ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ お下品要素あり、注意要


2周年記念ガチャ ~歴史は繰り返す~

 

 

 

 

『──2周年ですね、愛し子よ。そんなあなたのために、私はとっておきのガチャを用意しました』

 

 

 これまで、幾度となく女神様より優しい言葉を掛けられたが、それを言葉通りに受け取ったことは数少ない。

 

 理由はいくつかあるが、一番の理由は、女神様の感性が人のソレとは明らかに逸脱しており、そこに千賀子の意思はあまり反映されないからだ。

 

 そう、たとえ、千賀子が泣いて嫌がったとしても、女神様は満面の笑みで、泣き叫ぶ千賀子を見つめるばかり。

 

 そんな女神さまが、満面の笑みで愛し子である千賀子に何かを語り掛ける時……それはほとんどの場合、千賀子にとってはろくでもない結果が残る。

 

 

『──最近ですね、私は思うのです。愛し子よ……貴女には、受け身の魅力ばかりではなく、攻めの魅力を持っても良いのでは、と』

「ごめんなさい、女神様。毎回の事だけど、こういう時の女神様が何を言いたいのか私には分からないの……」

『──そう、魅力パゥワーを、新たな武器にするのです!』

「女神様、この前『デ、デービルマン……!』を読んでいたけど、なんか影響受けたの?」

 

 

 今回も、その可能性が極めて高そうである。

 

 というか、魅力パゥワー(巻き舌)とは、いったい? 

 

 新たな武器って、いったい何と戦わせるつもりなのか、あるいは気まぐれか……とにかく、考えても埒が明かないので、千賀子は無心でダーツを構える。

 

 幸いにも、今回の『2周年ガチャ』は、そのタイトルに合わせて2回だけダーツを投げるだけで良い。

 

 たった2回、それだけ。

 

 しかし、既に千賀子は己の身にどれほどの能力が備わっているのかを把握出来ていない。

 

 単純に多すぎて覚えられないのと、能力によっては他の能力と結合して別の能力に変化するといった事が起こるらしいから、余計に、だ。

 

 とにかく、得た能力を片っ端から抑え込んでいるような状況である。

 

 それでも、抑え込めきれない部分が表に出てしまい、それが『魅力』という形で現れ、魅了してしまう時があるのだけど。

 

 あくまでも直感的な話だが、アレだ。

 

 もしも、己が自らの制御を外した状態で、うっかり街中で微笑んでしまえば最後……取り返しのつかない大惨事が起こる気がしてならない。

 

 

「……ええい、ナムサン!」

 

 

 だからこそ、少しでもマシなやつが当たれと己に念じながら、まずは一発目……投げる! 

 

 

『UR:愛し子キッス(New)』

 

 要約:愛し子の投げキッス、それを受けて無事に済むモノはいない。受けの魅力を攻めの魅力に転じて、相手をメロメロにしよう! (キッス無しでもメロメロにしますby女神)

 

 

 そしたら、なんか変なのが出た。

 

 いや、冗談じゃなくて、今までのガチャの中では異質というか、なんか系統が違うというか……とにかく、なんか変なのが出た。

 

 

(え、なにこれ?)

 

 

 本当に、意味が分からない。

 

 無事に済むモノは居ないって、アレか……受けると恋しちゃうとか、そういうやつか? 

 

 内容からして、発動する部位は『唇』っぽいが……つまり、投げキッスをすると、なにかしらの影響を与える類の……能力? 

 

 チラリと、千賀子の視線が……静止したままの人々へと向けられる。それには、ロボ子も含まれていた。

 

 ロボ子すらも静止しているということは、単純に動きが止められているわけではない。

 

 おそらく時間とか、空間とか、よく分からないけど、そういうのを止めているようで……う~ん、分身に相談しようにも、繋がらない感覚。

 

 と、なれば、なんとか抑え込むか、あるいは実験して効果の程を確認するか……しかし、『UR』ともなれば、下手すると取り返しのつかない事態に陥る場合も……っと。

 

 

『──こちら、お試し用の人間です。なんなりと、お使いください』

 

 

 そんな事を考えていたら、なにやら女神さまがドスンっと目の前に、頭巾で顔を隠した男を……え、いや、なに急に? 

 

 男は、裸であった。

 

 鍛えているのか、体格は良い。おそらくは30代ぐらいだろうか、身長は千賀子より10cm以上高かった。

 

 己と女神様と一部を除いてすべてが薄暗い中で、その男の裸体がくっきり表れていて……お試しって、マジで? 

