ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
場所は地球から遠く離れた銀河系の彼方。
ここまで読んできた者たちには改めて語るまでもないかもしれないが、そこには、地球へと攻めてきた宇宙艦隊の母星がある。
正確な場所の詳細は、止めておこう。どうせ、人がたどり着ける場所ではないのだから。
とにかく、そこには母星がある。
まあ、母星とは言っても、必要とあらば他の星を侵略したりなんなりして、あっさり『新・母星』にしちゃっても誰も気にしないような者たちなので。
思い入れがある者は少なく、特に、侵略する事に心から慣れ切った上位階級の者たちからしたら、余計にそういった感覚は薄かった。
話は逸れたが、とにかくそこには母星がある。
今、そこに、侵略に失敗した艦隊が帰還しようとしていた。
そして、帰還の通信を受けていた母星の者たちは、いったい何が起こったのか困惑していた。
何故ならば、地球に向けて旅立った艦隊……いわゆる、惑星侵略のための戦艦を隊列に組み込んだ、攻撃的な編成だったはずだからだ。
それどころか、少数ながら最新鋭の対惑星侵略艦をも編成された、超攻撃的……はっきり言えば、大規模な艦隊編成だったはずなのだ。
これが、調査のための出兵だったならば、まだ話は違った。
あくまでも調査の段階だから、いきなり主力艦隊なんて組み込まれるわけじゃないし、そもそも、戦艦すら編成しない場合も多い。
せいぜいが高速船ぐらいで、重要性の低い調査ともなれば、市販されている高速船と同程度の性能なんてのも……話が逸れたので、戻そう。
とにかく、母星の者たちは帰還する勇者たちを出迎える体制を整えながらも、困惑していた。
事前に通信にて、敗走する理由が伝えられてはいたのだが……いまいち要領を得ないというか、意味が分からないというか。
ぶっちゃけてしまえば、何を言っているのか、何を伝えようとしているのか、さっぱり分からなかった。
なにせ……『未知の超巨大生命体と会敵し、被害甚大のため退却した』、という、冗談のような話なのだ。
そこに、身体をこすり合わせて傷を治していくとか、恍惚の表情を浮かべたかと思えば回復するとか……詳しく聞けば聞くほど、母星の者たちは困惑するしかなかった。
まあ、それも、もうすぐ終わる。
直接聞き取り調査をすれば済む話だし、なんなら艦隊には映像データを始めとして、様々な戦闘記録が残っている。
お互いのすれ違いなんて、その程度で解決できる問題だと思い……彼ら彼女らは、滑走路にて静かに着地をした艦隊に向かって、力強く敬礼を行い。
そして……格納庫が開かれ、続々と勇者たちが下りて──。
────。
──。
──。
……。
……。
…………時は少し遡り、時間にして約360時間前。
戦闘継続不可能と判断した宇宙艦隊は、全速転進の指示に従って、超亜光速ワープにて、ワープ空間を走行していた。
ワープ走行中は、基本的に兵士たちは暇である。
勘を鈍らせないためにシミュレーションルームなどでトレーニングを行うが、基本的に、待機状態にあるので時間に余裕がある。
それゆえに、その間はどのようにして時間を潰すかというと、まあ、それぞれ、である。
いわゆる、テーブルゲームというやつで時間を潰す者もいれば、スリープ装置にて有事あるいは母星到着まで眠る者もいて、特に決まりはない。
ただ、全体として見れば、スリープ装置にて眠る者が大半であった。
なにせ、テーブルゲームなんてやり飽きていたし、勝てなかったフラストレーションは、その程度では解消できない。
ならば、下手にイライラして暴れて上官より激怒されるよりは、適当にスリープ装置にて入眠し、頭をすっきりさせてしまおう……と、思う者が出るのもまた当然の事で。
実際、この時どうにも眠る気になれなかった者たちが数名ほど集まってテーブルゲームを始めたのもまた、当然の流れであった。
『──しかし、結局のところ、あいつらは何だったんだ?』
何度目かのゲーム……今は、いわゆるトランプ(に、近しいモノ)にてカードゲームをしていた彼は、そう話を切り出した。
『さあ? 調査室の方でも、まるで分からんって発狂していたぞ』
『あんなの理解しようってのが無駄だろ、なんだアレ?』
『どう見ても真空の無重力空間で生存できる造形していないのに、なんであいつら活動できたんだろうな』
対して、対戦していた彼らも、暇つぶしがてら話に乗った。
話題の内容は、彼ら宇宙艦隊が敗北する原因となった、謎の超巨大生命体の事である。
そう、彼らがポツリと話題に出したソレがいったい何者だったのか、結局のところ、分からず仕舞いだったのだ。
なにせ、造形からして宇宙空間で活動できるような存在には見えないのに、平気な顔で活動していたのだ。
話が逸れるので詳細は省くが、宇宙空間内で活動する生命体の造形は、あんな人型のそれではなく、もっと丸まった……凸凹とした球体な感じなのがほとんどだ。
少なくとも、彼らの常識の中では、そういうやつしか見たことがなかったし、聞いたことはなかった。
