもまた反応するは自然の流れで……必然的に、子供たちの反応は千賀子へと集中した。

 

 

 それも、致し方ない。

 

 

 良くも悪くも、美人は目立つのだ。

 

 ましてや、テレビでもそうそうお目にかかれない暴力的なスタイルだ。

 

 小学4年生(それも、まだ6月の時点)の子供たちからすれば、自分の頭ぐらい大きいのではと思ってしまうぐらいで。

 

 一人、また一人、『秋山の母ちゃんのおっぱいでけぇ』と囁く者が出るのもまた、必然であった。

 

 

 ちなみに、だ。

 

 

 その中でエマだけは、それこそ物心つく前から見慣れているし、なんならうろ覚えながら乳を吸った記憶もあるわけだから、特に気にしてはいなかった。

 

 ただ、『やっぱりママのバストって大きいんだ……』という、今更ながらの再確認をする子供心はあったのだけど。

 

 

「で、え~っと、おまえらお母さんが来てうれしいのはわかるけど、今は授業中だから静かにしなさい」

 

 

 そんな中で、なんとかいち早く我に返ったのはただ、担任の教師である。

 

 さすがに授業参観体験はこの場の誰よりもあるわけだから、なんとか気を取り直して授業を再開するわけだが……しかし、だ。

 

 

 ……ふりふり、と。

 

 

 振り返ったエマが手を振れば、千賀子もにっこり笑って手を振る……さて、忘れてはいけない、千賀子はとんでもない美貌の持ち主である。

 

 そんな女性が、満面の笑みで手を振れば、どうなるか。

 

 こっそり見ていた一部生徒たちは、思わずドキッと視線を前に戻す。目撃してしまった保護者達も、思わず見惚れてしまったぐらいで。

 

 

「……あ~、その~……つまり、この文の、自分を見ているようだ……の部分は、その前の7行前に書いていることからであって……」

 

 

 ドキッと恋が始まりそうなぐらいに胸を高鳴らせていたけど、『俺は教師、俺は教師……!!』と、なんとか己を抑えつけた……わけなのだが。

 

 

「──うん?」

 

 

 前触れもなく、唐突に……教師がふらつき、黒板にもたれかかった。

 

 これには生徒たちも目を瞬かせ、「先生、どうしたの?」不思議そうにしていた。もちろん、保護者達も同様で、いったいどうしたのかと互いに顔を見合わせた。

 

 そりゃあ、そうだ。

 

 パッと見た限り、教師の顔色は特に悪くなっていないし、直前まで具合など悪そうにはしていなかったし、なんなら元気そうにすらしていた。

 

 

「……はは、いやあ、すいませんね。どうも、軽い立ち眩みみたいで……少し、座らせてもらいますね」

 

 

 だから、そう教師が言えば、特に保護者達は不審な目を向けることはなく、声色からして、本当に唐突な立ち眩みが起こっただけなのだろうと、軽く流していた。

 

 現代ならば苦情を入れる保護者が現れるかもだが、この頃なんて、その程度でいちいち苦情を入れる者なんて、本当に珍しいことであった。

 

 まあそれは、今とは違って、この頃は学校の発言力がとにかく強かったからという理由があったりするわけだけど。

 

 

 とにかく、だ。

 

 

 椅子に座りはしたものの、それ以外は特に不自然な点はなく、生徒たちも特に何も反応しなかったので、それで立ち眩みの件はさらっと流されたのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ちなみに。

 

 

 実はこの時……教師は立ち眩みだけでなく、腰から下の力が抜けてしまって……そのうえ、気だるさを伴いつつも妙にすっきりした感覚を覚えていた。

 

 だからこそ、下手したらしりもちをついていたかもしれないので、それっぽい理由をつけて椅子に座ったわけだが。

 

 実はそれ以外に、千賀子以外は気づいていなかったことが一つある。

 

 

(……5号、間に合ったか?)

(──危なかったですね~)

 

 

 それは、例の『女神SSR』が発動した、ということ。

 

 感覚としては、半ば暴発に近い。

 

 しかし、二度目の時点で感覚の一端を掴んだ感触がある。

 

 今すぐは無理でも、そのうち方向性を見極めて被害を最小限に抑えられるようになるだろう。

 

 実際、今回は抑えることができなかったので、非常に申しわけないとは思ったけど、力の矛先をこの場で唯一の男性(子供ではない)である教師へと向けて……そこに、留めた。

 

 なんとか現実世界に戻る際に、巫女的パワーによる記憶操作も行えたので……少なくとも、なんか足腰に力が入らない? と思う程度で済ませたのは、今の先生の反応から分かった。

 

 

(早く、この能力をある程度はコントロールできるようにならんとなあ……さすがに、子供にトラウマを仕込みたくない)

 

 

 とりあえず、ごめんなさい……と、千賀子は笑顔の下、胸中にて頭を下げたのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………なお、千賀子は知らなかったし、教師も最後まで自覚も認識もできなかったのだけど。

 

 

 実は、後遺症を患ってしまったこの教師は、これより一か月ほど、毎夜の夢にて千賀子(5号)とのあっは~ん♥を繰り返し。

 

 ようやく体に刻み込まれた記憶が失われるまでの一か月、教師は現実とまったく同じ感覚の中で、淫夢の中を漂ったのであった。

 

 

 

 

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