 

 

『──安心を、ちゃんと愛し子の心が痛まないような人間を連れてきました』

「いや、頼んでいないのだけど?」

 

 

 女神様の優しさって、マジで己以外には向かないことを、改めて千賀子は思い知ったような気がした。

 

 

『──この男、なんとこれまで30人以上の女を泣かせてきた生粋のぷれいぼぅいというやつです』

「はぁ、それが?」

『──こういうの、一般的には心が痛むという話を後輩から聞いたのですが?』

「格上の男を選んだ女が袖にされただけだし、身体を使わなきゃ相手にされなかったってだけの話でしょ?」

 

 

 なんだか千賀子の反応が冷たいように思えるかもしれないが、それは千賀子の本音であった。

 

 一昔前のお見合いスタートからの一方的な破綻とかならともかく、1980年代にもなれば、一般的にはもう自由恋愛が主流になっていた。

 

 よく、サブカルチャーなどで親に無理やりお見合いを……だなんてやつは、その頃になるとほぼ廃れたといっても過言ではない。

 

 相応の家柄なゆえに一般人では……というパターンだったり、当人たちに相当な問題があったりとか、あるいは極端な例だが、本当に親に無理やりというのも0ではないだろう。

 

 しかし、一般家庭においてのお見合いは、せいぜい1960年代が最後。

 

 それ以降ははっきり分かる程度に目減りしていき、昭和が終わる頃ともなれば全体の1割以下……つまり、お見合いでなければならない人を除けばほぼ絶滅しているぐらいには、廃れていた。

 

 なので、少なくとも千賀子にとっては、自由恋愛を選んだ以上はそういう事も起こりえるのは覚悟せねば……話が逸れたので、戻そう。

 

 

「戻してきなさいよ、わざわざ実験とかするつもりはないから」

『──そうなのですか? では、戻しましょうか』

「そうしてちょうだ……待って、女神様。この人、普段はどこで働いているの?」

『──愛し子の娘であるエマが通っている学校の、近くにあるスイミングスクールですね。子供たちや親御さんたちからの評判は良いです』

「それを真っ先に言いなさいよ!」

 

 

 急いで、男の内心を探り……無言のままに指で首を掻っ切るジェスチャーをしてから、千賀子は女神様に実験実行のお願いをした。

 

 すると、男の顔を覆っていた頭巾が音もなく消滅し……露わになったのは、中々に整った顔立ち。

 

 意識はあるけど、意思は封じられているのか……真顔のまま、まっすぐ前を……つまり、千賀子を見つめている。

 

 とはいえ、それだけだ。動き出す気配は全くない。

 

 また、若い頃からこれなら、さぞ女子たちからモテていたのが察せられる……いや、それ以前に、だ。

 

 普通に現在進行形でセフレが2人いるだけでなく、中学生にも手を出しているのが分かったので、千賀子はもう遠慮など欠片もする気は……ん? 

 

 先に言っておこう、千賀子はまだ何もしていない。

 

 さすがにいきなり全力では検証にならないので、『魅力』を抑えたまま、『UR:愛し子キッス』は発動した状態にしてある。

 

 ただ、それだけ。

 

 少なくとも、それ以外は何も……なのにどういうわけか男の股間のブツが、むくむくっとパゥワー(巻き舌)が充填されてゆくではないか! 

 

 ものの20秒ほどで、へそにつかんばかりに立ち上がったそれを前に、千賀子は無言のままに首を傾げ……そして、無言のままに傍の女神様へと視線を向けた。

 

 

『──『愛し子キッス』のおかげで、あの男は愛し子の唇フェチになりました』

「はぁ?」

『──長時間、見つめ過ぎましたね。もう、あの男は愛し子の唇が異性の性器なみに興奮を引き立てるモノに思えているでしょう』

「……え、待って、何もしていないっていうか、私の唇を見ただけでそうなるの!?」

 

 

 思わず、千賀子は反射的に両手で口元を覆い隠し「──っぐ、うぉぉお!!!」た瞬間、男は野太い悲鳴をあげながら、股間のブツを噴火させた。

 

 

「え?」

 

 

 あまりにも突然のことに呆気に取られる千賀子を他所に、男はしばしの放出の後……静かに、息を整え始めた。

 

 

『──慌てて隠した愛し子もかわいい……当然ながら、慌てて恥ずかしがって隠したら、フェチにはピンポイントでしょうね』

 

 

 そんな千賀子に、女神様は気が狂ったとしか思えないような説明を……いや、そうじゃない。

 

 

『──さあ、投げキッスをしてみなさい』

「え、こ、これ、大丈夫なの?」

 