後は、そういった生命を超越した、いわゆる『上位存在』ならばともかく……とてもではないが、あいつらをそのような存在に見えなかったからこそ、彼らは困惑するしかなかったのだ。
『レーザーが当たって表皮が蒸発したはずなのに、なんで次の瞬間には治っているんだ?』
『おれ、望遠カメラで確認していたけど、蒸発した組織……あいつら、小さい個体が集合して大きく見せていたんだけど、蒸発した個体が、どういうわけか復活していたぞ』
『復活? 細胞さえ残れば再生するようなレベルのやつだったのか?』
『いや、なんか卵っぽいものを産んだかと思ったら、そこから……』
『キッショ……!!!』
これまた当然ながら、ダラダラと中身のない話をしているだけだから、正体解明へと繋がる仮説なんて出るわけもなかった。
というか、話した直後にはもう、自分が何を話していたのかってぐらいやる気がなかったわけだし……で、だ。
『……そういえば、あいつ遅いなあ、どうしたんだ?』
そうして何度目かのゲームを行ったあたりで、ふと、少し前に『喉が渇いた』と言い残して席を離れたやつが戻ってこないことに、目を向けた。
『さあ? 発散室にでも寄っているんじゃねえの?』
『今日の発散室はけっこう人気な子が出勤しているらしいから、向かったんじゃねえの?』
『あいつ、そんなタイプだったか? そういうのは欠片の興味も無いタイプだと思っていたが……』
『というか、あいつ何回補給しに往復しているんだ? もう8回も補給しに行っているんだが』
『そういえばあいつ、今回のアレと接敵したとか話していたが、もしかしたら負傷していたのか?』
『ありえそうだな、体内の保水タンクが破損でもしたんじゃねえの?』
『なら、今頃は医務室行きだな』
──違いない。
そう言って、げらげらと笑い合っていた……そんなタイミングだった、件の彼が戻ってきたのは。
しかし、戻ってきたは良いのだが、どうにも様子がおかしい。
その顔色はけして良くはなく、けして好調な様子には見えない。ドカッと、椅子に腰を下ろした途端、深々とため息を吐いた。
これには、彼らも思わず互いに顔を見合わせ……そのうちの一人が、恐る恐るといった様子で尋ねた。
『おい、どうしたんだ? 顔色が悪いぞ』
『ん? ああ、少し気分が悪くてな……』
『そうなのか? 調子が悪いのに誘って悪かったな』
『いや、気分が悪くなったのは途中からで……急に、気分がな……』
詳しく話を聞くと、だ。
最初のうちは、特にそうではなかったらしい。
どうにも今日は喉が渇くぞと補給室に行く回数が多いことを除けば、むしろ調子は良かった方だった。
実際、先ほど補給室に向かった時も調子は良いままで、その勢いのあまり、発散室に寄ろうと思ったぐらいには……が、しかし。
発散室の扉を開け、中々に当たりの子だぞと思ってやる気を出したところまでは良かったのだが……そこで、急に気分が悪くなった。
言うなれば、直滑降。
あまりにも突然そうなったから、思わず彼自身困惑してしまい……急用を思い出したと誤魔化してその場を後にして、ここに戻ってきた……というわけであった。
『それなら、医務室に行った方が良かったんじゃないか?』
『いや、本当にそこまでじゃないんだ……ふう、こうして座って休憩するだけでだいぶ持ち直してくる程度だしな』
その言葉は嘘ではなく、彼の顔色は瞬く間に良くなっていて、先ほどまで気分が悪かったと言われても、誰も信じないぐらいには血色も良くなっていた。
……戦闘の高揚、敗戦のショックで体調が落ち着かないのだろうか。
新兵にありがちな症状だが、ベテランでもなる時はなる。
そう結論付けた彼らは、異常が出たら無理せず医務室に行けよと促しつつも、それで話をおしまいにして、ゲームを再開させたのであった。
……。
……。
…………それゆえに、彼らは気付けなかった。
彼が補給室に向かった回数はこれで15回を超えていて、その都度大量の水分を補給し続けていたということを。
また、席に座ってから、はた目には気分を落ち着かせるために深呼吸をしているように見えていたけど、その実態は……この場にこもっている、己と同じく、オス形態時の臭いを嗅ぎ取っていることを。
気分が悪くなった理由を、実はちゃんと認識出来ていて、その理由が『発散室にこもっていたメスの臭いが辛かったから』というものだということを。
加えて、だ。
この場で唯一、戦った相手と至近距離にまで接敵し、近接戦闘を行った彼は……彼自身が自覚出来ないまま、とある玉を埋め込まれてしまっていて。
その玉の名が、実は『尻子玉』と呼ばれる……とあるUMAのモノであり。
それは着々と、彼の身体を内側から作り変えていて……しかも、埋め込まれたのは彼だけでなく、スリープ装置にて眠っている者の中にも、居たわけで。
『……なあ、みんな』
『ん? なんだ?』
『実はな、面白い遊びを一つ、聞いたんだけど……』
けれども、誰一人として、それに気づくことはなく。
『スモウ、という名らしい。一つ、やってみるか?』
始まりの時、あるいは終わりの時が迫っている事に、誰も気付けてはいなかったのであった。
※ エイ〇アンの文字を5文字変えて2文字減らしたら、カッパになります
もう、お分かりですね?