 

 疑惑の視線を向けながらも、ちょっと怖くなった千賀子は、傍目にも分かるぐらいぎこちない動きで、チュッと──

 

 

「う、うわぁぁぁああああああ!!!!」

「ぎゃあああああああ!!?!??!?」

 

 

 ──直後、男は絶叫をあげながら、知識がなくとも不安を覚える量の放出を始め──遠い昔の事とはいえ、男が一度に出せる量を知っている千賀子は、恐怖の絶叫をあげた。

 

 絶叫という文字は同じでも、その中身はまったく別物。

 

 白目を剥いて気絶を通り越して心停止を起こした男を慌てて神通力で横にしてから、触れることなく心臓マッサージを行う──そんな千賀子をしり目に。

 

 

『──これが、攻めの魅力です』

「過去上位レベルでのトラウマランクインだわ、こんなの!!」

 

 

 満面の笑みでドヤァ……をする女神様に、千賀子は巫女パワーボール(気を固めて放つアレ)を打ち込んだのであった。

 

 いくら、敵認定を下した相手に容赦しないとはいえ、だ。

 

 さすがに今の段階でここまでする気はなかったし、せいぜいもう一回放出する程度かなと思っていたのに……まさか、心停止レベルの放出になるとは。

 

 軽い仕置き程度にビンタしたら、そのまま倒れてケイレンを始めたかのような……とにかく、こんな理由で死なせて堪るかと慌てて蘇生させたのであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、気を取り直してから、逃れられぬ定めとしての、二発目のダーツを放つ。

 

 

『UR:どうしようもなく可愛らしい愛し子の囁き(New)』

 

 要約:ついに、愛し子の声が、人としての極致に達しましたので、ここに愛おしさを込めて表しょ──う、うう、涙脆くて申しわけありません、可愛くて……。

 

 

 また、これまでと系統の異なる……要約を見る限り、これまで様々な形で出て来た『声』系統の能力が複合された、と思って良いのだろうか? 

 

 いわゆる、カンストというやつか。

 

 明確に区別できる能力ならば感覚的に察知できるのだけど、先ほどの『愛し子キッス』のように、魅力系統の能力限界からの派生ってパターンだと、いまいち察知しにくい。

 

 

『──では、お試しに、どうぞ』

「待って、その人、さっきまで心停止と脱水症状で死にかけていたんだけど?」

 

 

 しかも、ただ死にかけたわけではない。

 

 どうやら、投げキッスを受けた相手は、体内の組織を弾に変えて放出するようで、この短い間におおよそ2kgも体重が落ちていた。

 

 

『──??? 今は生きていますよ?』

「そりゃあ……まあ、うん……」

 

 

 なんとなく、試し打ちさせるまで今の状況から動かしてもらえないだろうなあ……と察した千賀子は、恐る恐る、眠っている(気絶している、とも言う)男の耳元へ……声を掛けた。

 

 

「『起きなさい』」

 

 

 瞬間、くわっと男の目が見開かれた──

 

 

「ぐ、ぐぅぁああああああ!!!!!!!!」

「ぎゃぁああああああああ!!?!?!??」

 

 

 ──と、同時に、だ。

 

 

 先ほどと同じぐらいの放出が始まり、絶叫をあげる男の身体が打ち揚げられた魚のようにビクンビクンとケイレンを……なお、千賀子も絶叫をあげたのであった。

 

 

 

 

 

 

 ──という話を、だ。

 

 

 ロボ子に語ったのは、それから一か月近くが過ぎた頃。

 

 なんで間を置いたのかって、それはあまりにも酷い絵図だったから、千賀子自身がその時の事を思い出したくなかったからである。

 

 

「本当に、心臓に悪い時間だったわ……」

「お労しや、マスター……」

 

 

 なお、ロボ子はその時の事をまったく記憶出来ていない。

 

 それも当然で、『ガチャ』をしている時のことは、この世界では存在していない、女神様と千賀子しか認識していない時間帯だったからだ。

 

 なので、ロボ子からしたら、下手したら妄想判定を食らいそうな話なのだが……しかし、女神様という例外中の例外を知っているので、ロボ子は素直に信じたわけだ。

 

 

「最近はあまり付けなくなっていた顔隠しを再び付け始めた理由は、そこだったのですね」

 

 

 しみじみとした様子で、ロボ子のアイセンサーが……千賀子の顔面を遮っている顔隠しへと向けられる。

 

 そう、実は千賀子……少し前から、顔隠しを付ける頻度を減らしていたのだ。

 

 何時までも隠しっぱなしもなんだし、加齢と共に魅力も衰えるだろうし、周りも少しは慣れてくれるだろうと思って、邪魔くさいと思っていたモノを外していたのだ。

 

 

「いちおう、抑えてはいるんだけど……ほら、万が一ってあるじゃん?」

「家の中では、外していますものね」

「エマと春人はもう見慣れているしさ……さすがに、子どもの前で大惨事(意味深)になったら、トラウマ確定だし……」

「お労しや、マスター……」

 

 

 しみじみと、それはもう、しみじみと呟く千賀子に、ロボ子はひどく気の毒そうに見やることしか出来なかった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………っと、そこでふと、ロボ子は空気を変える意味も兼ねて、少しばかり話題を変えた。

 

 

「そういえば、CMは大反響みたいですね。いつもより『春木競馬場』の来場者数が増えているのが確認されています」

「まあね、身体を張ったし……でもまあ、人が増えるとその分だけトラブルも増えるし、良し悪しなところはあるのがねえ」

 

 

 そう、千賀子がため息を吐くのも、致し方ない。

 

 あのCMが放送されてから確かに客足が増えてはいるけど、比例して増えるのが、トラブルである。

 

 幸いにも、『春木競馬場』ではあまりにも一方的かつ酷いトラブルを起こすと、場合によっては千賀子すら知らないまま外壁の一部として取り込まれてしまうので、平和は保たれているけど。

 

 それでもまあ、細々としたトラブルは起きるわけで。

 

 これまた幸いにも、千賀子が顔を出せば(顔は出さないけど)治まる程度だから、なんとかなっているが……それでも、怒鳴り合いの光景が見られたのは一度や二度ではない。

 

 ……そのうえ、だ。

 

 

「最近さあ……私が出てくると、なんかハチマキ付けた人たちが手を振ってくるんだけど……あの人たち、なんなの?」

「おそらく、マスターのファンかと」

「ファンって……」

「CMに2回も出ているのですから、ファンが現れても不思議ではないかと」

「う~ん……そういうものかなあ……」

 

 

 テレビCMに出たせいか、最近になって『春木競馬場』に姿を見せるようになった……『千賀子』の文字が書かれたハチマキを絞めた謎の集団。

 

 彼らはわざと騒ぎを起こしたりはしないが、東に千賀子が姿を見せたかと耳に挟んだら移動して。

 

 西に千賀子が現れたと聞いたら走り出し、北に南にと移動しては、『ち! か! こ!』と応援演説を……はた目から見たら、妖し過ぎる民族移動である。

 

 ロボ子曰く『当然の結果』らしいのだけど。

 

 千賀子からしたら、なんか思っていたCM効果と違う……というのが正直な気持ちであった。

 

 

「ところでマスター。なにやら、ドラマに興味はないかと連絡が来ておりますが……」

「ドラマ……あの人たちもしつこいわね」

「映画も、来ておりますよ」

「映画は大変、私はそれを土師田の撮影で嫌というほど学んだわ……」

 

 

 ……しかし、そんな感じで『春木競馬場』とはいえ、だ。

 

 実質私室だからと顔を見られないよう外では気を張っていた反動から、ふ~っと気を抜いていたのが悪かった。

 

 ぶっちゃけてしまえば、タイミングが悪かった……ただ、それだけの話だけれども。

 

 

 ──え、えらいこっちゃ!! 

 

 

 この時ばかりは、本当にタイミングが悪く。

 

 

 ──秋山オーナーが、え、映画撮影……CM、芸能界入り……え、えらいこっちゃ!!! 

 

 

 青ざめつつも強張った形相で離れていく……なんだろう、デジャビュかな? 

 

 ロボ子だけは気付いていたのだけれども、今はもうボケーっとしていたい……そんなオーラをビンビンに垂れ流していたので。

 

 

「何か、飲みますか?」

「濃い目のお茶をちょうだい」

 

 

 ロボ子は……そっと、お茶の用意を始めるのであった。

 

 

 

 





 冗談半分で投げキッスしたら、愛しさ爆発して誇張抜きで心停止を起こします。ただし、画面越しだと威力軽減されます
 これぞ、攻めの魅力
 思考の全てが千賀子で塗りつぶされて命を終える、この長閑な光景に、女神様も己の身をねじ切れんばかりにぐにゃらせながら、喜んでおります

 ※ なお、カッパに対しては、構えた時点で全員例外なく血反吐と共に昏倒確定です。もはや、メス臭さを出す必要性はありません
 これぞ、攻めの魅力
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